167 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 23:30:12 ID:softbank126036058190.bbtec.net [49/179]
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「指と目」3
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月下旬 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 CDC
「相手が一歩速かったか……」
状況を把握したところで、ラルは椅子に乱暴に座りながら吐き捨てた。
「アウガ」と「フィガー」への対応策を指示し、エネラン戦略要塞から送られたデータを元に準備を開始したのは良かった。
だが、その間にネウロイもまた行動に移していたのだ。
「被害は?」
「ペトロザボーツク基地との中継基地の一つが。
幸い、殆どが地下に敷設されていたため、被害はハリボテの外の建造物、それとエーテルレーダーだけです」
「外部カメラの映像、正面に回します」
CDCの要員の声とともにモニターに表示されたのは、外部を監視していた中継基地のカメラだ。
遠方から何かが飛んでくるのが一瞬だけ見え、その後にブラックアウトした。
「……やはり質量弾か。どこから撃たれた?」
「中継基地南東およそ90キロの地点から2発同時に。5分ほど時間をおいて第二射が放たれ同じく着弾。合計4発です。
装甲板帯を貫通するのはやはり難しいのでしょう」
「だが、立て続けに撃たれればそうもいかんだろうな。数をぶつけられれば如何に頑丈な装甲板帯も破壊される可能性がある」
今はまだ、ネウロイは人類拠点を破壊したと思っている段階なのだろう。
だからこそ表層の施設だけが被害を受けた時点でネウロイは撤収、それ以上の追撃はなかった。
その人間たちが地下に重要な拠点を用意していると知ったならば、相応の攻撃を仕掛けてくることは十分に予想できることだ。
この502JFWの基地の方にその砲が向けられる可能性も十分に高い。
「サーシャ、作業の進捗は?」
『一応順調に進んでいます。報告を聞いた限りでは猶予はないようですが……』
インカムで上層、格納庫でレーダーの改良作業を監督しているサーシャに問いかけると、返事が返ってくる。
整備班と技術者がフル動員され、まさに鉄火場であろう。
「そうだな、先ほど中継基地が砲撃を受けた。
次はペテルブルクよりの基地か、はたまたペトロザボーツクの周辺か……どちらにせよ猶予はない」
『……わかりました。こちらも急ぎます。
ウィッチとウォーザードは順番に休憩をとらせますが、よろしいですか?』
「ああ。現段階では対策は限定的だからな……許可する。
念のため、地下に退避させろ」
『はい』
格納庫が攻撃されると最もまずいのであるが、実働のウィッチがいなくなるのもまずい。天秤にかけた結果だ。
502JFW結成時に格納庫までも地下に入れるのは利便性などを鑑みて却下としたが、今となってはその判断が憎らしく思える。
自分がそのように要望したのだから、なおさらに。
168 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 23:31:09 ID:softbank126036058190.bbtec.net [50/179]
休息に入ったひかりや管野、クルピンスキーと交代で、サーシャは定子とニパとともに空に上がった。
ウィッチたちの体力はまだ有り余っているのだが、残念だが魔力や燃料というものは消費してしまうものだ。
それに集中力という観点からも、適度な休息を挟まなければ、いざというときに対応が遅れる可能性もあった。
「普段と変わらないね……」
魔導スコープ越しに周囲を見渡して何かないかと探しているニパだが、結果としては余りないようであった。
すでに基地を発して1時間ほどが経ち、3機1個小隊で飛んではいるものの、オラーシャの大地に動きは見えなかった。
「ですが、通常のネウロイの浸透も確認されているようですから、油断しないでください」
「はぁい」
「了解です」
そう、502が対処すべきネウロイは「アウガ」と「フィガー」だけではない。
優先順位は落ちるとはいえ、散発的に攻め込んでくるネウロイにも対処をしなくてはならないのだ。
実際、先に哨戒を行っていた管野らはペテルブルク方面へ飛んできたネウロイを撃破していたし、レーダーにもちょくちょく反応自体はあったのだ。
もし基地の防御力が落ちているところに殺到されては防ぐことが難しくなるだろう。相手はこちらの事情を勘案してくれないから、猶更注意が必要だった。
(レーダーにも映らなくて、尚且つ光学視認もできない……後者は一体どうやって……)
考えつつも、サーシャは同じく魔導スコープ越しに視線を巡らせ、何か変化がないかを探していた。
レーダーに映らない仕組みについては判明しているが、光学視認を回避する方法は未だに不明なままだ。
輸送部隊が襲撃された時にしても、輸送艦や護衛機あるいはAWACSのカメラには不審物は見当たらなかったのだ。
「あ、ネウロイ発見!10時方向、高度は……あ、市街地に逃げ込まれた……!」
「ここにまで浸透されているなんて……定子さん、ニパさん、連携して追い込んでください」
「了解!」
「了解しました」
サーシャの指揮の下、二人のウィッチは市街地に逃げ込んだネウロイを追尾する。
他にやるべきタスクはあるが、それはさておき撃破するに越したことはない。
『くっ……すばしっこい……!』
「定子さん、そのまま北に追い込んで!
ニパさんはその位置から二つ先の十字路で待ち受けてください!」
『了解!』
ネウロイは素早く逃げ回るが、生憎と地形を把握しているサーシャの誘導がある。
ほどなく、挟み撃ちにされ、ネウロイは前後からの射撃によって損傷、たまらず上に逃げ出す。
「読み通りです」
そして、そこに飛ぶのは待ち受けていたサーシャの長距離射撃だ。
PHR-994 クロースレー ヘビーストライカーライフルの20ミリという大口径砲が、上空退避を見越したサーシャの指示の下、一気に飛翔する。
結果、炸裂。ネウロイは致命傷を負い、そのまま形状崩壊をした。
『やった!あだ……!?』
「ニパさん!?」
インカムの向こう、何かに激突し、錐もみして墜落した音がする。
そこへとスコープを向ければ、そこには目を回しながら不時着したニパの姿がある。
「大丈夫ですか?」
『ん、へーきです……なんだってこんなところに銅像が……』
「え?」
169 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 23:32:16 ID:softbank126036058190.bbtec.net [51/179]
ニパの言葉を受け、すぐさま近くの物体---銅像を見つけた。
なんて事のない、ごく普通の銅像にすぎない。オラーシャではよくあるピョートルの銅像だ。
不注意の飛行をニパに苦言を呈そうとして、違和感を感じ取った。
(ニパさんが待ち受けていたのは主要な街道の大きめの十字路の真ん中のはず……そんなところに、銅像?)
十字路は確かに開けている場所だが、同時に車の通行などを考えると案外狭いものだ。
そして、銅像が置かれているのは、なんと十字路の道路の中だ。車線のど真ん中に居座っている。
あれは人工物ではない、とサーシャの脳が弾き出すのは一瞬。同時に声が出た。
「ニパさん!その銅像は銅像じゃありません!」
『え、まさか!』
定子の声をサーシャは肯定し、接近を選びつつ叫んだ。
「ネウロイです!そんな位置に銅像はあり得ません!道路の真ん中です!」
『っ!』
そして、定子のM2の射撃が銅像を穿つと、溶けるように銅像の形状が変化し、全く違うものになる。
黒い体。そして赤く不気味に光る眼のような器官。
『やっぱりネウロイ!』
『化けていた!?』
「まさかこれが……!?」
なるほど、擬態とは考えたものだ。
歯噛みしつつも、落ち着いてライフルを構え発砲する。
しかし、相手もさるもの、遠距離からのそれを難なく回避し、逃走を図ろうとする。
『逃がさないよ!』
だが、すでに至近距離にウィッチが2名もいたのが命取りとなった。
十字砲火を受けてダメージは一瞬で蓄積し、飛翔したところでバランスを失って失速した。
そんな間抜けを晒せば、先ほどのネウロイと同じ末路が待つ。
「いただきました」
偏差射撃で2連射。一発は躱されたが、二発目は直撃を得た。
だが、同時に見た。目のような器官がチカチカと発光したのを。
「今のは……?」
『!?ウソ、砲弾!逃げるわよ、ニパさん!』
『うええええ!?』
定子の声とともに、二人のウィッチが大慌てでこちらに逃げてくる。
定子の視線の先、一瞬間、あの毒々しい外見の砲弾が見え---
ズドン!
着弾、そして、炸裂。
先ほどネウロイがいた場所を中心に、巨大なクレーターが出来上がっていた。
それは、あまりにも輸送艦隊を襲った砲撃とそっくりで、そして正確過ぎて---恐ろしい。
「実況見分をしたら、基地へ帰投しましょう……」
「そうですね」
「これが、『アウガ』と『フィガー』の……」
ウィッチたちは、しかし、それでも自らの職務を続行した。
思わぬところから糸口が見つかったのだから、なんとしてもそれをつかんで離さないのが肝要だ。
170 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/10(金) 23:33:50 ID:softbank126036058190.bbtec.net [52/179]
以上、wiki転載はご自由に。
話の展開優先でちょっとご都合ですが、多少はね?
最終更新:2023年11月23日 12:45