674 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/10/14(土) 22:03:07 ID:sp1-79-88-216.msb.spmode.ne.jp [2/6]
近似世界 【地中海海戦】4

  • イタリア第一艦隊の出撃
11月5日午前、シチリア沖に集合したイタリア第一艦隊は、陸上基地からの航空支援を受けやすい、アンティキティラ海峡を経由するクレタ島北回り進路に前進を開始した。

この第一艦隊は、各艦隊より戦力の大部分を抽出して一纏めにした、謂わばイタリア海軍主力の大半でほぼ全力にあたるものだった。
この艦隊は、
戦艦コンテ・ディ・カブール、
ジュリオ・チェザーレ、
アンドレア・ドリア、
カイオ・デュイリオ
で構成される第11戦艦戦隊と、

戦艦リットリオ、
ヴィットリオ・ヴェネト、
ローマ、
インペロ
で構成される第12戦艦戦隊を中心とした二部隊で編成されていた。

目的は、日本海軍に多大な被害を与えることによって地中海の制海権を取り戻すことと、それによってクレタ島の日本軍を孤立させること。また、日本人の厭戦気分を高めて戦争から脱落させることだった。


  • クレタ島東部防空戦
11月5日頃から、クレタ島東部の日本軍上陸地点に対して、島西部やギリシャの航空基地から出撃した枢軸軍攻撃隊による頻繁な襲撃が行われていた。
攻撃隊は、ほぼ全てが第三戦闘群所属機によって迎撃されていたが、多方向から散発的に侵入してくる攻撃隊への対処に注力せざるおえなくなっていた。
戦闘群を援護していた第二打撃群では、ギリシャ沿岸部の枢軸軍航空基地を襲撃して攻撃隊を封殺する事が検討された。
しかし、偵察機がイタリア第一艦隊の接近を報告。第二打撃群は迎撃の為にクレタ島北部へと移動を開始した。

11月6日正午頃、第二打撃群所属の航空隊が出撃。午後1時45分頃にイタリア第一艦隊への攻撃を開始。
この攻撃で、イタリア第一艦隊の駆逐艦21隻、軽巡洋艦5隻が撃沈された。
同時刻、ギリシャ南部各地に集結していた独伊空軍が一斉に、日本海軍第二打撃群を目指して出撃を開始した。

2時30分頃、第二打撃群外郭の駆逐艦「海嘯」がレーダーにて北方から飛来する数百機以上の航空機を捕捉した。



675 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/10/14(土) 22:04:39 ID:sp1-79-88-216.msb.spmode.ne.jp [3/6]

大日本帝国海軍第二打撃群所属駆逐艦「海嘯」では、艦に存在するすべての人員が慌ただしく戦闘の準備を進めていた。それは、「海嘯」の前方を航行する同型艦「海霧」、後方の「海震」も同様だった。
その上空を、いましがた艦隊中央部の空母から飛び立った航空隊が通過していく。日本の誇る艦戦である零は、その翼下にありったけの武装を施してまだ見ぬ敵に向かっていった。



「方位320から敵機4!」
「誘導弾、撃てっ!」

少し後。
航空隊が撃ち漏らした敵機は、続々と艦隊外縁部を守る「海嘯」達に群がってきていた。

「方位011からも敵編隊!きわめて低空!」
「主砲、撃ち方始め!」

ほぼ全自動の機力で指向された3基6門の主砲は、それぞれが毎分20発の砲弾を投射可能であり、全門合わせれば毎分120発の主砲弾幕射撃を展開できる。
それに加えて初歩的ながらもレーダーと連動した射撃管制システムとVT信管の組み合わせにより、低空を這うように突き進んでいたイタリア空軍の雷撃隊は、瞬く間に炎と水柱の嵐に巻き込まれて海の藻屑と消えた。

「方位023から新たな敵機!」
「方位047からも低空で突入してきます!」
「くそっ、こうも多いと対応しきれんぞ……!」

それでも尚、敵の勢いは減ること無く、未だ多数の枢軸軍機が艦隊に食らい付かんと無謀な突撃を続けていた。

「海霧、被弾!!」
「何!?」

見れば、前方の海霧の半分は煙に包まれている。

「海霧の様子は!!」
『どうやら至近弾のようです!しかし魚雷艇です、魚雷艇がいます!』

同時に海面に目を向けると、北方……おそらくギリシャの島嶼から出撃してきたであろう小型艇が一心不乱に突入を始めていた。

「不味い!魚雷艇を近寄らせるな!」

海霧の砲火力が接近してくる魚雷艇に向けられる。
放たれた砲弾は、駆逐艦と比すれば小さな魚雷艇の周囲に次々と着弾して水柱を立てる。
そして次の瞬間、それの何倍にも達するほどの凄まじい爆発を引き起こした。

「何!?」
「ありゃ魚雷艇じゃない……自爆ボートだ!!」

接近してくる魚雷艇の約半数は、並大抵の艦艇を一撃で破壊してしまうほどの爆薬を搭載した自爆ボートだった。
更には、そんなボートに紛れて魚雷艇の放つ魚雷も迫ってくる。

いくら日本海軍のレベルが高いとはいえ、まだまだ同時多数目標への対処能力など後の時代に比べるまでもない。
常識で考えれば、この時代ならそれでも良かった。しかし、敵の非常識がそれを覆そうとしていたのだった。





「海霧、海嘯被弾!共に中破!」
「突破した敵機が多数侵入してきます!」

第二打撃群の旗艦「鳳翔」では、次々に舞い込む報告に悲鳴じみた声が上がる。

「第一打撃群への応援要請は?」
「補給作業を切り上げてこちらに向かうとのことですが、恐らくあと半日は掛かるかと……」
「暫くは我々だけで対処する他はないということか……」

枢軸空軍の大部隊は、ギリシャ南部やエーゲ海の島々より出撃してきたものである。
あらかじめ日本軍の侵攻を睨んでいたのか、作戦機の総数は1000以上にも達する。それがバラバラと出てきたことで第二群航空隊の対処能力を超過。
敵部隊が散り散りになりつつも第二群を目指したことで図らずとも同時多方向侵入となり艦隊防空能力も半飽和状態となっていた。
幸い、数々の防空兵器に守られている空母群に敵の攻撃はまだ届いてはいないが、敵の勢いが続けばそれも時間の問題かもしれない。

そこに、新たな凶報が舞い込む。


「前方に敵艦隊!戦艦多数!イタリアの主力戦隊です!」
「真っ直ぐに突入してきます!」
「奴ら……同士討ちを恐れていないのか!?」

イタリア戦艦8隻が、全速力で第二群目掛けて突入。
第二群の戦艦は5隻であり数的不利こそあるものの、通常なら能力的に考えて互角以上に戦うことは可能である。
しかし、敵の航空優勢下での決戦ともなればそれも怪しい。

「……やむ終えん、第二戦隊を前に出せ」
「了解!」

苦渋の決断から、戦艦とその護衛部隊が速力を上げてイタリア艦隊へと向かう。
しかし、それは己の防空網が薄くなることを意味していた。

「方位093より敵機多数!」
「恒風被弾、炎上!」
「迎撃しろ!」

艦隊外郭の駆逐艦が損害を受け、脱落し始める。
それに伴って艦隊防空網にも穴ができ、枢軸軍機が次々と輪陣形中心部に殺到していった。

「誘導弾、撃てーっ!」

まだ無事な艦より、白い噴煙が跡を曳きながら飛び出す。それらは、特に脅威度の高いであろう敵ジェット攻撃機の眼前で炸裂し、空中に幾つもの火球を生じさせる。
回避不可能な神のごとき矢。しかし、それでも敵を全滅させるには至らない。

「敵噴進機、8機が尚も低空で突入してきます!」

それは、高速爆撃機仕様のMe262。イタリア空軍のマークがついたドイツ軍事技術の結晶。

676 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/10/14(土) 22:05:58 ID:sp1-79-88-216.msb.spmode.ne.jp [4/6]

空母の側に控えていた軽巡洋艦「阿賀野」をはじめとする護衛艦群の砲熕兵器が火を吹き出す。
15.5cm三連装砲と12.7cm連装砲が唸りを上げ、幾つもの炸裂に敵機が巻き込まれあっという間に破砕される。

残り6機。

レーダー管制された7.6cm連装速射砲の群れは、その速射性を以て敵機の侵攻ルート上に炎の壁を造り出し、巻き込まれた敵機がバランスを崩す。

「阿賀野に損傷機が突入!!」
「こいつらホントにイタ公か!?」

残り4機。

近接防空火器である20ミリ回転式機関砲が射撃を始め、毎分3000発という猛烈な勢いの火線が空に描かれる。
鞭の如くしなるそれは、最前列の敵機の翼を両断、破壊。続いて隣の機体も曳光弾の雨霰で粉砕した。

残り2機。

別の方向から飛来した20ミリの嵐が、自爆突入直前にあったであろう敵機を横合いから殴り飛ばし、バラバラにして海に叩きつける。

残り1機。

「急上昇したぞ!」
「上だ!」

僚機の爆炎に紛れて急に高度を上げた最後のMe262の後ろを、20ミリの火線が追う。
空中で交差する赤い曳光弾のラインは、ある意味で幻想的でもあった。


「敵機直上!急降下ーーー!!!」

驚愕と緊張にてスローモーションになる視界の中で、追い詰めた“獲物”に機首を向けながらも、機関砲の光条に絡め取られ分解されていくMe262。
しかしその瓦礫は、残った運動エネルギーによって落下してくる……投下されなかった爆弾と共に。


そして、後生大事に護られていた筈の空母の、広い飛行甲板に爆炎が顕れる。


「赤城、被弾!!」

677 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/10/14(土) 22:09:17 ID:sp1-79-88-216.msb.spmode.ne.jp [5/6]
とりあえず以上となります。
イタリアがハイパーイタリアンと化して超飽和攻撃を仕掛けて来ました。
尚このせいで、独伊軍地中海方面海空戦力は「消滅」している模様。

678 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/10/14(土) 22:09:47 ID:sp1-79-88-216.msb.spmode.ne.jp [6/6]
あ、転載等大丈夫です。
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最終更新:2023年11月03日 19:51