80 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/08(水) 22:38:11 ID:softbank126036058190.bbtec.net [25/179]
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「指と目」
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月下旬 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 ブリーフィングルーム
ブリーフィングルームに集められた502の面々は、その映像を見せられていた。
それは、このペテルブルクを経てペトロザボーツク基地へと向かった輸送部隊の、無惨な姿であった。
「20分ほど前だ。ペトロザボーツク基地への輸送部隊が襲撃を受けた」
朗々と語り出すのはラルだ。
最前線との補給線を攻撃され、貴重な物資が失われたことは事実。それを受け止め、怒りを抑えていた。
「3方向からの同時攻撃。ネウロイは姿を見せなかったが、AWACSが弾道軌道で飛来する砲弾を確認していた。
即座に観測データを基にして砲撃地点の割り出しを行い、即座に追撃に出た。結果、標的を捉えた」
画面が切り替わり、表示されるのが静止画に変わった。
そこには、巨大な砲塔を背負い、それを支える巨大な足と胴体を持つネウロイの姿があった。
「着弾地点から最も近いおよそ40キロほどの場所で、AWACSがギリギリ補足できた。
明らかにこの個体が砲撃を行ったと推測された。別方向にも同じような個体が展開していると、そう思われる。
だが、追撃を行ってダメージを与えたところで逃げられてしまった。地面に潜られてしまったとのことだ」
ブリーフィングルームの誰もが唸る。
極めて厄介だ、という認識が生まれたのだ。
地上に顔を出している時間が短く、いざとなれば地下に逃げられるというのは、撃破の難易度を跳ね上げる。
加えて、今回の襲撃を鑑みれば最低でも3体の同じタイプのネウロイが存在するということは確実だ。
「該当の輸送部隊はペトロザボーツクに逃げ込めたが、届けられた物資は3割も減ってしまったという。
よって、502はこの新型ネウロイの排除を当面の間の優先事項として作戦を実行する。
せっかく奪取し拠点化したペトロザボーツク基地を日干しにされては溜まらんからな。
何か質問は?」
問いかけた先、真っ先に手を挙げたのはひかりだ。
「ありがとうございます。
質問ですが、このネウロイは実弾による砲撃を実施したと、そういうことでしょうか」
「その通りだ。おそらくだが体組織の一部を切り離し、射出していると思われる。
着弾直前の砲弾も確認できたからな」
ラルの言葉を受け、サーシャがスクリーンにその砲弾を映し出す。
明らかに人間の用いる砲弾とは違う、毒々しいカラーリングと攻撃的なフォルム。ネウロイによる質量砲弾であった。
「30キロ以上から……ということは、現場には観測員がいたということになりますね」
「観測員……?」
はい、とジョゼの言葉にひかりは応答した。
「遅いとはいえ、それなりの速度で移動している輸送部隊を地平線を超えて砲撃するには、誰かが観測をしなくてはなりません。
ステルス性を持ち姿を隠せるネウロイが近くで観測し、どこを狙えばよいかを指示していたかと」
「……なるほど、そういうことか」
ひかりの推測にラルもまた頷いた。
81 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/08(水) 22:39:25 ID:softbank126036058190.bbtec.net [26/179]
納得しているのは、しかし多くはない。その筆頭である、管野は疑問があるのか手をあげて問う。
「観測員ってのは、どういうことだ?ネウロイが砲撃を撃ち込んできただけじゃないのか?」
その問いに答えたのはブリーフィングに参加していたオーカ・ニエーバのカーチャだった。
「カンノ、相手は地平線の先にいる移動目標を正確に撃ちぬいているの。
ウィッチは空を飛べるから地平線までの距離がとても遠いけど、地面にいると普通はほんの数キロ先までしか見えないのよ」
「……それで?」
「こういう時、陸軍の砲撃部隊はたいていの場合、上空に観測員を配置し、敵がどこにいてどのくらいの速度でどこに向かっているかを観測するの。
そして、その情報を基にして砲撃を行う。これが間接射撃っていうものね」
つまり、とカーチャは続ける。
「このネウロイも同じことをしているのよ。
警戒していたAWACSのMPFのレーダーさえも欺瞞し、尚且つ風景に溶け込むことができるような個体がいる。
その個体の得た情報を基にして、どこかに隠れている砲撃手が正確に狙って砲撃したのが今回の結果なの」
「そういうことだな。砲撃手は最低でも3体以上、観測員も1以上いる。もっといるかもしれんな。
ついでに砲撃手を真っ向から潰そうと襲い掛かっても、相手は逃げを打つわけだ。ウィッチの進入できない地下へ」
厄介だな、と嘆息するしかない。
攻め込んでくるネウロイならば倒しやすいのだが、逃げることを前提に攻撃して離脱、とされると非常につらいものがある。
実際、距離によって離脱までの時間は稼がれ、尚且つ地下へと逃げられてしまったわけなのだから。
「くっそ、そういうことかよ……!」
「厄介だねぇ……」
管野以外の面々もようやく標的のネウロイの厄介さに気が付いたのだろう。
正面戦闘なら倒せるかもしれないが、随分といやらしい攻撃をしてくるものだ。
82 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/08(水) 22:40:40 ID:softbank126036058190.bbtec.net [27/179]
コンセンサスが取れたところで、ラルは改めて続ける。
「攻撃してくる個体を『フィガー』、観測する個体を『アウガ』と呼称する。
まだペトロザボーツク基地の物資の状況は悪くはないとのことだ。
だが、これを排除し、具体的な対抗策を生み出すまで補給を送り出すのは危険が伴う」
「そこで、ワタシたちの出番ってことですか?」
「そうだ。
護衛を張り付けて輸送するというのも手ではあるが、何時襲撃を受けるかもわからず、また道中はあまりにも長い。
何らかの策が必要になるだろうな。それまでは哨戒を行い、何らかの手掛かりを探すのが限界だろう」
オラーシャは広いからな、とラルは付け加えた。
実際、ラドガ湖を超え、ペトロザボーツクまで解放はできたものの、その周辺のネウロイの完全な排除はできていない。
加えてあまりにも広い土地であるため、ネウロイに対する警戒が薄くなりがちで、浸透を許してしまうことになるのである。
人類とネウロイの入り乱れる係争地域であるという事実は全く変わっていないのだ。
「質問をいいかな?」
「なんだ、クルピンスキー」
「輸送部隊ってラッパ作戦の時みたいに輸送艦を使っていたんだよね?それでも被害が出たの?」
「ああ。輸送艦のエーテルバリアが貫通された。不意打ちで最大出力とは言えなかったとはいえ、格納庫まで被害が及ぶほどの威力だった。
まともにシールドで受け止めるというのは危険すぎるな」
「やだねぇ、撃たれたらおしまいだなんて……」
その後いくらかの質疑応答を経て、ラルは宣言した。
「対応策については検討を進めるが、何か私案があればぜひ上申してほしい。
このネウロイへの対処が、このオラーシャでの戦局に大きくかかわることになるからな。
以上だ」
「この後の哨戒任務ですが、現場周辺に重点を置いて行ってもらいます。
実況見分もされていますが、上空からも何か手がかりなどがないか、調査をお願いします」
解散が告げられ、ウィッチやウォーザード達は一斉に動き出した。
正面から打ち破ったネウロイが搦め手に出てきた、ならば、それに対応しなくてはならない。
彼女らは防人、ネウロイという怪異に立ち向かう戦士なのだから。
83 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/08(水) 22:41:30 ID:softbank126036058190.bbtec.net [28/179]
以上、wiki転載はご自由に。
美麗刹那・序曲!ただし死世界・(ry
初手で相手の手を丸裸にしました。
ですが、まだ対応策はこれからなんですよねぇ…
原作以上に厄介なのは確定ですしね。
最終更新:2023年11月23日 12:42