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194氏 支援?ネタ パリのレースの裏側で
「ネイチャー…イクノー…マチターン…ここどこだもーん…。」
薄く暗く深い深い霧の中から声が聞こえる。
声のする方より影が見える青い髪にカラフルな服装でトボトボと霧の中を歩く影…ウマ娘のツインターボだ。
気がついたらツインターボはここに居た、深い深い霧の中に。歩けども歩けども深い霧がずっと続く。
意識が戻った当初こそ叫び続けていたがどれだけ叫んでも何の返答もなく得意の大逃げの走りで走り回っても何処まで言っても景色は変わらない。
「パリのレース場走ってたのになんでこんな所にターボ居るんだろ…。」
ポツリと呟く。ここで意識が戻る前に最後に覚えているのは怪我を押して出走したレースのこと。
怪我した自分が不甲斐なくてラファールルージュのしたことも彼女にあんな事させたを何もかもが許せなくって走ったレース。
最後はラファールルージュも自分の走りが出来てそれでも皆に押されて自分が逃げ切ってやり切った。
満足だった、ありったけを込めて走ったから…それこそここで終わってもいいと、そこでもしかしてと思う。
「もしかして…ターボ…。」
死んじゃった…?その言葉が思い浮かんだ瞬間にぞくりと寒気がし周囲を見渡す。
気がついて周囲の見ればこの霧深い地の空気はあの時に似ている。
艦娘に連れられ虹の橋を渡ったゴーストウィニング号に会いに行ったあの黄昏の花畑、冥界アヴァロンに。
だが柔らかな光に包まれ暖かだったあの場所と違いこの場所は酷く寒々しい…夜明け前の霧に包まれた世界のよう。
「う…う…うぅ…うぇ…。」
両目から涙が出てくる。泣きわめきたくなるがその気力も湧いてこない。
「トリィ…ゴメン…ゴメン…。」
レースに出走するために迷惑をかけた妹分の名を呟き謝罪の言葉が出るがその言葉は二度と伝わることはない。
自分勝手な自己満足で目の前で自分が倒れどんな想いを抱かせるか想像し情けなくなる。
「トレーナーぁ…ネイチャぁ…イクノぉ…マチタン……。」
親しい者らの名を呟くがもう二度と会うことは出来ない。
「皆…おぅ…ゴメン…ヒック…ごめんなさい…。」
蹲り嗚咽を漏らしながら出る謝罪の言葉のみが口を動かす。
皆が酷く悲しむ光景が瞼の向こうに浮かびツインターボの胸を締め付ける。
自分勝手に走った結果がこれ…眼前に広がる寒々しい霧の立ち込めた世界。
ゴーストウィニング号が虹の橋を渡った先の暖かな世界と酷く違う。
駆逐艦娘の電が行っていたではないか…あの世は数多あると。
小さい頃悪いことをすれば閻魔大王に地獄へ落とされると絵本に描いてあったが実際は違った。
皆を悲しませた自分の死後は誰もいない一人ぼっちの世界だった。
多くのウマ娘を救ったゴーストウィニング号とは違い多くの人を悲しませた自分には相応しい死後。
そう頭では分かっているがそれでも。
「誰か助けてよぉ…誰か…。」
誰かに助けを求めた。こんな所で終わりたくない。
それが無駄と知りつつツインターボの口から憧れの名が漏れる。
「テイオーぉ…助けて…。」
最後に憧れの名が漏れ、疲れ果て目を閉じたツインターボの耳パチパチという音が入る。
目を開くと横になっており毛布が掛けられていた。
生きて戻れたのかと起き上がるが視界は全て霧…あの寒々しい世界だった。
「やれやれ…やっと起きたかい?」
声がする方を向く。パチパチという音とともに明るい柔らかな光が目に入り目を細める。
暗いこの地に慣れた目には明るかったが段々と目が慣れていく。その柔らかな明かりは焚火だった。
人工の明かり、人の灯火…その光に浮かぶのは長い鹿毛をポニーテールにし、額の上には白い流星が走っている。
トウカイテイオーだ。見知ったその姿に目尻から涙が流れてくる。
「テイオー…テイオー!」
名を口走り感情そのままにツインターボは眼前の人物に飛びつくが眼前の人物は難なくツインターボを受け止める。
そしてその胸に縋り付くとワンワンと泣き出し縋り付かれた側はよしよしとツインターボの頭を撫でた。
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「落ち着いた?」
「うん…でも”テイオー号”なんでここにいるの…?」
目を泣き腫らし鼻水出しながらようやく落ち着いたツインターボは眼前の人物、トウカイテイオーではなくトウカイテイオー号に問いかける。
彼女らおウマさんらは偶にトレセン学園に姿現すことあれど自分の世界に帰って以降は余り姿を見せなくなった。
「ああそれはね。キミが縁からコッチの幽世…最近記紀神話に追加された中南米先住民の死後の世界に紛れ込んじゃったからだよ。」
だから自分が来たトウカイテイオー号のその言葉、自分がいる場所が死後の世界であると改めて知らされ項垂れる。
「やっぱりターボ死んじゃったの…?」
その事実に再び泣きそうになる。
「ターボ、また皆に会いたい…?」
その言葉にツインターボは顔をクシャクシャニしながら頷く。
皆に会いたいと再会し謝りたいと言う。
心の底からの言葉、その様子を見てこれならば大丈夫かとトウカイテイオー号は嫋やかな白い人差し指を伸ばすと一点を指差す。
「そっかそれじゃ…ターボ。向こう、ボクが指差す方向に向かって真っ直ぐ走るんだ。」
ツインターボはトウカイテイオー号の指差す方を見るがあるのは同じ深い霧だけ目印となるような物は何もない。
「誰かに話しかけられても振り返っちゃダメ。ナイスネイチャやイクノディクタスの声が止めても絶対止まっちゃダメだよ。
ボクがスタートと言ったら脇目も振らずに全力で走るんだ。」
良くわからない指示を出すトウカイテイオー号、それでもツインターボは頷いた。
あのトウカイテイオー号が言うことだ向こうに行けば何とかなるのだろうという思考だけがツインターボの脳を支配している。
その様子に後でトウカイテイオーとかにツインターボのことで忠告しとかなくちゃと苦笑するトウカイテイオー号だった。
「じゃあツインターボ。よーい…ドン!」
その言葉と共に弾かれた様に走り出すツインターボ、その姿は直ぐに霧に隠れ見えなくなった。
「………ターボは行ったよ。」
ツインターボを見送ったトウカイテイオー号が呟くと霧の向こうから人影が出てくる。
ツインターボと同じ姿、元競走馬のツインターボ号だ。
「ありがとテイオー号、ターボ号だとあの子の事を一杯怒っちゃいそうだから…。」
「まあしょうがないんじゃない。」
そしてもう一人ツインターボ号の後ろから人影が焚火に近づいてくる。
「おーおー、テイオー号あいつ行ったか。」
「あ、ゴルシ号…ってなんでボロボロなの!?」
ゴールドシップ号だった若干ボロボロだが。
「ココ、御新規さんの領域に近いじゃんか?あの虎がターボ相手にジャガー道場開こうとしていたからよお。全力でとっちめてた。」
「何やってるのさ…。」
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以上、支援なってるか分からないネタでした。
最終更新:2023年11月26日 13:55