56 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/10(土) 23:44:56 ID:softbank060146109143.bbtec.net [18/153]
憂鬱SRW 未来編 エグゼシナリオSS「第二回N1グランプリ第一次予選D13ブロック」
無事に選考会を通過し、予選へと駒を進めたこはくは、割り当てられた予選ブロックのほかの参加者共々電脳空間にいた。
「ここからがバトルロワイヤル……うー、楽しみだなぁ」
エグゼブレイカーという剣を片手に女子高校生がうきうきしているのはちょっと危なっかしいが、ネットの中なので誰も気にしない。
ネットナビだけでなく、アバターでの参加者もおり、誰も彼もが姿形が様々だからだ。この程度で驚く方が悪い。
それに、外見だけでは実力などは図れないものであるのだ。それを誰もが知っているから、侮るようなものはここにはいない。
予選ブロックは単なるバトルトーナメントではなく、候補者の実力を図り、より実践的な能力を見極めることに重点が置かれる。
選考会の時点であくまでもネットバトラーとしての知識などを問われ、あるいはウィルスに対抗する能力を求められたのと対照的だ。
極論だが、選考会はそれなりに力押しやごり押しでもなんとかなる可能性を残していた。
対ネットナビではなくウィルス相手が基本であるため、多少の腕とカスタマイズでごまかせるのである。
足切りは必要だが、かといって切りすぎても、という難易度調整の一環であった。
(けど、ここからは忖度抜きだからね……)
そう、ここからは対ウィルスだけではない、対ネットナビにも実力や技量が必須の予選。
加えて、割と何でもあり、と説明されているバトルロワイヤルだ。何があってもおかしくはない。
暢気に一対一をしている状況ではなく、大多数のネットナビやアバターが激突し合う大乱闘となるわけである。
敵の敵もまた敵であるし、あるいは近くの参加者と協力し合うのも、あるいは騙して裏をかくのもまたOKというもの。
乱戦という場を潜り抜ける、運と実力と判断力が求められる。普段のネットバトルではあまり磨かれない能力を査定する、ということだ。
「どうしよっかなー」
ちらりと周囲を見渡す。
周囲では協力し合うことを決めたグループがいたり、あるいは群れることなく一人のナビやアバターがいたりと、様々だ。
自分も誰かとペアやグループを作るべきか?と思うのだが、それは難しいかなと判断した。
誰かとのコミュニケーションは得意なのでいくらでも行けそうなのだが、かといって即興で他人と合わせるのもなーと判断したのである。
如何せん、こはくはネットナビアバターで基本的に一人で戦うタイプだったため、共闘経験が乏しかった。
一応コーゲン・シティでの事件の時は熱斗とロックマンと一緒に戦ったが、それは彼らの実力が高い故だった。
彼らと同じくらいを求めるのは酷な話だとも理解している。
「EB、やっぱり一人がいいかな」
『こはくがやりたいようにすればいい。
参加者同士の裏のかき合いもあるが、それはこはくにとって不向きだろうがな』
EB、エグゼブレイカーの言葉に苦笑するしかない。
やはりこの頼れる相棒である剣はそう判断するだろうと思っていたのだ。
「じゃあ、そうするしかないよねー」
結局のところそうなのだ。
ネットナビアバターとしてのこはくのスペックは、エグゼブレイカーの性質もあって個人戦向きだ。
何しろウロボロスシステムを使うとその対象は使用者であるこはくに限定されてしまい、足並みがそろわないのだ。
便利だが制約が多いシステムを生かすというのも、中々に苦労するものなのである。
57 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/10(土) 23:45:40 ID:softbank060146109143.bbtec.net [19/153]
そんなことをEBと話している間に、予選開始の時間になった。
電脳空間---コロシアムのように隔離された空間の上空にテロップが表示される。
ルール『制限時間を生き延びろ』
提供:オーメル・サイエンス・テクノロジー 大日本企業連合 インテリオル・ユニオン
「いたってシンプルだね」
『だが、生き延びるために何をしてもいいに近いと言っている。
予選突破人数を表示していないということは、例え全滅になっても構わないということだろうな』
「あ、なるほど」
確かに生き延びろ、つまりデリートされるなとは言っているが、何名まで減ったら終了などとは一言も言っていない。
協力してはいけないとも、潰し合いをしては駄目だとも全く禁じていないのも同様だ。
予め聞いていいた通りの、まさに大乱闘となることは請け合いだ。
『そして、生き延びろというからには、こちらを削ってくるエネミーが出るということだろうな』
「うわ、来た!?」
EBの言葉が終わるや否や、古風なコロシアム内部にエネミーが出現した。
観客席にあたる場所からは砲台がいくつも顔を出し、上空には明らかに物騒な装備のドローンのようなものが飛んでいる。
そして、コロシアムの地面もまた大きく変貌した。地形が複雑に割れ、隙間が生まれ、あるいは空中に足場が形成される。
ドシン!
とどめに、それが現れた。
コロシアムの両端に1体ずつ、巨大なエネミーが出現したのだ。
赤く発光する巨大な目玉を称えたボディ、そこから伸びる二本の足、ボディに据えられた巨大な砲。
「なにあの変なの……!?」
『データが開示された……旧世代の大型兵器、To-605だそうだ』
エグゼブレイカーからのポップアップを見れば、なるほど、過去に運用されていた兵器のデータをもとに構築されたモノのようだ。
『……む、これ以上の情報開示はなしか。
となれば、あとは実戦でどのように動くのかを見極めろということか』
「えーと、さあ、EB?」
『どうした、こはく?』
「砲台とか空からの攻撃を捌きながら、あのへんなのをどうにかしなきゃいけないの?」
嘆息を一つして、エグゼブレイカーは断言する。
『それ以外にどうとらえろと?』
「だよねぇ……」
すでに周囲の参加者もコロシアムの状況が変わっていることを認識し、集中を高めているのが窺える。
こはくもまた、エグゼブレイカーを握り直し、またバトルチップの呼び出しを開始している。
一部困惑している参加者がいるが、お構いなしにカウントダウンが始まった。
『無茶はしないようにな、こはく』
「大丈夫。それじゃ、いくよー!」
そして、カウント0となると同時にこはくはコロシアム内部を駆け出す。
号砲と共に、過酷な選抜が幕を開けたのだ。
58 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/10(土) 23:46:31 ID:softbank060146109143.bbtec.net [20/153]
以上、wiki転載はご自由に。
というわけで企業連から提供されたデータからできたへんなの+砲台+爆撃ドローンを凌ぎつつ、参加者同士が殴り合い、
制限時間内を生き残るというバトルロワイヤル開始でした。
次の話に続きます、お楽しみに。
最終更新:2023年07月09日 19:56