757 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:39:11 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [125/157]
〈ポリコーラル世界
支援SS・T-90MJ戦車)
1.概略
かの欧州、北米、中東が崩壊を起こした一連の大混乱。第三次世界大戦とも俗称される多数の地域紛争の勃発。
そのさなかに欧州封鎖機構の中核をなすロシアにて、日本連合の一定の支援を受け量産された第3世代主力戦車。
原型は1990年代序盤に開発されたT-72大規模近代化モデルで、T-80に対するローエンドモデルのMBTであった。
輸出市場ではかなりの成功を収めたがロシア本国ではT-72の焼き直し、中国軍新型戦車にも劣ると評判は芳しくなかった。
しかしT-80のガスタービンエンジン製造工場がロシア連邦成立時、加盟他国に渡ったため生産は継続。
防御力改善、エンジン出力向上を果たしたT-90A。新型ERA増設及びFCS更新を行ったT-90M等が生産配備されている。
だが辛うじて勝利したはずのウクライナ戦争で、西側諸国が多数供与した対戦車火器と重砲の攻撃により相当数を損耗。
また経済制裁により半導体入手が中国などに限られ、やはり損耗分に追いつかない程度の生産が限界であった。
故に欧州諸国で暴動からのイスラム革命政権がでっちあげられた時、稼働車両は500台程度と心許ないものであった。
だが欧州諸国崩壊、米軍撤退により仮想敵たるNATO消滅を喜ぶ暇もなく、旧西欧革命政権は蛮族経済を断行。
政治、経済、技術の専門家を多く失った彼らは、早々に資源を食い潰し、主権を維持した東欧やロシアからの略奪を決心したのだ。
悪いことは続くもので日本連合による日本国の(ほぼ)無血革命からの、中国が仕掛けた予防戦争。第二次日中戦争が勃発。
最終的に技術、戦術、戦略の何れにおいても上手だった日本連合が勝利し、中国に降伏条約を認めさせるに至った。
だが人口10億を超える国家が敗北したからと言って、一時に国民や人民解放軍200万が消滅するわけではない。
国内重工業基盤や流通の崩壊による飢餓から、複数の軍閥に分裂した彼らは極東ロシアにも進軍を開始してしまった。
呉越同舟とはいえ今は同盟国のトルコにとっての惨劇として、第五次中東戦争まで起きたのは最早喜劇としか言いようがない。
最終的に三つの戦線を抱え込むことになったロシアは、彼らとしては異例の土下座に等しい態度で日本連合に支援を要求。
北方領土返還、原油及び天然ガスの安価な供給等を代償として、重工業及び軍需基盤再建支援を取り付けたのである。
758 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:39:57 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [126/157]
2.欧州封鎖機構におけるMBTの必要性
もしも仮に旧西欧諸国の革命政権軍だけが相手であれば、ロシアや東欧諸国もこれほど焦る必要はなかった。
彼らは早々に先進技術や工業基盤を使い潰し、一部精鋭を除けば旧時代の歩兵を思わせる民兵集団であったからである。
それならばロシア、東欧が得意とする火砲製造技術を用い、迫撃砲からBM30まで用い、戦場の女神の猛威を振るえば良い。
だが旧中華人民解放軍などは第二次日中戦争で壊滅したとは言え、相当数の高練度機械化部隊が残されていた。
99式A型戦車などの第3世代MBTを有する諸兵科連合部隊が、複数軍単位で存在していた。
こちらも主力は徴発した自動車と歩兵が主体であるが、その二線級部隊すら96式戦車など旧式ながらMBTを有していた。
またイスラエルとアルメニア、ジョージアという非イスラム系中東国家は、特に精強を誇るイスラエル国防軍はほぼ手つかずで健在。
アルメニアやジョージアもイスラエル軍から旧式ながら重装備多数を受け取り、クルド人武装勢力さえ支援しトルコなどを圧迫。
トルコも旧NATO諸国の中では軍備に手抜きをしない国家だったが、支援なしで何処まで戦線を維持できるか困難がつきまとった。
勿論これら戦線を最終的に支えるのは砲兵火力、航空優勢、活発な兵站の維持であるが、少なくとも2つの戦線で有力な機甲部隊が存在する。
そしてウクライナ戦争の後遺症により第3世代MBTが枯渇気味という状況は、けして看過できるものではなかった。
さりとて高コストから事実上、増加試作段階に終わったT-14系列の戦車の量産は、日本連合の支援があってすら困難であった。
また産油地帯である中東崩壊は自然と軍全体の燃料事情を冷え込ませ、ガスタービンエンジンを用いるT-80を主力とするのも難しい。
では量産が容易なT-72B3などはどうかと言えば、T-90のさらなる劣化版を送り出すのは流石に自殺行為とロシア軍も認識していた。
故にT-14の技術を援用した改良型生産までこぎつけたT-90系列こそ、ロシア及び東欧、トルコの共通MBTに相応しいとロシア政府と軍は判断。
いつの間にかロシアというガソリンスタンド(酷い言い方だが事実である)のケツモチとなった日本連合も、その判断に同意。
ロシア連邦及びチェコ、スロバキア、ポーランドなど戦闘車両製造工場を有する国家全体に、T-90ベースの規格化MBT生産支援を決心した。
これは四輪駆動車から戦車、自走砲に至るまでの規格化増産支援であり、日本連合も事態を非常に重く見ていたことがうかがえる。
759 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:40:39 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [127/157]
3.弱点の解消
実のところT-90M戦車は嘗ての西側第3世代MBTには遜色を見るが、トータルで見れば低コストかつまずまずな性能を持つ戦車である。
一方でT-72の12回目の焼き直しと言われるように、特に駆動系などはT-34以来のそれを改良し続けた結果、限界を生じていた。
この戦車には整備性と信頼性の高い大出力ディーゼル、高い後退速度を発揮する変速機などが、コスト減のためとはいえ足りなかったのだ。
故に日本連合はやはり規格化AFVの一環であるBMP-3や自走砲と、完全に規格化したパワーパックの生産ライン構築を実施。
実際のところは前世紀の自衛隊第3世代MBTである90式戦車。今となっては自衛軍ですらお古を通り越した車両の技術の援用である。
かの戦車は水冷2サイクルV型10気筒というコンパクトなディーゼルエンジン。前進4速/後進2速自動変速機で高い機動性を発揮している。
原型そのままでは難しくとも気筒数を8個として小型化、変速機も出力相応に小型軽量化すれば、T-90の車体に十分収まるものであった。
最終的には最大出力1200馬力、前進4速/後進2速自動変速機、改良型トーションバーサスペンションで駆動系を刷新。
加速力、旋回性能、後退速度などで抜本的な改良を果たすことに成功し、枯れた機材故に信頼性も高く、航続距離減少も僅かに収まった。
もう一つの弱点としては中国崩壊により半導体入手が一時期遮断されてしまった電子装備、特に射撃指揮装置である。
こちらも史実西側基準ならば00年代相当、日本国及び日本連合では二線級レベルの電子機材技術供与により、再構築が行われた。
主たる弾道計算機は商業用32ビットコンピュータを用い、砲手及び車長用照準器双方に熱線映像装置とレーザー測距儀を搭載。
砲安定装置や自動装填装置も商業用16ビットコンピュータにより、著しく性能や安定性、追従性を改善している。
トータルの性能ではフランスやイスラエルからモジュール供給を受けていたT-90Mに匹敵するかやや上回り、コストでは圧倒的に安い。
マンマシンインターフェースもより扱いやすいものとなり、夜間悪天候における命中精度や照準速度も相当に改善された。
そして肝心の主砲の命中精度が大きく改善され、低コストでFCS構成モジュールが供給可能ならば、砲発射ミサイルの重要性は低減。
ミサイル本体が高コストであり、砲及びFCSの複雑化を招いており、1台でも多く近代的なMBTが欲しい状況では不必要と日露共に判断。
日本式の支援を受けたT-90Mにおいて125ミリ滑腔砲はAPFSDS、HEAT-MPに弾種を絞り、弾薬生産効率も向上させている。
760 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:42:09 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [128/157]
4.長所の強化
そしてT-90Mは確かにT-72の焼き直しであるが、搭載する125ミリ滑腔砲は2A46系列の最新型で、各種新型弾薬にも対応している。
3BM
シリーズの125ミリ砲弾は史実西側MBTでは最良のノウハウを持つ列島日本、そして日本連合からすれば使いでのある戦車砲である。
規格変更こそ難しいが冶金技術の改善などにより貫通力、そして何より遠距離砲戦における弾道特性の低コストな向上は十分見込めた。
また砲発射ミサイルの廃止により弾薬製造ラインが効率化され、コスト面で大幅な余裕が生まれたことも新型弾薬開発に貢献している。
最終的に徹甲弾は弾芯縦横比を26程度に抑えつつ、弾芯素材の強度向上により2000メートルでRHA700ミリ相当を貫通(日本式基準)。
弾芯と安定フィン製造精度改善もあり、砲戦距離3000メートルですら初弾命中率8割を超え、次弾ならば確実に命中する。
対戦車榴弾も堅固な陣地、建築物に籠もった敵歩兵対策も兼ねて、弾道構造をタンデム方式とすることで貫通力、破壊力を向上。
96式戦車やメルカヴァMk2程度であれば正面から撃破可能で、何より敵散兵突撃の破砕や永久陣地破砕に効果的である。
永久陣地やコンクリート建築の外壁を第1弾頭が射貫、第2弾頭が内部を焼き尽くすという、歩兵主体の阻止にも猛威を振るった。
一方で装甲防御についてはさして手を加えられていない。ロシア軍が原型を作り出したT-90Mはそれなりに堅牢な戦車である。
ウクライナ戦争で多数の損失を出してしまったのは、練度の不足と歩兵との協働失敗であり、これではどんなMBTも撃破されてしまう。
故に欧州封鎖機構編成以降のロシア軍、東欧諸国軍は諸兵科連合維持において、歩兵の重要性を思い出している。
またアクティブ防御システムが実はさほどの効果を発揮しておらず、寧ろ照準阻害を行う発煙弾こそ効果的という戦訓が得られていた。
これを受けてT-90には広角度レーザー検知器複数、発煙弾発射機16門を標準搭載として、各種照準阻害の継続性を強化。
アクティブ迎撃システムという高価な、しかし当面は実用性が乏しいシステムの撤去により、低コストという強みを増している。
原型の優れた防御構造、主砲システムの長所を低コストに伸ばしつつ、複雑高価な装備を排除して量産性を高める。
ロシア式戦車が本来有していた長所を、日本連合の支援で高めることにより、T-90Mは性能だけでなく生産性を大幅に向上。
T-72系列のMBT生産ラインを有する東欧、中欧諸国でも製造が容易なMBTとして、多数が生産されることになる。
761 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:42:41 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [129/157]
5.実戦におけるリバイバルT-90M
日本連合の支援を多分に受けたことからT-90MJと俗称される、本来の性能と信頼性、生産性を伸ばしたT-90M。
生産工場そのものの刷新や効率化の恩恵もあり、ロシア本国及び東欧諸国合計で月平均300台という生産ペースを発揮。
東欧諸国生産車両は欧州封鎖機構向けに、ロシア本国生産車両は人民解放軍残党と非イスラム中東軍向けに配備されている。
MBTとして機能することを強く求められた対中華、対イスラエル戦線においては、99式A型やメルカヴァMk4に劣ることも少なくはなかった。
しかし毎月300台生産という補充ペース、若年戦車兵でも扱いやすいマンマシンインターフェース、高い信頼性がそれを補填。
キルレシオで劣後したとしても、数量における優位と諸兵科連合全体での優越により、最終的な勝利の獲得に貢献している。
優先度では劣る西欧戦線では文字通りの機動予備、敵が本格的な機械化部隊を持ち出した際の切り札として運用。
レオパルト2やルクレール、アリエテ系列の旧西側MBTを主軸とする革命政権正規軍を相手に激闘を展開。
練度、数量で優位を獲得しつつ、これら旧西欧諸国製MBTを拘束。その猶予を用いた砲兵射撃による突撃破砕に必要な時間を稼いだ。
総じて言えば日本連合の支援を受けたT-90M、俗称T-90MJはしばしば遅れを取ることもある。必ずしも性能で優越する戦車ではなかった。
しかしながら必要十分な性能、低コスト、大量生産という、本来のT-90戦車のコンセプトを正しく実現することで各戦線を維持。
やがては攻勢に転じ敵野戦軍殲滅に大いに貢献したという点では、兵器として大変に優れた戦車と評価しても差し支えはない。
ウクライナ戦争で露呈した運用面の弱点も、自動車化狙撃兵部隊の車両、装備の近代化をやはり日本連合支援により達成。
国家としては有り難くないが、総力戦では不可欠な総動員体制により、多数の歩兵や工兵に支援され損害を抑制している。
必要な時、必要な数を提供できる戦車として、日本連合の支援のもとに再起したT-90MJ戦車は優れた戦時兵器であった。
またT-90MJはオーソドックスな設計のままに車両として性能向上を果たした恩恵から、多数の派生型車両開発に漕ぎ着けている。
戦闘工兵車両、自走架橋車両、野戦防空車両、自走152ミリ榴弾砲、歩兵掃討車両、重指揮通信車など多岐にわたる。
全ての面で最良とは言えずとも高い信頼性と生産性。奇をてらわない性能向上により、かの大戦争を戦い抜いた優れたMBTなのは疑いない。
762 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:43:11 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [130/157]
6.諸外国におけるT-90MJ
元々T-90MJは日本国及び日本連合の盾となる国家のMBTとして、再設計と近代化を施された側面が強い。
故に東欧諸国やトルコなどでは、やはり日本連合支援のもとに共通規格MBTとして生産インフラの構築が行われている。
彼らは元より高い戦闘車両開発、生産能力を有しており、一度方向性とノウハウを示せば適応能力は高いものがあった。
そのため旧西欧諸国封鎖機構、対イスラム・アルメニア戦線向けのT-90MJのかなりは、東欧諸国やトルコの生産した車両が占める。
彼らのかなりが西側MBTを国軍主力としつつ、欧米崩壊により整備維持すら困難となり、新たなAFV整備を求めた影響も大きい。
西欧及び中東戦線向けに月産平均300台という生産ペースは、これら諸国の危機感と尽力も大きいものがある。
時として砲兵阻止射撃さえ突破する旧西欧革命政権の人海戦術、精強なイスラエル国防軍主体の中東戦線。
これを相手とするには生産性、信頼性の高い第3世代MBTはやがて必須となり、欧州封鎖機構標準MBTとして成長した。
まさに蛮族経済を主軸とする複数国家に対する、やはり野蛮な戦術で応じて食い止めた戦争の縮図である。
そしてT-90MJは相応のパテント支払いを受けた上で、もう一つの地域国家群で多数が生産されることになる。
旧人民解放軍と武装難民の津波を前に軍備拡張に勤しむ東南アジア諸国でも、T-90MJはやはり必要とされた。
信頼性と生産性に優れ、旧人民解放軍精鋭部隊にも対抗できるMBTは、その安価さから東南アジア諸国複数で採用。
まして東南アジア諸国の盟主であるインドは、元々T-90の輸入とライセンス生産を行っていたため、素地で困ることもなかった。
勿論国家間の国力により生産インフラ整備には差が生じるが、このあたりも日本連合の控えめな支援で相当に是正。
少なくとも整備維持、部品生産すら出来ない国家は存在せず、人民解放軍残党と武装難民阻止に奮闘することになる。
合衆国崩壊により武装難民、旧合衆国軍流入のリスクが露呈した南米諸国でもライセンス生産は開始されている。
全く皮肉なことであるが、欧米諸国壊滅とイスラエルが世界の敵となったことで、T-90は人類生存圏のデファクトスタンダードMBTとなったのだ。
それは奇しくも冷戦時代末期にソ連がT-90に託したコンセプトであり、いまや全世界で5000台を超えるT-90MJが配備されつつある。
763 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/10/19(木) 21:45:45 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [131/157]
以上にございます。
まとめウィキへの転載は随意におまかせします。
当初、封鎖機構向けのT-90と東南アジア諸国向けの輸出MBTと考えましたが、
最終的には90式戦車などの要素技術を用いたT-90Mという形で、収斂してしまいました。
本当ならばルクレールやメルカバMk4、10式戦車のような最新MBTが望ましいですが、
ポリコレコーラルが全世界で吹き出し、その全てと戦線を接するロシアにはこんな戦車が丁度いいかなと…
最終更新:2023年12月09日 12:31