360 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/03(日) 22:26:01 ID:softbank126036058190.bbtec.net [74/215]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ラッキー・ホワイト」2



  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 ブリーフィングルーム


「というわけで、彼女が本日付でオーカ・ニエーバに配属になったエマ・ホワイト少尉です。拍手ー」
「エマ・ホワイトです、よろしくお願いいたします」

 カーチャのざっくばらんな紹介と対照的に、エマは綺麗なカーテシーまでしてみせた。
 堂に入っている、というか、付け焼刃などではない所作だ。
 502JFWおよびその麾下のウィッチ、ウォーザード達を前にしておくすることのないそれは、彼女もまた歴戦の勇士であることを示していた。
そうでなければ、少なからず剣呑な空気を纏う軍人たちを前にしてお道化てみせるなどできるはずもない。

(まあ、そう簡単に尻尾は出さないわよね)

 内心そのように思うが、カーチャは表情一つ変えない。
 彼女の根本的なところを直してやるにはアプローチしていくしかないが、かといってそう簡単にうまくはいかないのは重々承知。
まあ、その優秀さこそが解決を遠ざけているのだと分かっているだけ有情というものか。

「来る大反攻作戦に向けた増員です。
 あと1名の増員が予定されていますが、それまではホワイト少尉を交え、臨時編成で回すことになります」

 カーチャが言う通り、ウォーザード5名という体制は些か正規編成から外れたものだ。
 勿論、単独での任務がないわけではないし、ローテーションを回す観点から言えば一人増えるというのは大きな余裕を生むことにつながる。
単純だが、効率的な手段なのがこの増員というものだ。数とは単純に力となりうるのだから。

「羨ましいことだな……ウィッチも早く増やしてほしい」
「孝美中尉はまだ療養中です、急ぎは諦めてください」
「わかっているさ、カーチャ。期待の新人が送られてきただけでも、儲けものだ。
 だが、ベテランも欲しい。501は解散になっているんだろう?なら美緒やフラウが欲しい」
「それは私でも無理だと分かるぞ。
 それに航空ウィッチも航空ウォーザードも育成が大変だからな」
「陸戦も同じでしょう、ユーティライネン中尉?」

 502JFWを構成する3つの部隊長同士の会話は、しかし半分嘘が混じっていた。
 孝美は確かに療養中、しかし、リハビリも兼ねて転科訓練をしており、ウィッチとして着任することはないのだ。
とはいえ、それは伏せられていた。内部不和など引き起こされてはたまらないので、既成事実を以て収束させると、そういうことだ。

(尤も、それは雁淵軍曹を相棒(ウィングマン)として管野が認めたら、という条件付きだがな)

 内心、ラルはつぶやく。
 孝美の着任を切望していた管野が早々に納得するかというのは、極めてデリケートな問題だ。
 管野を納得させることができる何かこそ、着任するまでに見つけ出し、提示しなくてはならない問題となる。
さらに、それに管野が納得し、理解を示し、共に戦うという願望をどう昇華するか。考えるとラルは胃のあたりが痛む。
今のところのひかりと管野の関係は決して悪いものではない---だが、それは良い方向に進んでいるというわけでもない。
あの管野がひかりに満足しているのは、偏にひかりが孝美が来るまでの代わりだという認識故だ。
そうでないと伝えていないのは、その期待を裏切る羽目になり、部隊内の不和につながることを恐れてのことである。
 しかして、フレイアー作戦時には全員の力が必須だ。全員の協力と和も必要なのは当たり前となる。
 果たして間に合うのか---その疑念は、ラルの胸中に残り続けていた。

361 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/03(日) 22:27:03 ID:softbank126036058190.bbtec.net [75/215]

  • オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 格納庫


 エマの着任から数日後、502JFWに大きめの仕事が入った。
 いつも通りと言えばそうなのだが、ペトロザボーツク基地から戻ってくる輸送艦隊の迎えに出るという任務だった。
 より正確に言えば、ペテルブルクに到達するまでの予定ルートにネウロイがいないかの調査と、浸透してきているネウロイの排除という仕事だ。
 殊更に、地雷型のネウロイが増えてきてハラスメント攻撃を受けている最中にあって、輸送艦隊は常にそれへの警戒を強いられるようになっていた。
地雷というのは見えないからこそ厄介だ。あるかもしれない、と思わせることで心理的な圧力を加えてくるのである。
その結果として、地雷掃討と哨戒などが行える分のルートしか安全確保はできなくなる。
そうなれば、ネウロイ側はその少なくなったルートで網を張って待つだけでよい、ということになるのである。
待ち伏せされて攻撃を受ければ、不利になるのは人類側だ。
 そして、その安全とされるルートも地雷などが設置されるリスクはあり、これを直前に調査しておくことで安全確保というのが重要になった。

「対地対空のレーダーとにらめっこしながら地雷処理か……わかっちゃいるが、つまんねぇな」

 俺は空戦ウィッチなんだと愚痴りつつ、地雷処理兵装であるエーテルニードルガンを背負い、管野は憂鬱そうにため息をつく。
 普段ならばネウロイに致命打を与えうるM72Bを携行する彼女は、しかし任務の都合上それの代わりに戦闘には役立たないものを背負う羽目になっていた。

 地面に埋まるそれを処理するには様々な手段がある。
 ウィッチたちがそれ手っ取り早く処理するのが、地中深くまで貫通する地中貫通型のニードルガンだ。
航空ウィッチならば安全な高度から貫通力に特化した弾丸を打ち下ろして起爆ないし破壊することができる。
陸戦ウィッチなどでも不可能ではないのだが、空を飛べるかどうかは極めて大きな差だ。
地上に縛り付けられている場合では、値の張るデコイか誘導兵器を用いる必要がある。
あるいはまとまっているならば適当に爆弾でも放り投げて地面ごと耕して処理することもできるが、後始末も面倒になる。
結果として、自衛ができて、効率よく処理ができる航空ウィッチ及びウォーザードが動員されるというわけである。
 無論、輸送艦や輸送艦のエスコートにつくウィッチたちもそういった装備はあるのだが、見つけておしまいと行かないのが今回の任務である。

「やっぱり不満なの、直ちゃん?」
「そりゃそうだろ、ウィッチはネウロイを倒してこそだぜ?」

 同じく地雷処理用エーテルニードルガンを背負うクルピンスキーは、しかし、無理もないよねと同意する。

「地面に気を配っていたら、空への警戒がおろそかになる。
 航空戦ではこれは重荷にしかならないしね」
「実弾というか、釘を打ち出しているんだしな……」

 そう、地中を貫通するために釘というか杭を打ちだすのがこのニードルガンだ。
 射出と着弾、そして地中への進入を滞りなく行うため、しっかりとした金属の杭が用いられる。
エーテルエンチャントで軽量化されているといっても、その重量は射出装置と合わせれば決して馬鹿にならない。
クルピンスキーが指摘したように、それは航空戦においては当然デッドウェイトだ。たかが数キロ、されど数キロ。
その重さの有無及びバランスへの影響が、航空戦においては時に致命的になりかねないのである。

「まったく……放り捨てればサーシャにお説教だしよぉ」
「これも国家が出し合ったお金で調達されているからね」

362 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2023/12/03(日) 22:27:10 ID:182-165-56-211f1.osk3.eonet.ne.jp [8/17]
355
IFF偽装が確認されて怪しい戦闘記録を洗い直してたでしょうからな>大統領誤射事件
ちなみに件の大統領救出作戦、ちゃんと途中から友軍の機数が1機増えてるんですよね

363 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/03(日) 22:27:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [76/215]

 そんな会話を続ける管野とクルピンスキーをしり目に、黙々と準備を重ねているのはひかりだ。
 地雷処理装備を背負うため、MP5は留守番となり、M2とライトニング・コンテンダーのみが武装となる。
後天的な訓練で両利きになったひかりとしては、少しでも手数が欲しいのであるが、今回は仕方がない。
 汎用性の高い戦力であり、コストも安いウィッチに仕事が集中するのも仕方がないと知っている身としては、受け入れるしかないことだ。

「ひかりちゃん、どーしたのさ、黙ってばかりで」

 そんなひかりに声をかけたのはクルピンスキーだ。

「いえ、任務前なので、集中しているだけです」
「お堅いねぇ……もうちょっと気楽でもいいよ?」
「やめとけよ、クルピンスキー」

 だが、それに横やりを入れたのは管野だった。
 おや、と驚くクルピンスキーを無視し、言葉は紡がれた。

「そいつにはそいつの考えがあるんだろ。
 不断のお高く留まっているような態度は気に食わねぇが、自分の身を削っても戦う気概ってのはあるみたいだしよ。
 なら、邪魔することはねぇだろ」
「意外だねぇ、直ちゃん」
「そうかよ?」
「評価していただけている、ということでしたら、ありがたいことです」

 ひかりとしては、そういう認識だった。
 管野が姉の孝美と共に戦うことを望んでいたのは知っていたが、まさかそこまでの評価とは。

「勘違いすんなよ、てめぇは孝美の代わりにはなれねぇ」
「さようでしたか。
 私は雁淵中尉とは別人ですし、同じことができるとは思っていませんよ」
「そういうとこだよ……」

 ともかく、と管野は声を張り上げる。

「任務だ任務!ネウロイ共を叩き落しに行くぞ!」
「そういえば、今日はオーカ・ニエーバの新しい子猫ちゃんと一緒だっけ」
「お前なぁ……」

 区切りよく任務に行こうとしたところで、しかし、クルピンスキーに腰を折られてしまう。

「エマちゃん、エマ・ホワイト。どういう子かは資料では読んだけどさ、実際に飛ばないと分からないことも多いから」
「そうですね」
「お近づきになれたらいいなぁって思うんだよ、僕はさ」
「サーシャの目が届かないところでやるつもりかよ」

 その問いに、当然だよ、とクルピンスキーは笑う。

「かわいい子と仲良くするのはいい保養になる、まじめすぎると息がつまるから、こういう楽しみが欲しいのさ。
 そうでないと、分かり合えないし、命を預けることだってできない。助け合わなくちゃね?
 ほら、行こう行こう!」

 そんなクルピンスキーに引っ張られる形で、3人一個小隊のウィッチ達は、2人一個小隊のウォーザード達と共に、その日の任務に向かうことになったのだった。

364 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/03(日) 22:28:36 ID:softbank126036058190.bbtec.net [77/215]
以上、wiki転載はご自由に。
出撃するところまでで時間をかけすぎてしまったような…
まあ、なんとかなりますかねー
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最終更新:2024年01月13日 16:03