437 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/03(日) 22:07:04 ID:softbank126036058190.bbtec.net [68/159]

日本大陸SS 漆黒世界アメリカルート(Re)「フロンティア・ストリップを超えて」4




 さて、これまでの話にあったように、アメリカはそもそも西部に行くための効率的な手段の構築に追われることになった。
アメリカ国内、そしてこれから開拓予定の土地を通過し、さらにはその先にまで可能な限り伸ばした、巨大な鉄道網が必須であると。
可及的速やかにこれに着手し、完成させ、戦争を行わなくてはならない。各国に笑われている現状を打破するには必須だったのだ。

 さりとて、あまりにも広大過ぎた、という現実的な問題があまりにも大きくのしかかった。
 建設費用に関しては国債の発行のほか、戦時でなくとも国内での輸送に使うことによってペイできることだろう。
何も戦争にしか使えない、そんな用途の制限されたものではないのだから、いずれは国内に大規模な鉄道網として成立するだろう。

 しかして、問題はまだ山積していた。その一つが工員の問題である。
 端的に言えば、人の手が圧倒的なまでに足りない、ということだ。
 この時代において現代で考えられるような重機というカテゴリの存在はあまりにも少ない。馬や牛が荷物を運搬するのにまだまだ現役の頃だ。
蒸気機関を利用した機械類も存在していないわけではないのだが、基本的にはそれらの数などはどうしても少ない。
仮に潤沢に存在していたとしても、結局のところ人の手による作業を行う必要があるのは明白であり、速度は人の数に律速されるのである。

 この問題に対してアメリカは当然各地から人を集めることによって対応しようとした。
 だが、規模が規模である。州の内側だけに限らず、州をいくつも跨ぐような線路を複数個所で同時に着工、推進しなくてはならない。
単純であるが肉体的にかなりきつい仕事を強いる必要があり、また、適切な精度というものが要求される仕事だ。
 そして、当然の如く、それに目をつけることになったのである。
 即ち、奴隷の動員であった。
 この時代、当然の如く使われていた人型の労働戦力を遊ばせるわけにはいかなかったのであった。
 むしろ、「人」を無理に消耗させるよりもある程度使い潰しが効く奴隷を動員したほうがコストにも優れていたので推奨されたほどだった。
その様な判断の下、各地から奴隷が集められることとなり、また国外からもどんどん輸入して現場に放り込むことにしたのであった。
 ここには、「自主的参加」とされたネイティブアメリカン達も含まれていた。
合衆国側は居留区や今後の生活のことを引き合いに出して彼らを引っ張り込んだのだが、約束をどうするかは明白だ。
 ともあれ、こうして必要な手数を確保し、いよいよを以て大工事の幕が開けたのであった。

438 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/03(日) 22:08:12 ID:softbank126036058190.bbtec.net [69/159]

 ここでドキュメンタリー番組が十数本できそうなくらいの大工事について長々と語るのはよしておこう。
 ともあれ、工事はアメリカという国家の威信にかけて推進され、多くの犠牲を支払いながらも完成に向かった。
具体的には、過酷な労働で奴隷たちが死んだり、病気が流行ったり、あるいは食糧不足に悩まされたのである。
さらに急いだことや専門職の人間が少ないことが遠因と思われるトラブルが相次いだのだが、それはそれ、である。
 とりあえず、合衆国各所からミシシッピ川付近という要害であり一定区間までを結ぶ複数のラインが構築されたのだ。
 宣戦布告がなされてから工事が慌てて開始され、7年余りという時間が過ぎ去っていたことはまあ目を瞑ろう。泥縄にしては頑張った方だ。
西暦にして時に1840年も半ばに入ってからの、ようやっとの二度目の激突の準備が整ったのである。

 だが、そんな時間を費やしている間にも、日本側もまた行動を開始していたのも事実であった。
 日本側もまた、開拓地各所を結ぶ鉄道の敷設を進めており、さらには防衛しやすい位置までの開拓を急ぎで進めたのだ。
天然の要害として活用することがきめられたミズーリ川に沿うように、開拓地であり防衛陣地の形成が急がれたのであった。
元より開拓が早かったのが日本側であったことから、アメリカよりもハイペースで進められたのは言うまでもない。
 さらに現地の屯田兵などの強化や最新兵器の配備も順調に進められ、その準備は着々と進んだのである。

 さらに、日本側においても、避難民問題の解決として兵役などにつくことによる市民権付与というのが、ネイティブアメリカン達になされた。
余所者であり、傍迷惑な移住者ではあるが、一応人並みの扱いくらいはして活用しようという意図が存在していた。
この点においては日米双方が同じような考えで行動していたと言えるであろう。

 言うまでもないが、この7年余りの期間は偽りの戦争といわれるほどに、戦闘の起きない時代だった。
 いや、一応アメリカ軍や開拓団が日本領目がけて進撃したり、あるいは不意な遭遇戦になったりは下のだが、本格的な激突は少なかった。
 寧ろ、武力による戦争というよりも、北米の土地をいかに早く切り取るかの開拓戦争の様相を呈していたくらいだったのだ。

 そして1850年を間近に控え、米国は処々の準備を完了させた。
 大失敗を経た第一次遠征から教訓を得た第二次遠征隊が結成され、再び侵攻を開始したのであった。
鉄道による圧倒的なスピードでの移動と物量の輸送を実現させ、さらには武器なども揃えた、前回よりも規模の大きな進撃。
万難を排しての北米解放の実現のために。フロンティア開拓のために。天命のために。誰もがそう嘯き、声をあげた。
もはや熱狂的とすら言えたそれらにより、日米の激突は過激なものとなることが確定となった。
 フロンティア・ストリップを超え、西と東の国家は再び雌雄を決するために動き出す、そんな時代が始まったのだ。
その戦争と激突の結果に、一体どういうことが起こるのか全く未知なままにという不安点を残しながらも。

439 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/03(日) 22:10:08 ID:softbank126036058190.bbtec.net [70/159]

 以上、wiki転載はご自由に。
 ようやっと戦争再開です。オリジン版からの剥離がだいぶ進みましたな。
 すでにあちこちに仕込みがあります……いずれはドカンしますね。
 では次回をお楽しみに。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 日本大陸
  • 漆黒世界
最終更新:2023年10月11日 20:36