722 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/04(水) 19:11:06 ID:softbank126036058190.bbtec.net [69/124]
憂鬱SRW ファンタジールートSS「千鳥は舞い降りた」
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 ブリーフィングルーム
このウィッチは何者だ?
その認識が、502JFWを構成するウィッチたちの間にはあった。
雁淵ひかり。扶桑皇国から派遣されるはずだった雁淵孝美の代理として502JFWに派遣されたウィッチ。
訓練校を繰り上げ卒業し、後方での基地の勤務という予定を変更してやってきた代役、そのはずだった。
「本日付で502JFWに配属となりました、雁淵ひかり軍曹です。
未熟者ではありますが、よろしくお願いいたします」
敬礼、所作、喋り方、視線。見てわかる範囲だけでも、明らかに繰り上げ卒業したウィッチとは信じがたい。
歴戦とまではいわなくとも、風格というものが備わっているのだ。覚悟というものが決まっているというべきだろうか?
部下のウィッチたちの多くが困惑するのを、ラルはしょうがないと受け止めていた。
彼女の件についてよく知っていたのは自分と指導官を務めるロスマンくらいで、断片的な情報しか伝えていなかったのだから。
(とはいえ……)
自分の席へときびきびと戻るひかりの姿を見送りながらも、ラルは思うのだ。
想定上に仕上げてきている、と。一芸を主眼にして、あとは精神面などを重点的にしたというが、覚悟が決まりすぎなのだ。
これが繰り上げ卒業をし、1週間ほど前に初陣を迎えたばかりという新兵なのだろうかという疑問がわく程度には。
ともあれ、そういうメンタル面での完成が見られるならば、あとは実戦でどう出るかを気にすればいいだけだ。
実技ではなく、実戦。訓練で磨いた技量を命のやり取りをする場において生かすことができるかどうか、それが重要なのだ。
幸いにして、実戦の機会には困っていない。休みも知らずに襲撃や偵察を繰り返すネウロイ相手なのだから、困るはずもないのだ。
「というわけだ、各員は協力して任務にあたってくれ。
雁淵軍曹には早速実戦に出てもらう。小手調べというところだな、サーシャ」
「はい、皆さんには伝えてありましたが、この後の定期哨戒のローテーションには早速雁淵軍曹を交えて出撃してもらいます。
レーダー網に反応はありませんが、低空域からの進入も考えられますので注意をお願いします。
哨戒班編成については---」
サーシャに場を譲り、ラルは再び黙考する。
待ちに待った支援物資や補給物資、その他装備類が届けられ、502JFWもさらなる攻勢に出られるめどが立っている。
ジェットストライカーへの慣熟も行いながらも、その他の通常兵科との連携も前提とした大規模作戦に向けた準備を整えている最中。
果たして、彼女がどれほどの戦力価値を持っているのか、どれほどできるのか。
訓練や演習だけ優秀なウィッチならいくらでもいるが、激戦区でやっていけるほどのウィッチなどそう多くはない。
いや、あのティル・ナ・ノーグでの訓練を抜けたならばそんな甘いことはないとは思うが、果たしてどうであろうか。
信頼していないわけではない、ただ、うまくいくことを前提としてはいけないと、自分を戒めているのだ。
(そう、魔力があっても、固有魔法があっても、死ぬときは死ぬ……)
あのオーバーロード作戦などいい例だ。
ネウロイはこちらの想定の上を常に行く、それを嫌というほど教えられたのがあの作戦だ。
どちらかといえば、上の意志で戦場に送り込まれる彼女のことを危惧しているといった方が正しい。
たとえその決定を下したのが、世界最高峰のウィッチの決定であったとしても、世の中には絶対はないのだと。
723 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/04(水) 19:11:49 ID:softbank126036058190.bbtec.net [70/124]
ストレッチと準備運動完了。
ライトニング・コンテンダー、本体および予備弾薬よし。ホルスターの状態OK。
補助エーテルリアクターの稼働状況よし、エーテルプロテクターも問題なく稼働中。
主兵装の12.7ミリ重機関銃の予備弾倉も据え付けよし。
HUDの表示系および各種センサー系の異常なし。チェック完了。
(いつも通り、状態はばっちりだね)
装備を確認し終えたひかりは自分のストライカーユニットへと向かっていた。
試製紫電改二L2型、姉の孝美が使っていた千鳥を改修し、ひかりが使うことを前提としたストライカーユニットだ。
ひかりが受領したのは本人のモチベーション向上のためもあり、同時に開発元である山西へのデータ提供の意味もあった。
ストライカーユニットなどの装備の性能要求は昨今のネウロイの進化に合わせ青天井で、メーカーも青息吐息だ。
だからこそ、少しでもデータを集め、新型開発や既存機の改良につながるものは期待されていたのだった。
この最前線で得られた稼働データは後々のストライカーユニットの礎となる、それを知っているからこその装備供給であった。
「んしょっと……」
ストライカーユニットに足を通し、エーテルリアクターから伸びるケーブルを接続する。
完全にウィッチから供給される魔力を代替できるわけではないが、それでも1割から2割ほどはリアクターが補ってくれるのが強みだ。
殊更にウィッチとして持ちうる魔力の絶対量が少なめであるひかりにとっては、その供給補助はとても大きなものとなる。
『メインシステム、通常モードを起動』
『パイロットデータ認証』
『システムロック、解除します』
いつも通りの認証と確認の画面をHUDで見て、状態を再度チェック。
自身と一体化しているストライカーユニットの稼働状態を今一度確かめ、違和感がないかを慎重に見極める。
この工程を素早く終えれば、あとは出撃するだけだ。
『こちら、基地航空管制。雁淵軍曹、発進を許可します。
規定高度まで飛行後、オーカ・ニエーバ所属のAWACSの指揮下に入るように』
『エーテルレーダーでは敵機は確認されていませんが、十二分に注意を』
「雁淵了解。発進します」
航空管制官とのやり取りを短くも終えると、データリンクを確立。
周辺の地形データや天気情報、今回の出撃で同道する僚機などのデータを受け取り、HUD上で整理する。
(さて、初陣)
ここに来ての初めての飛行だ。
元々寒冷地での飛行は想定に入れた訓練をしてきてはいたが、実戦とのずれなども起こりうる、そこは適宜修正が必要だろう。
ここでの最初の評価がどうなるかが決定するのもこの出撃となる。
哨戒が主体であるとはいえ、戦闘も十分起こりうる。なればこそ、実力を発揮しなくては。
「雁淵、アサルト4出ます!」
そして、発進を許可するランプの点灯と共に、光の身体は一直線に空へと飛び立った。
ここに、本来とは違う経緯をたどり、しかし、それ以上の意志を持ったウィッチが新たに空というステージに上ったのだ。
それがどういう演目を繰り広げるか、それは余人の想像に収まるものではないということだけが、確かであった。
724 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/04(水) 19:13:01 ID:softbank126036058190.bbtec.net [71/124]
以上、wiki転載はご自由に。
やっと取り掛かれそうです。
原作イベントはいくらか省略されそうですね。
最終更新:2023年11月03日 11:22