163 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/09(月) 23:05:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [37/204]
憂鬱SRW ファンタジールートSS「千鳥は舞い降りた」4
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 高度9000m 係争地域
まとわりつくように飛んでくる小型種を次々と叩き落とし、ひかりの狙いは中・大型へとシフトした。
レーザーが飛んでくる方向を一つに絞ることができれば、防御も容易くなるというのは、機動防御の一つのやり方だ。
ノーモーションで魔力消費の少ない低燃費なシールドを張ってレーザーを受け止めつつも、ひかりはネウロイを振り回すように飛ぶ。
同時に、反撃の銃撃をけん制も兼ねて放って、様子を見る。
(まあ、効かないよね)
たかだか牽制の射撃だ。如何にエーテルエンチャントなどを施し、銃そのものも強化しているとはいえ、数発程度で倒せるとは思っていない。
直撃を得てはいるが、まるで効果が見られておらず、相手の動きを押しとどめることもできない。特に大型種はそうだ。
それはそれでしょうがないと割り切るしかない。ウィッチが携行可能な火力には限界があり、相手を簡単に倒せるとも限らない。
「……」
とりあえず大型種はマーキングしておく。
大きいとはいえ、視界の外に逃げられて不意打ちされては目も当てられない。
それに倒すにしてもコアを持っている可能性があるから、目星を付けるか全身を滅多打ちにしてあたりを引くしかない。
問題は中型。数は多いとは言えないが、それでも3方向から迫ってくる可能性があり、小型種ほど簡単に倒せない。
総合的に見て一番版厄介とさえ言えるのがこの中型だ。少なくとも、ひかりはそのように判断した。
ライブラリから戦闘力などの情報は引き出してそれも考慮に入れているが、数と質の両立が怖いというのが経験則だ。
まあ、あくまでも訓練などから得たひかりの個人の考えだが、それはさておき。
「ふっ……!」
レーザーの弾幕の隙間を、シールドでこじ開ける。
偏差射撃をしてくるとは言え、その射線を読むことは難しいことではなく、自分の進路と体のスペースを作ればいいのだ。
そして、一息に前進する。狙ってくるレーザーの配置を読み、シールドを先んじて置き、その隙間をくぐる。
抜ければ、一瞬だ。
相手も距離を維持するために動くが、そうなれば必然的に射撃の密度が低下し、絡めとる網が荒くなる。
牽制射撃で、相手の動きを若干遅らせ、さらにその隙間を縫う。
後は、加速をさらにして……
「捕らえた!」
必殺の距離。
互いの距離が狭まり、射撃が下手でもあたる距離に詰めたのだ。
だが、喜んでいる暇はない。こうしている間にも後方から虎視眈々とネウロイが狙ってくる。
「だぁあああああ!」
164 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/09(月) 23:06:06 ID:softbank126036058190.bbtec.net [38/204]
そのまま、銃剣をぶち込んだ。
後は、腕に魔力を込めて反動などを無理やり抑え込んでフルオート連射。
そして、形状崩壊を確認するやすぐに上昇する。その際には破片などで怪我をしないようにシールドでしっかり守ることも忘れない。
「?!」
反対側、自分の背中側のシールドに衝撃。長くはもたないと判断し、回避運動にすぐさま移った。
実際、魔力を込めたはずのシールドは容易く砕けた。
それでも、その間に銃口を向けてトリガーするくらいの余裕はある。
「躱される……」
それでもいい、とすぐに切り替えた。
相手はこちらを包囲する動きで、そのまま何もさせないままに打ち殺そうとしてくる。
こちらもすぐに回避に移り、同時に反撃を重ねていく。まだ致命打を与えられてはいない。
相手が頑丈ということもあるが、やはりコアを持っていることによる高い再生力が、こちらの攻撃を意味のないモノとしている。
必要なのは、装甲などを突き破れる、より強力な一撃。
そのために必要なのは、汎用性などを度外視した、魔力を込めた一撃。
「……」
思い当たるのはライトニング・コンテンダー。
しかし、これの使い方についてはまだ未知数なところが大きい。
渡されたのはエネラン戦略要塞を発する直前であったし、慣熟しきっているとはいいがたい状態だ。
(これにはまだ頼れない)
一発撃ち切り、撃ったら即リロードというのがネックだ。
射程距離に収めて一撃を叩き込み、離脱し、リロードをする。これが一対一ならばともかく、一対多では隙が生じてしまう。
ならば、これは救援が来た時にこそ必要となる武装だ、と判断する。
だから、というようにひかりは加速した。今は主兵装で対応することだ、と。
(会敵したことはすでに打電した……すぐに救援が来るはず)
そして無理はしないことも選んでいた。
訓練でこの程度の複数の相手を倒すのは何度もやったことだ。
ただ、これが二度目の実戦ということもあり、ひかりは慎重さを優先することにした。
冒険は危険が伴う。ここで無理をして倒したところに敵の増援が来てはそれこそ目も当てられないことになる。
「くっ……」
照射されるレーザーの嵐を、低空スレスレ飛行でかわし、間に障害物を挟むことで回避していく。
とにかく的を絞らせず、領域全体をうまく使っていくことが肝要だ。
合間に近づこうとするのを牽制するだけでも、十分な効果はある。
今は、それが最適だった。
「502W004、現着!って、うわぁ……」
自分の哨戒ルートから近いとAWACSから判断され、救援を任されたニパが到着した時、彼女は思わず息をのんだ。
繰り上がり卒業、実戦二度目というまだ殻のついたヒヨコと思えていた新人が、激しいドックファイトを繰り広げていたのだからさもありなん。
どう考えても経験を積んだウィッチでもなければ不可能と思える動きが見て取れたのだ。
165 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/09(月) 23:07:04 ID:softbank126036058190.bbtec.net [39/204]
『AWACSオーカ・ニエーバより502W004、状況は?』
「え、あ!えっと、502W009が交戦中。
報告に遭った通り、時間稼ぎに徹しています!」
『了解。そのまま援護をお願いします。
彼女は実質初陣もいいところですが、パニックで無茶をしていないのは評価できますね。
周辺に敵影は見えません。湧かれる前に殲滅をお願いします』
「了解!」
AWACSオーカ・ニエーバ---みちるの声を受け、ニパはひかりを追いかけて振り回されているネウロイを横合いから強襲した。
M2よりも口径こそ小さいものの、慣れ親しんだMG42はニパの狙う通りに弾丸を吐き出してくれる。
エーテルエンチャントを施し、使用している7.62x51mm NATO弾自体も強化されているそれは、不意を突いたのもあって、中型を一体撃墜する。
「カタヤイネン曹長!」
「軍曹、そのまま敵を引っ張って!」
「了解!」
打てば響く、というように、彼女はすぐさまネウロイの群れを引っ張り始めた。
適宜反撃を入れているが、それはあくまでも牽制。友軍を誤射しないように、射線が通らないタイミングを見計らっている。
後は後ろから順々に崩していけば、とニパは加速をする。
「よし、2体目……!」
残りは半数以下、となったところで、ネウロイの群れが二つに分離した。
大型のみがひかりを追いかけ、残りが反転してニパに襲い掛かってきたのだ。
「曹長!?」
「大丈夫、そっちは対応して!」
レーザーが襲い来るが、それらをシールドで弾きながら返答する。
ニパとてベテランだ。ついていないなどと言われるが、それでも固有魔法も相まって激戦を潜り抜けてきた。
ひかりの援護をできなくなるのは痛いが、彼女の腕前は先ほどの一瞬でも推し量ることはできた。
なればこそ、自分がこの群れを倒して、彼女のフォローに回るべきとすぐさま判断した。
「っと……!」
こちらもうかうかはしていられない。
相手の攻撃はかなり激しいのだ。迂闊に回避すると絡めとられ、シールドを破られるのが目に見えている。
だから、少し大仰なくらいに回避運動をとり、ついでに速度に勝る相手を低空域での低速度戦に持ち込む。
「よし、今!」
相手の速度が一段落ちたところを狙い撃ち。連続した直撃弾で小型個体は次々と落とせた。
このままなら、とニパが考えた直後、ボフンと嫌な音が右足の延長上から響いた。
「え?」
ふと目をやれば、何やら煙が噴き出している。
そして、見る見るうちに右側の魔導エンジンの出力が落ちていくのが分かった。
既定の推力が得られず、魔力が増幅されなくなる。ついでにバランスが崩れてしまうのも。
(ヤバ!)
姿勢を立て直そうとしたところで、ネウロイの砲門がこちらを捉える。
シールドをとっさに張ろうとするが、間に合うか。
増幅されていないシールドで、どれくらい持つか。
「------!」
その時、声がとどろいた。
知っている声。けれど、まだ知ってから日が浅い。
そして-----横合いからネウロイが吹っ飛ばされた。
167 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/09(月) 23:07:52 ID:softbank126036058190.bbtec.net [40/204]
間一髪、というところでひかりは最短ルートでニパを狙ったネウロイに突撃、強引に狙いを逸らした。
照射されたレーザーは地形を削ったが、ニパには掠ることもしなかった。
そして、突き刺さった銃剣を軸にしたまま、ひかりはトリガーを引く。
もがくようにネウロイが身を動かすが、生憎と突き刺さった銃剣の頑丈さが勝る。
さらに、そうしている間にもドラムマガジンに詰め込まれた12.7ミリの銃弾が体を削っていくのだ、たまったものではない。
「……!コア!」
そして、それが露わになった。
中型ネウロイの身体の奥底に隠れていた、ネウロイの中核と言える部分。
ニパはとっさにMG42を構えようとするが、安定しない。片足立ちを空中でやるのだから、当然だ。
「----!」
代わりに、というように弾切れになったM2を支えにして、ひかりは左手をホルスターへと突っ込んで、引き抜く。
彼女の身体に対して大きな拳銃。フルサイズのライフル弾さえも発砲することを前提とした、一発打ち切りの拳銃「ライトニング・コンテンダー」。
それが一瞬間でコアに突きつけられて、トリガー。
ズドン!
腹に響くような音がした。
通常よりも強力な火薬の炸裂に伴う発砲音とほぼ同時に、コアが砕ける音も響いた。
いっそ綺麗なほどに、それは形状を失う。周囲への破壊もばらまきながら。
それを見越して、ひかりは上昇---否、方向転換した。
(まさか!)
そう思って、とっさにニパは衝撃に備えた。
刹那に腹にそれが走る。重たく、響く衝撃。
ネウロイの破砕から逃れながら、ひかりがこちらの状況に気が付いて飛んできたのだ。
荒っぽい救助だ、と思いながらも、しかし安どの息をついた。
「あ、危なかった……!曹長、ご無事ですか!」
そして、地面すれすれでひかりは上昇、一度群れから逃れるように飛ぶ。
「すいません、すぐに安全なところに下ろします!」
「あ、ありがとう……」
とっさの判断で救われた。そのことに、ニパはふわふわとした実感のなさを覚える。
けれど、まだ戦いは続いている、と無理やり現実に引き戻る。
「よし、軍曹、いける?」
「はい!」
その返事と共に、ひかりは加速を叩き込んだ。
168 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/09(月) 23:08:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [41/204]
以上、wiki転載はご自由に。
書きたいのを足していったら膨れ上がりましたね。
というわけで次回に続きます。
最終更新:2023年10月30日 23:42