214 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/21(月) 21:49:26 ID:softbank126036058190.bbtec.net [28/159]

日本大陸SS 漆黒世界アメリカルート(Re)「フロンティア・ストリップを超えて」2




 さて、始まってしまったフロンティア・ウォーとも呼ばれる紛争。
 意外かもしれないが、この紛争は外交から始まったのである。
 そも、最初に米国の行動を問題視したのは日本であり、発端がアメリカ合衆国内からの避難民問題であったのだ。
日本側の視点からすれば、ちょっと前に独立したアメリカ合衆国の不手際によっていらぬ客に庇を貸す羽目になった案件だったからだ。

 この日米間の問題に対して仲介役となったのはイギリスであった。
 ここでイギリスの思惑を正直に書けば、日米が程よくぶつかり合ってほしいというものであった。
 確かに日英間の関係は悪くはない。アジア利権を保証する日本と悪戯に事を構えるのは決して利巧とは言えない判断だ。
 しかし、だからと言って野放図に日本が伸長していくことを是とするかといえばNoであった。
 よって、両者が新大陸で程よい潰し合いをして、自国がうまく両者の間で立ち回ってうまく利益を勝ち取る算段であったのである。

 こうして開かれた陰謀渦巻く外交の場。
 まず、日本側はかねての予告通り、避難民問題への対処を要求した。
 避難民たちが北米の日本領へと入ってきたのはアメリカ合衆国の政策や行動の結果であり、その対処をすべきは米国と論を展開したのだ。
日本とてアメリカ国内の動きについてはいくつかのルートで調べており、その原因にたどり着くことは容易かったのだ。
ここには日米間の軋轢を生みたかった英国のリークも含まれていたのであるが、それはさておき。
 これに対して米国は、避難民はあくまでも自主的にアメリカを出国したのであり、それについて米国は責任を負えないと主張した。
強制移住政策を決定したというのは否定こそしなかったが「彼らが合衆国内にとどまることもできた」とも証言した。
つまり、米国からすれば日本が言うところの避難民は、単なる西部への移民希望者ということになるのである。
そこにたまたま日本の領土が存在しただけであり、作意などはないというわけである。
 では自主的に戻る移住者を受け入れるかと日本側が問えば、それは違う、と米国は否定した。
合衆国民としての義務を放棄したのであるから、当然権利は失効するわけであり、戻ることはかなわない。
そも、米国内での政治的な決定に嘴を突っ込むのは内政干渉だ、とまで言ったのだ。

 当然、この舐め切った、そして矛盾した言い訳が日本に通用するわけもなかった。
 この移住者というのが、実質的な追い出しを受けた結果生じたというのはすでに知るところであったことだ。
避難民を一応は受け入れた日本は、その事情などを調査することにしたのだ。その結果として白人による追い出しにたどり着いていた。
いくつかのネイティブアメリカンの民族あるいはグループは、アメリカの武力による監視もあって追放されたことにもだ。
 確かに米国の言うようにこれは米国内の問題であって、それに難癖付けるのは内政干渉ではある。
 だが、その実害が他国に及んでいるとあれば、いくら内政干渉だと突っぱねるにも無理がある話だ。
 まして主張に無理がありすぎるとあれば、なおの事日本側が受け入れるわけはない。

215 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/21(月) 21:50:20 ID:softbank126036058190.bbtec.net [29/159]

 しかし、そんな主張を米国は鼻で笑った。
 すでに移住者を受け入れているならば、最早そちらの住人であり、そちらで対処すべき事案であると主張したのである。
食い下がる日本であったが、米国の代表は一顧だにすることもなく、同じ主張を繰り返すのであった。
 この外交交渉は複数回にわたって実施されたが、結局のところ両者は平行線をたどり、どちらも譲らない展開となった。
英国も妥協案を形ばかりとは言え出しはしたのだが、日米のどちらもが納得しうるそれは導き出されなかった。

 この外交問題に対し、当時の米国内および政府は極めて傲慢な態度で臨んでいたというのが記録に残っていた。
つまるところ、時代はすでに1840年代を超えており、すでにマニフェスト・デスティニーというものが定着しつつあったのだ。
加えて言うならば、当時のアメリカ政府はいわゆるジャクソン流民主主義の流れが主流であり、イケイケ押せ押せであった。
つまり、アメリカ人にはこの北米大陸を開拓する使命があり、手に入れるべきだという考えが主流であった。
 そも、エイジ・オブ・ジャクソンとも呼ばれる強権的な政権を維持した彼は、ネイティブアメリカンの強制移住や虐殺などにも積極的にかかわっていた。
そんな路線のアメリカ合衆国が障害となりうる国の意見などまともに取り合うはずもなかったのである。
さらに言えば、当時のアメリカにおいては強制移住などを行ったのは、ネイティブアメリカンのためだ、という認識さえあったくらいだった。
 こんなことで日本の主張が受け入れられず、鼻で笑われるレベルだったのは当然の帰結であった。

 そして、北米を手に入れることがアメリカ人の使命である、という考えを基に、日本がアメリカの土地を侵食しているとまで言い出したのだ。
つまり、アメリカが善意で移住を促したネイティブアメリカン達を出汁にして、日本がアメリカに対して侵攻や侵略を考えているとまで。
 当然であるが、日本はこの時点でそんなことは考えていない。厄介な住人を送ってくるのをやめろとしか言っていないのである。
当然の抗議をしたが無しの礫。それなりの期間行われた交渉も結果を出せず、決裂が見えてきた。

 そして、最後の交渉も平行線を崩すには至らなかった。
 結果として、両者の領土の線引きと、空白の領域がどの程度あるかの確認が行われ、事実上の係争地域となることが定まった。

 アメリカ側は今後も西進を進めていくという方針を発表。
 国内においても、そのような趣旨の法案および決定を下し、日本の開拓した領土への侵入および侵攻を合法化する流れを生み出した。
また、抵抗が著しければ国軍の投入までも許可するという大盤振る舞いであった。

 対して日本はこの米国側の侵攻---半ば事実上の戦争に対抗することを発表。
 各国に米国の無茶苦茶な主張を公表し、国際的な世論を味方につける動きをとった。
 また、同時に係争地域となったフロンティア・ストリップに接する地域の大名らに動員を指示。
屯田兵や幕府直轄の軍をも動かして、予想されるであろう米国の侵攻を迎撃する体制を整えることとなった。

 斯くして、戦争とまではいかなくとも、フロンティア・ストリップを舞台とした二国間の激突の火蓋が切って落とされた。
互いが互いを国として認識しないために戦争として成立せず、ある意味ルールなし無制限の殴り合いとなった、奇妙な紛争の始まりとなったのだった。

 この時の英国は、うまくアメリカのヘイトを北米日本領に向けることに成功し、外交的においしいところを得ることができた。
 しかし、日本共々、このルール無用の殴り合いによってアメリカが不可逆的なまでの変化……否、変貌を遂げることをまだ知らなかったのだ。
 結局のところ、大きな世界の潮流というのは最終的にどのようになるか誰もが予想しえず、誰もが測りきれないということかもしれない。

216 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/08/21(月) 21:51:41 ID:softbank126036058190.bbtec.net [30/159]

以上、wiki転載はご自由に。
オリジン版と異なり、事実上の戦争状態に突入いたしました。

なお、当然のように舐め腐っている米国は日本によってそれはもう痛い目に合い……不可逆的変貌を遂げることとなります。

日本「殴ったら壊れた…」
英国「当たり前でしょ…」

おや、米国の様子が……?
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最終更新:2023年10月11日 20:24