209 名前:トゥ!ヘァ![sage] 投稿日:2023/11/01(水) 18:16:22 ID:FL1-133-209-109-210.kng.mesh.ad.jp [74/187]
日本連合 日本 外伝 ロシアの報復
ここはロシア本土のどこぞの司令部。
「というわけで我が軍の欧州方面軍は半壊状態だ。今回の核攻撃はその報復というわけだな」
どこぞの軍のお偉いさんは部下たちへそう告げる。
この時期のEORSは革命軍の大攻勢を凌ぎきり、その後ドイツ本国へ逆侵攻。
しかしその際に各都市へ秘密裏に配備されていた核兵器による自爆戦術により侵攻軍は壊滅的な被害を受けた。
その侵攻軍の中核となっていたのはロシアの欧州方面軍である。
今回はその報復として革命軍が有する都市への報復であった。
「しかしロンドンやパリは除くですか。意外ですね」
「太平洋に逃げ込んだ英仏亡命政府との折衝の結果だな。我が軍だけで西欧全てを統治するのは骨が折れる」
ロシア軍がわざとパリやロンドンと言った中枢都市を狙いから外していたのは英仏亡命政府との交渉の結果であった。
祖国の持つ核を大動員して西欧全てを灰に返してもいいが、それでは何も得るものがない。
ロシアはそれを嫌ったからこそ英仏を始めとする各国の亡命政府の言い分を飲んだのだ。
見返りは西欧への本格侵攻の際の助力。また祖国奪還時における利権諸々のロシアへの優遇。
燃やすのは容易いが再建は難しいというのは当の欧州革命軍が証明しているのだ。
改めて西欧をロシアの経済圏に取り込みたい露政府からすれば全面核攻撃で全てを放射能濡れにする理由はなかった。
あと全面核攻撃は流石に日連の反応が怖い(これ大事)
「そういうわけで目標はドイツ国内ではデュッセンドルフ、フランクフルト、マンハイム、シュトゥッガルト。
仏国内はモンペリエとトゥールーズ。
英国内はノリッジとヨーク。
これらの都市周辺にありったけの核搭載の巡航ミサイルを撃ち込む。ま、旧式の巡航ミサイルだがな」
「なるほど。ドイツ内の目標は西側地域ですか。英仏のは?」
「ドイツ内の目標に関しては純粋に前線から遠いところだな。
英仏の目標に関しては単純に英仏亡命政府に泣きつかれたから大局に影響の少なそうな都市を適当に選んだそうだ」
そう司令官は話すが内心では連中は放射能なんて気にせず適当な棄民を突っ込ませそうだなぁっと考えていた。
我々(ソ連時代)も兵士に対してそれをやらせる予定だったのだが、連中がやらないわけがない。
英仏の目標に関してはいっそのこと全ての重要都市群に撃ちこむくらいやってやればいいのにと思っていたが、政府の決定だ。軍人ならそれに従うのみ。
ロシア政府は西欧を放射能まみれにするよりは太平洋で何やら策謀している英仏政府に借りを作ることを優先したようだ。
どうやら遠からずカナダに攻め込むらしい。
まあ今それを考えても仕方ない。どのみち英仏亡命政府には大きな借りを作れた。ここは将来への道筋を作ったというだけで善しとしよう。
何より既にミサイルを搭載した爆撃機群やバルト海艦隊は行動に移しているのだから。
「さて諸君。そろそろパン籠(核搭載巡航ミサイル)が到着する頃だろう」
そういうと司令官たちは司令部の戦略モニターへと目を移した。
発射されたミサイルがそれぞれの目標へと進んでいる。もう十数秒も立てば数十発の巡航ミサイルは目標に到着するだろう。
210 名前:トゥ!ヘァ![sage] 投稿日:2023/11/01(水) 18:17:12 ID:FL1-133-209-109-210.kng.mesh.ad.jp [75/187]
英仏本国に残っている迎撃システムは精々短SAMと航空機搭載の迎撃ミサイル程度が大半。
海軍戦力は亡命政府と共に大多数は太平洋だ。効果的に迎撃できるだけの数は残っていない。
間違いなく予定通りに弾着する…はずだった。
「! ベネルスク地域及びドイツ国内を飛行中だった我が軍の巡航ミサイル群が消滅!?
英国側に飛んでいたのも多くの反応が消失しました!」
「残っていた分が着弾します!3、2、1、今!着弾しました。
着弾地点はシュトゥッガルト、フランクフルト、トゥールーズ、ノリッジ」
「前線の映像から我が軍のミサイル群が消滅した空域において多数の大爆発が確認されています!」
いったいこれはどういうことか。何が起こったのか。
司令部の人員は半ば混乱していたが司令官と一部の将校には嫌な心当たりがあった。
「前線の監視所から通達!どうやら連中は核搭載ミサイルでの迎撃を図った模様です!」
ぬかった!!!司令官の内心はその言葉に埋め尽くされた。
核を使った迎撃戦術。冷戦時代の我が国とて運用していたではないか!
脅威度が低いからと従来の亜音速の巡航ミサイルではなく最新の極音速ミサイルを使うべきであったか!!
しかし逆に冷静な部分もあった。
一応は敵都市への報復には成功した。つまりロシアの報復能力はある程度証明されたのである。
また今回切り札たる極音速巡航ミサイルは使用しておらず、ロシアは本気ではなかったという言い訳は聞く。
何より祖国の本土が攻撃された故の報復ではなく、他国の土地に侵攻している際に自爆戦術で核を使われた故の報復だ。
英仏亡命政府からの嘆願もある。そういう意味では丁度いい塩梅に終わったのではないか。少なくとも英仏政府は予定よりも吹き飛ぶ街の数が減ったことに胸を撫で下ろしていそうだ。
何より連中が核を使った迎撃ミサイルを実用化しているという情報を引きずり出せた。
これが判明しない状態で西欧奪還作戦を始めた時には最悪航空部隊へと核ミサイルが突き刺さる可能性もあったのだから。
「諸君落ち着き給え。取りあえずは情報をまとめ政府へ連絡。現場の部隊には連中が更に報復で核を打ち込んでこないか監視を徹底させろ」
取りあえずは情報収集とそれをまとめて政府へと報告を優先させよう。
そして真っ先に聞くべきことはこちらの第二陣(報復核)を用意するかどうかだな。
「しかしベルギー、オランダ、北海上空での多数の核弾頭爆発か。上空起爆とはいえ広範囲に放射能が降り注ぐだろうな」
着弾した数は減ったが、代わりに想定よりも広い範囲が汚染される結果に終わったのはさてはて喜ぶべきか悲しむべきか。
後にロシア政府は報復の第二陣を用意したが、そこで英仏政府が令和日本政府を率いて交渉に訪れたことで、この報復は使われずに終わる。
英仏亡命政府が連れてきた令和日本(の陰にいる日連)を恐れてとの話もあるが、単純に第二陣を使うほどの経済的、軍事的効果がないと判断されたからと言われている。
最も後の極東ロシアにおいて日英仏資本による資源開発、英仏との技術交流が大規模に行われたことと関連性がないとは誰にも言いきれなかった。
またこの後にウクライナにて大規模な武装反乱ことウクライナ事変が発生。
ロシアはこの騒動を自力で抑えられず、他のEORS諸国の介入を招くこととなる。
211 名前:トゥ!ヘァ![sage] 投稿日:2023/11/01(水) 18:18:04 ID:FL1-133-209-109-210.kng.mesh.ad.jp [76/187]
西欧に関しては今回の事例から革命政府が核を使うのに躊躇ないことが判明して以降は大軍を持っての制圧から現地の抵抗勢力との協力、または特殊部隊や諜報員を潜入させ核の配置と残弾の調査を優先し、今回のような不意打ちを防ぐことを優先する方針が決定。
後にEORS諸国と英仏を始めとした西欧亡命諸国群が連携し、これらの合同調査を行うことを表明した。
そして今回の出来事で少なくない戦力と威信を失ったロシアであったが、英仏亡命政府また彼らが巻き込んだ令和日本との取引により極東方面の資源開発とそれによる好景気により経済的にはプラスである。
同時にウクライナという微妙に扱いにくかった不良債権から手を引くことにも成功しており、欧州方面軍の半壊とEORSにおける主導権の損失の代わりに経済面でのV時回復を成し遂げており、結果的には後のロシア経済復興の一助となった。
また予定通りではなかったが核攻撃に対しては核報復を行う実例が出来たことによりイスラエルなどは露骨に核兵器の使用をチラつかせる頻度が減り、中東方面では多少ながら緊張が減るなど副次効果をもたらした。
なおロシアが最も恐れていた日連からはこれと言った反応はなかったが、当の日連諸国においては「ようやった!ようやったぞロシアどん!」「大国と胸を張れるか否かはきちんと報復を実施したか否かである」「少々手ぬるい報復だったのでは?」と比較的好印象であったが、それを口に出さずロシアを調子づかさないだけの分別は存在していた。
余談であるがロシアの核使用に何か言いそうな令和日本国内の核兵器反対団体であるが、これらの多くは第二次日中戦争以前の日連による赤狩りによりほとんどが壊滅していた。
現在の主流は同日中戦争において中国軍の核が全て無力化された実例を見て、他国からの核の脅威が下がったのだから、むしろ積極的にこちらが核を利用すべきでは?という考えを持つ、核運用積極派団体である。
これらは主に令和日本率いる自衛軍による核保有を目指す団体のことを指す。
因みに日連も令和日本の核保有には積極的であるが(日連参加国の過半からは史実世界の核兵器は左程脅威に見られていないのも大きい)、当の令和日本は核兵器の維持費用の問題から経済が更に好調になり高い数字で安定するまでは保有はもう少し先送りしたいと表明している。
〇説明
ロシアはウクライナ戦争の前後にて極音速巡航ミサイルを開発し、配備を開始していたが第二次日中戦争による世界経済の崩壊以降はこれら最新兵器の増産が中々進まない状態であった。
現在では日連の影響で弾道弾が使えなくなったので、そちらの維持費用を削り、巡航ミサイルの増産に予算を充てている。
欧州方面では革命軍の脅威度が低かったため従来の亜音速巡航ミサイルが中心であり、最新の極音速巡航ミサイルは脅威度の高いイスラエル方面へと集中配備されていた。
革命軍による核迎撃以降は欧州方面にも少数ながら極音速巡航ミサイルが配備されるようになった。
文字通り核を使っての迎撃ミサイルである。
いつ頃から実用化されたのかは諸説あり詳しくは不明。
どうやらこれまた日連の影響で使えなくなった核弾道弾から流用したのでは?という仮説が支持されている。
また都市伝説的噂であるが、一説ではイスラエルの技術者が開発に関わっていたのではないか?という話も出ている。
眉唾ものな仮説であったが、後にイスラエル国内に多数の旧ドイツ製の工業マシンが北アフリカ、地中海経由で運び込まれていたことが確認されており、革命政府群とイスラエル政府が直接的ではないにせよ何かしらの繋がりが存在している可能性は高いとされている。
212 名前:トゥ!ヘァ![sage] 投稿日:2023/11/01(水) 18:18:45 ID:FL1-133-209-109-210.kng.mesh.ad.jp [77/187]
投下終了です
ロシアが報復手加減した理由は英仏亡命政府との取引の結果でした。
最終更新:2023年12月09日 12:40