372 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/21(火) 21:21:37 ID:softbank126036058190.bbtec.net [74/211]
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「指と目」8
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月下旬 オラーシャ帝国 ラドガ湖東部周辺地域
輸送艦隊が一時停止し、ネウロイの襲撃に備えた警戒態勢にある中で、ウォーザード達が機材を片手に艦隊の予定進路上を動き回っていた。
彼ら彼女らの目は地面---いや、地下のその先にあるであろう「それ」に向けられていた。
急遽持ち出した指向センサーを動員し、複数個所から測定を行い、それの位置を正確に導き出したのだ。
「……地下数メートルのところですね」
「埋まっていて、ずっと動かない……考えてみれば単純な話か」
「大きさは……うわ、10メートルはありそうです」
「ネウロイがまさか地雷なんてものを作ってくるとはな」
そう、地雷だ。
度重なる襲撃を潜り抜け、「アウガ」「フィガー」の連携攻撃を跳ねのけ、ようやく先に進めるという段階での急停止。
それは、ウィッチである定子がAWACSオーカ・ニエーバからの情報を基に警告を発し、もしやということで調査を行うためだった。
進路上にいるくせにまるで動かず、他のネウロイと連動して攻撃を仕掛けてくるわけでもない。目視で見ても地表には何ら姿が見えない。
そんなネウロイが何のためにいるのか、と考え、導き出したのであった。
「進路が読まれていた……いや、想定されていて予め敷設されていたってことかな?」
「ほぼ間違いないだろう。夜間哨戒もしているとはいえ、浸透を完全に検知することは難しいし、ましてや何をしているかまではわからない。
オラーシャが広すぎるんだ……」
そうウォーザードの一人が吐き捨てた時、HUDにアラートが表示された。
『AWACSオーカ・ニエーバから作戦展開中の各員へ!
これは……「アウガ」と「フィガー」を探知!狙われている!』
『足を止めたところを狙ってきた!?数が多い……まだ隠していたなんて!』
『輸送艦隊はこれより迎撃に入る!陸戦隊は地雷型ネウロイの処理を急いでくれ!』
『了解!』
『101W001、これより「フィガー」への反撃に移る!』
『他のネウロイも来ます、迎撃態勢!』
息を吹き返したネウロイの群れが押し寄せてきたのだ。
さらには、「アウガ」と「フィガー」までもが再度出現していた。
引っかかろうが引っかかるまいが、どっちにしても動きが遅くなったところを狙うつもりだったようだ。
『砲弾、迎撃急いで!』
『502のウィッチは散開してネウロイの浸透を防いでください!』
『了解!』
『「フィガー」発砲!』
『撃ち落せぇ!』
一度は収まったかに見えた戦闘は、それ以上の激しさを以て再開されたのだった。
オラーシャの大地は、戦争のアンサンブルに満ちていく。
373 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/21(火) 21:22:40 ID:softbank126036058190.bbtec.net [75/211]
- オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 陸港
数時間の戦闘を経て、各員が死力を尽くした結果、輸送艦隊は無事にペテルブルクに到達することができた。
輸送ルートをネウロイも割り出していたらしく、何度か進路変更をしたものの、何か所にも地雷原が用意されており、そのたびごとに処理を強いられた。
そして地雷型ネウロイの処理を行っている間に、ネウロイがまとまって襲い掛かってくる、というパターンが組まれていたのだ。
輸送艦を守る部隊の疲弊と消耗を狙った波状攻撃は、長距離砲撃の「フィガー」と相まって、非常に効果的であったと言えた。
とはいえ、ネウロイがそうであるように、人類側も慣れてくれば学習もできる。
勿論疲弊や消耗は誘発されるが、そういうふうに攻めてくれと分かれば、そのように備えて対処できるというわけである。
ということで、輸送艦隊は多少の被害を受けはしたものの、全艦がペテルブルク基地の陸港へ到着することができたのだった。
「ご苦労だったな、サーシャ」
「隊長自らお出迎えとは光栄です」
「棘を感じるぞ?これでも書類仕事をこなして時間を割いたんだが……」
「まあ、それはありがたいことです」
そして、陸港へとタラップを伝い輸送艦から降り立ったサーシャをはじめとした502のウィッチたちを迎えたのはラルであった。
ラルとしては今回の輸送艦の移動や物資と人員の移動を兼ねたペトロザボーツク基地への往復任務を労うつもりだったのだ。
作戦中に確認された新型の地雷型ネウロイについてやそれを用いたネウロイの新戦術についてなど、報告すべきことは山のようにあった。
それでもここに直接顔を出せたのは、彼女が口にしたように努力をした結果なのである。
「他の皆も良くやってくれた。
現地での判断、それと行動。私が見込んだベテランのウィッチに相応しいと、胸を張って言える。
だが……」
そこで言葉を切り、ニッと笑う。
「諸君らが欲しいのは讃辞などではないだろうからな。
後始末はこちらでやる、各員は休息に入れ。別棟も開放してある」
「感謝します」
「死ぬような思いしたけどそれだけかよ……腹も減ったぜ」
「勲章の一つでも要請しようか?」
「別に。まだ終わりじゃないんだろ?」
流石に疲労の大きい管野は、しかし、戦意を失っていなかった。
それに続くクルピンスキーもジョゼも定子も同じだ。
その態度に、ラルは満足げに頷くのみだ。
「ああ。今後の502、ひいてはオラーシャ全体の戦略も変更になるかもしれん。
悪いが与えられる休みは長くはない。明朝0800にはブリーフィングルームに集合だ」
「勘弁してほしいねぇ」
「ネウロイは待ってくれませんよ、クルピンスキー中尉」
「お腹がすきましたぁ……」
とはいえ、今はウィッチである前に一人の少女に戻ることが許される時間だった。
およそ12時間。その時間の後に、彼女たちは再び戦うウィッチへと戻るのだから。
夜の帳と共に、わずかな安息の時間が訪れようとしていた。
374 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/11/21(火) 21:25:39 ID:softbank126036058190.bbtec.net [76/211]
以上、wiki転載はご自由に。
一気に幕引きにもっていきました。
長くやってもだらだらしそうでしたので。
補足については証言録で行う予定です……多分。
次の話はエマ・ホワイトの着任ですねぇ…
ちょっとメインカメラを502から101に移します。
最終更新:2023年12月10日 17:34