銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその九十五
「電!電!どうしたのさ!?」
「電お姉さん…!」
トウカイテイオーの眼前で突然倒れた電はどれだけ揺すっても声を掛けても起きずテイオーは電を揺さぶる。
そして電が倒れたと聞いて居ても立っても居られずに甲板の確保をギリシャ勢に任せたマシュも駆けつけた。
その傍らに立つのは一緒に行動していたオリュンポスの双子、マカリオスとアデーレの二人。
その光景を見て頭をガシガシと掻くのは坂田金時。そしてマスターと共に行動していた日本のサーヴァント達。
「一体何だってんだ…えっとそっちの二人。理由は分かるか?」
「金時、残念だが俺たちでも理由は分からない。」
「分かんねえのかよ…。」
どうすんだと零す金時、目の前でどう見ても幼い少女な見た目の存在が倒れ同じ様な歳の見た目の少女が泣いているのは金時として許しがたい。
「大丈夫よ。金時。」
そんな金時に電はきっと大丈夫だと話すのはアデーレ、そしてマカリオスの二人は金時と彼らが此の船で遭遇した時から旧来の友人の様に金時に接していた。
当初は戸惑ったが情報にあった異聞帯の二人その人であると知ると納得し、同時に金時はその記憶がないことに申し訳なさも感じていた。
そんな金時にアデーレは朗らかに笑う。
「貴方の後を継いで対馬でティアマトを、ブリテンでケルヌンノスを、ドイツでは世界樹と炎の巨神も越えた人だものきっと大丈夫…。」
なお雷はと言えば根拠ないけど電ならば大丈夫と侍女とラフムたち引き連れて錨片手に船内のヂラールをしばき回っている。
目覚めた彼女…藤丸立香の眼の前では見たこともない青い肌の鳥の羽根の様な髪の種族が慌ただしく行き交い、
少し離れたところにはバリケードらしきものが築かれている。
銃らしきものを持った軍人らしき人物が周囲を警戒し親が泣く我が子を抱きしめている。
そのバリケードの内のベンチに彼女は寝かされていた。
「お姉さん目が覚めたの?」
鳥の囀りの様な音に重なり日本語が聞こえ振り向くと青い肌の種族の少女がいた。
その手には表紙に黒い魔女の様な人物が描かれた本と思われる物を抱えている。
「あなたは…?それにここは…。」
「ここはシレイラ号の一番下だよ。上から人が落ちてきたからビックリしちゃった。」
そう言うと青い肌の少女は立香に近づくとその隣に座る。
「お姉さんは助けに来てくれたヤマルティア(『日本』)の人なの?」
「ヤマルティア…。」
少女の問う言葉に重なる様に故郷の名が立香の耳に届く。
いまはもう気の遠く成るほどに遥か離れ、流れ着いた世界では存在そのものが失われた名前。
「違う私は…。」
「うーん…それとも行く前にこの絵本の話してくれたヤマルティアに行ったあの人みたいな…流れ着いてた”ハルマ人(『地球』)の人”…?」
そんな人他にいたかなあと言う少女の言葉、自分以外に人類がいる。その言葉に立香は反応し少女の肩を揺する。
「その人は生身なの!?」
「う、うん。身体を機械化とかはしてないよ…でも…。」
「でも?」
「ティエルクマスカの技術じゃ直せないタマシイ?の病気患ってもう一つのヤマルティアの技術で身体の強化を受けたって聞いたよ?」
「???」
353 名前:635[sage] 投稿日:2023/06/22(木) 00:27:41 ID:119-171-248-42.rev.home.ne.jp [4/7]
立香の流れ着いた地球以外に二つの日本があるとでも言うような物言いに疑問符を浮かべる立香。
異種族の少女と話をして少し落ち着いた立香は更に情報を得るべく少女と話をする。
「そう言えばその手に持ってる本…その人が話してくれたって言ってたけど…。」
「うん!この本はねもう一つのヤマルティア(日本)のお話しなんだけどね。
そのお姉さんが話してくれたお話しでお話しに出てくる人もそのヤマルティア(日本)に居るホントのお話しだったんだよ!!」
興奮気に言う少女はお姉さんと呼んだ。その地球人類は女性であるらしい。
立香は興奮気味な少女にどんなお話しなのかと問うと嬉しそうに少女は立香に教えてあげると言う。
少女は椅子から立ち上がり立香の前で絵本を開。
立香が見たこと無い文字と少女とは違う明らかに地球人類に近い姿の人物が描かれている。
「これはこの宇宙ではない遠い遠いハルマのお話しです。そのハルマにはヤマルティアはなくブリテンという妖精という種族がくらす島だけがありました。
その島は妖精國と呼ばれモルガンという女王様が統治し「ブッ!?」…どうしたの?」
「な、なんでもないよ続けて。」
どっかで聞いたというか自分の知人の名前と知ってる地名。
よくよく見れば描かれてるの大体知ってる人だ。
あの國はもう消えた筈、もう誰も知られることもなく終わった筈の物語が異星の少女の口から紡がれることにに混乱する立香。
それは立香しか知らない筈の物語或いは立香を先輩と慕う少女のや冬の女王の…立香も知らない物語も存在する。
まるでそれをそれぞれの視点で見てきたかの様な…。
「…こうして妖精達の島のお話しは終わりを告げました。
しかしそのお話しの続きは遠い遠い別の宇宙で続いているのです…それはまた別のお話しで…。」
パタンと絵本を閉じる少女に立香はパチパチと小さく拍手を送るが、その胸にはなんとも言えない感情が去来する。
それにエヘヘと笑い少女は再び立香の隣に座る。
「それでね。このお話しの続きのお話しもあるんだ。」
「続き…。」
「うん。」
あの國の続きの物語、その言葉に漏れた立香の言葉に少女は肯定の返事をする。
「この絵本の島の幾人かが別のヤマルティアにいるんだってお姉さんが言ってた。」
「!!!そのお姉さんてッ…!?」
その名を少女に尋ねようと瞬間響く爆音続く爆風に伴う土煙。それらが少女と立香を襲う。
「ッ!…キミ!大丈夫?…大丈夫!?」
爆風が収まり立香は少女に声を何度も掛けるが返事はない。
そして暫くし土煙が晴れ少女の姿が見える。
「キミ!…あ…あ…あ…。」
少女は倒れ動かず頭からは赤いモノが流れ出している。
その光景に不明瞭な言葉しか出ない立香はふらふらと近づくと少女を抱き上げる。
「ああ…ああッ…あああああッ!?」
爆風で壁に頭を打ったのか頭から夥しい血を流し動かぬ少女を抱きしめ声ならぬ声を上げる立香。
「また…!また私は…守れないの…!?」
【G”U”A”A”A”A”A”A”A”A”A”A”A”】
その時、耳に聞こえる聞いたことのある唸り声に顔を向ける。
辛うじてヒトらしき形のある巨大な異形。
「超大型個体…!」
354 名前:635[sage] 投稿日:2023/06/22(木) 00:28:18 ID:119-171-248-42.rev.home.ne.jp [5/7]
あの日、『彼女』の命を奪った悪夢がそこに居た。
ティエルクマスカの軍人や大人達が立香達を守ろうと立ち塞がるが悲しいかな粒子ブラスターなど携行火器では太刀打ち出来ずに被害が増えるばかり。
スール化大日本帝国の兵に自動人形、自衛官、鎮守府の妖精達らもその場に駆けつけるが無反動砲や機関砲程度に意味はなく、
ゼル端子を打ち込んでも攻性防壁なのだろうか傍からヂラール超大型個体を覆うシールドに弾かれ焼き切られる。
兵士たち四肢がヂラールの腕の一振りでもがれ、自動人形の半身が潰される。
スール柏木も下半身が潰された。
立香は自分を守ろうとうする者らの凄惨な光景に高い悲鳴を上げながら英雄の影を無差別に召喚する。
しかしヂラールの地力と物量差故に徐々に追い詰められ流れって行く血だけが増えていく。
それでも血反吐吐きながら召喚を続け抵抗する立香。
その光景はネットワークを通じあらゆる場所へと送られる。
藤丸立香をヂラールに占領された地球より脱出時に回収艦に乗っていた転生者の大日本帝国の艦の艦長が悲壮に叫ぶ。
あの子に、あんな運命を背負ってきた子供にこれ以上過酷な運命を背負わせるなと。
ゲート地球でのパブリックビューイングでは凄惨な光景に吐く者も立香の奮戦にエールを送る者いるがそれ以上に誰でもいい彼女を救ってくれという声が多い。
ゼスタールの本拠地ナーシャ・エンデそこの大日本帝国の区画でもこの光景を見ているもの達もいる。
立香が血を吐く様を見て此の場で最も高位と思われる人物は声を上げる。
「誰でもいい!誰か助けに行けないのか!?」
「宮様、無茶言わんで下さい。」
軍人の一人が嗜める。
役人と思われる人物が言う。
「宮様お分かりの筈です…リリカルなアニメの言葉ではありませんが世界はこんな筈じゃ無かった…そんなことの繰り返し。
あの子は我々の地球では艦娘自動人形の電を犠牲にしなければ生き残れなかった…。
お話の中なら皆の揃って脱出出来ていたでしょうが…これは都合のいい物語ではありません。
神も仏も居てついでにあそこにはウルトラマンも仮面ライダーもいますが…全力全壊で死亡フラグもブレイカーな魔王も居ませんし…。」
「はあ…どうにもならんな…。」
「東條さん、ええその通りです。今その時のその場に我々はいない。ならば助ける云々の議論に意味はありません。」
役人の言葉に軍人の一人が溜息を漏らす。
画面の中では血を流す異星の少女を抱いた藤丸立香が追い詰められていく様が映る。
自分らがその場にいない故に望めども救えない。地球失陥時より強くなったが涙流す子供一人救えやしない。
遣る瀬無い、何度も人生を経験し、悪人相手に血も涙もないことも出来るが若者があんな目に合っているのは心にクる。
最高位の男は拳を血が出るほどの力で壁に打ち付けると無力さで項垂れる。
巨大なヂラールがその手を少女を抱えた立香めがけて振り降ろすが間一髪で躱す。
「逃げろ!!」
下半身を潰された柏木が生き延びてくれと叫ぶが人を抱えているのだ。
少女を放り出せば逃げられるかもしれない、しかし見捨てるという選択肢は無かった。
今まで失ったものが多すぎた。少女を抱きしめもう失いたくない、死なせたくないと泣き叫びその場に座り込む立香。
その少女と立香目掛け再びヂラールの腕が振り降ろされ立香は少女を抱きしめ目を強く瞑る。
355 名前:635[sage] 投稿日:2023/06/22(木) 00:28:57 ID:119-171-248-42.rev.home.ne.jp [6/7]
ガキン、文字に起こせばそんな様な音に続きズシンという何か巨大な物が倒れる音がする。
何時まで経っても立香を衝撃が襲うことは無かった。
強く瞑った目を少しずつ開くと下半身を失ったまま唖然としたスール柏木の姿が目に入る。
続きヂラールが存在するだろう方向を見て立香はその瞳を大きく開く。
倒れ伏すヂラールよりこちら側にいる誰かの背中。
見知らぬ背中は臀部より鹿毛の馬の様な尾を出し馬の耳を頭に生やす。
それも衝撃的だがそれ以上に見知った二つの背中を見つけて目尻より光るものが流れる。
見知っただが何処にも居なかった筈の撫子色の髪の背中は何か角と尾を生やしてあの時失った少女と同じ制服を着て機械を背負っている。
そしてもう一人、自分の知る背格好であの時失われた筈のあの時と同じ制服を纏い機械を背負う。
しかし決定的に違うのはその手に抱えた後輩が持っている筈の円卓。
「危機一髪、なんとか間に合いました…!」
「へへーん、二人纏めて抱えて正確にテイオーステップ(空間跳躍)したボクに感謝してよね!」
「はい!テイオーさんのテイオーステップホント凄いです!ありがとうございます!」
「いやあ素直に言われると照れるね…。」
後輩の声それと謎の蘭丸Xの声がする。
「二人共戦闘中なのです。」
それを嗜めるのは目の前で失われた筈の声、そしてその声の主はちらりと立香の方を見るとヂラールの方に目を向ける。
その視線の先ではヂラールが再び立ち上がり声を上げる。
【艦むスウウ…?艦むsuuuuuuuu!?】
「ああやはりどっかで見た腐った魂かと思ったら魔人モドキですか…。とうとう人であること辞めましたか…。」
「電、なんかアレの魂…だいぶ劣化してない?」
「多分してるのです。無理やり分割かコピーか…どちらにしても愉快なことではないのです。マシュちゃん。」
「はい、何でしょう電お姉さん?」
「不味い状態の人もいるので短期決戦なのです。皆さん喚ぶのです。」
「はい!第六駆逐隊所属駆逐艦霓頑張りマシュッ…痛い…。」
「噛んだね。」「噛んだのです。」
二人の言葉に赤面する後輩らしき人物は懐より何かを取り出す。
取り出したそれを見た瞬間、立香の涙も引っ込んだ上にスール柏木のシリアスも引っ込んで顔を引き攣らせる。
取り出したものを口に当てるとその人物はそれの音をシレイラ号中に響かせる。
「ぶおおおおおお!ぶおおおおおおお!」
「法螺…貝…?」
最終更新:2023年07月04日 23:56