694 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/01(金) 22:36:13 ID:softbank126036058190.bbtec.net [39/59]

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「審判」


  • 星暦恒星系 第3惑星「星暦惑星」 サンマグノリア共和国領「グラン・ミュール」 現地時間星暦2147年8月22日


 グラン・ミュール内部の制圧およびサンマグノリア共和国の占拠が完了し、速やかに実施されたのが弾劾裁判だった。
早すぎる、と思うかもしれないが、状況的に急ぎでやる必要に迫られていた。
 まず、宇宙怪獣の襲来の可能性がある。すでにエクソダスは確定であり、各国本土には移民船団が次々と降り立っていたほどだ。
国家のあらゆるものをそれらに積み込むのは相当に時間がかかることが予想され、サンマグノリア共和国の弾劾に時間をとられすぎるのは良くなかった。
 ついで、既に証拠は出そろっており、また容疑者などの逮捕や拘束も完了しているなど、裁判を行うだけの状況が整っていたこともある。
嘘をつこうが黙秘をしようが、すでに証拠は揃いきっていたのだ。あとは言い訳を聞くだけであった。
取り調べで確認する作業はSAN値を犠牲にしながらも順調に進んだし、むしろなぜ86に味方するのだと勝手に自慢してくれるということもあった。
 因みにこの時に一応聞いたサンマグノリア共和国の弁明などは、聞くに堪えないものだったのは当然のことだった。

 ともかく、裁判の体裁は整ったということもあり、通称「リューヌ裁判」の幕が開いた。
 裁判官については公正をなるべく期すために他の惑星から来た裁判官たちによって構成されていた。
地球連合が招集した、という点で公正さについて追及されると困るが、これでもまだマシであったのだ。
検察側に関しては当然星暦惑星各国から人が呼ばれる形で構成されていた。筆頭はサンマグノリア共和国正統政府である。
 また、サンマグノリア共和国には比較的中立である地球連合が弁護側として一応フォローに入ってはいた。
流石に形ばかりであっても一切の弁護や諸権利を認めないというのも問題視されると判断されたのもある。
まあ、サンマグノリア共和国の被告人たちはその弁護などいらない!とまで吠えたのだが、それはそれ。

 幕を開けた裁判であるが、当然のようにサンマグノリア共和国の圧倒的不利の中で進んだ。
 検察側、追及側である星暦惑星各国が主張するように、サンマグノリア共和国の行動は常軌を逸していた。
ここで言うまでもないことだが、資料で知っていたとはいえ裁判官の中にはあまりの内容に気分を悪くする者までも現れたほどだった。

 弁護側は緒戦における被害による混乱や情報錯そうが発生した事実、さらには社会学などの知見から当時のサンマグノリア共和国の世論を展開。
当時は誰もが冷静な判断力を失っており、非人道的な行為をそういうものだと認識できる状況ではなかったと主張した。
さらに、当時の軍はレギオンに対して文字通りほぼ全滅し、その再編すらままならず、その後の行動などが常軌を逸したのはしょうがないところがあると述べた。
混乱と錯乱が集団的に発生し、その結果としてありえざる行動に出ることになってしまったのだという理論だ。

 そして、その序盤での行動に対して自己一貫性を見出したこともあり、サンマグノリア共和国は軌道修正できなかったのだとも。
 これらの主張は、正直無理がある。弁護人さえもあまり乗り気ではないのが窺えた。
 とはいえ、弁護人とは被告の利益を守り、援護することが仕事だ。たとえ相手がどのような集団や個人であれ、その権利は認められているのだ。
これを認めないままに一方的な裁判をしてしまうというのは、形こそ違えどもサンマグノリア共和国と同じところに堕ちると同義だった。

695 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/01(金) 22:36:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [40/59]


 なお、この裁判においては暗黙の了解もあり「仔鹿」の存在は公言されなかった。
 それは余りにも危険だ、という判断もあってのこと。劇物どころではなく、また罪を問うにはあまりにも、というのもあった。
これに対しては、サンマグノリア共和国制圧にあたってルルーシュを筆頭としたオカルト関係者がひそかに暗躍したのだが、それは別の機会に語ろう。

 ともあれ、裁判は斯くして進められた。
 裁判中にもかかわらずサンマグノリア共和国が「革命祭」を実行するという珍事があった。
 さらには、恐れていた宇宙怪獣の襲来---小集団が迎撃を潜り抜けて来襲して被害が出た「流血の革命祭」に発展するという事件も起きた。

 それでも慎重に審議や公判は続けられた。ここで止めては絶対にならない、その意志があったからだ。
 その間にも、各国ではエクソダスの準備、地球連合による再発防止策の実施などの処々のイベントが行われていてもなお、進められていた。
罪は明らかなのだし、エクソダスのことを考えるならばさっさと罰を下し、逃げ出せばよかったかもしれない。
けれども、それをどの国も選ばなかった。

 そして、結審したのは星暦2148年に入り、暫くしてからであった。
 検察側である星暦惑星各国の求刑と弁護人の主張を合わせて、政府首班などが責任を負うという形で刑が下された。
具体的なところを長々と書くのは省くが、責任者や実行者はその責任や犯罪の重さなどの事情を鑑みた物となった。
 とはいえ、処刑台送りになった人間の数はかなり膨らんだし、そうでなくとも地球連合管轄下での懲役刑などはさらに多かった。
命や諸権利までも取られなかった人間でも公職追放などの罰を下されたりするなど、多くの人間がそれまでの罪のツケを支払うことが命じられた。

 他方、司法取引などを認められた人間がいたことも確かであった。
 例えばであるが、サンマグノリア共和国の得意分野である医療などに関わる人材および関係者たちが該当する。
パラレイドデバイス以外にも、そもそもサンマグノリア共和国の技術というのは決して劣ったものではないのだ。
星暦惑星各国にとってみても、そしてサンマグノリア共和国正統政府としても、回収などをしておきたい分野であった。
一部の政府関係者や官僚、技術者、軍人、技能者、その他文化教養人などがその対象に選ばれることになった。
 ある意味で自由を奪われたと言えるだろうが、今奪われたモノより多くを彼らは奪ってきたのだ。
自国民だったエイティシックス達、在サンマグノリア共和国の他国人、そしてレギオンへの利敵行為であらゆるモノを。
この程度で済ませているというのがどれほどの恩情であるか、各国がどれほどの怒りを理性でこらえているかは言うまでもないことだった。

 こうして終わりを迎えた裁判において、結局のところサンマグノリア共和国はどうだったのか?
 特に書くべきは存在しかなかった、というのが事実だろうか。
 結局彼らは、個人レベルならばともかくとして、集団としては最初から最後まで変わり得なかった。
 そういうことであったのだ。

696 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/01(金) 22:37:42 ID:softbank126036058190.bbtec.net [41/59]

以上、wiki転載はご自由に。
ほんのちょっぴり前進。

仔鹿についてはちょっと触れるだけにしました。
まだ原作で明言されていませんからね、現段階での推測で書いています。
なので、後々になって修正するかもしれません。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 憂鬱SRW
  • アポカリプス
  • 星暦恒星戦役編
最終更新:2023年09月27日 20:23