261 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/27(金) 19:20:56 ID:softbank126036058190.bbtec.net [97/308]

憂鬱SRW ファンタジールートSS「氷の空の先に」4


  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 ペトロザボーツク周辺空域



「おっきい……」

 ついに目視圏内に該当のネウロイの姿を収めた時、ジョゼは思わずつぶやいた。
 相手はかなり大きかったのだ。
 HUDに表示された測距データによれば、全長---というか直径200メートル近い巨大な扇風機のような部分と、それと繋がる300メートルはある胴体部に大別できた。
 そして、ジョゼたちの眼前でプロペラが大きく回転を始めると、途端に周囲の環境が変わり始めた。

「さ、寒い……!」
「やっぱりあのネウロイが寒さを……!」

 風が巻き起こり、ありえないほどに熱が失われていく。
 先ほどまで火炎放射器で得ていた筈の高熱も、一気に消えて行ってしまうのを感じた。
 だが、驚いている暇など全くない。相手がそういう能力を持っているということは、長時間の戦闘は危険だ。
元より加温機の稼働時間にも限界があり、うかうかしていると燃料の枯渇やストライカーユニットの凍結などが発生する。
そうなれば戦闘を行うどころか、飛行さえもままならなくなるだろうことは容易に想像できた。

「散開(ブレイク)!」

 ネウロイの動きを見たひかりが叫ぶと同時に、3人はすぐさま分散した。
 プロペラ部分を高速回転させながら、その巻き起こる冷気をこちらにぶつけようとしてきたのだ。
天候にまで影響を与えるほどの冷却機能だ、直撃をまともに食らえば終わりだ。その認識は即座に共有された。

「ひかりさん、ジョゼ!急いで倒すわよ!」

 定子はそう叫びつつ、手渡された武装---250ミリバズーカを構えた。
 本来はMPF用に開発されたものではあるが、ウィッチでも使えないこともない。
トリガーは手動で引くこともできるし、また原始的ながらも光学照準器も備えられており、MPF以外での運用も想定の範囲にあったのだ。
 他にも武装としてはこれまでのネウロイを切り抜けるために使ったM2などもあるが、スケールからして通用するとは思いにくい。
なればこそ、定子やジョゼはこういった大型種に対して有効打を与えていたこの武装をすぐさま選択した。

「……!?」

 だが、ネウロイも黙っていない。
 各所が赤く発光したと思えば、そこからレーザーを立て続けに発射し始めたのだ。
 こちらの動きを妨害しつつ、進路をふさぐようないやらしい弾幕の形成だ。冷気の放射と合わせ、からめ捕ろうとする意図が見える。

「……今!」
「はい!」

 しかし、それが分かればこちらのもの。
 ウィッチ3人は回避運動を交えながらバズーカを構え、次々と砲弾を打ち出していく。
 250ミリという大口径の砲弾は間違いなく飛んでいき、信管を作動させ、エーテルエンチャントの炸薬による爆発をまき散らした。

「やった!」
「まだ終わっていないわ!」
「コアを探しましょう!それに……」

 確かに何発も直撃を得て、ネウロイの装甲が砕かれ、内部が露わになったり、吹き飛ばすことはできた。
 しかし、それでも全体から見ればダメージ量としては多くはないのだろう、依然としてネウロイの活動は続いている。
それだけでなく、攻撃を受けたことに激高したのか、より激しくレーザーをばらまき始めたのだ。
 反動を殺す必要があるため若干の硬直があるバズーカを抱えている身としては、それは非常に厄介だった。
 そして、それ以上に厄介なのが、ネウロイがまき散らす冷気だ。

262 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/27(金) 19:21:59 ID:softbank126036058190.bbtec.net [98/308]

 ストライカーユニットの状態を確認し、定子は叫んだ。

「ネウロイの冷却効果が加温機の性能を超えてきています!
 このままではストライカーユニットなどが凍結しかねません、急ぎましょう!」
「了解!」

 コアの位置は不明だが、とにかく攻撃を加えて炙り出すしかない。
 その精神で、3人は攻撃を続行していく。3人もいればネウロイの攻撃をあえて引きつけ、誰かの隙を作ることは簡単であった。
着実にダメージが蓄積し、内部構造が露わになり始めていた。見るからに弱っていっている。

「やった、このまま……!?」

 そして、トリガーを引いたジョゼは、信じがたいものを見た。
 発射されたバズーカの弾頭が、しかし爆発することなく、ネウロイに激突するだけで終わったのだ。

「どうして……」
「危ないです!ルマール少尉!」
「くっ……!」

 危うく呆然としたところを打ち抜かれかけたが、ジョゼはとっさにシールドで防ぐ。
 反応がちょっと遅れていたら、蒸発していたであろう威力だ。
 しかし、そんなことよりも問題なのは、先ほど発砲した砲弾だ。

「定ちゃん、これって!?」
「多分、信管が作動しないくらい急速に冷えているんだと思う!
 特にネウロイの体表は冷えていて、作動して炸裂する前に!
 うわ、バズーカも動かなくなってる……!」
「なるほど……だったら!」

 その推測を聞き、ひかりは即座にM2を構え、発砲した。
 狙うのはネウロイではない。破損した表面装甲に引っかかった砲弾だ。
 放たれたのは徹甲弾ではなく、徹甲焼夷弾。持ち込んでいたそれの入ったマガジンに変更、発砲したのだ。

  • カッ!

 そして、徹甲焼夷弾は正しく動作した。
 砲弾内部にまで侵入し、内部で信管が動作せずそのままになっていた炸薬を強引に着火したのだ。
 予期せぬ炸裂は元々装甲が砕けていたネウロイにさらなる一撃を与え、全体のバランスが傾ぐような連鎖反応を起こしたのだ。

「やった!……あう!?」
「下原少尉!?」

 しかし、ついに恐れていた事態が発生した。
 最もネウロイに近かった定子のストライカーユニットの加温機がついに限界となり、氷結を始めたのだ。
 停止寸前に、とっさにひかりが下に飛び込んで抱えることで、何とか戦線離脱は回避できた。

「ひかりさん、どうして……」
「すいません。それよりもあれを!」

 ひかりの視線の先、装甲の中に埋もれていたものが、ついに姿を現していた。

「コアだ……!」
「今なら!」

263 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/27(金) 19:23:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [99/308]

 支えられた状態の定子、そしてジョゼがそれぞれ効果が見込めないバズーカから銃に持ち替えて発砲する。
 だが、弾丸が悉く外れてしまう。狙いがずれたというレベルではない、弾道が途中から歪んでしまったのだ。
超電導効果による弾丸の外逸。寒さがもたらした防御機能であった。

「……なんで!?」
「AWACSオーカ・ニエーバ、目標への直接支援攻撃をお願いします」
『AWACS了解、データリンクを確認。照準……よし!』

 すかさずひかりは自分たちの上空、高高度から観測をしているAWACSのバルバラに支援を要請した。
 スカイ・リッターはAWACSの任務に必要な装備を搭載しているが、決して無防備なわけではない。
その任務の中には自衛はもちろんのこと、高高度からの火力支援なども含まれていたのだ。
バルバラは即座にダイレクトカノンサポートに適した75㎜×60口径対大型種スナイパーライフルを構え、発砲する。

『嘘でしょ……』

 しかし、攻撃を予測したのかネウロイは砲弾に冷気を叩きつけ、何とか砲弾を逸らすことに成功してしまう。
 直上からの大質量弾ならば、と予測したのだが、それも突破されてしまうとは。

『くっ……まずい、AWACSよりW009!どうやらネウロイは雲を操って隔離を試みている模様!』
「そんな……」
「隔離されたら、援護が受けられない!?」
『それだけじゃないよ!ウォーザード2名が敵のネウロイに拘束されている、装甲型にね!
 このままとどまっていたら、凍結が避けられない!』

 果たして、それは正しい。
 いよいよストライカーユニットの凍結が酷くなり始めたのか、ひかりやジョゼのそれの動きが鈍くなり始めた。
また、加温機で何とか温められていた銃火器も動作が悪くなり始めていた。

『AWACSよりW007からW009へ、戦域離脱を!このままじゃ墜落だ!』
「離脱したいですけど……でも時間が!」

 目の前には撃破寸前、しかし出力を上げ始めたネウロイ。
 そして寒さによって満身創痍の自分達。
 雲と寒さの壁を潜り抜ける間に、ストライカーユニットの凍結はさらに進むだろう。そうなれば吹雪の中に孤立することになりかねない。
 安全をとるか、それとも危険を承知で撃破を優先とすべきなのか。
 MPFがこちらにたどり着くまで、果たして持つのか。極寒の中での凍死のリスクもあるのに?

「どうすれば……!」

 3人のウィッチたちは、判断を強いられていた。

264 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/27(金) 19:24:35 ID:softbank126036058190.bbtec.net [100/308]

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苦戦しないなんて一言も言っていないのだ。
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最終更新:2023年11月12日 14:44