195 名前:635[sage] 投稿日:2023/05/09(火) 21:02:03 ID:119-171-254-71.rev.home.ne.jp [13/32]

ネタ 戦後核アレルギーべいてー世界 第三話べいてーさらなるアレルギー発症の可能性に至る


帝都東京の宮城にて急遽開かれた御前会議、それの沖縄のより齎された一報により開催が決定された。
現地指揮官の弾劾を行う為に開かれた筈のそれは重苦しい雰囲気に包まれている。
やんごとなき方は手にした写真を幾つも見ると痛ましい物を見る表情をされる。
此度の御前会議は本来であれば開かれる筈もなかったものだ。その原因となたったのは沖縄よりの電文。


【敵新型爆弾ノ誤爆ニヨリ連合国軍地上部隊ハ瓦解セリ。彼ラノ救助ノ為現地連合国軍ト一時停戦ヲ決定ス】


県知事、現地陸海軍将兵の連名の電文、それが知らされた大本営には怒号が飛び交った。
裏切りだ、勝てる戦を何故行わぬと。
急遽やんごとなき方の列席の下御前会議が開かれ現地指揮官や知事の解任と弾劾、戦闘続行が決定される筈であった。
だが沖縄より連絡機を急いで飛ばした夢幻会の一手によりそれらは全て覆された。

重苦しい雰囲気の中やんごとなき方が手にした幾つもの写真、
それもこの時代では貴重なさくら天然色フヰルムなどの国産カラーフィルムによる総天然色の写真こそが原因であった。
それらの写真を見終えると眼鏡を外し眉間を揉み、眼鏡を戻すと持っていた写真を侍従に渡すとその場の陸海の将校らに見せる様に言う。


「貴様らはそれを見ても戦争を続けよと申すか。」


その言葉に戸惑い写真を回し見る大本営の軍人達。
焼け焦げ火傷で爛れた肌をした人々、水を求めたのかため池や川を埋め尽くす死体。
写真を回して見る将兵らは写真を見ると皆顔を青ざめ口を抑える者もいる。
それを見渡しやんごとなき方は口を開かれた。


「新型爆弾の誤爆という自業自得とはいえ斯様なる災禍に見舞われた米英の将兵らを殺せと沖縄の者達に申すか?
人としての良心から彼らの命を助けようとする者らに対して?」

「い、いえそのような…。」


詰問するような口調に慌てる大本営の軍人達。


「加えこれだけの災禍を生んだ米新型爆弾について如何なるものか把握をしているのか?」


さらなる質問に詳細な回答出来ない軍人らに対しこの場唯一の夢幻会系の高級将校、夢幻会では宮様と呼ばれる人物が挙手する。
この場では下から数えた方が早い立場故に他の者が発言を阻もうとするがやんごとなき方がそれを制した。


「陛下、此度沖縄で炸裂した敵新型爆弾は原子爆弾なる新型兵器であると推察されます。」

「原子爆弾、とな…。」

「はい、科学者によれば物質そのものを膨大な熱などに変換する故に威力は既存の火薬を有に超え、
威力は一発当たり九二式爆薬(TNT)の量に換算すれば一千五百万から最大二千万キログラム相当の威力があると推定されます。」

「二千万!?」


想像を絶する威力に驚きの声を上げる軍人ら、対しそれだけではないと言う。


「狙ってかどうか定かでありませんが救助した連合国軍兵士らの手当に当たった軍医の報告から、
ある種の毒と言うべきものを発することが確認されております。
新型爆弾炸裂にさらされた者や後に空より沈降した灰や黒い雨にうたれた者は著しい免疫機能の低下や止血が不可能になる事例がございます。」


この時代はまだ放射線というものが認知されていない故にあえて毒という言葉を使ったが効果は絶大だった。
この場の夢幻会ではない軍人の認識では米国が作り出した新兵器は空前絶後の威力の爆弾と先の大戦で猛威を振るった化学兵器を兼ねると理解した。
そんなものを敵国が作り上げ複数個前線に投入したという事実から頭に浮かぶのはこれより戦略爆撃に投入されかねないという想像だ。
敵が数百の爆撃機に新型爆弾を搭載、もし一機でも帝都への侵入を許してしまえば…。


「米国は…その爆弾をどれ程製造しているのだ…?」

「小官には技術的なことに関する詳細は分かりかねます。
ですが前線へ投入したこととスパイの情報などを総合すると前線に直ぐ投入出来る程度の新型爆弾を保有しているのは確実でしょう。」


絞り出す様に問う大本営の軍人が問い、その返事に更に顔を青くしていた。
軍人の頭の中では空を覆うほどの爆撃機全てに原爆が搭載されているのかもしれない。
史実のデータから大凡の生産数、それこそ十に届かぬ数であることを把握しているが戦争継続派に教える必要もあるまい。

196 名前:635[sage] 投稿日:2023/05/09(火) 21:04:00 ID:119-171-254-71.rev.home.ne.jp [14/32]



その頃アメリカアメリカで騒動が起きていた。
対日戦を推し進めていた史上初の四選した大統領が己の栄光となるべき史上初の原爆の使用と予想される勝利。
それが誤爆という結果に終わったとの報聞いた後に大統領が突如としてポックリと逝ったので政治的に混乱に襲われていた。


「すまない。私の聞き間違いかもしれない…もう一度言って貰えるかね?」

「はい、新大統領閣下。沖縄の日本軍に対する原子爆弾の投下は失敗し我が軍に対し誤って投下。
結果陸軍は壊滅的打撃を受け海軍は陸軍の救助にあたり動くことが不可能、対日戦の早期終結の戦略は破綻しました。」

「この情報はいつのものかね?」

「かれこれ数日経ちます。既に現地では日本軍との間に臨時停戦が成され原子爆弾の被害を受けた我が軍の救助が日本と合同で行われています。」


ワンシンDC、ホワイトハウスの執務室でその報告を受けたのはつい前日に前任者の逝去により棚ぼた的に就任した大統領。
彼は己の耳を疑いそれが正しいと認識すると頭を抱えた。
他にも前任者から引き継がれていない色々と知らない情報が出るわ出るわ。

原爆を投下すれば日本を早期に屈服させドイツに集中出来るというから日本からの条件付き講和の打診を黙殺。
原爆の使用を反対、国体護持の保証による早期講和を求める声を無視し使用を決断しただの。
現在日本に対し中立である筈のソ連の参戦要請だとか、満州や日本の一部を譲渡するだの、日本の無条件降伏しか認めないだとか。
それが結果は日本と対峙する米軍どころか連合国軍の実質的な壊滅、しかも原因が味方による誤爆である。
これが日本軍による大打撃ならまだしも前任者が使用決定した原爆がアメリカンボーイズ頭上へ投下されたのが原因とか…政治生命に関わってくる。


「な、ならばもう一度沖縄で原爆を使用すれば…。」

「日本軍は原爆の威力を目の辺りにしました…原爆を用いれば今度こそ日本は死物狂いでの抵抗を行うでしょう…。
それに彼らの元にいるアメリカンボーイズの命が危機にさらされる恐れもありますな。
ああ、新大統領は彼らが救助したアメリカンボーイズの命は安いと?」


早期講和を主張していた共和党支持者の軍高官は言外にこれ以上無駄死にさせる気かと言う。
前大統領の時からいる国務省高官が続ける。


「それに現在日本軍と我が軍は臨時停戦を行い共同で救助にあたっています。
この状況下で再び核を使用すれば我が国の将兵らを巻き込む上に停戦合意を無視したという悪名を背負うことになります。」


そこへ焦った様子の軍人続き国務省の役人が入ってくる。
軍人の方は陸の憲兵、国務省の役人はスイス等での対日交渉担当であった筈。
何か紙を渡され軍高官は眉を潜め、国務省高官は顔を青くする。
軍高官は国務省高官に耳打ちし国務省高官は更に顔を青くすると逆に軍高官に紙を渡し軍高官は眉を顰めた。
そしてなにやら四人で話し合っている。


「この情報前大統領は…。」「全く知らないということはないかと…。」
「全て知っていた可能性も…。」「バカな…合衆国に対する裏切りではないか…。」


そして高官二人は互いに顔を見ると頷く。


「大統領…最早対日戦は無意味です。無条件降伏ではなく条件付きでも良い、講和を行うべきです!」

「早期講和を…我々は日本に構っている余裕などありません。ご決断を!」


二人は揃って大統領に日本との講和を迫る。


「な、何を言って…!今更「そんなこと言ってる余裕はないんだよ!!」ッ!?」


軍高官は持っていた紙全てを大統領に叩きつける。
憤った声で軍高官は吐き捨てる様に言葉を出す。

197 名前:635[sage] 投稿日:2023/05/09(火) 21:04:37 ID:119-171-254-71.rev.home.ne.jp [15/32]


「今報告があった…誤爆に関わった者達の内最初のは荒れた天候によって照準が乱れたことによる誤爆に間違いない。
だが二度目の誤爆は誤爆では無く意図して行われた可能性が出てきた。」

「へ?」


間抜けな声を出す大統領。


「一応と拘束した二度目の誤爆したB-29の乗員の所持品検査をしたところマインカンプ…ナチの聖書が出てきたよ。
別の爆撃機の乗員からソレを勧められたという証言も得られた。」

「加え彼に親しい者の中にドイツ系アメリカ人協会…ナチの下部組織の所属員と主催するイベント自身に参加していた裏付けが取れたそうです。」

「ルメイがそのナチ公を必死に庇ってるから下手すれば太平洋の爆撃機部隊にナチの思想汚染が蔓延っている恐れすらある。」


それだけではないと国務省高官は続ける。


「ソビエト連邦にマンハッタン計画の詳細、原子爆弾の製造方法まで漏れています。」

「!?」

「日本からの情報だそうだ。あの国は長い間ロシア帝国、そしてソ連に相対していた国だ。どうも独自の情報網をソ連に持っているらしい…。
加え真珠湾攻撃そのものがあの国の手の内だった可能性も出てきた。」

「前大統領はその情報は…?」

「黙認していたか可能性もあります。
加え、日本がマンハッタン計画の情報とドイツの物資の流れを精査した結果ドイツが原爆の製造に取り掛かっている可能性が高いと…。
最早日本に構っている余裕はありません。大統領、ご決断を…。」


大統領は全てを聞き終わると執務室の机に力無くもたれ掛かった。
この後、彼は日本との条件付き講和に同意することのみを求められた。日本の降伏というアメリカの絶対的な勝利ではない。

棚ぼた的に大統領となった彼に栄光などはない。彼に求められたのは前任者の作った合衆国にとって巨大過ぎる負債…。
精算出来るかも分からないそれを己の政治生命と引き換えに可能な限り精算することだった。

198 名前:635[sage] 投稿日:2023/05/09(火) 21:09:53 ID:119-171-254-71.rev.home.ne.jp [16/32]
以上になります。

やんごとなき方キレる。
軍部、肝を冷やし過ぎる。
緩褌大統領、史実よりも長生きするも爆弾と汚名残して逝く。
棚ぼた大統領、政治生命断たれ再選不可能となるでした。
これより日米は一旦停戦決定、講和を模索するもドイツの盛大なやらかしにより講和どころかソレ以上の関係を結ぶこととなります。
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最終更新:2023年10月10日 16:44