796:冷石:2023/10/23(月) 07:04:50 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
宇宙歴796年、アスターテ会戦の後始末が終わったころ自由惑星同盟軍で新たに2個艦隊が編成されることが発表された。
第13艦隊 提督ヤン・ウェンリー少将
第14艦隊 提督シマヅ・イエヒサ少将
この知らせをひとごとの様にシマダ・シゲダロウ准将は聞いていた。
自身が第14艦隊参謀長に任命されるとは知らずに。
「私が第14艦隊の参謀長ですか?」
辞令を受け取り嶋田は人事担当士官に尋ねる
「うむ、アスターテ会戦でのヤン少将の補佐役としての仕事ぶりに是非と、シマヅ少将からのご指名だ」
シマダは原作知識が通用しそうで生き延びる可能性の高い13艦隊がいいなーと思うも
第14艦隊が編成されることで原作とは乖離していることに思い至り
「かしこまりました、シマダ・シゲタロウ准将第14艦隊参謀長の職務拝命いたします」
と答えた。
「しかし、データ見るたびに思うよ、この国詰んでる」
増大する軍事費と福祉関連の費用、人手を軍に取られていることによる働き手不足、財政赤字の補填のために発行した国債はフェザーン資本に奪われるなど明るい材料が全くない。そして今年中にお紺会われるであろうアムリッツア会戦で軍の屋台骨がへし折られるときている。正直同盟が滅んで帝国に吸収合併された方がいいのではと思わないでもない。しかしその発想を頭を振って追い出す、ヒルダや7元帥がいる間は穏当な支配が続くだろうしバーラト自治区も認められるだろう、しかしその後は?
結局同盟人が同盟人として生きられるのは自由惑星同盟の中だけなのだ。シマダは同盟存続の手を考える。
「政治のことは、今は手のつけようがない。まずはアムリッツア会戦を防ぐ、最低でも被害を減らすことから考えよう」
そう結論付けるが、今世では前世と違い
夢幻会のような同志がいない。
「せめて、政治家にこの危機意識を共有する人を探さないとな…
お、ここか」
シマダは第14艦隊司令部のオフィスにたどり着いた
「シマダ准将はいります」
「よっ来てくれた、歓迎しもす」
訛りのきつい言葉に迎えられる。
(この人がシマヅ少将とりあえずの上司か)
シマダは目の前に立つ自身の上司となる人物を観察した
年のころは40前、背は低い方だろうだが鍛えられた体つきは全身これ筋肉といった感じだ
立ち姿にも隙がなく艦隊司令というより歴戦の陸戦対隊員といったほうがしっくりくる。
顔つきは意志の強さがうかがえる目に混血が進んでほりの深い顔立ちが多い現在では珍しいくらいほりが浅く平たい。
典型的な日系イースタンといった感じだ。
「シマダ参謀長、とりあえず14艦隊は任務は拝命してなか、そいでとりあえずは艦隊の訓練に励むことになっとじゃ。
細かいことは副司令のカールセン准将と打ち合わせてくいや」
「はっ、かしこまりました」
敬礼して退室するシマダ。しかしなんだろう、シマヅという名訛りの強い言葉遣いにシマダは嫌な予感が沸き上がるのを押さえられなかった。
797:冷石:2023/10/23(月) 07:05:30 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
数日後第13艦隊にイゼルローン攻略の任が下された。
(これは原作通りか、二次創作だと転生した主人公の艦隊も一緒に攻めるというパターンが多いが)
「おお、シマダ参謀長」
「これはシマヅ提督にカールセン提督」
立ち上がり敬礼しようとするシマダを手で制し同じテーブルにシマヅとカールセンは座る
「そいで、何を考えとったじゃシマダ参謀長」
「は、今回第13艦隊に与えられた任務について考えておりました」
「む、そうか。しかし半個艦隊でイゼルローンを落とせとはシトレ本部長はどんな成算があってきめたんじゃろうのう」
「いくらなんでも無理というものです、シマヅ提督」
カールセンが口をはさむ
「今回の動員戦力ではイゼルローン駐留艦隊よりも少ない、無謀としか言いようがありません」
「まあ、そう考えるのが普通じゃ、じゃっどん命令して受けたち事は何らかの成算があるんじゃろ。
シマダ参謀長、カールセン提督、もし我らがイゼルローン攻略の任を任されたらどういう手ばとる?
おいは二つほど案があっとじゃが」
「二つ…お聞かせ願えますか?」
「む、一つ目はちいと難しいが正攻法と言ってもよか
まずイゼルローン駐留艦隊を要塞主砲射程が胃に引きずり出して全滅、もしくはそれに近い損害を与える
そん後に要塞を攻めるとじゃ」
「現実的ではありませんな、確かにその手ならば連射が利かない要塞主砲の脅威はかなり減らせますが
駐留艦隊を全滅させるのは無理と言ってよいかと」
「うむ、そいで第二案よこいは第一案と違って簡単じゃ、じゃっどんちくと問題があっとじゃ」
「問題、ですか?」
「うむ、こいはまず間違いなくイゼルローン要塞ば無力化できるが、要塞の占拠ができんとじゃ」
「占拠ができないと言いますと?」
「簡単に言えばそこらにある小惑星に推進装置を付けイゼルローン要塞にぶつける
それなりの大きさのなら要塞主砲の1,2発じゃ破壊できん、しかも質量があるから要塞ば半壊、もしくは全壊できっとじゃ」
「なるほど、確かにそれじゃあ占領はできませんな」
シマダは驚いていた、たしかにそうだ小惑星ならばそこらにごろごろと転がっている。推進機を付けて前進させることもそう難しいことではない。原作でラインハルトやヤンといった天才か、追い詰められて錯乱したケンプしか思いつかなかったことをさらりとこの提督は言ったのだ。
「提督、その案はいけるかもしれません。確かにイゼルローン要塞の占拠はできませんが。確かに簡単に要塞を無力化できます
わざわざ占領しなければならないという考えさえなければその案は最も効率的と言えるかもしれません」
「そうですな、今後も要塞を攻めるたびに受ける被害を思えばそれが無くなるその案は確かに良いかもしれません」
「…シマダ参謀長、うっとこの参謀ば集めてこん案につめてくいや、煮詰まり次第本部長に提出してみる」
「はっ」
(まあこの案使わなくても原作通りならヤン提督がイゼルローン陥落させるんだけどね)
などと思いながらシマダはプロジェクトチームの立ち上げについて思いをはせる。
実際ヤンによるイゼルローン要塞占拠は原作通り進みこの案が日の目を見ることはなかった。
798:冷石:2023/10/23(月) 07:08:28 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
とりあえず以上ですwiki掲載はご自由に
とりあえず鹿児島弁は適当です
次回は同盟が死刑同意書にサインしたアムリッツァ会戦に突入します。
最終更新:2023年11月10日 22:21