598 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:31:29 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [90/158]
- リシュリュー戦記-その技術概要と歴史(陣龍様リシュリュー戦記支援)
船体全幅:41m 船体全長:280m 喫水線:11m 乗員数:2700名
基準排水量:71000t 満載排水量:82500t 重油搭載量:7500t
主機:インドル・スラ式重油専燃水管式缶12基及びラテュ式ギヤードタービン4基
主機出力:222000馬力(定格) 発電機:1500kwタービン発電機8基及び600kwディーゼル発電機4基
最大速度:28ノット(前進一杯時31ノット) 航続距離:20ノットにて8500海里
兵装:1935年式50口径41cm主砲4連装3基
:1935式55口径15.2cm副砲3連装4基
:1930年式55口径10cm高角砲連装10基20門
:1933年式60口径37mm高角機関砲連装12基24門等
舷側装甲:410mm主装甲+50mm被帽破砕鋼板/20度 甲板最厚部:230mm
司令塔装甲:550mm 主砲防盾:500mm+100mm被帽破砕鋼板
搭載機:水上偵察機4-6機 火薬式カタパルト2基
同型艦:「リシュリュー」(1939年6月竣工)「ジャン・バール」(1939年10月竣工)「クレマンソー」(1940年1月竣工)「ガスコーニュ」(1940年4月竣工)
:「アルザス」(装甲空母に転用、1941年2月竣工)「ロレーヌ」(装甲空母に転用、1941年8月竣工)
599 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:32:26 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [91/158]
フランス帝国海軍が無条約時代に備え最後に建造した、そして彼の国における最大にして最強の超弩級戦艦。
無条約時代の戦艦建造ということで、同盟国の中でも特に造艦技術に長けた日本と密接な技術交流の末に設計を完成。建造が行われている。
故に日仏の新型戦艦である大和型とリシュリュー級は船型規模が近く、戦闘偽装も共通箇所が多く、準同型艦と呼んでも差し支えはない。
実のところフランス海軍としてはこれほどの巨大戦艦を複数建造する意図は、第一次世界大戦で英海軍を相手に苦杯をなめたとて存在しなかった。
世界大戦終結と同時に締結されたジュネーブ海軍軍縮条約に従い、旧式戦艦を早急に整理しまずは海軍全体の近代化と練度向上を企図。
水上部隊は2万トン級正規空母2隻、条約型戦艦1-2隻、重巡・大型軽巡6隻、艦隊型駆逐艦12隻、高速補給艦2隻からなる機動部隊。
これを3-4個編成。第一次世界大戦でQE級戦艦から駆逐艦に至るまで25ノット以上で統一した英海軍。それを更に機動力で凌駕。
またドイツとの技術交流で高性能化を果たした潜水艦、急速に航空機の性能を向上させつつある空軍とも密接に連携。
一朝有事には英本土と連邦構成国(
アメリカ、カナダ、インド等)と同盟国ロシアを結ぶシーレーンを破壊。孤立させる構想を構築していた。
この新世代の構想は第一次世界大戦で英軍。そして英連邦軍の外征軍を最終的に破綻させたのは、艦隊決戦ではなく粘り強い通商破壊。
多数の商船や輸送船、護衛艦艇を撃沈したことこそが原動力で、英国人の得意とする舞台で踊ってやる必要はないと割り切ったのだ。
このような戦訓に率直に向き合う健全さは戦後、王室が音頭を取りフランス海軍の奮闘を、概ね正しく称賛したことも影響している。
どれほど潤沢な予算と兵員、装備を与えられても、名誉を奪われてしまった軍隊が瓦解した事例は枚挙にいとまがない。
その事をよく歴史から学んでいたフランス王室と政府は、英海軍を相手に大損害を負ったが最終的には粘り強い戦術で戦勝に貢献した。
そのことを陸で奮闘した大陸軍、空で制空権獲得に奔走したフランス空軍と並び、名誉を保つことで将兵と海軍の健全性を保ったのである。
とはいえ軍縮条約の定める範疇の戦艦。基準排水量35000トン以下かつ主砲口径36サンチ以下という範疇で、彼らも新型戦艦を建造している。
やはり日本海軍と技術交流を深め、造艦技術を刷新する形で竣工したダンケルク級高速戦艦6隻がそれに該当する。
50口径36サンチ砲4連装2基を主砲として搭載。装甲防御は40サンチ砲にも耐え、最大速度で30ノットを超える次世代の高速戦艦であった。
600 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:33:17 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [92/158]
つかの間の平和を保っていた世界であるが、英連邦の長女にして基礎工業力では宗主国を超えるアメリカ連邦で、平和の破局が発生した。
世にいうウォール街大暴落事件である。先進技術では宗主国に劣るが、工業力と市場規模で本国を凌駕しつつあったアメリカ。
彼の国では第一次世界大戦で比較的外様で被害も小さいことから、株式投棄が些か以上に加熱し、ついに1929年にバブルが崩壊したのである。
日本、ドイツ、フランスと言った三国同盟陣営では実のところ、その影響は大きなものではなかった。
彼らは世界大戦で戦場とならなかった日本からの支援。そして自ら有する豊かな工業力、農業生産を用い着実な経済復興を遂げていた。
アメリカとの取引はそれなりに大きくはあったが、ハイパーインフレーションを警戒した日本(
夢幻会)の警告からあくまで「それなり」に過ぎなかったのだ。
一方で日本、ドイツ、フランスと殴り合った英本国はアメリカ経済市場に多分に依存しつつあり、経済復興の原動力でもあった。
ウォール街を加熱させたのは英本国の投資家たちでもあり、ポンド経済圏の大暴落は覿面に英連邦全体の経済を痛打したのだ。
如何ほどの大打撃かと言えば、仮にも資本主義経済を是としていた英連邦が、ブロック経済圏を構築。更には統制経済に移行するほどには。
そして統制経済とは極めて社会主義的かつ、余程の慎重さがなければ近視眼かつ短期的なものとして消えてしまうものである。
また悪いことに順調な復興と経済発展を遂げている日本、ドイツ、そして最も近いフランスへの英本国の民意は、最悪に近いものに転化した。
七つの海を支配する帝国にして文明国としては信じがたいことに、日独仏の陰謀こそウォール街大暴落という通説さえ流布したのだ。
このような負のシナジーを受けて。そして民主主義国家の集合体故に民意に押され、英連邦は軍事ケインズ主義に経済を傾倒させた。
国家最大の公共事業である軍備。それを拡大することで軍隊や軍需産業に失業者を吸収し、経済的混乱と衰退の阻止を狙ったのだ。
また一度軍拡を決心した以上、特に大きな軍備であり英国と英連邦を支えるロイヤルネイビーの軍縮条約からの脱退を決心。
1930年の第二次ジュネーブ海軍軍縮会議では、日独仏への一方的な海軍軍備の大削減を要求。
それが容れられないのであれば既存の軍縮条約より脱退し、英国と英連邦は主権と安全を保つため独自路線をゆくと宣言した。
紅茶と阿片をキメすぎたとしか思えない宣言を前に、流石の三カ国も歩み寄りや妥協を打診したが、全ては失敗。ご破産となる。
601 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:33:58 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [93/158]
かくして既に破綻している経済を軍事ケインズ、そしてインドやオーストラリアなどの事実上の植民地。政治的植民地ロシアからの収奪。
それにより表面上は経済を好転させ、失業率を大きく低下させ、民意にさらなる支持のもとに軍拡を継続する英国と英連邦。
多少のバカと言ったんだありゃパーフェクトじゃないかねという顔になりつつも、それに対抗する日独仏三国同盟の対立が再開することになる。
特に強力な同盟国2つを持つとは言え、事実上の社会主義的侵略国家の矢面に立つフランスの危機感は、尋常なものではなかった。
先の大戦で大きな新戦力となった空軍は日本、ドイツとより活発な技術交流の末、飛行場緊急造成まで含む技術推進を断行。
陸軍もフランスと並ぶ欧州陸軍強国ドイツ。満州を介してロシアと対峙する日本との研究を密接とし、機械化の推進速度向上させる。
海軍も2万トン級に排水量を収めたからこそ建造が容易なジョッフル級空母の増産、油圧カタパルト搭載による新型機への対応。
そして従来3-4個とされた新世代の高速艦隊を6個とし、日本海軍を除けば世界最大級の機動部隊戦力を揃えることになった。
艦上機や水上機も日本、ドイツとの技術交流で高性能化が進み、1500馬力級の単発単葉艦上機複数が生産配備に入った。
そして。英国及び英連邦が軍事ケインズ故に非常に大きな雇用創出を見込める、無条約時代の戦艦兵力への対応も余儀なくされた。
大英帝国は既に退位間近とはいえ国王キングジョージ5世の名前を冠した、5万トンを超える16インチ砲戦艦多数の建造を開始。
英連邦の長女アメリカも4万トン級のバランスに優れたノースカロライナ級戦艦、さらなる巨大戦艦建造に踏み切っている。
国際協調を全くの自己都合で破壊し、その上で明確に自国や同盟国を想定した軍拡を前に、逃げるほどフランス人の矜持は安くなかった。
我が国とは長きにわたり友好国であり文化交流も盛んなことから忘れがちだが、一度誇りを傷つけられたフランス人の怒りは根深く大きい。
嘗ての同君連合であったスペインさえ併呑し、粗鋼生産量ではドイツを追い越し、多数の大型軍艦を同時建造できる国力。
また故なく害意を突きつけられ激高した民意。今なお莫大な資産を持つ王室からの援護射撃もあり、フランスも無条約戦艦の建造を決定した。
ただ英国及び英連邦。特にアメリカと合わせた新型戦艦に数量で対抗することは、流石に困難であるとも自覚していた。
故に彼らは可能な限りの同時建造数確保に腐心しつつ、質でジョンブルとヤンキーの新型戦艦を凌駕し対抗することを早々に決心している。
602 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:34:46 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [94/158]
条約型戦艦としては最強でなくとも最良の一つであるダンケルク級戦艦、その建造実績は次なる新型戦艦建造に大いに貢献した。
では新型戦艦が対抗するべき英米の戦艦とはどれほどのものであるか。次なるコンセプト策定は自然とそこへ焦点が集まる。
大英帝国のKG5級戦艦は、基準排水量で5万トンを大きく超え、主砲に45口径16インチ砲を3連装4基搭載する堅艦であった。
またKG5級の恐るべき点は装甲に低コストかつ加工が容易な表面浸炭鋼板(VH鋼板相当)を多用し、電機溶接工法適用を容易化。
主砲も第一次世界大戦に滑り込みで間に合ったアドミラル級戦艦のそれを、尾栓閉鎖を垂直化し無理なく既製品を3連装砲塔に対応。
主機も最大速度を27ノットと必要十分に抑え、その上で町工場でも量産可能な30気圧ボイラーとタービンから構築していることにある。
船体、上構造物も極力直線構造を用いることで工数を抑制し、単能促成教育を受けた工員でも建造可能な戦艦として「量産」を開始したのだ。
無論のこと。弾薬を始めとする補給共通化のため、アメリカ連邦の新型戦艦も同一規格の主砲を採用し、新規開発の手順をスキップしている。
政治的には錯乱したかもしれねど、海軍とは如何に有力な水上艦多数を複数方面に送り込むか。その黄金率を彼らは忘れていなかった。
故にフランス海軍は太平洋をはさみ、英連邦の長女と海軍軍拡競争に入った日本と新型戦艦の要素技術研究を共同で行うことになる。
部分的にはドイツ海軍も参加しているものの、彼らは主力艦をダンケルク級の準同型艦4隻で割り切り、より通商破壊に特化することを決心。
艦隊決戦とシーレーン防備は日仏海軍。英連邦のシーレーン破壊はドイツ海軍という役割分担が為され、戦艦の技術交流は限定的であった。
そして41サンチ砲戦艦相当数を中断されたとは言え、八八艦隊計画に従い建造した実績を持つ日本の技術支援は、非常に有効だった。
彼らは彼らで英国人とは異なるベクトルで、軍艦という兵器の効率化と生残性追求に勤しんでおり、フランス人にはない知見を多く有していた。
無論、フランスから日本に齎された新技術。特に高圧高温機械や高効率船舶用発電機なども無視するべきではないが。
なおフランス海軍との技術交流の直接担当となった日本海軍艦政本部には、やはり夢幻会-それも日蘭世界経験者が相当数存在していた。
中でもフランスから新技術を引き出し、それを自家薬籠中の物とすることが得意なある技官などは、日仏新型戦艦実現に大いに貢献することになる。
彼がしばしば独り言のように口にしていた「我らが指揮官に今度こそ陰りのない勝利を」とは、何を意味していたかは当人しか分からないとされる。
603 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:35:26 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [95/158]
英米の16インチ砲搭載新型戦艦を相手として、優越する火力と防御力を付与するのに必要な船体規模はどの程度となるか。
この点で日仏新型戦艦はそれぞれ選択した主砲こそ異なるが、全幅40メートル以上、全長270メートル以上。
基準排水量で7万トン以上は必要と試算で合意し、それに対応しうる工廠及び造船所の数を勘案せねばならなかった。
幸いというべきか軍縮条約が機能している時代に、海軍予算を多少削減し、旧式艦を早々に解体し余剰を産んだことが幸いした。
ブレスト海軍工廠、アトランティーク造船所、カディス造船所、サンフェルナンド造船所などがインフラ投資により大幅拡張を達成。
これら工廠と造船所を合計すれば6箇所の大型船台が新型戦艦に対応しうるとされ、粗鋼生産量や電力供給も過不足ないものであった。
またジョッフル級空母、ダンケルク級戦艦、シュフラン級重巡、ベルタン級軽巡、2500トン級駆逐艦等の量産を行った際の経験。
すなわち電気溶接の多用、ブロック工法と工程管理の徹底、中小工場への艤装発注とノックダウン生産方式の確立も活用。
これらを遅滞なく行えば1隻当たりの平均建造期間は3年半程度に収まるとされ、商船や補助艦建造へのしわ寄せも抑制が見込めた。
そして戦艦の一義とも言うべき主砲は日本海軍の大和型が45口径46サンチ砲3連装3基を選んだのに対し、こちらは独自路線を選択した。
海軍工廠や民間企業複数の手で、ダンケルク級の主砲を拡大改良した50口径41サンチ砲を4連装砲塔3基に収めている。
これは46サンチという大口径砲を嘗て試作し、事実上失敗したこと。故に既存砲の拡大改良型を用いることで、開発期間短縮を企図したこと。
加えてダンケルク級の36サンチ砲の段階で複層水圧自緊製法で砲身軽量化に成功し、無理のない重量と信頼性で4連装砲塔を実現したこと。
更には長砲身を初速ではなく弾薬重量に用い、一般的な同クラスの砲弾に比べ2割ほど大重量化し、実効破壊力を高めた実績に基づく。
この新型41サンチ砲も砲身重量は120トンと砲身長を考えれば軽く、被帽付徹甲弾の重量は1200キロを超え、英米の新型戦艦に十分優位に立てた。
そこにフランスが得意とする高圧機械、高効率発電機を適用すれば、砲塔旋回及び発射速度も十分実用のレベルに達する目処が立っていた。
往々にして大和型の準同型艦とされるリシュリュー級であるが、主砲火力においては全く独自のドクトリンに基づき構築されている。
反面、主砲射撃方位盤及びレーダーは日仏独共同開発とされ、方位盤の電力二軸安定とレーダー半自動連接という形で共通化された。
604 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:36:11 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [96/158]
主砲火力構築においては独自路線を用い、副砲や高角砲。高角機関砲も可能な限り国産化、同世代戦闘艦との共通化は推進されている。
その一方で装甲防御構造、ダメージコントロールなどは大和型とほぼ同一の構造を採用している。
日露戦争で英海軍を打ち破り、第一次世界大戦でやはり互角以上の戦を繰り広げた海軍は、生残性という点で一歩先を歩んでいた。
防御構造は集中防御方式を選びつつ、バイタルパート以外の船体構成素材も防弾鋼板とすることで、軽量化と強靭化の両立を推進。
そしてこの当時、日仏のみが量産を可能としていた艦艇用高合金鋼-均質圧延装甲で防御装甲部材を統一している。
陸軍の戦闘車両でも多用されることになるこの装甲板は、表面硬化鋼板などに比べ高価だが、防御効率は価格以上に大きく向上している。
そのような先端技術鋼板を多層傾斜構造で。それも大和型と共通化することで過剰とも言うべき耐弾、耐水雷防御を追求することになる。
舷側装甲は410ミリ/20度の主装甲に被帽破砕鋼板を増設、水平装甲主要部も200ミリを超え、司令塔や主砲防盾は500ミリを上回った。
間接防御構造として艦内隔壁は流石に普通鋼だが、その上で50ミリを超える厚みを有し、浸水や破片飛散防止に努めている。
やはり航空機や水上艦と共に急速に高性能化を遂げつつある水雷に対しては、舷側広範囲に低抵抗対水雷バルジを適用配置。
また磁気信管による直下炸裂に備え、船底構造もバルジと同じく重油燃料層を兼ねる形で三重化を果たしている。
仮に英海軍、英連邦海軍が18インチ級艦砲や高性能水雷を多用することになっても、容易に沈まぬ堅牢さを日仏は追求したのだ。
注排水装置や消火装置も機材ごと冗長化され、電路もそれに比例して多重化を行うことで、容易に機能不全を起こさぬ努力が払われた。
また専門教育を受けた応急分隊を常設化することで、ソフトウェアの側面からも不沈化の推進が図られている。
これは既存艦艇でも比較的容易に実現可能なソフトウェアの改善故、日仏独三カ国の海軍で標準化されることになった。
ただし艦内の可燃物全廃という点では居住性との兼ね合いから、大和型ほど徹底したものとはなっていない。
無論難燃化を施した素材を適用しているが、士官室や下士官兵食堂。居住区などはある程度の疲労低減のための装飾が維持された。
これはこれで戦力維持のために有効な措置であるため、大和型とリシュリュー級の差異は国柄という程度のものである。
605 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:36:56 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [97/158]
そして戦艦とはいまや大火力と重装甲のみで成立する兵器ではなく、ダンケルク級や日本の戦艦に代表されるよう、高速戦艦が必須とされた。
英米の新型戦艦も27ノット以上の実効速度を企図しており、最低でもこれに伍する機動力がなければ決戦兵力として機能し得ない。
ここで物を言ったのがフランスが得意とする高温高圧主機と交流式高効率発電機技術、そしてそれを歩留まりよく量産する工業技術にあった。
ダンケルク級戦艦の15万馬力の大力が注目されがちであるが、フランス海軍は巡洋艦や駆逐艦にも広汎に高効率主機と発電機を普及させていた。
軍縮条約のもとに建造が認可された2500トン級駆逐艦ですら、ボイラー4基とタービン2基のシフト配置で7万馬力以上を達成している。
タービン式とディーゼル式を問わず艦載発電機の高効率化も日仏独、果ては英米と比較しても一歩先をゆく技術を、当然のものとして実用化していた。
件の日本海軍艦政本部の名物技官は技術交流において「これぞエラン・ヴィタール」と、満足げな太い笑みを漏らしたと噂されている。
戯言はさておくとしてもフランスの長い冶金技術、造機技術は1930年代序盤の段階で、40気圧の高圧缶と二段減速を実用化している。
多額のパテントを支払い日本海軍にもこれら高効率な機械技術は導入され、やはり大和型とリシュリュー級の大きな共通項の一つとなる。
ただし船体規模がダンケルク級と比較しても桁違いに大きいことから、シフト配置方式は断念され、4列の横列-パラレル配置が選択された。
なお各機械室は独立した防水防御隔壁で設定され、配置方式による脆弱性をある意味で力技を用いて十分に補った。
また主機起動や停止。あるいは戦闘配置以外は遠隔操作で運転を可能とし、機関科兵員の疲労軽減に少なからず貢献している。
最終的に40気圧(450度)規格で搭載された主機は定格出力で22万馬力を発揮し、7万トンを超える巨体に29ノットの快速を与えた。
高効率機械の採用は言うまでもなく燃費改善にも繋がっており、巡航20ノットで8500海里と必要十分以上の長足も併せ持っている。
船底にはフィンスタビライザーが複数搭載され、舵機を二重配置構造とすることで、旋回半径は大きいが操舵応答性も俊敏なものとなった。
戦闘艤装、居住艤装に動力を伝達する発電系は、やはり日仏共同開発の1500キロワット規格タービン発電機を8基。
補助として600キロワット規格ディーゼル発電機4基を備え、最大で14400キロワットの電力を必要随所に供給可能である。
この膨大な発電量はリシュリュー級と大和型双方で戦闘艤装のほぼ完全電力化、電探装備搭載余裕の確保、居住性の向上に貢献している。
606 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:37:41 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [98/158]
かくして1930年代なかばよりフランス本土随所の工廠、造船所で同時に6隻の新型戦艦。後にリシュリュー級と呼ばれる戦艦の建造が始まった。
否応無しの軍拡に引きずられたとは言え、英国や英連邦に比べれば余程健全な形で涵養を行った国力は、その期待を裏切ることはなかった。
工程管理には日本、フランス、ドイツが共同で開発を行った、当時最新の電子計算機さえ持ち込まれ、無駄を最大限減少させている。
無論のこと英国及び英連邦も日仏の海軍拡張、特に新型戦艦のそれについて、短剣とコートの長い手を用いて概略は掴んでいた。
だが排水量や防御力を拡張したとしても、本質においては16インチ砲戦艦に過ぎない。
それならば戦場により多くを投入可能であり、練度においても依然我が方が優越する以上、深刻な悩みとはならないと判断していた。
彼らの判断は消して荒唐無稽なものではなく、往々にして安物と揶揄されるKG5級戦艦は量産兵器として見れば間違いなく優秀であった。
アメリカ連邦が英海軍の規格準拠で建造しつつある新型戦艦も同様で、数量ならば日仏の新型戦艦に倍近い差をつけていた。
常識から判断すれば一朝有事の際の優位は確実であり、それは空母や補助艦。支援艦艇でも類似と考えられていた。
しかしながら英国及び英連邦が戦端を開いた第二次世界大戦で、日本、ドイツ、そしてフランスの国軍は想定以上の進歩を遂げいていた。
まず空母機動部隊や空軍、あるいは陸軍航空隊の連携による索敵と航空攻撃能力において、三カ国の有する打撃力は想像を超えていた。
如何に古びていたとは言え先の大戦以来の古強者で、近代化改装も逐次重ねたアドミラル級戦艦が航空機のみによって撃沈された。
そして。航空機が戦力に占める比重の大きさから、同型艦2隻を空母に転用したとは言え、フランスの誇りとも言うべき名前を得たリシュリュー級戦艦。
彼女らの実効火力投射能力の大きさ、16インチ砲戦艦とは到底思えない強靭さ、水雷戦隊とも協働しうる機動力は更に想定外であった。
主砲口径と搭載門数こそ同等であるが、時に倍する数のKG5級を相手取ってもリシュリュー級戦艦は劣後することはなく奮戦。
特にネームシップであるリシュリューは先の世界大戦でフランス海軍が受けた屈辱を晴らすかのように、英国戦艦の撃沈レコードを重ねることになる。
ここで誤解を招かぬように追記するのであれば、英国海軍の士気と練度は依然一流で、特に主砲の命中速度では遜色ないものであった。
だが最終的には補助艦や航空機との連携も含め、実質対46サンチ砲防御を誇り、主砲火力も1ランク凌駕するリシュリュー級に膝を屈したのである。
607 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:38:17 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [99/158]
太平洋においてもう一つの姉妹とも言うべき大和型がアメリカ戦艦を相手に勇戦したのと同様、あるいはそれ以上の敢闘をリシュリュー級は成し遂げた。
無論、それほどの大勝利を得るにあたっては日本やドイツと言った同盟国軍の支援。空母機動部隊や空軍、軽快艦艇部隊との密接な連携。
はては主にドイツ潜水艦隊と連携した通商破壊活動など、地道だが熾烈な努力と戦闘。その成功に支えられている。
その上でもなお、先の世界大戦で海軍主力艦艇の4割を失い、本土に英国人と米国人に土足で踏み入られるという屈辱。
それを果たす穂先にして立役者となったリシュリュー級戦艦は、敵対者に大きな敗北感を、自国民に復讐果たせりの戦勝を実感させた。
無論、英国海軍や空軍の攻撃は尋常なものではなく、相当数の空母や補助艦。果てはダンケルク級戦艦2隻さえ撃沈されている。
だがその犠牲を乗り越え、自ら傷つきつつも脱落艦を出すことなく英海軍主力を討ち取ったリシュリュー級戦艦は、紛れもなく勝利の象徴であった。
最終的に1944年に終結した第二次世界大戦において、ネームシップである戦艦リシュリューは講和条約-事実上の英国降伏条約調印の場ともなった。
装甲空母に転用された2隻を含め新型戦艦6隻全艦が健在なフランスに対し、英国海軍はKG5級戦艦1隻のみが大破着底するのみであった。
第二次世界大戦が日本、ドイツ、フランス三カ国の勝利という形で終わり、大英帝国と英連邦の領地縮小と解体。
最大の仮想的である英国が欧州の島国に転落し、やはり海軍軍備で甚大な損害を被ったアメリカ連邦はついに宗主国を見限り独立。
これによりウォール街大暴落からはじまった不毛な軍拡と戦争は一応の終わりを告げ、各国で軍縮が開始されることになる。
無論これは第二次世界大戦の最中、ついに実用化されてしまった熱核兵器。あるいはジェット航空機や原子力潜水艦に重点が移行したこともある。
フランスにおいてもダンケルク級戦艦、いまや小型に過ぎ使い道が乏しいジョッフル級航空母艦などは急速に退役。
主戦力はリシュリュー級の船体を流用した装甲空母6隻、新世代の巡洋艦や駆逐艦。そして原子力潜水艦やジェット航空機となった。
だが日本海軍などは早々に大和型を全艦予備役編入(後に交代現役復帰)としたのに対し、フランス海軍はリシュリュー級を邪険とはしなかった。
最大の仇敵である英国人を相手とした戦勝の原動力かつ象徴故、民意という点からも、最低1隻は常に現役にあるべしとされたのだ。
やがて戦闘艦の電子装備価格、近代化費用高騰からガスコーニュとクレマンソーは記念艦とされたが、リシュリューとジャン・バールは交代で現役にあり続けた。
608 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:38:56 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [100/158]
日本の大和型戦艦、アメリカ連邦のアイオワ級戦艦と並び数少ない古い時代の戦争を知る超弩級戦艦として、戦後数十年にわたり君臨。
アメリカ連邦が英国からの独立と国力の大幅増進。果ては限定的とは言え核武装に成功したことから惹起した第三次世界大戦。
辛うじて各国の自制により熱核兵器を用いることを防いだ、今のところ最後の世界大戦においても、リシュリュー級は現役艦として参戦した。
現役指定艦をリシュリューとジャン・バールの2隻に絞ることで近代化予算を必要十分に確保し、彼女らは全くのシステム戦闘艦として再生。
主機もついにオールディーゼル方式に置き換えられ、応答性や即応性。高速巡航による航続距離の拡張。発電系の統一化に成功。
依然として実用戦闘艦として十分な性能を有する2隻のリシュリュー級は大西洋を疾駆し、アメリカ大西洋艦隊と正面切って交戦。
艦隊全体の防空、対潜、ミサイル打撃能力で優越することで敵空母やミサイル駆逐艦を無力化すると同時に、2隻のリシュリュー級は依然衰えぬ健脚で敵艦隊へ突入。
やはり近代化されたC4Iシステムに最適化された50口径41サンチ砲12門の打撃力、いまや超音速対艦ミサイルにも耐える重装甲を活用し砲打撃戦を展開。
アメリカ連邦の至宝の一つとも言われ、同じく近代化を果たしたアイオワ級戦艦アイオワ、ミズーリを自らの主砲で討ち取るという、近代戦で異例の戦果さえ達成した。
第三次世界大戦はアメリカ側の軍事力の壊滅。そして南部と北部、東海岸と西海岸の意見不一致による連邦崩壊という形で終結を見ることになった。
一度は嘗ての大英帝国のそれを凌駕する工業力、国力を達成した国家の最期としては、些か以上に脆い結末であったと言える。
なまじ各地方が自給できてしまう。そして英連邦からの独立に際しての強い独立心が、負のシナジーとしてかの大国を引き裂いてしまったのである。
その結果として日本、ドイツ、フランスを中核とする国際連合加盟国は、旧アメリカ連邦地域を難民流出防止及び軍事査察地域に指定。
主力となるのは連合加盟国の陸軍と空軍。そして海軍においては多数の軽快艦艇であり、リシュリュー級も流石に第一線からは遠ざかることになった。
戦闘能力は十分以上であるものの運用維持費、必要マンパワーが大きく、非正規戦・グレーゾーン管理には過剰と判断されたが故である。
とはいえ未だにリシュリューとジャン・バールはフランス海軍の現役艦籍簿に名前を連ねており、現在の主な役割は多数の下士官兵や新米将校の練習艦。
そして同盟国や友好国への表敬訪問と、ついに砲艦外交や鉄火場を突き進む戦艦としての役割から解放され、艦齢相応の任務に従事している。
その優美かつ機能的な巨体は各国の軍艦マニアにも注目され、つい昨年のリシュリュー横須賀寄港に際しては多くの来訪者を集めることになった。
609 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 01:43:40 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [101/158]
以上となります。
イメージとしては高圧高温機関と大出力発電機、さらなる重装甲を取り込んだ大和型。
その主砲をフランス独自の50口径41サンチ4連装砲塔に換装。
外観的には計画に終わったアルザル級戦艦をふた周りほど大きくしたような戦艦です。
建造を担う造船所はフランス、スペインで大型艦・商船建造に耐えうるインフラを国費支援で拡張。
思い切って6隻を同時発注。ブロック工法と工程管理の徹底、ノックダウン生産適用でコストダウンをも意識しました。
因みに敵役のKG5級戦艦ですが八八艦隊計画の十号-十三号艦。41サンチ砲12門を搭載した計画案。
それを1930年代の英国の造機造艦技術でブラッシュアップしたもので、数が揃えば普通に恐ろしい艦と設定しました。
リシュリュー級という主役が輝くためには、敵もそれなりに魅力的な強敵じゃないと駄目かな…と。
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最終更新:2023年08月26日 21:38