264 名前:蓬莱人形[sage] 投稿日:2023/11/05(日) 18:03:17 ID:bai859b0aa9.bai.ne.jp [4/8]
日本大陸SS―阪神電鉄・西宮市内線―

【概要】
阪神電鉄が運行していた軌道線(路面電車)のうち、西宮市内部分を市内交通として再編成した路線網。鉄道線である武庫川線も運行形態としてはこの一部である。

【路線】
武庫川線(鉄道線) 甲子園口―武庫大橋―武庫川―武庫川団地東(※1)―武庫川団地西

国道線 武庫大橋―上甲子園―国鉄西ノ宮―阪神西宮―夙川公園
甲子園線 上甲子園―甲子園―甲子園球場南口―浜甲子園
今津浜線 浜甲子園―中津浜―今津港―今津
鳴尾浜線(虎姫線) 浜甲子園―記念艦虎姫―武庫川団地西―鳴尾浜

(駅名は主要駅のみ掲載)
甲子園線直通列車は武庫川線の途中駅(桜づつみ駅)を通過する。

【沿革】
大阪府大阪市に本社を置く大手私鉄である阪神電鉄は、大阪市と兵庫県神戸市の間に鉄道線である阪神本線を運行しているが、かつては国道2号線(第一阪神国道)上の路面電車として大阪市の野田駅(現・大阪市電 野田阪神駅)から神戸市の東神戸駅(現・神戸市電 脇浜町駅)に至る、路面電車としては常識外に長大な路線である阪神国道線を保有していた。

路線延長がおよそ80kmにも及ぶ国道線はその長さゆえに全線で5時間以上という非効率にして過酷な運行を強いられ、太平洋戦争終戦後のモータリゼーションの進行が非効率性に追い打ちをかけて阪神電鉄の負担となっており、沿線自治体からの撤去要請にも社内で特に反発が生じないありさまであった。
しかし、風前の灯であった国道線の廃線に待ったがかかる。
幹線道路の混雑緩和には、路面電車の撤去は逆効果となるという見解が複数の都市計画の研究者から提示され、早くに廃線が行われたいくつかの都市において実際に渋滞が激化するなどの弊害が発生し始めていたのである。

多くの都市で路面電車を排除する論調は下火となってゆき、国が法整備を進めたこともあり既存の路面電車を有効活用することも考慮した交通網の整備が盛んに研究されるようになった。
一例として、大阪府大阪市において大阪市電のうち、地下鉄で置き換えられない部分の全面廃止とバス移行が土壇場で撤回された例がある(流石に路線の新設はバスと比較した優位性に問題があり、一部を除いて低調であった)。

この流れにおいて国道線も先述の廃止要請は一旦白紙撤回され、存続の可能性を考慮して阪神電鉄と地方自治体などが慎重に協議を重ねた。
結論として、阪神電鉄の路面電車路線のうち西宮市内部分は引き続き阪神電鉄が運営し、それ以外は芦屋市内は廃線となったが大阪市・尼崎市・灘市(※2)・神戸市の部分は各市の公営交通の路線に編入(尼崎市は新設)されることとなった。
分割によってスリム化した各市の路線はバス・地下鉄と運賃を共通化する、市内の鉄道と接続するなど地域輸送・フィーダー路線として歴史を刻んでいくこととなる(大阪市電 西淀川線/大淀線(※3)・尼崎市電 国道線・神戸市電 灘線。なお尼崎市交通局は2016年までに保有する全ての軌道・バス路線を阪神電鉄に譲渡して解散した)。

265 名前:蓬莱人形[sage] 投稿日:2023/11/05(日) 18:04:18 ID:bai859b0aa9.bai.ne.jp [5/8]
さて、阪神電鉄が運営すると決定した西宮市内であるが、国道線の上甲子園駅から分岐して海岸方向に向かう、途中の甲子園駅で阪神本線と接続する甲子園線が存在していた。
この甲子園線は路線長が短く、自動車との錯綜もそれほどではなかったため阪神電鉄も国道線ほどの負担を感じていなかった。沿線の行楽地へのアクセス路線や団地の足となっているなど国道線と異なり経営状態は良好であったこともあり、これが西宮市内部分が阪神電鉄に残る理由の一つでもあったのだが、この甲子園線に加えて阪神の鉄道線の支線である、西宮市東端を走る武庫川線も連携して西宮市内南部の交通網としての再編成が行われた。

余談ながら、上記の西宮市内が阪神電鉄に残った理由のうち最大のものは、西宮市は阪神電鉄が保有する職業野球チームである阪神タイガースの本拠地である甲子園球場の所在地であり、元来阪神電鉄との結びつきが強かったためである(阪急電鉄の球団である阪急ブレーブスも宝塚市の新球場に移転するまでは西宮市が本拠であり、ブレーブス人気も特に国鉄線以北の阪急沿線で根強いのだが)。


路線網の再編としては、以下のようなものが行われた。

国道線は西宮市東端の武庫大橋駅から西部の夙川公園駅を結ぶ路線となり、阪神本線西宮駅・国鉄東海道本線西ノ宮駅との接続が強化された。また後述の通り、武庫大橋駅から武庫川線甲子園口駅方面、上甲子園駅から甲子園駅(甲子園球場)方面に直通運転する運行系統が設定されている。

武庫川線は全線複線化されるとともに当初の起点である武庫川駅から北方向へ、国鉄と連絡していた貨物線(沿線にかつて存在した川西飛行機の工場に原材料を輸送するために用いられていた)を再利用して国鉄甲子園口駅までの延伸がなされた。この際、国道2号線との交差部分に置かれた武庫大橋駅を国道線との直通運転が可能な構造としており、甲子園口駅にも路面電車対応のホームを設置することで国鉄線から甲子園球場に向かうルートの一つを形成している。

甲子園線は、再編の時点では浜甲子園駅で海岸に到達した後は西に折れて海岸沿いに中津浜まで、専用軌道の路線が伸びていた。これは阪神電鉄が計画していたが頓挫した、尼崎市から西宮市にかけての海岸沿いの路線の一部として建設されたものであったが、今津浜線として書類上分離され、後に当初計画の終着駅であった阪神・阪急の今津駅まで延伸された。1995年の阪神大震災からの復旧においては、鉄道線に準ずる構造に変更されるとともに阪急今津線と直通する配線となり、浜甲子園駅と阪急西宮北口駅の間で直通運転されるようになる。

新設路線として、甲子園線浜甲子園駅から東に向かう路線が建設された。当初は甲子園線の延長(支線)として建設されたもので、建設当初の終点の駅名ともなった記念艦、重巡洋艦『虎姫』にちなんで虎姫線と通称されるようになった。鳴尾浜までの延伸がなって、正式名称として鳴尾浜線がつけられたが、阪神タイガースに通じる虎姫線の名前は人気が高く、阪神電鉄でもこの名前で呼ぶことがある。延伸部分の途中では、武庫川団地西駅で、同駅を終点とする武庫川線と接続している。

道路交通との干渉の低減であるが、国道線は国道2号線の拡幅工事に併せて線路部分が自動車進入禁止の中央分離帯扱いとされた(準専用軌道)。上甲子園駅では、甲子園線方面から折り返す配線となっている2号線と交差しないホームが設けられており、甲子園線の線内系統の列車が2号線を支障しないようになっている。
また、阪神間のもう一つの幹線道路である国道43号線(第二阪神国道)と甲子園線の交差部分については、43号線の本道を、43号線の頭上に建設されていた阪神高速道路の両側に貼り付く形で高架道路として立体交差とされた。
武庫川線は武庫川に堤防を挟んで並行しており、堤防を越える高さの幹線道路とは自然に下をくぐる形の立体交差がなされていたが、川沿い以外の部分でも塹壕式の半地下構造を採用しているため踏切は存在しない。

266 名前:蓬莱人形[sage] 投稿日:2023/11/05(日) 18:04:56 ID:bai859b0aa9.bai.ne.jp [6/8]
【余談】
  • 阪神電鉄が保有する軌道線用車両の中には、阪神タイガースの優勝記念パレード専用とされる車両が存在する。優勝記念パレードにおいてタイガースの選手が乗り込んむオープンカー構造の車両で、阪神タイガースがリーグ優勝以上の成績を残せなかった年には試運転を除き運転されることがないと言われる(実際にはタイガースのファン感謝イベントの会場に持ち込まれることがある)。

  • 武庫川線と軌道線の直通運転は、通常武庫大橋駅でのみ直通しているが、武庫川線の終点である武庫川団地西駅にも武庫川線と鳴尾浜線を結ぶ線路が存在する。
特に短時間での一時的な大量輸送が必要になった事態を想定したもので、鳴尾浜線と甲子園線の甲子園球場南口駅と武庫川団地西駅の間は併用軌道であるが、武庫川線用の4両編成の列車が通過可能なように設計されており、甲子園球場南口駅3番線ホームの反対側に置かれた臨時ホームで4両編成の客扱いが可能である。
実際の運用としては、高校野球の観客などを輸送するために運転された国鉄線甲子園口を終着とする臨時夜行列車(現地の宿泊施設が不足していた時期に運行された、新大阪駅始発の『ナインドリーム甲子園』号を含む)に接続して甲子園口から球場南口まで途中無停車(運転停車のみ)の臨時列車が4両編成で運転され、一般の応援客や一般利用者などとの錯綜を緩和していた。

  • 甲子園線の甲子園球場南口(こうしえんきゅうじょうみなみぐち)駅は、阪神電鉄で最長の駅名である。読みでは最長であるが、字数では同じ七文字の武庫川団地中央駅(武庫川線)と武庫川女子大前駅(本線、2019年に武庫川―鳴尾間に開業した新駅※4)がある。


※1 『武庫川団地東駅』は、列島世界の武庫川団地前駅に相当。列島世界の武庫川線において未成に終わった当初計画と同様、武庫川団地を東西に横切る形で団地の奥まで路線が伸びているためこの駅名となった。


※2 『兵庫県灘市』は列島世界では存在しない市であるが、大陸世界では神戸市が行政の肥大化の限界から拡大が遅れており、列島世界でいう神戸市東灘区・灘区に相当する区域が市制を施行したもの。本SSで取り上げた阪神国道線再編の時期には神戸市への編入が決定しており、神戸市の交通網への統合が進められていた。

※3 『大阪市電 大淀線』は、阪神電鉄が大阪市内に保有していたもう一つの軌道線である北大阪線を、国道線と同様に編入したものである。福島区の野田阪神駅から大淀区(列島世界で北区に編入されて消滅した区)主要部を通って天神橋筋六丁目駅に至る。

※4 史実では同年に鳴尾駅が鳴尾・武庫川女子大前駅に改名された。大陸世界では距離が長いため同日に新駅として開業したと設定する。

267 名前:蓬莱人形[sage] 投稿日:2023/11/05(日) 18:08:42 ID:bai859b0aa9.bai.ne.jp [7/8]
以上です。試合開始に間に合ってよかった。

作中に盛り込めなかったネタ

  • 大陸世界ではプロ野球も規模が大きく、『阪急ブレーブス』『オリックス・ブルーウェーブ』『近鉄バファローズ』は別々の球団として現存する
  • (英語との結びつきが弱い世界線において)野球はアメリカ合衆国で発達したスポーツであるため、歴史的経緯を尊重して野球用語には英語が積極的に用いられる
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最終更新:2023年12月09日 12:42