140 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 00:38:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [38/179]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「指と目」2



  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月下旬 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 CDC



 502JFWの戦力は、ラルの指揮の下、いくつかの班に分かれて行動することとなった。
 第一班はペテルブルク周辺の警邏。相手がどんな観測手段を使ってくるにせよ、攻撃の瞬間は地上に姿を現す。
高高度から監視するAWACSと合わせ、とにかくペテルブルクと周辺に停泊している輸送艦への攻撃を阻止する役目を担った。
こちらにはウィッチとオーカ・ニエーバ、さらには陸戦戦力も加わり、ペテルブルク周辺に展開した。
 第二班は、こちらはラルやロスマンなどを主軸に、データの精査とネウロイの能力の推測、さらに対応策の検討を行うことにした。
ペトロザボーツク基地と通信を繋ぎ、実況見分で得られた情報やデータを共有、意見を出し合いネウロイへの具体策を練るのだ。

「……任せろと偉そうなことを言ったが、情報が足りん。特に『アウガ』のな」

 ラルはペトロザボーツク基地との通信が一旦終わった後、正直に吐き出した。
 実際に記録されたデータを基にして、予測されるスペックなどを数値化し、共有・確認したところまではいい。
全長200メートル前後の砲撃手である「フィガー」はその全長に匹敵する長砲身から質量弾を発射する。
射程は推定でも10キロから100キロ、あるいはそれ以上と推測される。威力に関しては輸送艦クラスのエーテルバリアを貫通可能。
さらにはエーテルエンチャントされた装甲版を貫通し、炸裂するという厄介な性質を備えているということだった。
標的が輸送艦であったとはいえ、相手の全力でこれとは思えない。さらに能力的には高いかもしれない。
 だからこそ、ラルは非戦闘要員の多くを地上ではなく強力な装甲板帯の下にある地下へと逃がすことにしたのだ。
ここが攻撃を喰らったときのリスクを考えれば、当然の判断であった。

 問題だったのは、砲撃手である「フィガー」ではなく観測手である「アウガ」の方である。
 ネウロイを悪天候の中でも探知できるエーテルレーダーを潜り抜け、さらには姿を隠せる種が割れていないのだ。

「コンセンサスを確認しよう。カーチャ、エーテルレーダーは通常のレーダーよりもネウロイの探知能力が高い。そうだな?」
「その通りです、少佐。エーテルレーダーは電波と共にエーテルの干渉波を放ちます。
 通常のレーダーと違い、ネウロイにとってはウィッチの魔力と同質のエーテル干渉波は微弱でもダメージになり、電波と違ってごまかせない」
「だからこそ、これまで警戒に際しては頼りになっていたわけだが……」

 それが効かない相手。そういうことになる。

「これが通用しないことに説明をつけるとすれば、どういう手がある?」
「そのことですが、エネラン戦略要塞の技術者に問い合わせをしてみました。
 それで面白い返答を得ました」

 これです、とコンソールをカーチャが操作し、送られてきたファイルを展開する。

「エーテルレーダーに対するステルス……ネウロイにとって毒となるエーテルの干渉をどう回避するか。
 それは至極単純でした」

141 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 00:39:44 ID:softbank126036058190.bbtec.net [39/179]

 画面の中で、ネウロイを模したイラストが膜につつまれた。

「エーテルを利用したのです。干渉波を打ち消す、エーテルの膜です」
「待て、それは……」
「はい、ネウロイにとっては毒です」

 CDCにいる人員の多くが驚きを隠せない中、カーチャの言葉は続く。

「ですが、オラーシャではありませんが、ネウロイがエーテルを利用するケースは確認されています。
 アーマードタイプやその走りとされるANX-01で……自身にもダメージははいりますが、それだけの価値がある、そういうことになります」
「毒を以て毒を制す、ですか?」

 ロスマンの言葉にカーチャは頷いた。

「あくまでも理論上は、となりますが、エーテルをぶつけても相殺されれば感知はできない可能性がある。
 エーテルが存在するだけならば、エーテルレーダーはそれを異常と検知しないかもしれないと」
「……他の可能性は?」
「それ以外については、なんとも……可能性を探せばいくらでもありそうだとか。
 ただ、最も可能性が高いのはこれだと話していました」

 なるほど、とラルはモニター上のネウロイの略図を睨む。
 まさか自身の身を削るとは驚きだ。
 とはいえ、ウィッチだってエリクサーという身を削るドーピングを行ったことがあるのだから、ありえない話ではない。

「では、そのエーテルの膜をどうにかすれば検知は可能ということか」
「はい。エーテルレーダーに改良ユニットを取り付ければ。データは送られてきたので、あとはくみ上げて取り付けるだけですね」
「……ずいぶん早くないか?」
「量子コンピューターによる設計・改良の速度は人知を超えているんですよ……又聞きですけど」

 カーチャ自身もその速度にはあきれるしかなかったほどだ。
 コンピューターというものは知っているのだが、ここまで出鱈目とは思わなかった。

「ともあれ、発見方法の準備が進むならば、あとは倒すだけだ。発見さえできれば、あとは追い詰めてしまえばいい」

 そうすれば、情報を受け取って砲撃をする「フィガー」がいきなり空を飛び出さない限り、見通し圏外への精確な砲撃は不可能になる。
撃つだけならば簡単であろうが、望む結果を得るには、距離があるほどに針の穴に糸を通すようなことをしなくてはならない。
それは502JFW側にとっては、「アウガ」を駆逐すれば周辺の安全の確保ができるということにつながる。

「そして次に考慮すべきは『フィガー』への対処法、ですね」

142 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 00:40:51 ID:softbank126036058190.bbtec.net [40/179]

 そう、レーダーを潜り抜ける「アウガ」も厄介なのだが、かといって「フィガー」が弱いかと言えばそうではないのだ。

「地形などから砲撃地点はある程度絞れるでしょうが……砲撃後すぐに逃げるという性質上、撃滅が簡単ではないですね」
「MPFでもか?」
「ラル隊長、輸送部隊のAWACSが全力で追いかけても一撃入れるくらいが限界の潜航能力ですよ?」
「ああ、そうだな。言ってみただけだ」

 とはいえ、とラルは答えを知っている上で問う。

「肉薄して攻撃するのが最も確実だが、何も逃げる相手を素直に追いかける必要もないだろう?」
「はい。攻撃オプションはいくらかあります」

 そう、MPFの攻撃手段は極めて多いのだ。カウンターで砲撃を浴びせることも、上空からスナイプすることだってできるのだ。
 連合で運用されるパワードスーツとストライカーユニットを融合させ、その能力を受け継いでいるのだから当然と言えば当然。
ウィッチでは待ち伏せしかできないとしても、ウォーザードでは他の手を選ぶ能力があるのだ。

「攻撃オプションで反撃、敵ネウロイを拘束。あとは煮るなり焼くなり好きにできますね」

 最近届けられたスマートレールガンなどまさにそれだろう。
 PMB-2000 「ホーキンス」マジック・クロスボウと同じく、エーテルバリア同士の干渉による反発を利用した実弾砲。
内部のレールと弾丸に展開するバリアの出力を向上させれば、弾速は余裕で音を超え、数十キロ離れている目標にもコンマ秒でたどり着くのだ。

「まあ、射手の腕前によるな……あとは問題のネウロイをつり出す手段だが、こちらはあてがある」
「まさか、囮ですか?」
「ああ……交渉自体はこのあとやるが、502に物資を運んできてあとは帰るだけの輸送艦がいるだろう?
 あれを活用する」

 ラルはフフフと笑って断言した。
 確かに輸送艦がペテルブルクにいるのは事実だ。
 502JFWだけでなく、その先にいるペトロザボーツク基地のための物資を輸送するために頻繁に行き来しているのだ。
効率や速度という観点ではストリボーグ艦隊には劣るが、ストパン世界側に供与されているそれは現在でも重宝されている。
 ネウロイがその外見などから判断しているならば、間違いなく食いついてくること請け合いだろう。

「破壊されるかもしれないんですけど……」
「一隻駄目になるかもしれない危険にさらすだけで、大事な補給線を守れるなら安いモノだろう」

 つり合いは十分にとれる、それどころかお釣りが来ると言い切るラルだが、ロスマンもカーチャもいい顔はしない。
 確かに手伝ってもらうのが最も効率的ではあるが、危険にさらされて大丈夫とは限らない話なのだ。
輸送艦だって無限にあるわけじゃなく、砲撃を喰らえば損傷するし、修復するためにドック入りすればローテーションもひっ迫するのだから。

「……そう怖い顔をするな。できる限りの防御力の強化をして、該当のネウロイを駆逐するまでの間だけ借りるだけだ。
 いざとなれば502の予算で損傷などについては補填する。それでいいだろう?」
「……ハァ、分かりました。上官の無茶には反乱を起こすべきでしょうか……?」
「輸送艦についても何とかできるか、エネラン戦略要塞に問い合わせてみましょう」

 ともあれ、作戦の大枠は決まった。
 後は準備を進めながら細部を詰め、実行に移すだけだ。
 ネウロイとの知恵と力比べ、負けるわけにはいかなかった。

143 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 00:41:38 ID:softbank126036058190.bbtec.net [41/179]
以上、wiki転載はご自由に。
さて、準備は着々と進んでいます。
後は根競べでしょうかねぇ…

今宵返信はできません、このまま寝ます
おやすみなさいませ
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最終更新:2023年11月23日 12:44