640 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 22:38:26 ID:softbank060146109143.bbtec.net [61/73]
日本連合により制圧された史実日本。
馬鹿が馬鹿をやって規則通りに裁かれていく中で、ごく普通の人々は普通の生活を取り戻しつつあった。
ある種の鈍感性、あるいは柔軟性と評価すべきなのか。それとも、危機感が欠けている対応とみるべきなのか、正直なところ占拠した側の日本連合も困っていた。
まあ、大多数の人間にとっては100年後の未来などより今日や明日の方がよほど重要であり、その例に日本人も漏れなかったということだろう。
まして、日本を占拠したのが悪意ある外国ならばともかく、同じだが違うところがある「日本」ということも後押ししていたと推測された。
そんな大雑把な認識でいいのかといえば、案外そんなものであるのだ。
閑話休題。
かといって、史実日本とてなんの危機感も抱かなかったわけではないのも事実である。
相互理解のためにもという建前の上で、日本連合やそれを構成している「他国」日本の研究を進めていたのである。
参加している日本だけでも十数以上あり、その日本を取り巻いている環境までも含めるととてつもない情報量となったのはご愛嬌。
その為、普段は無能だの他国の太鼓持ちだの害務省だの言われている外務省も真剣に仕事に取り組まざるを得なかった。
その結果「他国」日本にのめり込んで行って列島日本に見切りをつけたくなる人間がいたのも、ある種必然だったか。
ともあれ、官僚だけでなくその手の知識のある学者なども動員させ、列島日本は
日本大陸各国を知ろうとした。
その中において、多くの人間が首をかしげることになったことがある。
端的に言えば「資源国の呪い」に罹患していないということである。
日本大陸は、列島日本とは比較にならないほどの資源にあふれた国だ。
列島日本ではすでに枯渇しているような鉱山などが未だに稼働状態にあり、あるいは原油なども湧きだしている。
殆どの資源をその気になれば自国で賄えるという点ではアメリカ合衆国ほどに恵まれていると言えるだろう。
単純な鉱物資源に限定しなければ、森林資源や海洋資源についても同様であり、未だに人の踏破しきれていない場所がある程度に広大。
需要が存在する以上、それを満たす供給を求めるのも自然と言えるのであるが、それを満たせるというのは驚異的だ。
さらに驚くべきは、国土の肥沃さにある。
幾名かの学者が見つけたのが、その国土が日本列島の拡張にありながら、同時に土壌の質が違うという点だった。
日本大陸造成期における火山の噴火による火山灰の分布と、チェルノーゼムにも似た土壌の合わせ技である。
これが、大陸国であり同時に山に大多数を占められた日本を、豊かすぎるほどの多様な植生に満ちたものへと変えていたのだ。
これにいわゆる温帯に位置する気候と潤沢な河川および降雨による水が合わさることで、完成に至るのである。
641 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 22:39:40 ID:softbank060146109143.bbtec.net [62/73]
だが、面白いことに、恵まれすぎる環境とは時に人間を殺すものである。
そういった資源にあふれて自然豊かなはずの現代のアフリカや資源が潤沢な国々は、多くが発展や工業化などに躓いているところがある。
アフリカに至っては失敗国家が複数存在し、資源のために争いが起こり、国家としての体裁を為していないところまであるのだ。
これこそ、「資源国の呪い」である。
資源や環境に恵まれているからこそ、そこからの発展や革新が起こりにくく、それ故に停滞してしまうという、ある種の呪い。
あくせく働くよりも、湧き出す資源を売った方がよほど楽であり、金になるが故の怠慢。
そうであるがゆえに、国民の過半が労働に従事することのない国家があり、あるいは有り余る金ゆえに税などを捨てた国もある。
あるいは、その大地の肥沃さと資源に胡坐をかき、まともな工業を発達させられなかった国もある。
恵まれるとは、時に残酷なのだ。
だが、
日本大陸はどうだ?
多くの世界線において、その豊かな大地と資源とに慢心することなく、むしろ積極的に生かしているのが見受けられていた。
その辿った軌跡や方向性などは多少の際こそあれども、いずれもが国を発展させ、世界でも最高ランクの工業国兼資源国として君臨するに至った。
産業革命に乗り遅れもせず、あるいは産業革命をイギリスに先駆ける形で達成した世界線も存在するほどに、だ。
一体それがどういう原理で、どういう国内の動きによるものなのか。
歴史学者や社会学者などはこれに大きく興味をそそられた。
いくつもの仮説や推論が立てられ、しかし、合わないと判断されて消えていき、また議論が巻き起こる。
そも、前提条件として異なりすぎるうえに、資源国の呪いという概念を過去に適用できるかという問題もあった。
そうであるがゆえに、彼らの議論は白熱し、時に混乱し、結論にたどり着けずにいた。
まあ、彼らは知りえないだろう。
多くの世界線において、歴史の陰日向に動き回り、日本という国家の発展と安寧を目指した集団のことを。
自らという存在と記憶をカンニングペーパーや青写真のように活用し、現実化し、発展させたという理外の存在を。
彼らがいたからこそ、多くの世界線の
日本大陸は発展し、あるいは存在しなくとも
日本大陸は列強を超える力を発揮できたのだということを。
日本大陸というのは、遥かにメタな存在によることを---誰も知らない、知ることもできない。
だが、それはある種平和であり、安寧であるとさえいえる。
知ってしまったとき---演者が第四の壁を超えて認識した時、平穏でいられることなどめったにないのだから。
642 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/07/27(木) 22:40:12 ID:softbank060146109143.bbtec.net [63/73]
以上、wiki転載はご自由に。
ちょっと思いつきました。
だから突っ走るように書きました。
最終更新:2023年08月26日 21:40