737 :YVH:2012/02/25(土) 22:10:08
 帝国政府が内外で活発に動き出した頃、新無憂宮の一角では日本に行く事を表明した皇帝フリードリヒ四世の
今後の処遇に付いての話し合いが持たれた。

参加者は当の本人、フリードリヒ四世、譲位宣言後に摂政皇太子となったルードヴィッヒ大公
四公爵たち、国務尚書リヒテンラーデ侯、財務尚書代理ゲルラッハ子爵、宮内尚書ノイケルン伯爵
典礼尚書アイゼンフート伯爵(と補佐役の次官スピエルドルフ男爵)。

すでに皇帝からは、退位後にジッキンゲン=ゴールデンバウム大公を名乗る事が内示されてはいるが
この称号を一時的なものにするか、世襲の大公家として遇するかが問題となった。

過去の歴史において、今回の事例に一番近いのはグスタフ帝から異母弟マクシミリアン=ヨーゼフへの譲位ではあったが
こちらは、譲位後間もなくグスタフ帝が崩御した為、後の処遇は考慮される事は無かった。
だが、今回は健常な状態での譲位であり且つ、相手国との折衝、および駐在大使にまで役目が波及する事も考えられ
一時的な地位とすると、任免問題が度々発生すると考えられる等、問題(主に格式上の)もある為に、この話し合いは持たれた。

議論は色々と出たが、リヒテンラーデ侯がフェザーンに居るレムシャイド伯爵経由で手に入れた日本に関する資料の中から
参考になりそうな事例を紹介した。
それは地球時代、日本がエドジダイと言われていた時期に、ある特定に寺院に時のミカドの近親者をお迎えしていたという物であった。
僧侶という概念は帝国では絶えて久しかった為、問題にはされなかったが、形態的にまるで人質みたいではないかという意見が
一部から出たが、万が一の時の血統保持には有用ではないかという四公爵からの意見で存続させる方向で話は進められた。

相続に付いては、帝位継承権は一応は保持するが、基本的には世襲の駐在大使として遇し、フリードリヒ四世に子が生まれれば
基本的にはその系統をもって代々受け継がせる。もし、系統が絶えた場合は時の皇帝の皇子の一人を養子として送り込む。
帝国内の地位的には大公家は四公爵家の上座とされた。
領地に付いては、旧ジッキンゲン男爵領を大公領として宛がう事とした。
これは四公爵家との兼ね合いで、地位的には上だが経済的には四公爵家の下位とすることで、バランスをとったとも言える。

738 :YVH:2012/02/25(土) 22:10:44
皇帝フリードリヒ四世の処遇が決まった後、政府要人は日本に追い着くには、如何すれば良いかが話し合われた。

いくつか意見が挙がったが、どれも言葉は違えど、言っている事は現状の改革しかないと言う意見が大半を占めた。
ここでルードヴィッヒ大公から、リヒテンラーデ侯に対し、こんな発言があった。

「爺。日本の故事の中に、何かよい物は無いのか?」

その言葉に国務尚書は手元の資料を覗こうとした。そんな時、秘書官のワイツが硬い表情で入室してきて
侯になにやら耳打ちした後、退室して行った。

「如何したのですかな閣下?お顔の色が優れませぬが・・・」

秘書官の報告を聞いてから顔色の悪くなった侯を心配して、ゲルラッハ子爵が声をかけた。
そんな腹心の言葉に侯は‘安ずるな‘と手で示し、列席者に向かって硬い声で秘書官からの
報告内容を話し始めた。

「・・・軍務省からの緊急報告ですじゃ。正面のスクリーンを」

そう言って侯は手元の端末を操作し、軍務省からの報告をスクリーンに映し出した。

軍務省からの報告は、大日本帝国の新規建艦計画に関するもので、その凡その概要とそれに付いての
四元帥の見解で構成されていた。
そこに記されていた各艦の大きさたるや、悉くがイゼルローン級かそれ以上、
クラーゼン元帥から報告のあった「長門級」「伊勢級」は戦艦ですらなく、種別的には「戦闘艦」。
正式には長門級戦艦改め「坂東級戦闘艦」、伊勢級戦艦改め「星風級戦闘艦」・・・

大日本帝国との接触後、関係各所との連絡を取り易くする為と称して、政治区画の南苑は軍事施設を参考に
通信設備等が改修されており、上記の報告が軍務省からダイレクトに伝えられるようになった。

『・・・以上の事と先の「サジタリアス回廊会戦」の件を鑑みまして、真に遺憾ではありますが
 我が軍の対処能力を超えているという結論に達しざろうえませぬ』

概要の説明が終わった後、四人を代表して軍務尚書が見解を述べて報告は終わった。

「・・・やれやれ・・・なんと言う常識外れの国か・・
 あの阿呆め、危うく帝国を・・・」

報告を聞き終わって、ブラウンシュヴァイク公が呟いた。もっとも、最後までは外聞があるので言わなかったが・・・


その後も会議は続き、一応、以下の事が決まった。

一:政治機構を、大日本帝国を参考にして改編する。

二:諸侯のうち、財政的に行き詰まっている者を中心に領地を買い上げて、年金貴族化する。

三:妻子は帝都住まいとし、無役諸侯は隔年で帝都と領地を往復させる。

最終的に一を取りあえずの完成形とし、当面は二と三の完遂を目指す。

「・・・前途は遠いな・・・反対も多かろうて・・・」

条項を見ながら、リッテンハイム侯が呟いた。

「なに、そ奴らには贄になって貰うまでよ」

侯の呟きが聞こえたのか、ルドルフィン公が嘯いた。

「帝国の養分になるのじゃ。貴族として誉れであろうよ・・・
 ・・差し詰め反対しそうな大物は、カストロプ公、ドリンゲン侯、ミッターハウス伯
 辺りかのう・・・くっくっく・・」

数人の諸侯の名を上げ、暗く哂うルドルフィン公。

「しかし、叔父上。それらを一々潰していては面倒では?」

ノイエ=ザーリアー公が疑問を叔父に呈する。

「ヨーゼフの疑問は尤もじゃ。じゃが、先の改革案が実行されれば、
 勝手に徒党を組んで騒ぎ出すわ。そこを討てば良い」

叔父の返答に首肯するノイエ=ザーリアー公。

こうして、会議は続いていった。

【あとがき】

難産でした・・・orz

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最終更新:2012年03月07日 21:54