309 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/28(木) 19:15:20 ID:softbank126036058190.bbtec.net [36/65]

日本大陸SS 漆黒世界アメリカルート(Re)「7年越しのフロンティア・ウォー」4



 さて、講和会議がお流れになり、一応の捕虜の返還が終わった後、アメリカはほとんど間髪を置かずに第三次遠征部隊を送り出した。
 早すぎると思われるかもしれないが、遠征部隊は何もアメリカの正規軍を全て投じたものではなく、余剰戦力というのは当然存在していた。
また、第二次遠征の出発までに7年かかって準備したとはいうが、その7年の時間のほとんどは東西を結ぶ鉄道敷設がメインだった。
よって、そのインフラなどが無事であるならば、次の遠征部隊を送り出すこと自体に問題はないのである。
 とはいえ、消耗した物資の集積や兵力の抽出などにある程度の時間を要した。
 また、要塞に突き当たったという報告から、持ち込めるだけの大砲を持ち込むことも決定されたのである。
彼らとて馬鹿ではなく前回の失敗の原因をそれなりに解析して、それに対応することを企図したのである。

 その他特筆点としては、開拓の「道具」として奴隷の投入が行われた、ということがあるだろう。
 つまり、条約だかなんだから知らないが、現地に入植して既成事実化を進めてしまえということだった。
迅速な開拓村および防衛設備の設置の為には手数が必要であり、人だけでは限界があるということである。
この「道具」は戦闘においても「使う」ことが決まっており、半ば以上に使い捨てるつもりであった。
それでも目的を果たせるならばと、その犠牲---消耗は許容された。
元より、鉄道敷設において膨大な数の「道具」の消耗には慣れっこになっていたのだ、良心が痛むこともなかった。

 だが、端的に言って講和会議直後の不意を突いたこの遠征は失敗した。
 ルートを変更し、あるいは拠点となる開拓村の設置を優先するなどの対策をしたのは間違いない。
 拠点を着々と形成することによる既成事実の積み重ねというのも悪い手ではなく、戦闘以外でも勝利しようとした努力は認められるべきだった。

 問題だったのは、そういったことを日本側が想定しており、警戒を強めていたことだった。
 講和会議が流れたということは、戦争状態が終わらなかったことに他ならない。
 そうなれば、体制は平時ではなく戦時であるし、警戒態勢だってしている。

 無論のこと、攻略の難しい要塞を回避することには成功していたので、まだいい部類であっただろう。
 だが、何も日本側は要塞を利用しなければ弱いというわけでもない。
 実際に第三次遠征隊との戦闘において、迎撃に出られた日本側の兵力は、数的な面においてアメリカの遠征部隊に負けていた。
 しかし、そのアメリカの遠征部隊を構成と装備の面で圧倒していたのである。
遠征部隊には前述のように民兵の割合が大きく、また日本の基準では旧式の装備で多数を占めているとあれば話は別だ。
十分な訓練を行い、装備を備えた正規兵を相手取るには分が悪いどころではなく、一方的にやられるしかなかったのである。

310 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/28(木) 19:16:39 ID:softbank126036058190.bbtec.net [37/65]

 だが、残念なことに、アメリカは諦めはしなかった。
 第三次遠征失敗以降も立て続けに戦力を送り出し、あるいは開拓団を送り込んだのだ。
 マニフェスト・デスティニーだけではなかった。
 日本人への、偽物の白人への懲罰などというお題目も加わって、より加熱した世論に押される形で突き進んだのである。
平然と日本人の族滅を主張する声が飛び交い、あらゆる産業が西部遠征のためにリソースを割き、積極的な徴兵あるいは志願が認められる。
メディアは徹底的に日本をこき下ろし、ついでのように日本の味方をして裏切ったイギリスなどをなじった。
 もはやそれは社会全体をも突き動かしてしまうような、そんな大きなうねりとなっていったのである。

 そんなわけで、この後1年に満たない期間で、遠征部隊は3つ、さらに民間主体の開拓団は大小含め10以上が送り出される事態となった。
それらがどうなったかの結果は言うまでもないのであるが、いよいよ付き合う側の日本もうんざりしつつあった。
東海岸へ艦隊を回航し、アメリカの首都を薙ぎ払うことさえも大真面目に検討されるほどに。
 だが、それは熟慮の結果保留となった。大打撃を与えることはできるかもしれないが、それで止まる保証など全くなかったためである。
寧ろ国家体制が崩壊ないし致命傷を受けてしまい、統制が取れなくなってしまった方が危ういまであり得たのだ。
生き残りをかけて西進をはじめ、裁ききれない数が押し寄せてくる方が危険という判断をしたのである。

 そして、イギリスからもたらされた情報が日本の判断を動かしていたのである。
 遠征部隊や開拓団において次々投入される奴隷の数がいよいよアメリカで枯渇をはじめ、民間からの徴発が進むようになった、というものだ。
合わせるようにして馬や武器なども遠征部隊に優先的に、且つ「良心的な価格」での提供を連邦政府が命じたのだ。
 先の講和において欧州へ噛みつきかねない、という懸念から欧州各国はアメリカとの交易を大きく縮小していたことに由来する。
特に海運や工業力で大きな力を有するイギリスはアメリカへの便を送り出さなくなり、代わりにカナダへの積極的な輸出に走っていた。
半ば自爆とはいえ、カナダが脅かされるかもしれないというのもあって、てこ入れを今更ながらに行ったのだ。
 これらから勘案できるのは、案外アメリカの破綻は近いかもしれない、ということだった。
 立て続けに戦力を送り込むことは当然ながら負担になり、やがては連邦政府への不満へとつながっていく。
今でこそイケイケ押せ押せであるが、意外と内情では厭戦気分が蔓延しているのでは?と期待が持てたのだ。

 そして、それは正しかった。
 立て続けに奴隷や家畜、食糧、人材を徴発されていったテキサスなどをはじめとした、南部の州では大きな不満がたまりつつあった。
元より奴隷に対する扱いが同一国家内でも差が生じていたのが実情であったのだ。
にもかかわらず、連邦政府という怪物は止まろうともせず、むしろさらにのめり込もうとしていた。
アメリカという国家に、ひびが入り始めたのである。

311 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/09/28(木) 19:17:32 ID:softbank126036058190.bbtec.net [38/65]

以上、wiki転載時はご自由に。

フロンティア・ウォーが終わりを迎え、次なる火種が持ち上がることになります。

リブート版もいよいよ、かのイベントを迎えることになりました。
オリジン版とは異なる流れとかになる予定ですので、お楽しみに。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 日本大陸
  • 漆黒世界
最終更新:2023年11月03日 19:27