437 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/29(日) 21:26:34 ID:softbank126036058190.bbtec.net [141/308]

憂鬱SRW ファンタジールートSS「氷の空の先に」6


  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 ペトロザボーツク周辺空域



 502JFWのウィッチたちの挺身により、気象までも変化させる大型ネウロイの撃墜に成功した。
 だが、ことはそれでは終わらない。あくまでも大型ネウロイの撃破は作戦の障害の排除でしかなく、その先が存在しているのだ。
 それ以外のネウロイは未だ健在であり、各所で人類側の部隊との交戦を続けている。
ネウロイが戦力を集結させていたということもあり、空戦型のみならず陸戦型のネウロイまでも各所でわらわらと出現しているのだ。
ありえない寒さの原因が排除されても、冷気が完全に消え去り、あるいは降り積もった雪や凍り付いた地面が元の状態に戻るのはまだ時間がかかる。
 むしろ、唐突に雪解け水が発生し、あるいは気温の上昇に伴う環境の変化で、進軍などに影響が出るようになったのだ。
地面は泥濘状態となるし、溶けた雪の合間からネウロイが飛び出してくるなんてのもあり得た。
ペトロザボーツクの制圧と占拠、そして拠点化をもくろむ人類側にとっては厄介な状況であったのだ。

「ひどいもんだね、ペトロザボーツクが氷の彫刻みたいだよ」

 文字通り凍り付いた市街地を上空から見下ろして軽口をたたくのはクルピンスキーだ。
 彼女とラルは、吹雪の悪化した後ラドガ湖上の輸送車の中で逼塞を強いられていたが、ネウロイの撃破後にようやく出てくることができたのだった。
折しも、ネウロイ撃破に貢献した3名のウィッチが満身創痍でありこれ以上は厳しいと判断され、任務を引き継ぐ形となった。

「無駄口をたたいている暇はないわよ、ネウロイの発見報告はたくさん来ているでしょう?」
「酷いなぁ、ちょっとくらいは……」
「……」
「……はぁい、ついて行きます」

 視線に耐えきれなくなったか、それとも気まぐれか。ともかくクルピンスキーはロスマンと共にネウロイの出現地点へ向かう。
二人が装備しているのはMe262VM2だ。それゆえに、従来のストライカーユニット以上の速度で展開を可能としていた。
散発的にネウロイが発見され、あるいはレーダーで捕捉されている状況にあって、それは非常に頼りがいのある装備であった。

「いたわ、右側をお願い。私は左側にいく」
「……はい」

 向かった先、ブリタニアから派遣されてきた陸戦ウィッチとMPF部隊の上空に取り付いていた空戦ネウロイを、クルピンスキーは簡単に撃ち落す。
普段の武器とは全く使用感が違う50ミリカノン砲で見事に打ち抜いてみせたのだ。残りの個体が分散して包囲してくるが、決して慌てない。
速力の競い合いに持ち込みつつ、マニューバで振り回す。それでも肉薄してきたところに30ミリ機関砲を浴びせて撃墜する。
下にいた部隊がほれぼれするような、無駄のない戦いだ。
 そして、そうしている間にロスマンもまた、しつこく絡みつくように追いかけてくるネウロイの攻撃を回避し、撃墜してみせる。

「流石先生」

 しかし、褒められたロスマンはにこりともせず、次に行くように手で合図をする。まだまだネウロイは出没しているのだ。
こんなところで無駄話などをしている間にも状況は進行しているのだから、というように。

「貴方への援護は必要なさそうね」
「万が一があると怖いし、ついて来てよ」
「ロッテは維持するわ、でも、それ以上は御免ね」

 冷たいなぁと偽伯爵が愚痴るのをロスマンは聞き流すだけだ。
 ラルが今回の作戦で役割分担を決めたとはいえ、ロスマンとしては不満の一つも言いたい。
 こういう時でも、子供らしくて、そのくせネウロイと戦うのがうまくて、頭の回転が速くて---自分を、困らせる。

438 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/29(日) 21:28:29 ID:softbank126036058190.bbtec.net [142/308]

 吹雪も冷気も発生源が消えたことで、どちらも徐々に太陽が問題としては解決してくれていた。
 空を高速で飛んでいても、いや、だからこそ、環境の変化を敏感に感じ取ることができていた。
 けれど、そうだからといって浮かれることはできない。こういう視界良好な時でも、ネウロイはこちらの想定の向こうから攻撃してくるかもしれないのだ。

『ネウロイの反応、ポイントR533、高度は……ほぼ地面、陸戦型かな。対空型かもしれないから注意してね、先生』
「了解」

 AWACSのバルバラの声と情報支援を受け、指示された方面へ飛ぶ。
 ジェットストライカーはストライカーユニットの比ではない速力で、目的地まで体を飛ばしてくれる。慣れ過ぎは良くないと思うくらいに。
 ともかく、現場にたどり着いて周囲を観測する。

(これは……)

 なるほど、ネウロイがごそごそとはい回っている。戦車に足が生えたような、オラーシャではよく見る陸戦型だ。
複数いるそれらと並列しているのは、独特の長い砲身のような部位を持っているネウロイ。

「対空型ね」
「こっちで引き付けるよ」
「こら、勝手に……!はぁ……」

 指示を出す前に、クルピンスキーは上昇しつつも先行した。
 対空型ネウロイの特性として、高い高度を飛行する相手を優先して攻撃するというものがある。
ロッテかそれ以上の編隊でいるならば、誰かがわざと注意と攻撃を引き付け、残りの面子で隙が生まれた対空型を攻撃すればいいのだ。
案の定、クルピンスキー目がけ対空レーザーが発射されていくのが見える。それを滑らかに回避する自称伯爵の姿も、だ。

「……もう」

 そして次にロスマンがとるべきなのは、低空での飛行と接近だ。
 流石に稜線に隠れるほど低くは飛べないが、ともかく相手の注意が薄れる低い高度で急速に接近すればいい。
踊るように回避を重ねながら、適度に反撃するクルピンスキーに注目しているネウロイは、横合いからちょうど殴りやすいものだった。
 距離を詰める前にPMR-333 マギリングイェーガーライフルの連射で対空型を撃破。そして、素早く機関砲へと武器を持ち換えて近接戦に入る。

「沈みなさい……!」

 4門の銃口から放たれるのは30ミリの弾丸の嵐だ。
 至近距離、そして、ほぼ直上をとったことによって、それは陸上を這いつくばるネウロイにとって死神の鎌となる。
 そして、トリガーを引く。特筆すべきことはなく、必然的な結果として一瞬ですべてのネウロイを処理し終えてしまった。

『流石です、先生。次は南の方、移動中の輸送部隊の方に航空ネウロイが接近中です。
 先遣隊が制空権を確保した後から忍び込んできたようですね、救援をお願いします』
「また湧きましたか」
「直ちゃんの国の言葉だと、千客万来っていうんだっけ?」
「いい加減諦めてほしいものだけどね。ともかく、急ぎましょう」

 輸送部隊にも護衛は張り付いているが、救援を求めるくらいに攻められているということだろう。
 彼らは先ほど視認したペトロザボーツクの市街地とその周辺を奪還し、拠点化するための多くの物資を運んでいる部隊だ。
彼らが無事にたどり着いて任務を果たしてこそ、今回の作戦は完了と言えるのだ。重要度が高いことは言うまでもない。
その重要度を鑑みて司令部のラルは救援に向かうように指示を出したと思われる。
ネウロイと人類側の戦力が入り乱れているのだ、早くに航空優性を確保したいのだろう。

(急がないと……)

 逸る心を抑え、2名のウィッチは音速を超えて飛んでいく。

439 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/29(日) 21:30:05 ID:softbank126036058190.bbtec.net [143/308]

  • オラーシャ帝国 ラドガ湖東部地域 輸送部隊 陸上輸送艦艦橋


「ネウロイめ、まだ来るか……!」

 今作戦においてペトロザボーツクに必要物資と人員を届ける輸送部隊の指揮官を務めるオネスト・ターニ中佐は、艦橋で悪態をついた。
彼らはペトロザボーツク奪還に向けた槍の穂先を務めたブリタニアの混成部隊の後を追い、またその戦力から抽出された護衛も受けて北進を続けていた。
 だが、制空権を完全に握れているとは言えない状況下での強行軍であり、実際散発的にネウロイが空陸両方から攻められていた。
大集団が攻め込んでくるよりは何倍もマシな状況ではあるが、散発的なのも緊張を常に強いられ、時に対応しなければならず、厄介極まりない。
こちらの航空戦力も陸上戦力もそれなりの数展開しているのだが、度重なる襲撃で疲弊を重ねていた。

 相応の戦力を用意しておいたのだが、想定以上のネウロイの数が広範囲に展開されていたためにそれらでは不足が生じてしまったのだ。
見積もりが余ったというべきか、それとも想定以上にネウロイがこのラドガ湖東岸地域一帯に執着しているというべきか。
 そして、途中で何度か危険を承知で装備を整えた後、一番あたりたくないものに激突した。
恐らくはここで待機し、ペテルブルク方面に向かうつもりであったであろう群れであった。
つまり、戦力集結を図っていたのはネウロイ側も同じということだった。

「通信兵、救援要請は!?」
「すでに打電してあります!付近の航空戦力が派遣されてくるとのことです!」
「どこの部隊だ」
「地球連合が南から、そして北からは502JFWからです」
「よし、わかった。状況は逐一報告しておけ。
 それと救援が来ることは各員に通達!ここが踏ん張りどころだ、荷物やお客さんに被害を出すなよ!」

 単純な将兵だけでなく、ペトロザボーツクに拠点を設営して維持管理を行うための非戦闘要員も連れてきているのだ。
その他にも大量の物資も含まれており、これを失うと戦略にまで大きな影響が及ぶ。

「第5派、南東より接近!陸空の混合です!距離3000!」
「近寄らせるな、対空及び迎撃射撃はじめぇ!」

 輸送部隊が運用するのは、CMAより供与された地上を行く陸上輸送艦だ。
 輸送が本分であるとはいえ、対空砲や自衛火器などは搭載されているし、装甲やバリアによる防御力もそれなりに備えている。
艦橋にも砲撃や対空射撃の振動が伝わり、あるいはネウロイのレーザーをシールドが弾く独特の音と衝撃が伝わってくる。
中々にスリリングで楽しいじゃないか、と言える程度にはオネストは余裕というものがあった。
 とはいえ、ネウロイの攻撃をいつまでも受け止められるわけでもないために、直掩戦力による敵の漸減は必須であった。

「クソ、ジリ貧か」
「状況としては最高でしょうか?」
「ハハ、そう言える元気があるなら、まだ大丈夫そうだな」

 副官の軽口に、そう返してやる。
 とはいえ、自分たちが無事につけるかどうかで作戦の成否が決まるのだ。
 502JFWのウィッチたちが命がけで大型ネウロイを撃滅し、逼塞状況を打破したのだ。
それに応えるくらいの働きをしないでどうすると、オネストは自分に言い聞かせるのだ。
麗しきウィッチ達に続けと、彼のソウルが吠えているのである。
 そんな彼を乗せた輸送艦隊をめぐり、オラーシャ方面の激戦は、ラストスパートに入り始めていた。

440 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/29(日) 21:30:58 ID:softbank126036058190.bbtec.net [144/308]

以上、wiki転載はご自由に。

ネウロイをやっつけておしまい!なわけないんだよなぁ
メインは確かに終わったが、メインが一つだけとは言っていない。

この作戦、ペトロザボーツクの制圧とかが目標であって、ネウロイの撃滅が目標ではないのです。

441 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/29(日) 21:42:17 ID:softbank126036058190.bbtec.net [145/308]
間違いがあったので修正

439
×
中々にスリリングで楽しいじゃないか、と言える程度にはドナルドは余裕というものがあった。


中々にスリリングで楽しいじゃないか、と言える程度にはオネストは余裕というものがあった。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 憂鬱SRW
  • ファンタジールート
  • 氷の空の先に
最終更新:2023年11月12日 14:47