810:冷石:2023/10/23(月) 22:59:11 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
惑星ハイネセン 自由惑星同盟高級士官用バー
シマダは今直属の上司であるシマヅ提督と一対一で雑談をしながら軽くビールを飲んでいた。
「それでシマヅ提督、突然おごるから飲もうとはどういったようけんでしょうか?」
「うむ、本当ならカールセン提督も一緒にうっとこの艦隊の今後さぁ相談したかったとじゃが。
カールセン提督が先約があって参加できんじゃは残念じゃ」
「我が艦隊の今後ですか」
「そうじゃ、イゼルローンをヤン提督が落としたこっで今後は要塞の防衛が主要なにんむになっとおいはおもっちょる
ほいでそのための艦隊ん運用ば相談したかったどじゃ」
「なるほど、そうですか」
だがシマダは知っているこの後同盟軍は大戦力を率いて帝国領に侵攻することを。
アスターテの終わりと第14艦隊の結成を除けば原作通りの流れで事態は推移していることからも帝国領信仰が起こる可能性は高い
(アムリッツアの惨劇だけは回避しなければならない、だが自分に何ができる。今の私は政治家にコネもない一軍人に過ぎない)
無力感に厳しい表情をしているシマダを見てシマヅは、シマダのグラスにビールを注ぐ
「なんか、懸念がありそうじゃの。なんでんいい、話してみい」
顔に出ていたかと、シマダは思いビールをあおる。
(私一人で悩んでも答えは出ないこの人に相談してみよう。この人は切れ者だ何かいい案があるかもしれない)
「はい、これはあくまで士官学校の同期から聞いたこどで、確信は持てないのですが。
年内に大規模な出兵があるかもしれません」
「どういうこっじゃ」
「誰かはわからないのですが、正規のルート統合作戦本部を通さずに評議会に直接出兵を行う決定をしろと工作している士官がいるとのことです」
「派閥争い…」
「ええ、このところシトレ派の軍人が活躍していることに焦りを覚えたロボス派の軍人、特にヤン提督に対抗心を持っている者が行っている可能性が高いと思われます」
「馬鹿なこつを、おいらはあくまで兵隊じゃ。政府の命令に従って戦うのが仕事で、出世のために政府を動かすなんちことは兵隊の領分からハズレっとじゃ」
「はい、しかし何より問題なのはこの出兵成功しても失敗しても同盟滅亡に向かいかねない事です」
シマヅは再びシマダのグラスにビールを注ぐ
「成功すればいいと思われるかもしれませんが、成功すれば我々はあくまで解放軍という体裁を取らねばなりません。
そのためにも、食料だけでなく民生品も提供しなければならなくなるでしょう、そしてそれに我が国の体力は耐えられない」
そう、原作では負けて軍主力を失ったことが注目されるが、もし成功していたとしたら。占領惑星を食わせなければならないのだ。
今の破綻寸前の同盟にそれができるとは思えない。
「負けるとすれば、その時は帝国軍は帝国領内深くに引き込んで戦うでしょう。そうなるとイゼルローンに戻れるのはどれくらいになるか」
「どっちに転んでもまっとうのは地獄、そう参謀長はいいたかじゃな。何が何でもそん企てとめんといかんじゃの」
「はい、ですがその手段が思い浮かびません。私は政府方針に口をさしはさめるような立場にない一軍人です。
ですから悩んでおりました」
しばしの沈黙。
その沈黙をシマヅが破る
「参謀長、そんならいっそ正規のルートで出兵するように提案してはどがいじゃ」
「え、ですが先にも言ったようにいかに止めるかを考えてたのになぜその結論に至るのですか!?」
「まあ聞きや、勝つも地獄、負けるも地獄そん事を評議会に伝えればよかっとじゃ。
それなら、占領した時は軍政をしかなかん、そいでその予算ば計上して提出すっとじゃ
ほうすればかかる予算に無理じゃというこつばわかるじゃろ、まあ引いてダメなら押してみろちこっじゃ」
「その発想はありませんでした、確かに予算の分捕りあいは国政に携わる者にとっては当たり前、その予算をどこから持ってくるかでもめてお流れになる可能性は高い」
前世でも辻が予算を使って軍や他の省庁の申し出を止めていたことを思い出す。
「参謀長、こん案ばすぐまとめてくいやせ、まとまり次第統合作戦本部に提出する。速さがきもじゃ。頼んだ」
「かしこまりました、酔いを醒ましてすぐ取り掛かります」
とりあえず水をがぶ飲みし風呂に入ってアルコールを飛ばそうシマダはそう思い行動を開始した。
811:冷石:2023/10/23(月) 22:59:56 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
自由惑星同盟国防委員長室
「シトレ元帥、この案は正気かね」
うすら笑いを浮かべトリューニヒトはシトレの提出した帝国領侵攻作戦安が書かれた資料を置いた。
「は、いたって正気であります」
バーでの会話の翌日には資料を作成したシマダはシマヅ提督に提出。シマヅは受け取るやアポもとらずにシトレの元に向かい帝国出兵案を提出した。
シトレは正直怒鳴り却下しようと思ったが、この案が必要以上と言ってもいいほど細かく詰められ必要予算までもが詳細に計上されていることに気づき思いいたる、むしろ彼は出兵せよと言ってるのではなく逆に出兵を止めろと言っているのだと。
伊達に長く統合作戦本部本部長を務めているわけではない、ここまで細かく予算を計上したのはこれを材料に止めろと言っているのに気付いた。
シトレはこの案を読み込み大したものだと思う、常識外の予算さえ除けば即採用できる案である。これにシトレはシマヅ提督の評価を上げるこういった腹芸はヤンにはできない能力というより気質の問題だ。そしてシマヅがだれにも気づかれないように出したメモに書いてある「帝国出兵案を政府に直接提案しているものあり」の言葉に決断、トリューニヒト国防委員長にアポを取り現在に至る。
「この案を評議会に掛けろ、君はそういうのだね」
「その通りであります」
「ふむ」
トリューニヒトとシトレの仲はしっくりいっているわけではないむしろ悪い部類だろう。だがトリューニヒトはシトレの能力は信頼している、気質もよく顔を突き合わせていることからも大抵のものより理解しているつもろだ。その両面から見てもこんなふざけた案を提出するような男ではない。
(なるほど、この案を使い帝国出兵を止めろ。というわけか)
トリューニヒトは独自の情報網でサンフォード議長に直接帝国出兵案を上げている士官がいることは知っている。
サンフォードが支持率上昇を狙いその案に乗り気なことも。
トリューニヒトはその出兵案は反対するが黙認する予定だった。成功するはずがないことを知っているからだ。
そしてそれを使い政権トップに上ろうとしていたのだが。考えを改める、シトレほどの男がここまでして止めようとしている
この一事でただの戦争ではない事がわかる。
「わかった、しかしこの案が通るかどうかは何とも言えない。それだけは言っておくよ」
「十分であります、委員長」
トリューニヒトを引き込めたシトレはそう判断し引き上げる。ここから先は政治家の領分だ。
シトレの退出を見届けてトリューニヒトは財務委員長であり、自身の政敵と言ってもよいジョアン・レベロに電話をかけた。
惑星ハイネセン某高級クラブ
「レベロ委員長よく来てくれた」
「トリューニヒト委員長お招きいただきありがたい。ところで今日は何の御用ですかな」
「いやね、単に君と一杯飲みながらちょっとした話をしたいと思ってね」
にこやかな笑顔を浮かべトリューニヒトは答える。
「話というのは?私も暇ではないのでね、それほど長く時間はとれないよ」
「安心してくれ、そんな長話はしないから。まあかけてくれ」
レベロはテーブルを眺め一杯飲もうと言いながらアルコールの類がないことに何か重要な案件だという事に気が付く
そしてトリューニヒトを見るとかなり真面目な表情だ。表情一つで場の空気を変える。このあたり流石だと思う。
「とりあえずいただこう」
食事をとりトリューニヒトの出方をうかがう、すると直球できた。
「今日、シトレ本部長から帝国出兵案が提出されたよ」
思わずトリューニヒトの顔を見つめる、嘘は言っていない。トリューニヒトは腹の底を見せない男だが見せるべきときは心得ている
今がその時だと思っているのだろう。しかしシトレが帝国出兵案を提出だと?ありえない、軍は慎重に動かすべきと考えている男だ。
交友があるレベロはそのあたりよく知っている。考えろ、この言葉の裏の意味をシトレの行動トリューニヒトの表情これらから答えを導き出せ。
トリューニヒトはまっすぐにこちらを見つめている。このことからこれは同盟の今後にかかわる大事だとわかる。
「サンフォード議長にも他の士官から同じような案が提出されているみたいだ」
静にトリューニヒトは語る。この瞬間理解したトリューニヒトはこの出兵案を止めたいのだと。
トリューニヒトを見つめる。トリューニヒトはこちらが地震の意図を察したことに気付いたようだ、いつもの腹の底を見せない笑顔に戻る。
「どれくらい予算はかかる(予算を理由に止めろという事だな)」
「莫大だ(理解したようだな、そっちの方からアプローチしてくれ)」
「了解した」
「ここの料金は私が払うよ、ゆっくり食事をして言ってくれ」
「すまないな」
トリューニヒトはそう言い去っていった。それを見届けるとレベロは政友であるホアン・ルイに連絡を取った。
812:冷石:2023/10/23(月) 23:01:44 HOST:p432200-ipngn200305gifu.gifu.ocn.ne.jp
とりあえずここまでです。wikiの掲載はご自由に
動くトリさんレベロといったところですね。
最終更新:2023年11月10日 22:23