10 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/07(土) 21:59:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [5/204]

憂鬱SRW ファンタジールートSS「千鳥は舞い降りた」3


  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 高度8000m 哨戒ライン上



 流石に哨戒が始まってからは、AWACSの目もあるということもあり、管野も黙々と仕事に取り組んでいた。
 その他にも先月には新型のネウロイが確認されたばかりであり、いつやってくるかもわからないそれへの警戒が必須であったのもある。
以前から確認があった要撃型に加えて、分裂要撃型という強敵が複数出現する可能性は、管野をしても油断を許さない状況を生み出していた。
 脅威となりうる要素はいくつか持ち合わせているが、最たるものはその速力であろう。
 レーダーなどで探知したとしても瞬く間に間合いを詰め、攻撃を仕掛けてくる能力は脅威たり得る要素だ。
相手がこちらに合わせて低速域に入れば対処の使用はあるが、逆に言えばヒットアンドアウェイに徹された場合手出しができない。
シミュレーションや幾度かの交戦経験を経て、そのような教訓を得た502JFWは、無理な対応などをしないことを重点とする交戦規定を設けていた。
残念ながらストライカーユニットの性能では個人技を合わせても勝ちを拾える可能性は低い。
 だからこそ、502JFW本拠地にMPFが最低1機は待機している状態が続いているのだ。相手がいつ来るかわからないというのは、それだけ恐ろしいことであった。

(敵影……見えない)

 HUD越しのオラーシャの寒空は、静かなモノだった。
 有視界域においては、少なくとも動体反応はなく、簡易エーテルレーダーによる探知にも引っかかってはいない。
地形の起伏や植生などの影響ですべて探知できるというわけではないにしても、周辺に動きはみられていなかった。
 HUDに表示されているAWACSや設置型レーダーからの情報にも変化はなし。
 敵が出てこないのは良いことであるし、必ずしも敵と接敵するとは限らないのが偵察とは理解している。
 それでも、ひかりは今の状況が静かすぎる、という感覚を覚えていた。
 少なからず存在するであろう動物や鳥類などが動いておらず、自然の発生する音がよく通る、そういうことである。

(気が付いているよね、流石に)

 先任二人の様子を窺えば、自分の感じている違和感を同じく感じているのか、周囲をよく見渡している。
 実戦経験2度目の自分にもわかるなら、修羅場をくぐってきた経験を持っているならば、これくらいは気が付くだろう。
 問題なのは相手がいつどこで仕掛けてくるかだ。
 逡巡することもなく、ひかりは通信を繋げる。

「502W009よりAWACS、応答願います」
『AWACSよりW009、どうしたの?』
「定期哨戒ルート周辺のネウロイの反応を見てもらいたいのですが」
『こちらでもモニターしているわ……多分、気が付いていると思うけど、いるわね』

 やはり、AWACSを務めているみちるの声も緊張感を帯びていた。

『問題なのは、相手がどこにいて、いつしかけてくるのか不明なところね』
「恐らくはエーテルレーダーの検知領域外だと思いますが……」
『今W009達の飛行している定期哨戒ルートも、相手がすでに学習している可能性もあるわね。
 定期的にルートは変更しているけど、ネウロイの学習能力の高さはこちらの予想を超えてくるもの』

 つまり、相手はこちらがどう動くかを把握し、その上で待ち受けていると考えられるということだ。
 そうだというならばこちらのやることは一つしかない。

「なら、こちらも待ち受けることもできますね」

11 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/07(土) 22:00:02 ID:softbank126036058190.bbtec.net [6/204]

 それからしばらくHQとの通信をしたみちるは、決定事項を通達した。

『というわけで、3人がそれぞれ囮になってネウロイを引き寄せて対処をします』
「初日でこいつとかよ……」
『文句は受け付けないわ、サーシャやラル少佐にも許可をもらっているから』

 みつるの言葉に、うげっと表情を歪ませる。
 通信をしながらも、3人は既定の哨戒ルートを飛行したままだ。
 ネウロイがどこから監視しているかもわからないため、通常通りに行動することで偽装をしているのだ。

『この後は予定通り3人で別方向に分散して、エーテルレーダーの圏外を哨戒してもらうことになっている。
 けれど、確実に誰かに、もしくは全員にネウロイが襲い掛かってくる可能性がある。
 誰かにネウロイが食いついたら、残りの面々で援護に向かう、いいかしら?』
「了解」
「はいよ……」
「承知致しました」

 無論、全員にネウロイが食いつく可能性もあるが、それに対しても対応策はある。

『502基地の方ではタマロ曹長が控えているわ。急行してくるまで、各員は時間稼ぎに徹して、救援を待ってね。
 優先順位は……迷ったけど、雁淵軍曹が優先的になるから、残る二人は粘って』
「はぁい」
「まあ、当然だな」

 それでは、とみつるの声が回線に乗った。

『そろそろポイント。
 様子はこちらでも捉えているから、あとは現場の状況に合わせて臨機応変に』
「行き当たりばったりってことだろ」
『聞こえているわよ』

 ともあれ、三人は散開した。
 それぞれがネウロイ支配地域と人類支配地域の境界、係争地域に踏み込んでいく。
 これまでの哨戒任務においては、たびたびインターセプトを受けることもあり、またネウロイとの遭遇戦も発生するエリア。
 そういう特性だからこそ、雁淵ひかりの実力を図るのには最適と見なされたわけである。

(さて、どうなるかしら)

 誰がネウロイと接敵し、どのようなネウロイが出てくるか。そこに関しては運試し。あるいは出たとこ勝負だ。
 いつものルーチン、さりとて、油断すれば命を落としかねない仕事の始まり。
 密かに、みちるは皆の無事を祈る。

12 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/07(土) 22:01:16 ID:softbank126036058190.bbtec.net [7/204]

  • オラーシャ帝国 高度8000m 係争空域




 係争地域に突入してから十数分後。
 最初に敵機を探知したのはひかりであった。

「見えた!敵機インバウンド!インターセプトです!」
『こちらオーカ・ニエーバ、確認したわ。基地と003、004には連絡をした』

 速度を上げて飛翔しながらも、ひかりは声をあげた。
 通信で状況は打電しており、フリーハンドだった二名のウィッチがこちらに急行しつつある。
 なればこそ、とみちるは念を押しておく。

『雁淵軍曹、101W002も出撃はいつでもできる状態にありますし、友軍機もすぐに到着します。
 まだ実戦経験の浅い貴方は無理はしないように』
「問題ありません」

 ネウロイの放つレーザーを回避しながらも、淀みなくひかりは返答する。
 追撃してくるのは中型3、大型1、小型がそれなり。
 ライブラリとの照合も完了しており、これがオラーシャ方面でよくみられるタイプであることは確認できた。
ブリーフィングなどで特に注意を受けた要撃型や分裂要撃型などではないのも確認済みだ。
コア持ちで個別の能力を追求したアーマードネウロイという種が出ているとのことだが、これには該当しないこともわかっている。
となれば、自力での迎撃をしても全く構わないと、そういうことになる。

「むしろ……と」

 とっさに逆噴射し、飛び跳ねるように急上昇、ランダム回避を交え、包囲網を作ろうとするネウロイから逃れていく。

「むしろここである程度戦えなければ、話にもならないでしょう」
『それは……』

 確かにそうである。まだ実戦2回目であり、実力が未知数なところがあるのだ。
 なればこそ、こういう実戦でどの程度できるかを推し量れる程度には戦ってもらった方が助かるのだ。

『わかったわ。無茶だけはしないように』
「了解!W009、交戦(エンゲージ)!」

 抜き打ちざまに、12.7×99ミリNATO弾がM2から放たれる。
 FCSと補助演算宝珠のアシストを受けたそれは、小型種へと突き刺さり、一瞬で破壊たらしめる。
 エーテルエンチャントとウィッチから供給される魔力とを合わせれば、徹甲弾だけでもこの威力だ。

「さて、と」

 大型種に目をとられがちだが、バカにならないのが小型種だ。
 包囲されて集中砲火を浴びるとシールドで身を守り切れなくなり、また回避先がなくなってしまう。
 これに対しては友軍と連携することも一つの攻略法ではあるが、それではおんぶに抱っことなるだろう。
 どれほど自分の力でやれるか、示す機会だ。

「行きます!」

 銃剣付きのM2と共に、吶喊を選んだ。

13 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/07(土) 22:03:09 ID:softbank126036058190.bbtec.net [8/204]

以上、wiki転載はご自由に。
戦闘開始まで時間がかかってしまった…
次こそ戦闘になります
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最終更新:2023年10月30日 23:37