645:635:2023/04/10(月) 20:18:24 HOST:119-171-251-75.rev.home.ne.jp

史実神崎島支援ネタ  帝国気象レーダーこと始め


昭和12年某月 神崎島鎮守府神崎市・神崎中央気象台


それを彼、文部省中央気象台の若い職員が見つけたのは全くの偶然であった。
彼の知る気象台にはない見慣れぬ高い煙突の様な塔の天辺に半球状の物体が置かれている。


「すいません。あの塔のテッペンのアイスクリンの様なのなんでしょうか?」

「アイスクリン…?ああ、気象レーダーのことか。」

「きしょうれーだー…。」


聞き慣れぬ言葉を若い職員は口の中で反芻する。
彼、文部省中央気象台の若い職員が何故ここにいるかといえばまあなんてことはない軍官民問わずに現在の帝国で行われている神崎島留学である。
御維新より凡そ半世紀が経った帝国の国土から制度、教育、技術はおろか文化に至るまでの大改革、
所謂日本列島改造の為に軍はおろか民間、政府機関に到るまで多くの人々が神崎島の先進的なものを貪欲に吸収するために訪れていた。
それは気象関連とて例外ではない。

以外なことであるが帝国内で昭和12年現在、現代日本における気象庁の様な国家機関としての気象業務機関は存在しない。
文部省下の中央気象台が最大であるが国内の気象機関全て統制している訳ではなくこの時代では幾つもの気象機関が乱立していた。
内務省各地方庁下の気象機関、拓務省所管の朝鮮総督府、南洋庁、樺太庁付属の気象機関、農林省の気象機関に加え、
鉄道省や逓信省の観測所とまあ各省庁やら地方で気象機関が多数存在していたのである。
これらが統一されたのは日中戦争が開戦、戦時体制の一貫として陸海軍に提案されたからなのである。

まあこの世界でもその改革言い出したのもやはり陸海軍なのだ。
色々と突きつけられた陸と海からすればもっと早くやれ!!と言いたくもなる。気象は軍事行動にも密接に関わるし。
神崎島鎮守府の気象庁をモデルに気象庁を作ることになったのである…まあ現在どの省が所管するかで争いが発生しているが…。
そんな神崎中央気象台に派遣された彼が見つけたのが見た目アイスクリンこと気象レーダーである。


「あの中にレーダー…電探が入っててなどこで現在、雨が降ってるかとか風の流れや強さとかが分かるのさ。」

「電探…暗闇でも遠距離の航空機や艦船の存在を認知出来る装置と聞きましたが降雨や風向、風速まで測定可能とは…。」

「見てみるか?」

「いいんですか!?それ程のものだと機密情報では…?」

「いいのいいの…ボソ(どうせ三年もすればレーダー実用化されて気象に応用可能なのもバレるし)。」


彼は気象台の職員に案内されレドームの中へと入る。
中にあったのはピラミッドの頂点削った様な台に亀の甲羅の様な板が貼り付けられたなんとも形容し難い形状のモノ。


「これが…。」

「気象レーダー…それもフェイズドアレイレーダーだ。
元々は民間技術検証の一貫で多目的艦載レーダー転用の気象レーダーを多目的レーダーに再度転用、
軍艦に載せて試験してたやつをもっかい気象レーダーに転用したやつだ。」

「ふぇいずどあれい?」

「ああすまん。つまりは気象状況が詳細に分かるレーダーと思ってくれコイツ一基で大凡半径80kmをカバー出来る。」

「80km…ですか…。」

「各地の気象レーダーとコンピュータ組み合わせればこの時代では考えられない程高精度の観測と予報が可能だ。
例えばある程度先まで台風の進路予測や勢力の観測が可能だしな。」


その職員の言葉を聞いて彼の脳裏に浮かぶのは三年前の台風。
後に昭和三大台風の一つとなる大きな被害を出した台風、高知県室戸岬に上陸した所謂室戸台風である。
死者・行方不明者合わせ3000人という未曾有の被害を出した。
例えば大阪湾一帯では台風による潮位の変化による急激な浸水により2000人前後が溺死したとされる。
気象レーダーがあればこれが防げたかもしれない…気象レーダーがあればこれからありえる惨劇を防げるかもしれない。


「その気象レーダーについてもっと教えてください!!」

「お、おう…。」


彼は職員に噛みつく様に質問攻めを始めた。
これが帝国の気象レーダーの始まりであり、富士山山頂に気象レーダーが設置される切っ掛けとなった。
この数ヶ月後には帝国の新聞では気象レーダーを指し帝国の天眼との見出しが踊ることとなる。

646:635:2023/04/10(月) 20:19:16 HOST:119-171-251-75.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
久々に史実神崎島ネタを書きますた。出来れば富士山レーダーまで書きたい…。

タグ:

艦これ 神崎島
+ タグ編集
  • タグ:
  • 艦これ
  • 神崎島
最終更新:2023年11月15日 20:57