454 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/15(日) 00:23:44 ID:softbank126036058190.bbtec.net [89/204]
憂鬱SRW ファンタジールートSS「千鳥は舞い降りた」5
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 高度9000m 係争地域
ニパの安全確保を優先としたため、ひかりはニパを抱えたままの回避運動を余儀なくされた。
彼女を下ろした場合、光は回避運動をとれるが、彼女は森に逃げ込むか出力の低いシールドで身を守るしかなくなるからだ。
もしもネウロイの興味がそっちに移ってしまった場合には、どうあがいても悲惨な目に遭うことが請け合いである。
また、自力での戦闘を行うにしても、ニパを抱えたままでは防御を重点にせざるを得ず、魔力を十分に攻撃に回せないのだ。
元々魔力の絶対量という点において劣っていると指摘を受け、それに合わせて訓練を受けているひかりでも、流石に人を一人守りながらというのはキツイ。
総じて、抱えて飛んだまま回避運動とシールドに魔力を割いた方がよほど効果的と判断したのだ。
「すいません曹長、どうにも下ろすと危険なようです」
「ん、しょうがないよ。今は逃げに徹するしかない」
ひかりは謝るしかないが、ニパも状況を把握して頷くにとどめた。
ニパがひかりの立場であったとしても、ひかりを放り出して戦闘することは難しい。
ストライカーユニットの損傷や機能停止というのはそれだけでウィッチの戦闘能力を大きく下げてしまう要因だからだ。
むしろ人ひとり抱えて致命打をもらうこともなく逃げ回れるだけ、冷静な判断力と実力があると、そう評価できる。
「W004よりAWACSオーカ・ニエーバ、増援は?」
『こちらAWACSオーカ・ニエーバ、101W002は現在現場に急行中。
あと5分もかからない、持ちこたえることを優先せよ』
「了解……えーと、雁淵軍曹、収集したデータをAWACSに転送できる?」
「問題ありません。W009よりAWACSオーカ・ニエーバ、現段階で収集できた情報をアップロードします」
『AWACSオーカ・ニエーバ、了解。このまま情報収集の継続を』
ひかりの操作で、HUDとつながっている演算宝珠のデータがアップロードされていく。
現在ひかりとニパを追跡している大型ネウロイは、そこまで超大物というわけではない。
しかし、事前に目を通していたオラーシャ方面で出現が確認されていたネウロイとは微妙に形状などが異なる。
着々と進化を続けているネウロイということで、その些細な差異でも情報はとても貴重であった。
「曹長、舌を噛まないようにご注意を」
「遠慮なく行っちゃっていいよ」
ニパが手持ちのMG42で反撃しつつ、ニパを抱えたひかりが飛翔する。
四角張った飛行船が小大小の順に3つ横につながったような、そんなネウロイの周辺を飛び、観測を継続する。
各所にある対地・対空両用のレーザーが常にひかりを狙って連射を続け、時折、大型のレーザー砲が火を噴いてくる。
与えられた番号としてはON-18という呼び名があるが、過去に確認された個体よりも全長が大型化している。
加えて、身体に表面にある砲門の数が増えており、より執拗にこちらを狙ってきている。
(コア2個が中央の内部にあるって話だったけど、どこまで信用できるかな……)
大型化して性能が向上しているならば、コアの数が増えていたり、配置が変わっている可能性がありうるのだ。
攻撃を加えてそれを確かめたいところだが、残念ながら相手の装甲が酷く頑丈なために、MG42やM2では表層に傷をつけるので限界。
やはり頑丈な装甲を破って撃破するには相応の火力が必須と言えるだろう。
幸いなのは相手があまり動き回って戦うのではなく、一か所にとどまって戦闘をするタイプだったことだろう。
とはいえ、明らかに長射程のレーザーを放ってくることを考えると尻尾をまくって逃げ出しても狙撃される未来が見える。
それほどに一定間隔で撃ってくるレーザーの出力と精度は優れていたのだ。
それにここで逃げるよりも撃墜したほうがいいのは明白だ。
何しろ、この空中砲台が居座られたら、制空権を握られ、ネウロイが係争地域におけるアドバンテージを握りかねないのだから。
455 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/15(日) 00:25:04 ID:softbank126036058190.bbtec.net [90/204]
(……来た!)
HUDに警告が複数立ち上がる。
冷却を終えたと思われる砲塔がこちらを向き、追尾を始めたのだ。
即座に回避運動に入る。一定パターンに入らないようにランダム回避を入れつつ、光学デコイ術式を射出。
狙いを絞らせないように動き回っての回避に集中した。しばし迷ったネウロイだが、即座に光学デコイを打ち落とし、こちらを狙う。
「危ない……!」
それがわかっていたから、急降下して射角限界に逃げ込む。
巨体と重火力を誇るネウロイの大型個体は、意外なほどに隙が大きい。
その巨体の分だけ火力が増えるのだが、射角の限界や動きの遅さ、あるいはつけ込む隙間が大きくなる傾向にあるのだ。
近年はそれを補うべく別方向に進化したアーマードネウロイというタイプも出てきたがそれはさておき。
「残り2分くらい……!」
「見えてきたよ、軍曹!回避!」
遠方から放たれたであろう誘導弾が、先んじて戦場に、ネウロイに突き刺さった。
ニパに促されるまでもなく、AWACSオーカ・ニエーバから連絡を受けていたひかりは十分な距離をとりつつ、終末誘導を行っていた。
立て続けに直撃を得る対大型種ミサイルは固い外殻を食い破り、破壊し、内部をあらわにする。
「……ッ!コアが!」
「3つ……」
上半分が概ね消し飛んだことで、その内部が露わになる。
3つだ。結晶のようなそれが、三つの胴体にそれぞれ内蔵されている。
かつて確認されたデータでは中央の胴体の前後に一つずつだったものが変化している。
コア持ちのネウロイ特有の瞬時の再生でそれらは再び視界から消えるが、それは明確に記録されていた。
『タマロ曹長、見えていたわね』
『ばっちり。もういっちょいくよ、FOX2!』
その通信と共に、すでにはっきりと肉眼で見える距離に迫っていたブライト・リッター要撃装備から追撃が放たれた。
放たれるのは空対空ミサイルの飽和攻撃。当然のように迎撃を受けて爆発するが、本命はその後であって、これは仕込みだ。
空対空ミサイルの爆発とともに展開されるのはエーテル式のレーザー攪乱幕だ、これによりレーザーは大きな減衰を強いられる。
そんな状況では背部バインダーから放たれた対大型種ミサイルの残りを迎撃できるはずもない。容赦なく炸裂して、中央を除く胴体を丸ごと消し飛ばす。
『とどめぇ!』
そして、もがくようにしながら逃れようとするところに、拡散型マギリング・キャノンの連打が突き刺さった。
ウィッチとは比較にならない打撃力のそれは、容易くネウロイの装甲を食い破っていき、最後はコアを無慈悲に食い破った。
刹那、崩壊。
コアの消滅と共にネウロイの全体が、マギリング・キャノンで食い破られてなお残っていた部分が形状崩壊を起こした。
圧倒的な暴力を叩きつけられて、抵抗も許さないままに。
『AWACSオーカ・ニエーバより、全機。
戦闘終了を確認した。
各機の損耗が大きいとの判断が司令部から下された、順次帰投せよ。以降の哨戒は501W003と101W003により引き継ぐ』
戦闘終了を告げる声に、緊張の糸をやっと緩めることができた。
これが日々続くと思うと、中々ハードだと、ひかりはひとり胸中でつぶやくのであった。
これまでに学んだことを日々日々試され続けるということ。ここが、最前線にして攻勢に出る地域。ああ、なんて---甘美な響きなのだろうか。
今日はうまくいったが、明日以降はどうなるかわからない。どうなるだろうか。楽しみになってきた。
人知れず口角がつり上がるのを抑えきれないひかりであった。
456 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/15(日) 00:26:47 ID:softbank126036058190.bbtec.net [91/204]
以上、wiki転載はご自由に。
最後の笑みをどう見るかは人によりけり。
次回はデブリーフィングですね。
最終更新:2023年10月30日 23:44