570 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/07/25(火) 22:31:30 ID:M014009102000.v4.enabler.ne.jp [2/11]
近似世界 1950年代
『もはや“帝国”の時代に非ず』


第二次中東戦争(だいにじちゅうとうせんそう、ヘブライ語: מלחמת סיני‎、アラビア語: العدوان الثلاثي‎)は、1956年10月から同年11月6日にかけて勃発した中東戦争である。「スエズ戦争」や「シナイ作戦」などとも呼ばれる。この戦争はエジプトがスエズ運河を国有化し、それを妨害しようとしたイギリスとフランスがかねてよりエジプトと対立していたイスラエルと密約を結んでエジプトに侵攻した事で開戦。
当初は軍事力で勝る以英仏側が有利に戦闘を進めたが、エジプト側が粘り強く応戦した事やその戦争行為に対して国際社会からの批判が高まった事で国際連合が介入した他、当時冷戦中であったアメリカ合衆国とソビエト連邦、そして第三勢力であった日本の思惑が図らずも一致し、英仏などに圧力をかけた事もあり停戦した。
(Wikipedia 第二次中東戦争より)




「……なに、日本が…?」

「裏切ったのか…!」

「まさか、反対の立場に回るとは……彼らの改革の意思は本物だった、という事か……」

「最早、我々の時代ではないのかもしれんな……」


1956年、エジプトのスエズ運河国有化に端を発する騒動は、それに反対する英仏によるイスラエルを使った侵略戦争へと発展した。

シナイ半島を完全に制圧したイスラエルが運河を渡河してスエズの両岸を押さえ、英仏政府が兵力引き離しの名目でイスラエル・エジプト両国に軍をシナイ半島から撤退するように通告。
侵攻されたエジプトは確実に通告を拒否する筈で、それから12時間経過した時点でスエズ運河の安全航行確保を大義名分に英仏軍が介入し、エジプト軍をスエズ運河以西へ駆逐。
スエズ運河地帯を兵力引き離しのための緩衝地帯に設定して平和維持を名目に英仏軍が運河地帯に駐留し、イスラエルはシナイ半島を占領する。

そんな三国の思惑は、国際社会の高らかな非難によって頓挫することになる。

アメリカは英仏の植民地主義的行動に反発し、国連で両国を強く非難すると共に政治・経済的圧力を掛けて即時撤退を求めた。
ソ連も両国に対し、核兵器を用いた強い恫喝を行う。
日本も、一方的な侵略によって国際秩序を乱す行為は認められないとして、両国に自制を求めたのだった。

そして10月31日。
国際連合安全保障理事会決議119(S/RES/119)により、平和のための結集決議に基づく特別緊急総会が招集され、英・仏・イスラエルに対し即時停戦撤退を求める総会決議997が11月2日に採択された。

571 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/07/25(火) 22:32:52 ID:M014009102000.v4.enabler.ne.jp [3/11]


実を言うと、日本が英仏に対して反対の立場に回ることは、国際社会にとって驚くべきことだった。
この騒動は謂わば、列強として世界に対して影響力を保持したい英仏など「旧体制」と、新興のメインプレイヤーとして台頭してきた米ソ「新体制」の衝突である。
この組分けで言えば、日本は確実に旧体制側へと分類される。
英とは古くは同盟も結んでいた関係であり、フランスとはWW2中に連合国内で半ば煙たがられたいた彼らに大量の資金や物資を供給し、自由フランスおよびド・ゴールの復権と名誉挽回の立役者と見られていた。
故に、日本の立ち位置はどちらかというと旧体制側に傾いてる……そう思われるのが普通だった。



確かに日本は、最近になって新しい時代に対応するとして国家再編を……いわゆる勢力圏下に対して融和的な改革を実行していたが、それは自国の覇権を維持するためのガス抜きに過ぎない……所謂ウェストミンスター憲章やフランス連合構想のようなもの、と。そう思われていた。
しかし、事実はまた少し異なるものだった。


日本の国家再編計画の内容は多岐に渡る。
南洋、南方諸保護国における保護国状態の解除と独立。
外地に存在する日本利権の処理と精算。
地域別投票による日本残留か独立の選択。
台湾、神坂、新須賀、南洋諸島、布哇の州昇格と新たな自治権の付与。
新たな国家共同体の設立。


そして、大日本帝国憲法改定の決議。
正式な国号の大日本帝国(Empire of Japan)から日本連邦(Commonwealth of Japan)への変更。


…………憲法における「国民主権」の明記。
これを以て皇室と国政の権能は完全に切り離され、天皇陛下はさる史実の如く日本国民統合の、日本と志を共にする諸国の大いなる“和”の象徴となった。


国体を金槌で粉砕するかのごとき改革は、確かに大きな波紋を呼んだ。
しかし天下統一以来350年、ありとあらゆるパターンや想定される状況とその対応策を盛り込んだ日本再編計画……帝国が成る前にその解体方法を考えるという、ともすれば途轍もない傲慢な所業は、その緻密な計画の甲斐あって極めて素早く、順当に進められた。


『朕の赤子なればこそ、汝臣民は自らの脚で立つ事ができると信ずる。朕は汝臣民、日本国民の巣立ちを祝したいと欲す』

玉音放送。
俄に浮き足立っていた右派が落涙する。
去る大日本へ、来る連邦への万歳三唱。
ここに“戦後日本”は完成した。




何はともあれ、日本の改革は本気であり、故に英仏の“時代錯誤”に賛同することはできなかった。
英仏が撤退を始めたその瞬間に、時代は……世界のメインプレイヤーは明確に移り変わったと、そう世界に示された。
欧州列強には最早列強として競う力は無く、主役は米ソへと引き継がれる。

そして、後に英仏の元植民地達はその殆どが彼らの宗主国と袂を別ったのに対して、日本の勢力圏だった者達の全てが、新しい時代も日本と共に歩むと選択したことは正しく……「因果応報」と言えるだろう。

572 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/07/25(火) 22:35:51 ID:M014009102000.v4.enabler.ne.jp [4/11]
以上となります。
夢幻会にとってはここ最近で一番緊張する瞬間となりました。
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最終更新:2023年08月26日 21:31