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現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件サードシーズン?特別番外編 サードシーズン中のウマ娘達の出来事 その28


マチタンの天皇賞春の勝利から数日後、暦は五月。
適性の関係でマイル部門で戦っていたニンスナが初めて挑むGⅠレース、NHKマイルC。
前日が大雨だった事も有り、バ場は重バ場。当日の天気自体は晴天だったが、かなり走りにくい状態だった。
だが、その程度で動揺するウマ娘はここ(中央)には居ない。
レース開始二時間前に控室に到着して座禅を組み、精神統一を図るニンスナ。
同時に・・・自身の過去の事を思い返していた。

さて、件のニンスナだが普段は筆談で会話するのが彼女のスタイルであり、ウィニングライブ以外で彼女の声を聞いた者は殆ど居ない。
設定資料集でも書いたが、彼女の声を長時間聞くと彼女に魅了されてしまい、正常な意識を保てなくなるという厄介な性質を持っていた。
その為、幼少の頃から同年代の娘・ウマ娘達から気味悪がれ、日本へとやってくるまで友達と呼べる者は居なかった。
両親もまるで腫物を触るかの様な接し方をしており、本当の意味で心を開く事が出来る人物が居なかった程だ。

そんな幼少期だった為、かつては今の彼女からは想像も出来ない程の暗い性格であり、家で本を読んでいる事が多かった。
彼女の愛読書は・・・父親が一時期「ジャパニーズ忍者」にハマった時に購入した様々な忍者関係の書籍であり、異国の超人に強い憧れを抱く様になる。
やがて独学で「ロシア忍術」なる物を生み出す事となり、優れていた身体組織も合わさって彼女というウマ娘をの在り方を作り上げたと言っても、過言では無い。

そんなある日、たまたまテレビで見たウマ娘達のレース。それに、彼女は釘付けとなった。
自分とそう変わらないウマ娘達が、自身とファン達の夢を背負って戦い、一着の栄光を勝ち取ったウマ娘がセンターで歌って踊る。
そのキラキラした光景が忘れられず、プロのウマ娘として走りたいという夢も抱く様になった。
      • のは良いのだが、残念ながらロシアはお世辞にも競バに力を入れているとは言い辛かった。
一応モスクワで行われる「ボリショイ・フシエソユツニー賞」、別名ソビエトダービーというのも有るにはあるが、IRPACに承認されていないという事も有り、メジャーとは言い難かった。
そんな訳で、プロのウマ娘として大成するには海外に出るしかなかったが・・・彼女が選んだのは、より近い欧州ではなく日本だった。
彼女曰く、

ニンスナ『どうせなら、忍者の本場たる日本で一流ウマ娘になりたい』

との事。
両親は反対し、せめて欧州にと説得している最中にあの事件が。そう、日本の神様の手による『ウマ娘超大陸世界召喚事件』だ。彼女も巻き込まれた口だった。
そして問題となったのは、呼ばれたウマ娘の大半は日本のウマ娘達であり、後はフランスに10人前後。それ以外の地域は極少数だったという事だ。
そのせいも有ってか、欧州のウマ娘の養成機関がこの時点では転移してきていないという事だった。つまり、選択肢の一つが文字通り無くなってしまったのだ。
何より彼女の意志はとても固く、自身の意思を遂に曲げる事は無かった。その為、両親も説得を諦めたのだった。

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それからは、まさに怒涛の様な日々だった。日本への留学申請・日本語の読み書きの習得・日本でウマ娘として走る際に必要となる様々な知識の習得に、中央トレセン学園への入学試験。
のんびりした日が殆ど無かった程だ。
幸い申請の方は無事に通り、入学試験も合格。念願だった日本への留学が叶う事となる。
出発当日、残念ながら両親は仕事の都合も有って見送りは出来ないと言ってきた。
まぁそれは仕方がない。生活をしていくのに必須であるし、何より両親との仲は未だ良好とは言いにくい。筆談で会話する様になって以降、以前程はギクシャクとはしなくなったものの、
やはり壁や距離を感じるのは無理も無かった。
そして、いよいよ出発の飛行機の搭乗の為に移動しようとした、その時だった。


ニンスナ父・母「「ニンスナ!!」」

ニンスナ『父上!?母上!?』


何とそこには両親の姿が。どうやら無理を押して見送りに来たらしい。
互いに抱きしめ合う三人。両親は涙を流していた。


ニンスナ父「どうか・・・どうか、体に気を付けて頑張るんだぞ!」

ニンスナ母「貴女は、私達の娘・・・きっと、一流になれるって信じているから!」

ニンスナ「・・・・・!!」


両親から受けた、初めての愛情の言葉。そしてその温かさ。
ニンスナも、自然と涙を流す。この時初めて、家族は一つになれたと言えよう。

日本に留学後の、始業式後のレクリエーションでの自己紹介での事。筆談の理由で色々と色眼鏡で見られるのではないかと恐れていたが・・・
有るウマ娘の言葉が、それを吹き飛ばした。


ビーフ「へー、そんなに綺麗な声なんすか?」


何事もポジティブにとらえるビーフが、そんな事を言う。
今までそんな事を言われた事が無かったニンスナは、思わず面食らった。


ニンスナ『・・・拙者の事を怖いとか思わぬでござるか?』

ビーフ「全然。ニンスナ本人は、何も悪い事はしていない訳だし、怖いなんて全く思わないっすよ」

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さも当然とばかりにそんな事を言うビーフ。それにつられてか、スラテンも自分の意見を述べる。


スラテン「・・・ビーフちゃんの言う通りだと思う。長時間聞かなきゃ大丈夫なんだし、何より良い人ってのは確かだからね」

ビーフ「その通りっすよ。だから、これからよろしくっすよ!」


二人の言葉に、ちょっとだけ恐れを抱いていたクラスメイト達も「二人の言う通り」となり、緊張感が霧散する。
それ以降三人は意気投合し、付き合いが始まる事に。
そんな事も有って、二人にカノープスへの入部に誘われた時も了承したのだった。
因みに、カノープスに入部して思ったのはというと、皆がとても個性派揃いだった事だ。
そしてその個性を否定せず、寧ろ伸ばして行く事を大事にするというチームの空気をいたく気に入り、後年のインタビューにて


ニンスナ『このチームに入って、本当に良かった』


というコメントを残している。
そしてそれ故に、GⅠの栄冠を勝ち取る事でこのチームと皆に報いたいと強く願う様になったのだった。

レース開始1時間前には、他のチームメイト達も到着。
精神統一を図る彼女を前に、無言でその様子を見守る。やがて時間となり、係員が呼びに来た。


係員「ニンジャスナイパーさん、時間です。本バ場まで来て下さい」

南坂「・・・ニンスナさん、頑張って来て下さい」

ビーフ「勝利を信じているっすよ!」

スラテン「勝つって信じているから!」


チームメイト達のエールに、彼女は・・・このチームに入って初めての筆談では無い言葉で返事を返す。


ニンスナ「・・・・・行ってきます!」


初めての事に驚くメンバー達だったが、皆を代表してツインターボがエールを送る。


ターボ「ああ!行ってこい!ニンスナ!」


ターボの言葉に無言で頷くニンスナ。
彼女の夢とプライドをかけた戦いは、間もなく始まろうとしていた。

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以上です。すいません、レースシーンまで行けませんでしたorz
唐突なニンスナの過去の描写ですが、これまで殆ど触れていなかったのでこれを機に書いてみる事に。
まぁそのせいでレースシーンまで行けずに力尽きましたが(本末転倒)
カノープスでも筆談の理由は聞かれはしましたが、ビーフやスラテンと同じ様な答えが返ってきました。少なくとも、カノープスならあっさり受け入れそうなので。
次回は今度こそ、NHKマイルCの描写となります。重バ場の中、彼女がどう戦うか、お楽しみに。それでは。
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最終更新:2023年10月01日 09:20