646:635:2023/12/10(日) 09:23:21 HOST:119-171-251-211.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その二十四 せめて人間らしい死を



特危自衛隊双葉基地、そこでは慌ただしく人間達や幻想種らが動き回っていた。


「急いで積み込め!祝福や術式刻む等残りの作業は艦内で行う!」


巨大な棒状の物が幾つも宇宙空母カグヤに運び込まれていく。
それを眺めるのは艦長のティラスと鎮守府提督の神崎であった。


「何とか間に合わせたかったですが…。」

「こればかりはしょうがない。後は到着までに間に合うことを祈るしかない。」


溜息を吐くティラスに神崎は言う。
そしてティラスはカグヤに乗り込む香取や鹿島に引率される神風型や睦月型、そして幼い少女…海防艦や特設監視艇の艦娘やPT小鬼達を見ると神崎に非難の視線を向ける。


「ファーダ提督…何故彼女たちに斯様な役目を。」

「あの子達が望んだことだ。船、希望を送り届ける…今度こそ守り抜くと。」


果たす役目がないことに越したことはないがなと神崎は口を閉じた。
そして宇宙空母カグヤは全ての作業を終えると双葉基地を飛び立った。




北海。樹木と融合した艦、画面に映るその姿を見てネルソンは確信する。
あれは最早船などと生易しい存在ではない。他を祟る存在、それも深海棲艦すらも上回る。
ならばそれは一つしか無いだろう。


神。


「ドイツめ…どれだけ…どれだけ他の存在を愚弄するかッ…!!」


ネルソンは怒りから握った己の拳をシートの肘掛けに叩きつける。
あの様な存在が出現する理由は現状ドイツ以外に考えられない。
ドイツが何処か…恐らくはパリのケルヌンノスの様にドイツ国内で眠っていた古いゲルマン…北欧系の神でも起こしたのだろう。
それも祟り神として…そしてその贄は恐らくは…。


「全艦に通達!通常の駆逐艦以下のシールドは意味を成さぬ!
故に艦娘を除く駆逐艦以下の艦艇は即時後方に下がり空母の直掩に当たれ!
!ビスマルクらと合流後、艦娘及び戦艦で艦隊を再編成、以後追撃を開始する!!」




越後に彼女の最期、菊水作戦に際し鉄の雨を抜け沖縄へたどり着いた後の記憶はない…。
艦長さんと人として会う約束をし力尽きたというのに気がついた時には軍艦(いくさぶね)として海の上、それも沖縄ではなく遠く欧州はバルトの海にあった。
そして鎖を何十にも巻かれドイツ軍の手でキールの港へと留め置かれていた。
同盟国に関わらずと思うがそれ以上に驚いたことがある。
ドイツのキールの軍港には自分と同等かそれ以上の艨艟達がひしめき合う様に自分と同様に封じられていたのだ。

播磨、ニコライ・ヴァツーチン、フォン・モルトケ…。
日本、ソ連、ドイツ…艦の生まれ様々なれど…どれも聞いたことのない名前だった。


「え?播磨さんの世界では大東亜戦争がなくて独逸と北米で戦争!?」

「ヴァツーチンさんの世界ではソ連でなくて露西亜が対馬占領を狙って!?露西亜帝国ですか?え、ソ連が崩壊して露西亜連邦になった…?えええ…。」


まあ、良く分からないが違う歴史を辿った世界、大艦巨砲主義が生き残り戦後数十年経った世界とか大西洋北米沖で日独が巨大戦艦で艦隊決戦とか、
それこそ乗員たちが息子らに買ったとか話していた空想科学雑誌にでも連載されてそうな話の世界から来たというのは分かった。
加え港で働くドイツの者らの会話から自分の知る戦艦らが…沖縄で船魂と共に沈んだ大和もおり日本がドイツと戦争していることも。
ただ皇祖神の名が飛び交ったりカンムスなる言葉は謎であったが。

647:635:2023/12/10(日) 09:24:06 HOST:119-171-251-211.rev.home.ne.jp



夜明け前、艦魂の越後には幾人もの人間が乗り込んで行く。
その中には沖縄で己と共に果てた筈の艦長さんの姿もあった。
その姿は違えどその魂の色を間違える筈もなく、越後は瞳に涙を浮かべる。

そして越後は再び艦長さんを艦長に迎え、日本人らを自らに乗せドイツ人の手で己より巨大な戦艦播磨や輸送船と共に薄明に紛れキールの港を出港、
英国と同盟関係(!?)にある帝国海軍(この時、越後は自衛隊という言葉を知らない)の拠点の存在するという英国はポーツマスを目指した。
警戒しながら越後は恐ろしい程に静かすぎるデンマーク領海を通り過ぎカテガット海峡、スカゲラック海峡を超えた。

そしてユトランド半島沖、ドイツから脱走に成功した日本人など避難民を戦艦やら輸送船やらに押し込んで脱出した彼らがソレに遭遇したのは不運としか言いようがなかった。
最初に確認したのは艦隊の目として警戒しつつ上空を飛んでる航空機…空軍基地から強奪した桜花搭載した輸送機だった。
機内は戦傷や虐待や拷問の傷の手当もそこそこに着の身着のまま脱走した血塗れの兵たちで溢れている。
そんな中、輸送機の窓から海を見下ろしていた者の一人が気づく。
水平線の先に何かから逃げるようにこちらに来る複数の艦が見えた。
その直後に凄まじい光の奔流が生まれる。
それは海上の戦艦越後からも確認出来た。


「キャアッ!?」


越後は悲鳴を上げる。その光は艦を一撃で消し去った。
そしてもう一度、残った艦に対し放たれた光の奔流が艦隊を襲う。
警戒の為にADM級と入れ替わっていた越後の船体を掠めた。
その余波だけで鋼鉄で構成される筈の船体が沸き立つ。


「ッああああああああああああ!?」


膨大な熱量で沸き立つ船体とその余波の衝撃波で軋む竜骨、船魂の越後を想像したことのない痛みが襲う。
自分が知る想いを乗せ必中を期した鋼鉄の塊の一撃ではない、情念の込められた炸裂する炸薬の熱ではない。
ただただあらゆる存在を消去しようとする虚無と恨み妬みのみが込められていた。

そして発生した衝撃波と波で巨大な筈の越後の船体が木の葉の様に右へ左へと揺さぶられ、乗っている者の悲鳴や泣き声が船内に響く。
数分にも満たぬ間であったが乗っている者と越後からすれば永劫にも思える時間が過ぎた。


「ハァ…ハァ……。」


光が収まり、越後は未だに残る痛みから体中から脂汗を流し両手と膝をついていた。


「い、一体何が…。」


痛みを堪え越後は己が鋼鉄の鐘楼の上で何とか立ち上がり、目の前の存在を認めると痛みも忘れ呆然とする。


「ナニ…アレ…。」


そこにあったのは艦だ。己と同様の軍艦(いくさぶね)、だがその姿が異様過ぎた。
己どころか戦艦播磨すら超える巨体に不気味な光を纏い船体の至る所から樹木を生やす、そんな艦船なぞ越後は知らぬ。
そしてその艦から聞こえるのは怨嗟と人間の呻く声…生きようと足掻く人間の声はしなかった。
呆然とする越後を他所に艦橋ではいち早く立ち直った艦長さんが叫び指示を出す。

648:635:2023/12/10(日) 09:24:38 HOST:119-171-251-211.rev.home.ne.jp


「邦人を乗せた輸送船と播磨は退避しポーツマスへ急げ!日本にこの事態を知らせるんだ。あそこの戦力ならばどうにかなるやもしれん…。」


その言葉に乗員は本艦は?と問う。


「時間稼ぎにしかならないかもしれないが本艦とADM級ニ隻はこの場であの戦艦の迎撃に当たる…すまない…。」


艦長さんは続いて出そうになった無駄死になるやもという言葉を飲み込んだがそれを察しながらも乗員のドイツ人達は笑った。
民間人を守って人間として死ねるなら上等だと。





『パリ市からの退避命令が発令!直ちにパリより退避して下さい!』


無人の街に街頭の拡声器から声が響きわたる。
フランス・パリ、大穴より噴出し降り注ぐ呪いの灰は俄にその勢い増していた。
シテ島ノートルダム寺院の存在した場所に出来た大穴から幾つもの黒い手が登ってくる。

北の海のイルミンスール…というよりその中の存在を感じ彼、ケルヌンノスは目覚めた。
彼が眠るパリより東で大勢の人の子らを無惨に殺し回り呪具に仕立て上げた存在に近い匂い…。
彼は激怒した、同じ神として彼の存在そして同じモノは完全に滅しなければならぬと。
人を愛し殺戮の神を封じた存在として殺された彼らの声を聞いた祟り神として…それは義務だった。


呪いの灰の降りしきる中、大穴を登る黒い手とパリの街にその姿を現す白い巨体。
その光景を見ながら古代ケルトの装いを纏うリシュリューは己の唇を噛むと英仏海峡に待機させていたひたち型と接続させた己の艤装を起動させる。
ケルヌンノスを止めなければならない。それが彼との約束だからだ。
祟り神とならば多くに迷惑を掛ける、故に祟り神になった己を止めて欲しい。
己の力がどこまで通じるか定かではないがフランスに生まれた者としてフランスを愛した者の願いを聞き届ける…それはリシュリューにとっての責務であった。

649:635:2023/12/10(日) 09:25:26 HOST:119-171-251-211.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ

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最終更新:2023年12月28日 19:11