570 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/01(水) 00:44:41 ID:softbank126036058190.bbtec.net [179/308]

憂鬱SRW ファンタジールートSS「氷の空の先に」8


  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 ペトロザボーツク周辺



 輸送艦隊が無事に到着したのは、日が傾き始めてからであった。
 道中を含めネウロイがいないことを確認し、安全確保などを行う必要があったことが一番大きな要因だった。
制空権を確保したと思ってもあとからネウロイが出現し、散々輸送艦隊を妨害してきたのが大きかった。
地球連合軍の増援である大型ヘリおよびMPF部隊が追い付いてからはまだマシだったのだが、それでも襲撃は多かった。
ペトロザボーツクの市街地にも残存するかもしれないと、突入部隊を編成して捜索する必要もあった。

 加えて、天候を操作するネウロイの影響を受け、突入した市街地が氷像になっていたのも問題であった。
幸いにしてネウロイが消えたことで徐々に日の光を浴び、氷は溶け始めてはいたのだが、それはそれで雪解け水の発生が引き起こされた。
それによって市街地はただ雪が積もり氷が張っている状態よりもさらに滑りやすくなっており、歩兵が内部に進むのが危険であったのだ。
 ともあれ、雪を押しのけ、あるいは氷を撤去することで、当面の基地となる建物を確保し、本部の設営などを行ったのだ。
 合わせて、HO世界および地球連合軍の敷設部隊が市街地周辺の防衛設備などの設営に取り掛かった。
対地・対空レーダーや監視所の設置、エーテルバリア発生装置の敷設、あとは処々の迎撃兵器の設置。
さらには、ないよりはという形で空堀を掘り、あるいは退避壕や防壁などを構築したりなど、可能な限りの備えを実施した。
除雪作業と測距、さらには地盤の調査を行ってからの突貫作業で、それらは何とか日が沈むまでに完了したのだった。

 この作業の合間にもネウロイがたびたび襲来したのだが、腰を据えての防衛線となれば、人類側が必然的に優位であった。
当然これまでの行軍の疲労もあり、またすぐ後方には工事などを進めている部隊がいたのであるが、それらは不利には働くことはなかった。
駆けつけたオブジェクトが防衛線に加わったということもあって、生半可なネウロイの襲撃は意図も容易く撃退できたのである。

 とはいえ、ここまででようやくペトロザボーツク周辺が人類の版図に入っただけであり、ここから点と点を結ぶ必要も存在した。
即ち、これまでは最前線基地であったペテルブルクとの間の通信および輸送ルートの確保や、両者の間の安全確保などという仕事が湧いたのである。
とはいえ、それを強行するのはさすがに無理があったので、その日としては作戦行動は終了となった。
予想以上の激戦とはなったものの、目的である物資と人員の輸送、ペトロザボーツク奪還と制圧・拠点化は果たすことができたのだ。
これ以上を無理に望むというのは、高望みが過ぎるし、作戦行動能力の限界を超えるというものだった。

 ともあれ、ここに人類側の版図が拡大し、グレゴーリ攻略の足掛かりができたことは、まぎれもない事実であった。

571 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/01(水) 00:45:52 ID:softbank126036058190.bbtec.net [180/308]

  • オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 格納庫

 その知らせを持ってきたのは、一度CDCに呼ばれたサーシャであった。
 ストライカーユニットで何時でも出撃できるようにしつつも、飲み物などを飲んで待機していたウィッチたちに告げたのだ。

「先方のブリタニア軍および後続の輸送部隊より連絡がありました。
 ペトロザボーツクに到着、周囲の安全確保と市街の奪還を開始するとのことです」
「ってことは作戦成功で終わっちまったのか」
「やったね!」

 不満を口にする管野に対し、ニパは喜びをあらわにする。
 作戦がどの程度進行についてはある程度は知らされていたが、ようやく朗報がもたらされたのだ。
 だが、対照的な反応を示す二人にサーシャは吐息しつつも諫める。

「まだ作戦は終わっていませんよ。
 現地を拠点として使えるようにして、防衛設備を整えるまではラッパ作戦の範疇です」

 それに、と特に管野の方を見ながら苦言を呈した。

「まだネウロイの動きがないとも限りません。
 油断している間にペテルブルクが襲撃を受ける可能性がありますから、暫くはこのまま待機です。
 戦わなくて済むならばそれに越したことはありませんから」
「骨折り損のくたびれ儲けってか、俺たちは」
「いいえ。私たちがここを守っていたからこそ、後顧の憂いなく作戦が遂行できたのです。
 そこは何度もお話したと思いますが……?」

 サーシャの怒りが静かに燃え始めたのを察したか、管野は何度もうなずいてみせる。

「問題なのは今夜です。
 実働戦力の過半が出撃した関係上、ローテーションが大きく変更になっています。
 万全を期すため、鏡子さんがナハト・リッターで夜間の監視にあたります」
「そっか、定子がいないんだったな」

 ナイトウィッチの素養があるのは定子のみで、その定子も101のウォーザードがいることでローテーションは維持されていた。
 だが、定子はラッパ作戦において激戦を潜り抜けたばかりなわけで、その穴をどうにかして埋める必要があったのだ。

「加えて、明日の哨戒任務は私とニパさん、管野さんの3人でこなす必要があります」
「少佐はどうするんだ?」
「今回の作戦についての書類仕事です。管野さんの手も借りたいと嘆いていましたよ?」
「……わかった、俺は哨戒をすればいい、そうだな?」
「よろしい。
 あと、明日以降の哨戒任務は範囲が変更になるので、今夜のうちに範囲を確認しておいてください。
「了解」
「了解、まあ、こんな日もあるか……」
「今日はゆっくり休んでください。明日からも、忙しいですから」

 明日以降も楽はできない。
 しかし、確実な一歩を踏み出したということもあり、サーシャの言葉は最後はどこか柔らかいものになった。
 窓の外を見れば、吹雪は徐々に収まる気配を見せている。
 一歩前進、その認識が、502基地全体に明るさをもたらしたようであった。

572 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/01(水) 00:47:43 ID:softbank126036058190.bbtec.net [181/308]
以上、wiki転載はご自由に。

これにて一区切りです。

この後は画面外でペトロザボーツクが拠点化されますが、この後出るかどうかは微妙なところ。

次のSSはかねてからあったように、502の内部での話になりますね。
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最終更新:2023年11月12日 14:57