250 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/26(火) 22:14:15 ID:softbank126036058190.bbtec.net [25/65]
日本大陸SS 漆黒世界
アメリカルート(Re)「7年越しのフロンティア・ウォー」3
さて、第二次遠征隊が文字通りの意味で壊滅し、カナダやイギリスを経由して日本が接触してきた時点で、
アメリカはひっくり返った。
必勝を企図し、それだけの戦力を叩きつけたというのに、壊滅し、目的を果たせなかったというのだから。
政府・軍・民間、いずれもがこれに衝撃を受け、その現実を直視せざるを得ない時が来たのだ。
さて、そんなことがあったわけで、イギリスやカナダの用意した交渉の場で、日米は相対することとなった。
二度目の戦争を吹っ掛け、敗北したというからには、戦争を終わらせるためのあれこれが必要だったのだ。
さて、この場にはフランスまでも動員されていた。
何故フランスが?と思うだろう。
それもそのはず、ルイジアナと呼ばれた地域は、その「ルイ」という名前を含む通りフランスの領土であったからだ。
それをやむを得ず手放したのは、当時のフランスの政権---正確にはブルボン朝の判断によるところである。
ブルボン朝末期は、幾多の王朝がそうであったように、それまでの王や政権による負債を抱え込んでいた時期であった。
黄金期であり絶頂期であり、同時に凋落の時期を迎えていた。積み重ねていた負債が倒れ込んできたのだから無理もない。
ルイ15世が「我が後に大洪水あれ」という言葉を残したのも、それに立ち向かい、しかしどうにもならなかった故の影響が窺えた。
そこに手を差し伸べたのが、ほかならぬ日本であった。広大な土地、フランス本土から遠い土地。
その土地を破格と言っていい価格で買い取り、積み重なった負債を一部でも補填してやろうと提案したのである。
フランスにとっては渡りに船、しかし、同時に非白人に土地をくれてやるのはどうか、という二律背反に襲われた。
とはいえ、目の前の破綻を補い、延命ができるという希望を見なかったことにはできなかったのである。
悪魔的な、あるいはユダヤ人さえも生温いとまで言われた日本人との取引は、そういう避難や反発があろうとも、魅力的過ぎた。
とはいえ、土地及び諸権利と引き換えにもたらされた富はすぐさま霧散した。ルイジアナ売却で得た富は有限であり、決して無限ではない。
100あったとしても2人で分ければ50になり、10人で分ければ10となり……やがては雀の涙もかくやのレベルにまで成り下がる。
まして国家という集団で、半ば以上に奪い合ったのだ、いくらあっても欲望を満たしきることはできなかった。
その結果、延命の効果はわずかなりとなり、のちのフランス革命などは勃発した。
ともかく、そういう経緯があったのを、現政権に説明させたのである。
アメリカからすれば旧大陸の国とどことも知れない国の取引の話であっただろう。大昔とあればなおのこと知らなかったことである。
つまり、理屈や道理を考えると、
アメリカの侵攻はとんでもなくアウトだったということを認識させるための証人であったのだ。
とはいえ、仲介役を務めていたイギリスはその程度で
アメリカが諦めることはない、と予測していた。
第一次遠征で大恥をかいたにもかかわらず固執したというのだから、この程度ではあきらめないと考えていたのである。
それはそれでいい、という判断のもとで動いている。フランスも同様だ、証人として出ることで日本から利益を得つつ、同時に
アメリカを焚きつけたのだ。
強力なプレイヤーである日本という勢力が新大陸という田舎において力を消耗することについては、以前も述べたように歓迎できることだから。
251 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/26(火) 22:15:56 ID:softbank126036058190.bbtec.net [26/65]
さて、こういった事実やわずかに生き残った捕虜などを第三国経由で送り返された
アメリカはどうなったか?
語るまでもなく世論は噴火した。沸騰どころではない、ヴェスヴィオス火山も真っ青にドカンと逝ったのである。
非白人の連中に良いようにされ、それを旧大陸の住人にあげつらわれ、おまけに負けを認めて手打ちにしろ?冗談ではないのだ。
まだ負けていない。まだ巻き返せる。まだここから勝利を重ねていけば最終的には利益が出る。
第一次遠征の時からの反省も生かして第二次遠征も行われた、次も同じようにすれば勝てると、そう考えたのである。
なので、講和をしようと打診してきたのを当然ながら
アメリカは蹴っ飛ばした、盛大に。
まだ終わっていない、まだ負けていない、自分たちのやっていることは間違っていないのだと盛大にほえたのだ。
アメリカ世論もそういう政府の方針を指示しており、軍への志願などが殺到。あるいは日本を叩く世論が形成されつつあった。
ここまではまあ、日本側も予想内であった。無茶をやってでも侵攻してきたのだから、ここで引っ込む道理はないだろうと。
加えて非白人ではない、彼らの主観で人間とはいいがたい連中に負けたというのは認められないことだろうと。
だが、
アメリカはここでとんでもない方向に撥ねた。
なんと、敗北した要員はイギリスをはじめとした旧大陸各国の妨害や日本への加担があったせいなのだと吠えたのである、講和の場で。
曰く、返還された捕虜が白人が混じっているのを見た。
曰く、惰弱な黄色人種が白人に勝てるわけがない。
曰く、こうしてこの場に集まっている中にも日本人を名乗る白人がいる。これはあり得ない。騙そうとしているのだ。
これにはイギリスもフランスも日本も目を白黒させるしかなかった。
確かにこれらには正しい部分もある。
日本人の中には人種的に見て、少数ではあるが白人に近い特徴を持つ人々が混じっている。
これははるか昔に日本人に取り込まれ、遺伝子や形質のみが残っている奇跡ともいえるものであったのだ。
これは接触を果たした多くの外国人が驚き、しかし順応してきたものであった。
この外見上は白人と同じというのは外交の場においては割と使えることもあり、外交官としての登用も見られていた。
当然、北米へと入植した人々の中にはそういった形質を持っている人員だって混じっていて、同じような外観のアメリカ人と戦ったこともある。
今回この場に白人---いわゆるコーカソイド系の日本人が参加したのは初めてであったが、それはともかく。
アメリカは、というかその場にいた外交官は他国が結託して
アメリカを陥れようとしていると認識したのだ。
252 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/26(火) 22:16:58 ID:softbank126036058190.bbtec.net [27/65]
アメリカの認識は半分正しいが、半分は間違っている。
日本人にはこういうコーカソイド系も混じっているのだと言っても聞く耳は持たなかった。
これは偏に
アメリカの無知と、黄色い連中に白人が味方するわけがないという認識が合わさったことによる。
ついでに言えば第二次遠征が失敗したことによって混乱が大きかったということを如実に示す事柄だろう。
なまじ、
アメリカがこの「真実」を講和会議の最中に国内外に向けて大きく発表したことが余計に火種を大きくした。
欧州諸国は
アメリカの無知を笑えたが、
アメリカ国内はそうもいかなかったのである。
アメリカの世論はヴェスヴィオスを通り越しイエローストーンドカンに到達。講和などするな、日本とやらを一匹のこらず滅ぼせとまで燃え上がった。
ついでに、だまし討ちをしてきたイギリスなどの欧州諸国もとっちめてしまえとまで。
ここで対応に差が出たのは無意識あるいは無自覚の差別や意識の問題であるだろう。
ともあれ、そろそろ手打ちをと考えていた日本も、もっと燃え上がれと煽っていたイギリスも笑えなくなった。
イギリスは下手をしなくとも
アメリカがカナダ植民地に飛び掛かってくる未来を見た。
アメリカ側に警告してこれを撤回させようとしたのが、一度沸騰している人間がそんなことを聞くはずもない。
そも、
アメリカはこれまで2度も失敗をしていて、意固地になっているのだ。今更外から制御できるようなものではない。
半分とまではいかなくとも、いくらか
アメリカの暴走をおぜん立てしたこともあり、イギリスは焦りを隠せなかった。
対照的に、これを半ば煽ったのはフランスだ。
所詮は新大陸の田舎者だ。その力を振りかざすとしても欧州までは届くまいと予測したのだ。
そもそも新大陸と欧州大陸は大西洋により隔てられている。まともに侵略などをすることは極めて難しい。
そして欧州全体に攻め込んでくるようであるならば、その時は押収か刻々全てが敵に回るのだし。
その代わりにイギリスの植民地であるカナダに被害が出る分には大歓迎であった。
イギリスは潜在的且つ歴史的に敵、それがフランスの見解であった。
このままイギリスとあまり気に食わない日本の足を引っ張れとさえ思っていた。
斯くして、余計なところにまで火が燃え上がる形となったこの講和会議は当然のように破綻。
日米間の講和どころか日米間の対立の激化、さらには欧州諸国との関係にまで火が回った。
各国は、次に訪れるであろう激突に備え、あるいは生じるであろう動きに備えて慌てふためくしかなかったのだ。
北米で燃え上がった焔は、未だに消える兆しを見せないていなかった。
253 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/26(火) 22:17:54 ID:softbank126036058190.bbtec.net [28/65]
以上、wiki転載はご自由に。
アメリカが日本人を黄色の猿の国だとばかり思いこんでいたことによる弊害ですな…
最終更新:2023年11月03日 19:22