662 名前:冷石[sage] 投稿日:2023/09/01(金) 17:25:18 ID:p339059-ipngn200307gifu.gifu.ocn.ne.jp [6/10]
「まったく、話にならん!」
ピニャはボーゼス、ハミルトンに向かいそう愚痴る。
ピニャがそう言いたくなるのは、日本から帰還した捕虜たちが主戦派となって帰還したことが原因であった。
「芸術を鑑賞して、だらしない顔をしながらでなければ憂国心あふれるいい場面なんですけどね」
そう、ピニャとボーゼスは昭和日本が捕虜とともに送ってきた801同人誌をボーゼスとともに鑑賞中だったのだ。
「そうは言うがなハミルトン、この士弓物はなかなかの…」
「聞き捨てなりませんピニャ様、弓士こそが至高です」
「あー、もー。その件は私との話が終わってからにしてください!」
「こほん、ボーゼスこの件は後でじっくり話し合おう。奴らの言う民を盾に取ったやり方など誇りはないのか」
「令和の千住殿が言っておられましたが、そのようなことをされるのは想定している、もしもそのような行動を取ったら「国」とは認めず山賊野盗の類として扱い、名誉全てを奪ったうえで処刑すると」
「うむ、「国」と認められている今の内でなければ交渉は通じん、あとになって名誉ある待遇を求めても遅いというのに」
「でも、なぜあの戦力差を見てまだ戦おうなんて思うんでしょう」
「わからん、和平派の元老院議員が増えているのがせめてもの慰めだが…」
「今は和平派議員を増やすことに専念いたしましょう」
「うむ、そうだな。しかしボーゼスよ、なぜ弓士なのか、おのが理想を組み敷く姿にこそ士弓の良さがあるというのに」
「いかにピニャ様のお言葉といえこれは譲れません。おのが理想に教え導かれる姿にこそ萌えがあるのだと」
(どっちでもいいじゃないですか)
ハミルトンの溜息をよそにピニャとボーゼスの喧々諤々の議論は続くのだった。
しかし翌日、事態は一変する。諸王国連合がアルヌスの日本と盟約を結ぶという情報が帝都に届けられたことによって。
その日の元老院は和平派と主戦派とで真っ二つに割れた。
諸王国連合が敵に回った今、これまで立てていた戦略が破綻した。早期の和平をという和平派と。
戦力がある今のうちに一戦しその戦果をもって優位に立って交渉すべきという主戦派とに。
ただ、この時点で両陣営に共通するのはこの戦争を勝利するのは無理であるという認識であった。
議論が数日続いたある日ピニャの元に木下ら日本の外交官たちが訪ねた来た。
「これはピニャ殿下本日はご機嫌うるわしく」
「いえ、それで皆様方、本日はどのようが御用で」
「はい、それはわれら日本は、この戦争を早期に終わらせるためにも「帝国」に和平を持ち掛けたい、そのための使者としてまいった次第」
「我々としましてはこの戦争を早期に終わらせて戦後復興に力を注ぎたいというのが本音でして」
「まー、正直この戦争続けたところでもーからんからのー、いまなら「帝国」も派遣軍がやられてそれまで無人だった丘を占拠されたくらいじゃ、いまなら名誉ある和平が結べる、泥沼にははまりとーない、それゆえの使者じゃ」
「なるほど」
「それにのーピニャ殿下、あくまで交渉の場を儲けたいというとるだけじゃ、和議を結べとゆーとるわけやない、交渉の場を設けることは主戦派も受け入れる思ての」
確かに負けが込んでいる現状で「帝国」側が和平を持ち出すのはメンツが立たないが相手から持ち出した話ならばメンツは立つ。
それならば主戦派も受け入れやすいだろう。
「わかりました。でしたらわらわから元老院議員を紹介しましょう。そのものは元老院でも有力な議員です。この件ならばうってつけでしょう」
「そりゃ助かる、手土産も用意しとるんで受け取ってほしい」
「手土産…ですか?」
「うむ、炎竜とその子供の幼生竜2頭、その首じゃ」
「なっ」
「うん、こないだダークエルフの集落が襲われたと救援を求めるもんが来ての-、そんで退治したんでその報告にの。
炎竜は災害みたいなもんと聞いたんでそのさいがいがのーなったことは喜ばしいことじゃろだからその首持ってきた、幼生竜はサービスじゃ」
この時ピニャはそれは手土産じゃなく脅しのためのものであることに気付いた。炎竜とその子供を倒す戦力相手に戦争続けるか?
そう言っているのだと。何が何でも和平をまとめなければならない、そのために和平派の元老院議員の尻を叩かねばとピニャは決意した。
663 名前:冷石[sage] 投稿日:2023/09/01(金) 17:26:44 ID:p339059-ipngn200307gifu.gifu.ocn.ne.jp [7/10]
とりあえず今回はここまでです。wikiへの記載はご自由に
最終更新:2023年09月27日 20:18