862:陣龍:2023/04/29(土) 19:02:44 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『欠落者』
「二人共有難うね。凱旋門賞とキングジョージの優勝物品持って来るだけなのに、付き添いして貰って」
「昨日の今日のと、襲撃事件が有りましたから…スぺは、欲しいモノ見つかった?」
「はい!ポテト&キャロットチップスのBIGバックグレートソルト味!最後の一つでしたが買えました!」
「走ったり格闘技したりするウマ娘に人気のチップスって聞いて居たけど、
一袋1500円って学生には手を出しづらい価格だよね」
「あはは……お陰で、お小遣いが空っぽで……」
とあるスーパーマーケットから出て来たは、投資家兼配信者をしているうら若き『飯崎鈴夏』、
名馬スペシャルウィーク号を排出したキャンペーンガール号。そして『日本総大将』ウマ娘スペシャルウィーク。
「それじゃ、後は飯崎さんの家に行ってパパっと回収するだけですね」
「ゴースト号で既に経験してるけど、本当に便利だよね。便利使いし過ぎると太りそう」
「でもこうしないと、また変な人達が押し寄せて来ちゃいますしね……」
スピカメンバーへの買い出し序でに同級生の黄金世代用に買った菓子類の入った袋を持つスペシャルウィークの苦笑に、
同じく苦笑で返すしかないキャンペンガール号と『飯崎鈴夏』。この三名は、先日更に追加で来訪したおウマさん勢が
『実物の凱旋門賞と英国の栄光のレースの賞品を見たい(直喩)』との事で、『飯崎鈴夏』の自宅に保管されている物品を
取りに来たのだった。普通に車などで取りに行くと報道陣による人垣包囲網が邪魔過ぎるので、
護衛も兼ねたキャンペンガール号によって、おウマさん勢が使える転移能力で色々とショートカットしたのだ。
「……因みに、『飯崎』さんのお家って大丈夫なんです?」
「警邏してくれている地元警察さんが言うには誰も取り付いていない見たい」
「学園に集中しているから手勢が足りないんでしょうか?」
「私の家の事は勝手に調べ立てて事実上の住所をばら撒いたりしつこく包囲していたから場所を知らないとは
口が裂けても言えないだろうし、人手不足じゃないかしら」
「「えぇ……」」
事も無げに暴露されたメディアの実質的犯罪行為に、ゴースト号の一件以後何度目か分からない
青ざめた顔でドン引きするウマ娘スペシャルウィークに、別世界のムッスコもとい娘と同じセリフで
引き攣った顔をするキャンペンガール号。憤りも諦観も見せず『全く平静普段通り』なままの『飯崎鈴夏』の態度や反応が、
各種情報災害的被害を一身に被った彼女の過去を表している。
863:陣龍:2023/04/29(土) 19:04:23 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「っと……到着、した、けど……?」
「……警護で居る筈の警察官が見当たらない?」
「お昼休憩でしょうか?」
「スぺ……それは無いわ」
真面目な反応でボケるスペシャルウィークは兎も角、本来数名は警戒の為に待機している筈の警官やパトカーも無く、
それどころか『生物の気配』も存在していない『空白の住宅街』に警戒するキャンペンガール号と『飯崎鈴夏』。
先日トレセン学園で異界化と多発した怪物化と言う超常現象が勃発したのだから、警戒するのも当然であった。
「……スぺ、『飯崎』さん。私から離れない……えっ!?」
そして、異常事態と把握し警告を発したキャンペンガール号の一言は、一手遅く。
「嘘、こんな短時間で二人も【憑りこんだ】って言うの!?」
周囲に二人が確認できないと見るや否や、流れる様に自ら緊急事態を知らせる発信を行おうとした直後。
「私のポキチーーーー!?」
「……スぺ???」
……なんか、スッゴイ元気な大声が聞こえた。
「あ、あれ……?」
「スぺちゃん、大丈夫?」
「え、あ、はい……え、えぇぇ!?ここ何処ですか!?」
「私の家の玄関」
「あ、じゃあ大丈夫なんですね!?」
「でも多分、ここは【普通の世界】じゃ無い」
「……えぇぇぇぇーーー!?」
一瞬の唐突な【暗闇】の後、何故か先程とは全くの別の場所に居る事に驚き、そして行き成りの通告に
何処かの故障を告げられた帝王の如き顔芸を見せるスペシャルウィークを他所に、注意深く周囲を注視する『飯崎鈴夏』。
一見すると普通の一戸建て一般住宅の玄関なのだが、鋭敏に『違和感』を感じ取った『飯崎鈴夏』は油断無く警戒していた。
「え、じゃ、じゃあ、お母ちゃん……居ない、外かな……?」
「触っちゃダメ」
「え?」
異変に動揺し、取り合えず玄関の扉を開けて外に出ようとしたスペシャルウィークを抑止するなり、
手に持って居たスポーツドリンクを投げ付ける『飯崎』。
「……え……え、えぇぇぇぇーーー!?な、なななななんだべこれーー!?」
「全く以てさっぱりわからないわね。異界化って此処まで何でもありの無法地帯なのかしら」
投げ付けられたスポーツドリンクは、扉にぶつかり地面に落ちる……と言う事は無く、
『扉を貫通して名状し難い混ざり捻じれた空間に引き裂かれ呑み込まれ』て行った。兎も角、
強引に出て行こうとしたら明らかに不愉快な事になる事は理解出来た。
864:陣龍:2023/04/29(土) 19:05:49 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「ひぅえ!?ひ、火!?炎!?火事?火事ですか!?」
「その割には全然熱くないからね。視界だけのコケ脅しな幻影のようね」
「冷静過ぎませんか!?」
「【火事の熱さ】はこんなもんじゃ無いからね」
そして続くは周囲に走る無数の炎の線、そして一気に燃え広がる火災の【映像】。
慌てに慌てるスペシャルウィークに対して、呆れ顔すら見せている『飯崎鈴夏』の冷静さは異様だった。
「……それで、これだけで【手札切れ】のようね。よっぽど余裕が無い様子で」
「ばっ、化け物ですか?!化け物ですね!?そうですよね!?」
「多分だけど、ちょっと前にトレセン学園に不法侵入して馬運車の怪物に成ってゴーストとフラワーちゃんを
襲った輩の遺物ね。生霊の分霊と残留思念を核にそこらの雑霊で補強したって所かな」
「お詳しいんですね!?」
「いや、これ全部素人の考えた思い付きの当てずっぽうだからね?」
「スペェェェェ!?」
【複数の骸骨の頭を身体に生やして多数の人魂を燃やす骸骨亡霊】を前にして、自身の処理能力を超過した事態に
言語能力がぶっ壊れたスペシャルウィーク。一方【化け物】を向き合ってスペシャルウィークの前に出ている『飯崎鈴夏』は、
目敏く【身体の各所がボロボロに崩壊を続けて粉と化している姿】を確認していた。
某神話系TRPG風に言えば『目星・オカルト知識の連続クリティカル』だろうか。
「スぺちゃん、スぺちゃん」
「スペ……スペェ?」
「ごめんね、その大きなチップス、貰うね?」
「スぺ???スペッ!?」
言葉は兎も角口調と身振りで迫って来る【化け物】を恐れるスペシャルウィークを他所に、
スペシャルウィークが持って居た袋から定価1500円の大容量ポテト&キャロットチップス(グレートソルト味)を取る『飯崎鈴夏』。
『――――!?』
「……とっとと!」
「スペェェェェ!?(殴ったぁぁぁぁ!?)」
そして、発声能力も無くなっている様子の【化け物】に対して、ノールックでチップスの袋で殴り倒す『飯崎』に驚愕するスペシャルウィーク。
『――――?!?!』
「……地獄に!!」
「スペェェェ!?(破って叩き付けたぁぁぁ!?)」
間髪入れず、袋を破って地面に倒れた【化け物】の顔面へ垂直に叩き付ける『飯崎』にまた驚愕するスペシャルウィーク。
『――――ヤ、ヤメ…!?』
「……戻りやぁぁぁ!!」
「私のポキチーーーー!?」
全身全霊の全力と全体重にて、【化け物】の頭部もろとも定価1500円の貴重なチップスが踏み砕かれ、
衝撃の連続で【戻って来た】スペシャルウィークの絶叫が、この騒動が終息した号砲となった。
865:陣龍:2023/04/29(土) 19:08:14 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「この世界ちょっと意味不明な事が起き過ぎてるのです……」
「同感です……」
【学園襲撃残存悪霊襲撃事件】が発生して一時間後。報告を受けた別世界の電は
マリアナ海溝より深いため息を吐いていた。一体誰が、残霊と言えるだろう残留思念や
【生前の生霊の分霊】と言う意味不明なシロモノを残して襲撃を引き起こすと想像できるだろうか。
そしてそんな執念と怨念の塊とも言う存在が、除霊師でも何でもない一般女性の叩き付けた
チップスの袋に殴り倒され、踏み砕かれたチップスの塩に完敗して除霊と言うオチになると想像出来るだろうか。
「それで、スペシャルウィークさんは大丈夫なのです?」
「はい。件の【悪霊】は色々と限度一杯だったようで、恰好に関しては正直そこら辺のホラーゲーム等に負ける程度の
脅迫性でしたし……それに、ポキチを粉砕された時に余計な事はスッポリ忘れたとか」
「意外と根性座っているのです……」
「私の子供ですから」
フンスと胸を張るキャンペンガール号、それに苦笑いで答える駆逐艦娘の電。
因みにこういう時にフル活用される二つの世界のゴルシコンビは、後処理もとい同種の事例が起きない様に
様々な『交渉(霊魂)』と『交渉(除霊)』と『交渉(ゴルシ)』を行っている。
「でも……」
「……『飯崎』さんの事です?」
「はい……。彼女は紛れも無く『素人』です。でも、そうだとするとあの状況でも【冷静過ぎます】」
スペシャルウィーク曰く『外が変な世界になっているのに直ぐ気付いたし、
周囲が炎一色に染まっても全く動揺する素振りも無く何時も通りだった』……有り得ない話である。
トレセン学園の一件で異界に関して多少知識が有ったとしても、そもそも戦いに慣れ切った戦士でも何でもない
一般人でありながら、炎の景色に巻かれて全く動揺しない事は普通では無かった。
「……どうして電、異世界まで来てこんな胃痛モノの案件を抱える事になっているのです……ハァー」
「あ、これ『飯崎』さんから頂いた湯煎するタイプのカニ雑炊です。お腹に優しくて美味しいと」
「ありがたいのです……」
後に、面倒ごとのストレスが起因となったのか、湯煎モノでありながらこのカニ雑炊を食べて味王の如く
『旨いぞ』咆哮する電の未来は兎も角、取り合えず粉砕された悪霊関係の一件は殆ど『外』にも『内』にも
影響や伝播する事も無く、何事も無い日々が再開する事に安堵している一同であった。
「ヤベーぞやべーぞ……ゴルシちゃん、若しかしてとんでもねぇ厄ネタ引っこ抜いてしまったかも知れねーぞ……」
「先祖返り……隔世遺伝……時渡り……どーすんだよコレ?ゴルシちゃん、正直破裂しそうな位に腹一杯なんだけど」
「……分からん事は全部丸投げスッゾ!最終確認ヨシ!(現場猫)」
「OK把握!何だか分からんが兎に角ヨシ!(現場猫)」
電の指示で派遣された葦毛のおウマさんとウマ娘コンビ。面倒ごとを引き起こした悪霊だの人外者を除霊したり
逮捕()したりしていた最終盤、何の気も無しに先程ブチのめした邪霊が詰め込んでいた書物を見た所、
『本来交わっている筈が無い』超大陸日本の歴史と、ウマ娘世界の歴史が織り交ざり、
一時とは言え繋がっていたと言う爆弾級の情報が確認されていた。
それだけならば『神隠しが有っただけ』と片付ける事も出来ただろう。だがこの書物を見るからに、
描かれた絵図や書かれている内容的に『ゲート』と分類されるような存在が確認され、
また本来【この世界の神が唐突に行った行為で連続性無く現れた】代物のはずが、
まるで昔から当たり前の【
日本大陸世界の歴史】が紡がれて来たように書かれていた。
自らが知っている、そしてこの世界の常識である【日本列島が明くる日唐突に大陸化した】と言う事実からかけ離れている明らかな【矛盾】、
不可解で理解し難い【辻褄合わせ】。その内容と比べれば、『イイザキ』『タケウチ』と言う家系がその昔、
ウマ娘と交わった事が有ると言う内容は、何とも軽いものである。多分。
866:陣龍:2023/04/29(土) 19:13:30 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 如何に神と言えども『アニメで描かれただけのガチ無関係異世界』を引き摺り込めるわけ無いだろタワケ()と言う結論より逆算され、
大陸化による各種関係と言う『縁』が存在したと言う謎暴論の仮説が提唱されました。多分学界ではムーネタ扱いでFAであります
|д゚) まぁそれはどうでも良いとして、学園に突っ込んで馬運車の怪物になって対馬姫に捩じ切り潰された例のアレですが、
無駄に才能有ったのか執着が齎した奇跡か、生霊の分霊と残留思念の塊から更に怪異を作り出すと言うミラクルを引き起こしました
|д゚) 尚攻撃全振りマイナス装甲だったので、ポテチの塩に破れると言うクッソ馬鹿なオチに。うまゆるのホラー回にも劣る怪異である
最終更新:2023年07月16日 20:31