896:陣龍:2023/10/30(月) 23:11:27 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

――――『過去』以外の夢を見たのは、何時が最後だろうか



 明晰夢…自らが今夢を見ていると完全に認識している眠りの中、『飯崎鈴夏』は【二つの過去】をまた見ていながら、
他人事のように考えていた。


『駄目です!危ないです!危ないですから下がって!おい、この娘を引っ張ってくれ!!』
『お母さん!お母さん!!放して!放してよ!中に、中にお母さんが!!』
『馬鹿野郎、生身で突っ込んだらキミも焼け死ぬぞ!!』
『嬢ちゃん!落ち着け!落ち着くんだ!!』


 何てことの無い、何時もの平和な日々に唐突に訪れた、自殺志願者による前触れも怨恨も何も無い、唯々『適当に選んで目に付いた』と言う
余りにもふざけた理由で行われ、自宅ごと母親を焼き殺された、あの日の夕焼け。




『なんで……置いて行かないって……お父さん……』
『鈴夏……』
『鈴ちゃん!まだ…まだ見つかっていないの!あの子は、まだ……だから……』
『……うん……見つかると、良いね……【死体】、だけ、で…も……』
『鈴夏……!』


 人為等より遥かに理不尽で唐突な、巨大地震と人類史規模の巨大津波で、故郷も、家族も、全ての痕跡諸共攫われ、
奪い去られた天災に、偶然祖父母の道場手伝いに行っていた為に生き残った…【生き残ってしまった】事を知った、あの日の朝。




――――『明晰夢は自分の思い通りに夢を変えられる』、なんて嘘っぱち。本当にそうなら、こんな下らない【夢】なんてすぐに消し去るってのに


 場面が唐突に断ち切られ、切り替わる次の夢は、旧時代の無声映画の如き、全ての『色』が抜け落ちたモノクロの世界。



――――あの大規模な粛清劇で、一応纏めて捕殺されているけど、反省した素振りもして無い人が多いんだよね



 そう思うも『そもそも反省以前に何故被告人・罪人として吊り上げられたのか全く分からない』者共より逆切れする形で
逆説的に自己に責任が有ると理解している方が未だ良い方か、と考えを新たにする『飯崎鈴夏』。

 そんな事を考えながらに目の前で流されているのは、思い出したくも無い、ゴーストウィニング号の凱旋門賞制覇後から始まった、
今の今まで全く興味も無く報道も皆無だった各種メディアが唐突に『ネタ』へ飛び付いて来た事により乱発された、
【報道の自由】を盾にした一方的個人情報の全国報道。分かり易く『ネタ』に出来るとあらばハゲタカかダボハゼの如く飛び付き
食い散らかす本音を隠そうともして居なかった記者達や、その様に指示を出しておきながら全く以て自らに責任が有る、
罪になる行為だと一欠けらも認知認識・理解していなかったメディアの責任者層。

898:陣龍:2023/10/30(月) 23:13:25 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

――――お墓……定期的にお爺ちゃんや住職さんが確認しているけど、また確認しないとなぁ



 自宅の住所の実質的全面公開、何処からか知ったか無責任に垂れ流す個人財産の額、
大震災でそれぞれ別の人生を歩んでいる学友達に遠慮無用に押し入り取材の乱発。挙句は、
お盆の両親の墓参りにすらも、霊園の入り口に張り込んで『飯崎鈴夏』を待ち受け、
お参りに来た彼女を見つけるなり多数が人垣を入り口を塞ぐ形で形成し無理矢理に【突撃取材】を
嬉々として行ってすら来た。騒ぎに気付いた住職等の抗議や警告も全く馬耳東風なメディアには何の意味も無く、
結局墓参りも出来なかった。しかも当のメディアは徹底したモザイク処理とカット編集で霊園のバカ騒ぎを隠蔽し、
唯々墓参りしたいだけだった『飯崎鈴夏』へ『取材拒否行動』だと非難をする有様だった。
尚、ゴーストウィニング号の馬運車襲撃並びに当該騎手死亡事件後からウマ娘ゴーストウィニング達が【復活】した騒動の後の話である。


――――なんだか心底久し振りなこの雰囲気の【番組】。もう今では国営映像図書館の記録映像にしか無いんだよね


 そしてメディア系が尻馬に乗るが如く、否寧ろテレビと言う媒体で共犯も同然だった芸能界も追従。芸能界入りの誘いに
全く興味を示されなかった事に激昂でもしていたのか、情報バラエティー等で『視聴者に分かり易く』を免罪符として、
安定の個人情報無断垂れ流し。加えて当人に交渉以前に一方的に番組出演予定者を公言公開して既成事実的に
出演させようとした底の浅い目論見の末、番組生放送二日前に一方的に出演要求されたのを既に帰郷中で当たり前に言下に断られ、
結果まるで『飯崎鈴夏』の我儘で出演しなかったかのように言わんばかりの番組内容を全国放送してる様な醜態であった。

 結果、彼の神直々の警告で漸く執り行われた『執行』や『法律適用』により、既存の番組は某農家兼アイドルが出て来る
日曜番組の様な極々一部の例外を除き、後継も許されずテレビ局諸共全滅か、ディレクターや演出者、出演者レベルで丸ごと入れ替え、
放逐されるかされたのが殆どだった。その為、証言台で番組構成の段階で『斯く有るべし』と要求されていたと立証されて
如何にかなった出演側の芸人、俳優等は兎も角、裁判でやり玉に挙げられ、『粛清』されて路頭に迷った元報道系、
メディア系の人間、そして捜査の流れで多数の不法・違法行為が発覚し誘爆爆散して灰燼に帰した芸能関係者が
時折逆怨みで『飯崎鈴夏』の自宅に嫌がらせ等を実行しては地元警察の功績の一環として逮捕送検されている。
余りにも断続的に起こるので『手柄』扱いにも成らないとか。




――――夢を見る度見る度、何時も何時も、何度も何度も出て来るね、これ



 当人たちの心情等全く配慮する意味も価値も無いと一方的に踏み入って、また一方的に事実を無視や捻じ曲げた
解説・介錯の紙面・報道を垂れ流す映像の記憶と共に、【足下】に湧き出て来た何の光も無い真っ黒の【滴】。
…滴と言うにはバケツ一杯程度にはある大きさで、そして半円状に形状を保っている事から、スライムと称するのが妥当かも知れないが。




――――……しつこい


 何の感情も躊躇いもなく、その真っ黒な【滴】を『飯崎鈴夏』が踏み付け、潰すと共に割れた【滴】は、
物理法則に反し意思を持つが如く踏み付けて来た右足に纏わりつき、そして見る見る内に霧の如き煙を発しながら
彼女の身体に【這入りこんで】行った。見る者が見れば、【滴】が人間の手の様に変化し、
底へ引き摺り込もうとする様な動きをしていた事が見て取れただろう。



――――離れても意味が無く、何をしても逃れられない。きっと、これが『ワタシ』の奥底の真意なんだろう。



 何処に視界を向けても見せつけられる、幾多の悪意、又は無意識・無関心の欲が引き起こし続けた、
人の業による自らへの害意と敵意による実害の数々。その矛先となり一身に受け続けた『ワタシ』の心と精神は、
必然反復する害意と敵意に練り上げられ、だが表へ暴発しない様に一心に底へ、底へと押し込め続けた結果、
底なし沼の泥濘と岩石の如き強固さを併せ持つ、未知の奇形化した【黒】へと昇華した。

899:陣龍:2023/10/30(月) 23:14:40 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

――――もし……


 この【夢】を見続けて、真っ黒な【滴】が身体へ入り込む度に少しずつ浸食し、【憑き物が落ちる】前には踏み付け、
飛び散った一部から首元と顔の半分まで染まり上がり、【憑き物が落ちた】今では首元と顔の部分こそ剥がれ落ちるも、
それでも未だ尚四肢の全てが【全ての光も呑み込む漆黒】に染まり切った両手を見ながら、ふと思う。



――――【アイツラ】に、未来永劫永久ニ自害が起きなイと信仰しテイる【下衆共全員】へ……『ワタシ』かラノホウフクヲ「駄目です、それだけは」……


 焦る様な、心配している様な声色で、『誰か』から背後から抱き留められる。


――――大丈夫、『何時もの事』だから


 だが、心配されるような事でも無い、『何時もの事』でしかない。四肢の【黒】も溶け込む様に身体の中に消しながら、
振り返らずに『堪える』。数える事もとうに止めた、億劫な身体の中に【這入りこんでいく儀式】も、最早どうでも良い些事でしかない。


「そう……」


 背後から抱き留めている『誰か』は、その答えに対してそう溜息をつき。







「そこに横になって直りなさい、これから【治療】です」


――――何で?『なんで??』【ナンデ???】


 どう言う訳か、僅かながらに怒気を滲ませて寝かしに掛かって来た。……どういう事なの???







「なのですーー!?」
「くっ……!?」



 『神殿』の縁側に待機していた、駆逐艦娘の響と電。相変わらず何処に行っても長女は長女である行動を
世間話していた所、前触れ無しに起こった神気の風に吹き飛ばされかけて「はわー!?!?」「電ー!?」…


…訂正、若干一名が水上機の射出の如く勢いよく吹き飛ばされていた。



「な……なに、が……おこったのです……?」
「電、大丈夫かい?」
「はわわーー……」


 タンブルウィード(西部劇で転がっている草)かゴ〇ン族の様に転がって行き、女の子座りで目を回して頭上に星が飛ぶ電。
様々な世界の現場で威厳ある振る舞いや戦歴の姿を見せ続けている彼女だが、根っこの部分は昔と変わっていない電であった。


「……しかし、ほんの僅かとは言え、ティアマト様が怒気を飛ばすなんて、珍しいね」



 取り合えず妹を背負って社に戻る響は、先程の神気に僅かばかりに怒りの感傷が紛れていた事に、一人疑念を抱いていた。
その原因が、直接殴られると言う攻撃行動によって初めて、シンザン号とセントライト号だけに微かに気付かれた
【違和感の真核】に有った事を響に知らされるのは、もう暫く先の事である。

900:陣龍:2023/10/30(月) 23:16:16 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……どういう事だ」
「【運】と【縁】が無かったら…?」


 超大陸日本世界、トレセン学園。シャカールの問い掛けに謎の返しをしたゴーストウィニングに対し、
周囲のウマ娘達は疑問符を浮かべていた。


「先ず、【ゴーストウィニング号】と言う馬の血統は、本来全く見向きもされる訳が無い、
古代遺跡級の遺物だったって事は?」
「……まぁ、な」
「シンザン号さんやセントライト号さんをご先祖に持つ、立派な血筋だと思うんだけどね……」
「どれだけ立派でも希少でも、レースに勝てなければ零細血統以下の存在ですけどね」
「ゴーストさん……」


 軽く目を逸らすエアシャカールに、アイルランド王家の王女と言う立場から血筋や血統に敏感な
ファインモーションのフォローする様な言葉を、自分から一刀両断する現実の言葉を言うゴーストに、
少々心痛な面持ちのマンハッタンカフェ。


「…っ、ゴーストちゃん……」
「……確かに、競馬っつーのはカネが掛かる。稼ぎも出来ない無駄飯ぐらいを延々抱え込み続ける様な馬鹿は居ねぇな」
「でも!ゴーストちゃんが過去アレだけ活躍していたのだから…」
「あー、それなんですけど、全姉…あ、父と母が同じ馬の姉の方ですが、二回外野の【騒動】で不受胎になったり
未熟馬で早期緊急出産したせいか妊娠能力が怪しくなってたり、全弟もあの二度の【騒動】が原因か種付けに拒否行動だったりしていて、
割とシンザン号とセントライト号の血筋が断絶間近の危機だったりしていたりしてて。まー……あははー…」
「っ…!笑いごとでは無いですよ……!」
「ごめんなさい」


 シレっと飛んでも無い爆弾情報を流れでぶちまけた事に途中で気付き、誤魔化そうと笑って見たらカフェに怒られてしまい
即謝るゴースト。シャカールの方は兎も角、血統や世継ぎ関係の話題に関しては立場上敏感な王族のファインの前でこの話は、
確かに不用意で不躾である。



「……で、そンなどうしようも無い血統でも、仔馬の時期から訳分かンねぇ能力見せてたンだ。期待位されてただろ?」
「そうでも無かったそうで、完全に赤字資産状態で最早ファームの我儘な意地見たいな血統馬の維持には従業員等からは
批判的な声が大きくて、どれだけ期待値が高かろうと血統がどうしようもないからどうせ走らないと見切る人が大多数だったとか」
「……酷い話だね」
「名馬と名馬の配合で絶対走る筈の馬が、気性の時点で壊滅的であったり、根本的にどうしようもない凡才以下の走りしか
出来ない駄馬になる事も少なからず有る世界です。数十年前の伝説の名馬の血の痕跡が名簿上有ると言うだけで、
近年何の実績も無い血統の馬への評価としては普通かと」
「その【普通の常識】を…ゴーストさんが打ち砕いた……」
「……まぁ、そうなりますね」


 卑下している様で純然たる事実を語るゴーストの言葉に挟み込み断ち切る様に、カフェが合いの手を入れ、一瞬目線を外すゴースト。
その一瞬の視界の端では、体操座りしているアグネスタキオンの両膝の上でキー君と謎巨大アリが同じく体操座りしていたが、
そんな事等関係無くファインが言葉を繋げる。

901:陣龍:2023/10/30(月) 23:17:54 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……そう言えば、セールの時のゴーストウィニング号の値段って」
「セール中の最低価格、しかも買ったのは当時馬主資格を得て間もない【ズブのド素人】な『飯崎鈴夏』氏で、
目利きの馬主等は誰一人として見向きもしなかった。ハッ、目利きと言われながら、血統しか見てねぇ節穴だらけだった訳だ」
「言っちゃなんですがその【目利き】の人らの方が普通で、主さんも血統とか走る能力じゃ無くて直感で買っただけですんで」
「経緯はどうあれ……貴女の『主さん』と引き合えた事。それだけは、間違い無く最良の巡り合わせです」
「はい!」


 『主さん』の話が出ると途端に破顔し笑顔になるゴースト。自分の事は相当軽視しているのに『主さん』筆頭に他人の事は
大きく気にかけ大切に思う。何とも分かり易く『人好き』が継承され、そして『主さん』と似ているウマ娘だと、
カフェは何時もの表情をしながら思う。全く意図せずに無意識下に、他者の為に身を投げ捨てても良いと平然と思考している所等が、特に。


「そンで、カフェの言う通りに【最良の巡り合わせ】で、ゴースト号唯一の専任な竹内騎手が来て、そっからあの蹂躙戦、と」
「確かに…どれか一つ歯車がズレていたら、ゴーストちゃんがどうなっていた事か…」
「まぁ、運が良くて乗馬クラブに行くか、そうでなければ用途変更で行方不明、でしたでしょうね」
「……ゴーストさん……はぁ……」


 尚、『主さん』は制御しているのか他者に向けて自身に関連した事柄で失言する事は早々ないが、
ゴーストの場合は人生経験が浅すぎるせいなのか軽々しく他者が顔を顰めてしまう様な自分に関する事も唐突に溢してしまう。
赤の他人や知人程度なら未だ皮を被れるが、特に級友等一定以上友好関係を築くと途端に次々と溢し続け、しかも全く無意識に、
流れる様に自分の極めて特殊且つ壮絶な過去を呟くように語ってしまう。【おともだち】の影響からか精神的に
成熟しているカフェが溜息を吐くのも、当然の流れであった。



「……そろそろ、話に入っても良いかねぇ?」
「あ、タキオンさ……なんですかその謎デフォルトされた二足歩行の大根とアリ」
「それを言うならデフォルメだねぇ」
「ゴーストさん、気にしなくて良いです。タキオンさんの…何時ものです」
「わぁ……なんだか可愛い!」
「落ち着けファイン…で、なンか用かタキオン。お前のヤラカシの後始末なら手伝わンからな」
「はっはっはっはっ……信用されて居ないねぇ」



 自業自得だが容赦のない何時もの流れにそこそこ落ち込むタキオン。ファインと並んでキー君と謎アリに挨拶するゴースト。
また厄介ごとか何かかと冷えた目線のカフェにシャカール。トレセン学園的には日常の一コマに等しい。



「いや何……私が思うに、シャカール君はゴースト君に聞こうとしたのは、ゴースト君の身の上話では無くて技術面の事だったと思うのだがねぇ」
「…………」
「壊れたブリキ細工見たいにガタガタしながらコッチ見んなゴースト。……まぁ確かに、最初はそうだったが、
これはこれでデータになるかも知れない話だった。……それでいい」
「なんかその」
「俺が良いって言ってンだ、それ以上は要らねぇよ」


 ゴーストの言葉を遮り話題を強制終了させるシャカール。不器用でぶっきらぼうでも何だかんだ心根は優しいのがトレセン学園生徒の多くである。


「ねぇねぇシャカール!この子飼ったら楽しくなると思わない!?」
「アァ!?お前、そんなデカアリ持って帰ったら同室の副会長様が嫌がって気絶するンじゃねーのか!?俺は知らねーぞ!!」
「えー?でも可愛いよ?」
「駄目なヤツは駄目なンだよ…飼うんだったら同室の許可取れよ」
「そっかー…じゃあタキオンに飼って貰って私が面倒を見るとか!」
「ふーm「ファインさん、駄目です。一度許したら、ファインさんも実験台にされます」…カフェー……」


 そして事が終われば何時ものワチャワチャが始まるトレセン学園。ウマ娘としての生を受けて僅か二年にも満たぬゴーストウィニングも
既にこの学生らしい青春の日々に慣れ、サラブレッド時代から殆ど変わらぬ【白】の心を更に輝かせながら、
笑顔でこの輪の中に飛び込んで行く。…何時か、終わりゆく景色であると無粋な脳裏の理性が囁いているのを聞かなかった事にして。

902:陣龍:2023/10/30(月) 23:19:11 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp







――――数刻後、神代列島日本世界  【??????】


 一切の音の無い、【白】と【黒】に二分された景色。水面の如く、大地の如く動かぬ一色の【黒】の上に、ティアマトが降り立つ。


【天】を見上げれば、そこにはこの【世界】の主である『飯崎鈴夏』が、まるで雲に浮かばされているかの様に漂っている。


 右手を掲げ、撫でる様に掌を動かすと、『飯崎鈴夏』を守る様な泡が包み込む。決して傷付けない、傷付けさせない。
その為の長時間の同調を行って尚、念には念の防護であった。





「……やはり」



 そして【地】に視線を向ければ、何物をも受け入れず、そして呑み込む【黒】の中で、蠢く存在が形を変え、
今まさに侵入を始めたティアマトを待ち受けようとしていた。



「……【剥離した残滓の欠片】。シンザン号、セントライト号。気付いた事に感謝します、これで……」


 その言葉を遮るように、【黒】の中では幾多の魑魅魍魎が、無数の【兵器】へ変貌。それらは、
この精神世界の主である『飯崎鈴夏』が知る筈の無い存在……多脚戦車、超巨大戦艦、吸血鬼、巨人、そして……


「……【最後の後始末】を、絶対的不可を乗り越える確率で起こってしまった【悪夢】を抹消出来ます」


 【幼き少女を操縦装置とした特攻ジェット戦闘機】の【黒】を、打ち払いもせずに霧散させたティアマトに四方八方から迫りくるも、
その様な小物以下の邪魔等眼中に無かった彼女の目は、この【黒】の核となっている神代列島日本世界の最期の悪夢だけを見据えていた。

903:陣龍:2023/10/30(月) 23:21:26 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) と言う事で二段目『飯崎鈴夏』の精神世界情報とゴースト号についてのオマケ情報に御座る

|д゚) 後は『飯崎鈴夏』の【後付けされた核】についてで終了の予定です。しかしどれだけ爆散範囲拡大して
    風呂敷がレジャーシートより広くなった事か()

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最終更新:2023年11月10日 22:30