695 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:15:47
提督たちの憂鬱・帝國召喚  クロス二次創作
「憂鬱召喚」 第一話

西暦1945年(皇紀2705年、昭和20年)1月1日日本時間午前0時0分0秒、この日は日本にとって忘れられない日となった。

「あけまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」
「新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」

全国各地の神殿仏閣では二年参りの参拝客でごった返しており、国鉄も夜を徹して運行していた。

「あれ?」
「ん?どうした?」

何の前触れもなく、何の衝撃もなく、それは起こった。

「えーと…あれ?んん?」
「おい、どうしたんだ?」
「いや、北極星を探してたんだけど…見当たらなくて…目が悪くなったのかなぁ?」
「暇なやつだなぁ…北極星なら、まずは北斗七星をだな…ん?」

夜空を見上げると、記憶にある星座が一切見当たらないことに気づいた。
恐ろしいことに、北斗七星も北極星も、冬の大三角もなにもかもだ。

「確かに、無いな…妙だな…いかん、飲みすぎたか?」
「気のせいで無ければ、全く見たことが無い星空なんだけど…」

他にも空を見ていた人がいたのか立ち止まる人が増え、不安さを感じさせるざわめきは徐々に広がっていく。
言い知れない恐ろしさがそこにあった。



トラック諸島 第二艦隊 現地時間午前1時0分

第二艦隊は大混乱の中にあった。

「なんだ?この暗さは…」

カンカンと日が照り続けていた明るい海が一瞬にして、闇に包まれていたのだ。
気のせいか、潮のにおいも変わったように思われた。
甲板の人員や見張り員の混乱はすぐさまCICにもたらされた。

「見張り員から報告!急に夜になってしまったと…」
「何が起こった?」
「どこかからの攻撃か?電探はどうなっている?」
「付近に艦隊が存在…第一艦隊のようです。さらに、陸の地形が変わっています!」
「ハワイの第一艦隊が?いや、地形が変わっている?どういうことだ?」
「トラック港より入電、『貴艦隊ハ何時カラ来タリヤ説明ヲ欲ス』以上です。」
「トラック諸島!?どういうことだ?」
「何が起こっている!?」
「至急、本土に連絡!我、トラックニ出現セリ、原因ハ不明!」
「いったい何が…」
「わからん!」

このとき、日本領内に移動していたのは彼らだけではなかった。

696 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:16:45


帝都 外務省 日本時間 午前0時0分0秒

「ん?ここは…」
「よ、吉田さん?」
「ここは、本省か?」
「はい。それよりも吉田さん、何故あなたがここに?帰国はまだ先のはずでは?」
「わからん、なにが起こったんだ?」
「わからんってそんなことを言われても…」

周囲を見渡すと、イギリスに赴任していたはずの職員たちが居るのがわかった。
尋常な事態ではないのだろう、吉田はそう理解した。

「おい!海外の大使館がどうなったか電信で確認を!国内にある各国の大使館にも確認の連絡を入れろ!」
「わかりました!」

吉田たちだけではなかった。外務省に現れたのは、世界各地の大使館につめていた人間たちであったのだ。
また、海外への連絡も全て途絶していた。
国内に存在していた各国大使館への問い合わせしようにも電話がつながらず、職員が見て回ったところ全ての大使館はもぬけの殻となっていたのである。

「なにが起きているんだ…」

その疑問に答える声は無かった。



某県 三菱財閥系原料倉庫 午前0時15分

正月の深夜ということもあり、警備員しかいないひっそりと静まり返っていた倉庫にも異変が生じていた。

「大変です!」
「なんだ、新年早々騒々しい…」

詰め所に慌てて駆け込んできたのは先ほど定期巡回に出発した相方であった。

「倉庫が岩で埋まってます!」
「なにを言ってるんだお前は…夢でも見たか?」
「寝ぼけてませんよ!本当なんです。」
「よし、じゃあ見てくるからお前はここにいろ。で、埋まったというのは何番倉庫だ?」
「おそらく、全部です。」
「は?」
「ですから、おそらく全部埋まってますよあの量では!見渡す限り岩だらけになってるんですよ!!」
「ああ、わかった、わかった。巡回はやっとくから。お前は仮眠とってろ。」
「本当なんです!」
「わかってる、わかってる。だから見に行くんじゃないか…」

見廻りに出た彼が血相を変え、本社に連絡しようとするのはこの数分後である。
しかし、この時間には既に国内の電話回線はパンクしていた。
同様の事態が日本中で起きていたのである。

697 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:17:31
帝都 総理官邸 午前6時00分

正月早々、たたき起こされた嶋田首相は現在日本で起きている大混乱についての報告を受けていた。

「地震の後始末に目処がたったと思ったらこれか…いい加減休ませてくれ、というか引退させてくれ…」
「諦めてください。現在確認された情報では、異世界転移したと考えられるそうです。」
「星の位置と大陸の消失、地表の曲率の変化に海外との連絡の途絶…か。まあ、間違いないだろうな。」
「はい、国立天文台でも確認されています。また、周辺の状況ですが…ユーラシア大陸が消失しています。そのため、カムチャッカや中国沿岸部の租借地と満州を失いました。ハワイ・ミッドウェー・グアム・アラスカなど旧アメリカ領であった島々も連絡が付きません。更に外国とも連絡が取れません。」

確認できた島々に印がついた地図を見ていた嶋田は、顔を上げて厳しい顔つきでたずねた。

「海外に駐留していた邦人とも連絡が付かないのか?」
「いえ、外務省では在外職員が出現していたそうです。そのかわり、国内の各国大使館は全てもぬけの殻になっていたと。更に、陸海軍からの報告では海外展開していた部隊は全て出現しているとのこと。これらの事から、海外に駐留していた邦人は国内に出現している可能性が高いため、全国の警察によって捜索と確認が行われている最中です。」
「全員が無事ならば喜ばしいことだが…海外から転移したのは人だけか?」
「いいえ、基地や建物のように移動できないものを除いて恐らくは全て出現しています。船舶、戦車、弾薬など、把握している限りは全て出現しているようです。また、国内でいくつかの倉庫が原料で埋もれてしまっているという報告が。おそらくは海外で購入した物が転移と共に出現したと思われます。」
「どの程度が来ているのか確認が必要か…またしばらく食料以外にも統制をとるしかないな。それで、周辺状況の確認はどうなっている?トラックあたりなら夜も明けていると思うが。」
「トラックでは夜が明けたために航空偵察を行っております。東方100kmの地点で小型の木造帆船を、東方700kmにて大陸を発見したそうです。」
「木造船に大陸か。」
「はい。帆船のほうはかなり旧いタイプのようで、帆走を除いた動力らしきものは何もないと。」
「わざわざ報告したという事は地元で使われていないタイプの船か。」
「はい。現在海保の海防艦が向かっているそうです。」


「正月早々難問が山積み…どうしてこうなった。」

秘書が退出し、独りきりになった執務室でこれから起きる混乱や問題を考えた嶋田は憂鬱そうなため息を吐いた。

698 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:18:17
トラック諸島近海 ダークエルフ族保有小型船「ベンネビス号」 現地時間午後7時22分

「前方に島影を発見!」
「ふむ…このあたりに島は無かったはずだが…」
「はい、この付近には無人島はおろか岩礁すら存在しないはずです。」
「地形が変わっているという事か…例の反応はこれか?」
「中心点と思われる地点はまだ先です。それにしても…大規模な造成魔法でしょうか?」
「昨夜から反応が急激に大きくなっていたからな。何かが起きているのは確かなはずだが…」

己の持つ海図と現在位置を比較するものの、付近に島といえる場所は何も無かった。
航法を誤っている可能性もあるにはあったが…ダークエルフ族の中でも選りすぐりのベテラン船乗り達だ。
そんなことはまずありえなかった。

「奇妙な船が急速接近中!」
「こんなところで海賊か?」
「わかりません。見たことの無い船です。オールや帆が無いにもかかわらず、恐ろしいほど速い。」
「生探には反応がありましたが、魔探には反応がありません。探知装置の故障ではないようです。」
「先ほどの飛竜とは思えない飛行機械と同じか。」
「恐らく。」
「ステルス魔法を完成させたか…あるいは魔法をまったく用いていない飛行機械に高速船…か。よほどの魔術師か、機械技師がからんでいるのか?」
「まさか、太古の伝説にあったあの島でしょうか?」
「可能性としてはありうる…が。夢物語だな。」
「どうなさいます?」
「あんな速度で動く巨船だ。武装も強力だろう。堂々と旗を掲げているところからして、海軍かなにかだろう。とりあえず、敵対行動は厳禁だ。」
「海賊かなにかであれば?」
「そのときには反撃してもかまわん。」
「了解。」
「海軍であれば…売込みをかけるか。何者かは知らんが彼らにも大陸の情報は必要だろう。万が一、伝説の島であれば我々を忌避することもないだろうしな。」


「前方の所属不明船に告ぐ、こちらは大日本帝国海上保安庁所属海防艦「夏」。貴船を臨検する。直ちに帆を畳み、停船しなさい。」


「臨検を受け入れる。それから族長に魔報を、『例ノ地点ニテ新タナル顧客候補ヲ発見。ソノ名ハ大日本帝国海上保安庁ナリ』以上だ。」
「了解!」

699 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:19:49
帝都 大蔵省 日本時間午後9時45分

「お久しぶりなの。」

辻の執務室のドアを開け、テコテコと入ってきたのは幼い少女であった。
それを見た辻は、恭しい態度で少女を迎え入れた。

「おや、これはこれは…天之狭霧神紗蒙様。ようこそ。少々散らかっておりますが、ごゆっくりおくつろぎください……(私だ、例のお社をもってこい、大至急!)」
「今日はコントにのっている暇は無いの。重要な話があったから来たの。」
「おやおや…経済的混乱が確実なときにあなたに動かれますと、本気で洒落になりませんので。ここは大人しく、属性反転を受け入れていただきたいのですが…」

天之狭霧神紗蒙、財物部一級査察官…つまるところ貧乏神である彼女は、辻の言葉を無視し、普段ののほほんとした顔つきからは想像もつかないほどに厳しい顔つきで言った。

「今回の異変、その原因が大体わかったのよ。」

1945年1月1日、帝国は混乱の中にいた。


続く…可能性は無きにしも非ず。


700 :>>5の人:2012/03/06(火) 07:20:40
あとがき
お待ちした方がいらっしゃるかわかりませんが、お待たせしました。
調子に乗って書き上げました。>>5で試作品を投下したものです。
生憎、試作品の場面まではたどり着けませんでした。
続きを書くつもりはありますが、なにぶん遅筆なのでご勘弁の程を。
ネタSSスレ4、175-176
にてearth様が書かれたSSの事件が実際にあった時間軸のお話としております。
神様が出てきましたが、帝国側の魔力設定などは帝國召喚基準ですのでご安心ください。
おそらく次回で説明が入ります。
次回は会議回の予定です。

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最終更新:2012年03月07日 00:15