950 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/08(火) 23:17:20 ID:softbank126036058190.bbtec.net [39/48]
憂鬱SRW 融合惑星編「The Hound Dog in Megapolis」SS「前日譚 ゴドーの葬送」3
- 惑星2113 現地時間西暦2113年 日本 出島 地球連合外交使節艦隊 十和田級外交使節艦 第4会談室
十和田級外交使節艦というのは、動く外交スポットである。
外交というのは多くの要求がある。
それについて長々と語るのを避けるべく端的に言えば、密を守れる場所だ。
秘密、機密、密室。隠し事ができ、情報が外に漏れず、安全であること。
それをどんな場所であろうとも提供し、快適な外交を行うために建造されたのが外交使節艦というシステムであった。
さて、そんな場に招待されたPP日本の外交使節は、これまでは機密などの観点から持ち出しが難しい情報を開示されることとなった。
これまでは直近の問題---宇宙怪獣とそれに対する対抗策---がメインであったのだが、より地球連合を知ってもらう方向へと動いたのだ。
それは、地球連合の成り立ちに始まり、これまでに地球連合が経験してきた未知の事象であったり、戦いの記録であった。
違う世界との出会いがあった。内側の裏切り者がいた。内側に沸いた頭のおかしい集団がいた。テロリストがいた。
現代国家にあるまじき政治に先立つ武力集団がいた。宇宙から来た侵略者が山ほどいた、おかしくなりそうなペースで。
最近では直近に巨大惑星が出現した。そこにいる住人たちと交流し、また戦いがあった。
それは、果てのない戦いに思えた。
倒せども倒せども、犠牲を払いながらも守り続けても、次々と争いが起こり、多くのモノが失われていく。
アフリカは半分近くがガラスの大地となり、人の生活できない壁の向こう側の存在になった。
欧州はコジマ粒子による汚染であらゆるものが失われた。
それ以外の地域だって、多かれ少なかれ、テロや戦災の被害を受けている。無事で安全なところなどどこにもない。
これらの歴史を、PP世界の人々は非常に様々な反応を見せ、時折サイコパス悪化などで退出者を出しながら、それでも見つめ続けた。
同じ地球という名前を冠した惑星の人々が、襲い来る脅威や滅びに抗い、必死に戦い続ける姿を。
余裕のあるPP世界の人々に共通したのは、憧憬であり、称賛の色だった。
確かにサイコパスに悪影響を及ぼしそうな激闘であったり、破壊や滅びの映像が混じっている。
けれど、それでもと人々は立ち上がるのだ。
戦場に立つような戦士たち、各国の指導者たち、そんな特別な人々だけではなく、一般市井の人々も諦めることなく立ち上がるのだ。
続く戦いに苦しみ、もがきながらも、それでもその先にある平和や明日をつかみ取ろうとする、どん欲なまでの意志があったのだ。
予定された明日、約束された明日など全く保証のない世界。明日が人類の総力を挙げた決戦に委ねられるという場面も多くあった。
シュビラによって維持管理されているこの国においては、おおよそすべての人間がそれとは対極の世界に生きている。
システムによって診断され、管理され、統制されることによって、この国は唯一の法治国家として存続を続けている。
それが不断の努力によって維持されているということは知っていても、それでも地球連合や地球連邦、その他多くの人々への憧憬は止められなかったのだ。
951 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/08(火) 23:18:27 ID:softbank126036058190.bbtec.net [40/48]
さて、こうして外交使節が入手した情報はすぐさまPP世界の日本政府の知るところとなった。
機密を保持したまま中央政府へともたらされた情報は、これまでの情報と同じかそれ以上に劇物であった。
ただ、ここまでくるにあたって流石に慣れが出てきていたのも確かだ。事実、多くの人間がその情報を受け止めた。
未だに信じられないと喚くごく一部こそいたものの、おおむね共通見解を持つことにはつながったのだ。
PP世界特有の、シュビラによる保護を受けているモノ特有の傲慢さこそあれども、地球連合が侵略や戦争を仕掛けに来たわけではないと判断したのである。
しかしながら、ここでPP世界日本は躓くことになる。
「一体次はどの様に行動を移せばよいのか?」というごく当たり前の疑問にぶつかったのである。
これは、日本という国家の性質上の弱点ともいえるものであった。
つまり、シュビラによる統制や管理もあり、国家がすべきことというのは概ね「現状維持」に限定されていたのだ。
今日と変わらない、平穏無事な明日がやってくることが保証された国。明日の食事どころか今日の食事さえ危うい他国とは違う平和な世界。
逆に言えば、急激な変化などというものはよっぽどでなければ起こりえず、劇的な変化を能動的にも受動的にも起こさないのだ。
一先ず話を聞いて国交を結ぶまでは何とか出来た。
では、その先は?宇宙からの侵略者により滅びの迫っているこの惑星において、如何様に振舞うのが正しいのであろうか?
システムによる裁定や判断を受け続けたがゆえに、早急に人々は「正しい」答えを欲したのである。
つまり、自分で判断しなくてもいいし、間違っているかどうかは「誰か」や「システム」が決めてくれていた。
だが、これは「正解のない問いかけ」であり、むしろ目指すべきゴールを定めて自ら進むべき問題なのだ。
ここにきて自己決定能力の低さや判断力の低さといった、シュビラ依存だったが故の弱点がむき出しになったのであった。
外交上の情報その他もろもろを含め、ボールは地球連合から日本政府へと渡された。
しかし、ここに至って当事者意識の低すぎた政府は、おろおろとするばかりであったのだ。
これを受けたシュビラシステムが存在しない胃を大いに痛め、ついでに集団的頭痛に襲われることになったのだが、ここでは割愛しよう。
ともあれ、PP惑星、あるいは惑星2113をめぐるフェーズは、確かな一歩を刻んだということであった。
その先に何が待ち受けるかも含め、多くに不確定要素を含みながらも。
952 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/08(火) 23:19:08 ID:softbank126036058190.bbtec.net [41/48]
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【悲報】日本政府、平和が長すぎて何をすべきか思考停止
最終更新:2023年08月26日 20:26