866 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/16(木) 21:00:41 ID:softbank126036058190.bbtec.net [160/179]


憂鬱SRW ファンタジールートSS 「指と目」6



  • F世界 ストパン世界 主観1944年10月下旬 オラーシャ帝国 ラドガ湖南東部周辺



 502JFW基地のあるペテルブルクを離れ、ラドガ湖に近づいた時、先頭を行く管野のエーテルレーダーに反応があった。
 寒さを増し、白い雪に覆われた世界の中にあって、そこに潜むネウロイの存在を看破したのだ。

「こちら管野、反応あり。位置情報を取得した、情報を送信する」
『こちらAWACS、確認したわ。相手もこちらを捉えた可能性が高い、周辺に目を配っておいてね』
『こちら101W002、砲撃準備態勢に入るよ。やっと出番だね』
『こちら502W002、サーシャです。「フィガー」は有効射程が数十キロに及びます。
 追いつくのが難しい可能性があるので、502のウィッチは「アウガ」の特定を優先してください」
「とはいうが……」

 範囲が広い、と管野はわかり切ったことではあるが、嫌らしい事実に顔をしかめる。
 エーテルレーダーによって「アウガ」の存在の感知と位置の特定は可能になったのは大きな進歩だ。
 しかし、それでも範囲を絞る程度でしかないのも事実である。わからないよりはましだが、そこから擬態を看破しなければならない。
後方にいる輸送艦のレーダーと合わせればより正確な把握はできるとのことであるが、それでも難しい。

「……了解、これより感知した範囲を捜索する」

 時間をかけてレーダーで取得した情報の精度を上げていく。
 徐々に徐々に、HUD上の「アウガ」の表示と自分の表示が近づいていくのがわかる。
 速度を落とし、じっくりと目を走らせる。
 いつもの、さんざん見てきたオラーシャの大地が広がっている。
 だが、どこかにいるのだ。こちらを観測し、仲間にその情報を伝える役目に特化したネウロイが。

(この辺にいるはずだが……)

 それから少し移動し、該当範囲に入った。
 レーダー上ではほぼ自分と相手は重なっているような状況だ。
 拡張現実の操作パッドを動かし、レーダーを近距離での精査に切り替えておく。

(……動きは、無しだよな)

 絞り込む時間さえももどかしいが、それをこらえる。
 懇々とサーシャに注意を受けたのもあるが、この作戦は連携が要なのだ。
 単独で飛びかかったところで徒労で終わることが予め決まっているような、そんな出鱈目なネウロイが相手なのだから。

『こちらAWACS、レーダー有効圏がそちらに入った。
 データリンクで反応の位置を絞り込むから、先制攻撃も許可する。確実に仕留めて』
「W003了解!」

 じりじりと待っていたところにようやくの朗報。
 輸送艦及びその上空にいるAWACSのレーダーがこちらのレーダーと重なり、精度が向上したのだ。
 HUD上の地図に表示される範囲も、一気に狭まり、有視界域にまで縮小され---

「捕らえた!野郎、堂々と紛れていやがった!」

 言葉と同時に、攻撃を開始した。背負ってきたM72Bをネウロイが擬態している針葉樹目がけて発射し、投げ捨てながらM2へと持ち替えた。

『-------!』

 冷え切ったオラーシャの空気にさらされていたためか、焼夷ロケット弾でのダメージはかなり入ったようだ。
 炸裂してまき散らされたエーテルの炎に焼かれ、その存在は隠しようがないほどに派手になった。

「行くぜ!」

 逃げ出すが、すぐに追いかける。
 ドッグファイトの距離までとっくに迫っていたのだから、面白いように命中弾が出る。
 だが、相手も中々にしぶとい。コア持ちか、と推測できるほどに直撃弾に耐え、逃げようと飛び回っているのだ。

『-------!』
「!?」

 HUDにアラート。ネウロイから電波が観測された、その意味が解らないほど愚鈍ではない。
 遥か遠方からネウロイの実弾砲撃が飛んできて、着弾地点を中心に吹っ飛ばされるのだ。

867 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2023/11/16(木) 21:00:42 ID:opt-183-176-44-232.client.pikara.ne.jp [24/25]
 見た目は悪いけど、小説の描写だとあの鍋は美味らしいですね。

「新生丸」周辺には、提灯鮟鱇まで浮いていました。

 海底の魚群が一斉に海面まで死に物狂いで奔走するからでしょうね。

868 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/16(木) 21:01:44 ID:softbank126036058190.bbtec.net [161/179]

『AWACSより502W003!すぐに退避を!』
『101W002、目標を補足!カンノに引っかかったのが運のつきだね!』

 だが、と管野は前に出た。
 ここで逃がせば、こいつによってまた砲撃を誘導されるのだと理解していたから。

『ちょっと、管野さん!?』

 サーシャの声は無視。
 いったん急上昇。射撃を加えて牽制し、相手の進路を制限してやる。
 こちらが遠ざかったのを好機と見たか、ネウロイはさらに加速して管野の狙い通りに進む。
 できるだけ障害物の多い方へと逃げていくのは、傾向がある、というレベルだが分析されていたのだ。

「読み通りだ……!」

 あとは、その地点目がけ急降下だ。
 上昇したことによって生じる運動エネルギーも合わせ、管野がダイブする速度はネウロイのそれを超える。

「剣っ一閃……!」

 そして、固有魔法をすれ違いざまに殴りつけるようにして叩きこむ。
 コアを砕いた感触はあったから、戦果を確認する間もなく、地面すれすれで急上昇に転じる。
 高く、もっと高く!砲撃が迫っているアラートは鳴りっ放しで---

 ズドン!

「っ……!あぶねーな!」

 振動と衝撃に揺さぶられたが、かろうじて有効圏から脱した。

『もう、無茶をして……』
「でもこれで、観測手は一匹消えた、そうだろ?」
『ハァ……そうですけど』

 サーシャの声に、興奮からか大声で返答してしまう。
 だが、無茶だったのは事実だ。それに釣り合う戦果ならいいのだが。

『こちらAWACS、W003ナイスキル。こっちでもカウンター砲撃で「フィガー」を一体撃破できたわ。
 観測手と砲撃手のペアを早速一組撃破、お手柄ね』
「へっ、朝飯前よ」

 だけど、とAWACSのカーチャは切り替えを促す。

『まだ一組しか倒していないわ。
 戦闘が起こったことを他のネウロイが察知している可能性もある。
 次に備えて頂戴ね』
「了解!」

 その言葉に、管野は返答を返すと、哨戒コースに戻る。
 次も自分とは限らないが、ともあれ役割を果たすだけだ。
 次の標的を求め、デストロイヤーは舞い上がった。



  • オラーシャ帝国 ペトロザボーツク基地 通信室


 その後の囮部隊の戦果は「フィガー」2体、「アウガ」3体にとどまった。
 ペトロザボーツク基地周辺に近づくにつれて接触と攻撃の頻度が上がったものの、基地から一定距離内には「アウガ」が姿を見せなくなったのだ。
 ともあれ、囮となった輸送艦にもウィッチにも被害などはなく、また、迎撃とカウンター砲撃はどちらもうまくいったこともあり、戦果としては十分と言えた。
元々シミュレーションにおいて想定され、必要なモノを揃えられたとはいえ、非常に幸先が良いと言えた。
 格納庫入りした輸送艦は現在のところデータの吸出しとメンテナンスの真っ最中である。
 ウィッチたちのストライカーユニットなども含めて、補給と休息が行われていた。

869 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/16(木) 21:02:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [162/179]

「---報告としては以上です。
 吶喊で用意されたとはいえ、想定以上に戦果を出すことができたと言えます」

 そして、誰もが忙しい中で、サーシャは通信室を借り、ペテルブルクのラルとの通信を行っていた。
 今回の作戦行動で得られたデータと、そこから推測された多くの事実や考察などを含め、502JFWへと報告していたのだ。

『そうか、うまくいったか。
 ならば、私が苦労した甲斐があったというものだな』

 画面の向こう、ペテルブルクで報告を受け、データを受け取り目を通すラルはほっとした顔だ。
 投機的な作戦であり、危険の伴う実験の意味合いが大きい作戦だったのだ。下手をしなくとも死傷者などが想定されるものだった。

「はい。ですが、問題はこの後になります」
『より規模を拡大させてうまくいくか、だな。
 理論的には今回のケースで実証を得た戦訓やメソッドを拡張すればいいわけだが……そううまく行くとも限らない可能性がある』
「最後に『アウガ』と接触した時ですが、『フィガー』は攻撃を仕掛けてきませんでした。
 勿論、何らかの理由で攻撃ができない状態だったことも考えられますが、こちらが迎撃態勢を整えたことを看破した可能性があります」

 それは、ネウロイがこちらの対策を察知し、無駄撃ちを嫌っての選択ではないかと、そういうことだ。
 元より相手との鼬ごっこという面があるが、相手がこうにまで早く対策してくるとは予想外であった。

『まあ、悲観のし過ぎも良くはないだろう。
 相手は体組織から実弾を精製しているのだから、砲撃をして限界だったかもしれないわけだしな』
「それは、まあ、ありえる話ですが……」

 実際、サーシャたちが出る前に、ペトロザボーツク基地周辺でも拠点や艦艇などを狙った砲撃が実施されていたのだ。
それで撃ち切りになってしまい、標的を捉えても撃てなかった可能性もありうるのである。
相手のことを完全に分析しきったわけではないため、なんとも言えないのだが、楽観的にはそういうことかもしれない。

『ともあれ……ペトロザボーツク基地から輸送艦を戻す必要があるのは確かだ。
 明日は現地部隊と協力し、ペテルブルクの方へと送り出してくれ。そうすればカウハバ経由で戻す手筈になっている』
「承知いたしました。
 我々は今日はこちらに残りますが、ペテルブルクの方は大丈夫でしょうか?」
『戦力的には少ないが、今夜と明日くらいはなんとかなるさ。
 それより、無事にペテルブルクに戻るのを含めてが作戦だ、帰りにこそ注意してくれ』
「はい」

 明日は一隻ではなく、荷物や後方に下がる人員を積み込んだ輸送艦4隻が同道する形となる。
 今度は40名どころか、それ以上の命を守って敵との係争地域を突破しなくてはならない、ということだ。

『そう固くなる必要はないぞ、サーシャ』
「簡単に言ってくれますね……」
『これまでの実績があるから、信頼しているということだ。
 ともあれ、ペテルブルクで会おう、お互い無事にな』

 通信が終わり、深い息をサーシャは吐き出す。
 ラルの言わんとすることもわかる。固くなりすぎ、緊張しすぎるとできることもできなくなるのだ。

「隊長の図々しさ、少しは見習ってみようかしら」

 まあ、ともかく明日も仕事ということは確か。
 一喜一憂するよりも、明日に備えて休む方が建設的という奴だろう。
 この基地に気の利いたサウナはあるだろうかと、そんなことをサーシャは考えた。

870 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/16(木) 21:03:46 ID:softbank126036058190.bbtec.net [163/179]

以上wiki転載はご自由に。
戦闘はさっくり。
次回はさらに規模を大きくしますが…まあ、さらりと終わらせる予定です。
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最終更新:2023年11月23日 13:00