343 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/18(日) 21:24:13 ID:softbank060146109143.bbtec.net [13/51]

日本大陸SS 漆黒世界アメリカルート(Re) 「信長の異常な愛情 -または如何にして(ry-」



 日本大陸という巨大な大陸に統一政権を打ち立ててた織田家が、それでもなお国外への進出を進めた理由はいくつかある。
幾多の分野や学問から考えられるそれは、どの説にも共通した特徴を持ち合わせていることが現代では見受けられる。
 端的に言えば、「戦国」という時代を構築していたエネルギーの放出先を求めたことである。

 群雄割拠鵜の時代が終わり、統一政権化による統治が実施されたことはまさしく僥倖であり、偉業であった。
数多の戦国大名を武力・政治力・経済力などで屈服させ、臣従させ、相争う時代を終わらせた。
北条早雲以来となる戦国時代に終止符を打ち、日本大陸という大陸の歴史におけるターニングポイントとなったのである。

 しかし、それで終わりとはいかないのが現実だ。
 現実というのは、むしろここからが始まりであり、終わりようのない戦いの始まりなのである。
 織田家による統治が始まったのは良い。けれど、その統治にそぐわない人々もまた多くいたのが事実であった。
戦国の習いは過去となりつつあり、槍働きよりも政治や文官という統治能力の追求される時代において、武断的なそれはその役割を終えつつあったのだ。
 だが、それを素直に受け入れられるほど人間というのは諦めがいいわけがない。
 臣従させた大名たちにしても、いつ何時叛逆を起こすかはわかったものではない。
 やっとこさ大人しくさせた寺社勢力なども、虎視眈々と行動を開始しているのもまた事実である。

 そして、その解決策として織田家が示したのが、海外への展開であった。
 信長の目は、地球儀を通して、日ノ本を、そしてそれ以上に広い世界を見据えていたのである。
 いずれ、南蛮の国々も外の世界を目指すことは明白であり、場合によっては日ノ本に牙をむくかもしれない。
なればこそ、外への進出という大事業にその力を使わせることで、大名を適度に弱らせ、同時に実利を得るという飴と鞭を選んだのである。

 進出先は多岐にわたった。
 南は台湾、フィリピン、インドネシア、オーストラリア。
 北は蝦夷(東北、北海道、さらに以北地域)。

 そして、海洋資源を求め、東の海へと日本人は船をこぎ出したのである。
 ここについての詳細は他者の筆を借りることとなるが、太平洋横断を成し遂げ、その版図を北米へと推し進めたのである。
この大規模な海洋進出は、偏に海洋資源の獲得という面が非常に大きかった。
 戦乱の時代が終焉を迎えたのは言うまでもないことである。
 では、何が起こるだろうか?端的に言えば人口の飽和が発生する。
 戦乱の発生は同時に死者を生むことにつながり、人口の自然増と合わせて丁度良いバランスを保っていたのである。
ここで戦死者を生み出す戦争がほとんど終わってしまえば、人口は止まることなく増え続けてしまうのだ。その果てには飢餓などが待ち受ける。
勿論のこと、日本大陸の肥沃な大地を開墾し、食料を得ることにより賄うことも不可能ではないだろう。
ここで食料を賄うために海へと漕ぎ出し、漁貝類を得るというのは即効性のある食料獲得手段としての強みを持っていた。
季節や天候と折り合いをつける必要があり、初期投資もかなり必要であるが、それでも農業と並んで人の腹を満たせるのである。

 さらに、特にクジラなどの大型の魚類や哺乳類というのは、資源の宝庫であった。
欧米などと違い、日本はクジラなどを徹底的に使い倒し、墓まで作る程度には入れ込んでいた。
肉・油・骨・皮・内蔵などなど、あらゆる部分がそれぞれの用途で珍重され、生活を支えていたのである。
夢幻衆が広めた便利で文化的な生活にはその手の資源が必須であったのだ、それもかなりの量が。

 こういう都合もあり、太平洋上を回遊するクジラやサメといったものは、胃袋的な意味でも日本人に必須の標的となった。
織田家のお墨付きもあり、また長距離航海に適した海洋船舶の普及も相まって、海洋資源獲得事業は拡大。
食文化に大きく花を咲かせ、また、油を灯りとして用いるなどの多目的な用途で発展することになる。

345 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/18(日) 21:28:01 ID:softbank060146109143.bbtec.net [15/51]

 これに気をよくしたのが大殿である信長である。
 国外への開拓事業は非常に順調。丁度良く人を消費しつつ、物資を消費しつつ、実利が織田家に入る仕組みを確立したからである。
特に戦国時代の終焉と共に浮いた「厄介モノの浪人」が消えたのは非常に大きい。
忠誠心や技能など取り立てて能力がなく未だに戦国に戻りたがっている野心のある人間は、控えめに言って傍迷惑である。
ともすれば、武力で治安を悪化させかねないわけで、それらを大義名分を得て使い倒せる開拓は非常に有用だったのだ。
 これらの実際に指示を出したのは信長であったが、実務面で働いたのは夢幻衆やら各大名から供出された文官たちであったのだがそれはさておき。

 勿論のこと、これらの富はただ蓄えられるだけではない。
 タンス預金で喜ぶのは経済に詳しいと自称する連中だけである。富は回して、時にばらまいて、時に蓄えてを繰り返し、世の中を回るものである。
ともあれ、着々と積み上げた富を、同時に積極的に将来への投資に回すことで「南蛮から学ぶ国」から「南蛮と対等以上の国」にするという彼の野望は進んでいたのだ。
10年20年、いや、彼が愛好したとされる「敦盛」の一節にある50年さえも飛び越え、彼は未来を見ていたのである。

 さて、これらの富がどう活用されたかといえば、南蛮つまり欧州の国々との交易などであった。
 金銀の流出に歯止めをかけ、交易で吹っかけられることが無いように制度を整え、その上で南蛮から多くを得る。
最新の技術や技能、学問、あるいは物資やら物品。それらを得るには彼らが入手したいものを出してやれば手っ取り早いのである。
時に飴を与え、時に悪辣に、望みの物を得て吸収していくその姿は、当時の欧州の国を軽く戦慄させる程度にはやばかったとだけ言っておこう。
その端的な例が、スペインから銀とその他資源を対価に買いたたいたフィリピンだろうか。
借金で首が回らないどころではなかったスペインからすれば、天の恵みであり、しかしそれは泥沼に引き込む悪魔の手。
当時の交易路を維持するために必須だった艦艇や航海技術などまでもむしり取られ、挙句中継点であるフィリピンをとられたのだからむべなるかな。
 ともあれ、これでえられたフィリピンその他は、国外進出の大きな原動力となった。
 それこそ、フロンティアとなる北米大陸---その西海岸にあたる史実ではカリフォルニアと呼ばれた地域への道を拓くほどに。

346 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/18(日) 21:29:05 ID:softbank060146109143.bbtec.net [16/51]


 さて、この時に加州(カリフォルニア)に開拓団を指揮して進んだのは羽柴秀吉であったというのは有名な話だ。
 彼の帯びていた使命はいくつもあるが、太平洋を囲う海域での捕鯨のための拠点の確保というものがあった。
まるで史実の逆展開であるが、実際、効率的且つ日本大陸で消費されるだけの油などを得るにはこれが必須であったのだ。

 しかし、その使命は当初は無事に果たされたのであるが、それ以上のモノに上書きされた。
 それまでは現地の民に、ネイティブアメリカンに土地を借りる形であったものが、領有という形にまで発展するほどに。
 即ち、加州において大量の金が発見されたのである。
 これは、とんでもないことになってしまったのである。
 金の価値は言うまでもない。これの発見で、カリフォルニア開拓は海洋資源獲得の飛び地開拓以上のモノになってしまったのだ。

 この金の発見を以て、海外進出という国家事業は大きく方針転換を起こすこととなった。
 即ち、加州の領有および開拓・本土化による安定化と、そこから得られる金の確保であった。
 加えて、単なる遠隔地で留まる予定であった加州は直轄領となり、直接統治を受けることとなった。
ここで得られる金というのは得難い資源であると同時に、とんでもない劇物であることは言うまでもない。
ともすればここを拠点に反抗勢力が生まれるかもしれず、あるいは南蛮諸国が食指を動かして介入してくるかもしれない、と危惧した。

 この対応は、常識的に考えて間違いではなかった。
 懸念されたことは概ね正しく、国内外への影響力を考えて厳しく対処したのは冷静だと言えるだろう。
 しかし、この加州が日本という国家にとって重要な土地となったことは、のちの暗黒史の始まりともなったのである。

 けれども、この時にいた人間を責めることはできない。
 所詮は後知恵論であり、未来を見通すことができる能力があったわけでもないのだ。
 彼らは常識的に考え、彼らなりに備え、彼らなりに行動した。
 のちの時代---明白なる天命のもとに突き進んでくるアメリカという国家の行動が埒外のものとなるなど誰が予想できようか。

 ともあれ、こうして種は蒔かれ、土壌は整えられた。
 そして、のちに3世紀にも及ぶ人類という種の生存競争の前章は、ここに始まったのである。

347 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/06/18(日) 21:30:28 ID:softbank060146109143.bbtec.net [17/51]
以上、wiki転載はご自由に。

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最終更新:2023年08月28日 20:42