689 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/07(木) 23:03:51 ID:softbank126036058190.bbtec.net [162/215]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ラッキー・ホワイト」3



  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 周辺空域


 年末に向け、寒さをますます増していくオラーシャの空に爆発音が轟く。
 直径数十メートル、高さも数十メートル近い爆発。
 それが、敷設されていた地雷型ネウロイがエーテルニードルガンにより処理された末路であった。

「汚ねぇ花火だ」

 空中に巻き上がる土塊と雪とネウロイの体組織とその他もろもろの混じったそれを見て、管野は吐き捨てた。
 それ以上の高度から撃ち落されたエーテルを纏ったニードルは間違いなく仕事をしたのであるが、その結果がこの大爆発だ。
数が取りえとなる通常兵力はもちろんのこと、輸送艦などにもダメージを与えることを想定しているので、平気でこれくらいは爆発が起こるのだ。

 そして、この地雷のさらに厄介な点はもうひとつある。
 ペテルブルク基地と各地に点在する哨戒基地、あるいは最前線たるペトロザボーツク基地の往還にも使われるようなルートは絞られている。
哨戒や迎撃でネウロイの浸透などを避けられる貴重なルートの一つに、文字通りの意味で大穴があけられてしまう、ということだ。
 ではその穴はどういうことを意味するのか?

「空いた穴の座標と大きさは?」
「既にAWACSに送信済みです」
「了解だよ」

 そう、こうしてルートに大穴が開くと、それだけ移動が制限されてしまう。
 ホバークラフトで航行する陸上艦艇ならば難なく超えられるのだが、時には輸送車両なども使われることもある。
それに、通常戦力を交えての進軍などを行うにあたって、輸送路の破壊が行われるのは致命的とさえ言える。
だからこそ、処理した場所と空いた穴の大きさなどは記録され、報告される。そして定期的に工兵部隊による埋め立てが行われるのだ。

(そのたびごとに護衛も配置しなくてはならない……どうやってもこちらの消耗になるのは厄介ですね)

 ネウロイのハラスメント攻撃は、前線が押し上がったことでより活発になっている。
 それだけ白海にある巣に近づいてくることを嫌い、それを妨害したいのだろう。それにしては人類側をよく理解しているやり口だ。

(恐らく夜間…人類の戦力の活動が乏しい間に敷設しているのでしょうが……)

 そうなると防ぐことは難しい。
 夜間戦闘装備がないわけではないのだが、それを扱える戦力の絶対数という問題があるし、それだけ装備を増やす必要がある。
つまり人員を増やすと物資の消費量が増えるし、部隊規模が大きくなってしまって、その分だけ苦労が増える。
 また、昼間でさえも監視しきれているとは言えないこのオラーシャの大地を、夜間で警戒・監視して防ぐのも一苦労だ。
 総じて、ネウロイのハラスメント攻撃は成功していると言っていいだろう。
 こちらはネウロイの支配地域に踏み込んでいく立場であるために、やり返すというのもできないのが厄介なところ。

(必要経費と割り切るには、些か以上に面倒ですね)

 だからこそ、管野もあんなことを言ったのだろうとひかりは理解した。
 彼女の性格を鑑みれば、これほど神経を逆なでされることもないだろう。

『こちらオーカ・ニエーバ……了解、対応します。
 AWACSオーカ・ニエーバより各員に通達、監視所からネウロイの発見の報告がありました』

 その時、AWACSを務める鏡子から通信が入った。
 HUDで共有されるのは、監視所のエーテルレーダーの捉えた大型の反応だった。

690 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/07(木) 23:04:25 ID:softbank126036058190.bbtec.net [163/215]

『どうやら迂回をしてペトロザボーツク基地の哨戒網を抜けてきたと思われます。
 このままでは輸送艦隊と接触すると思われるので、こちらで迎撃してほしいとのことです』
「おいおい、対地装備の俺たちにやらせる仕事か?」
『それらはこちらで預かります。それに、装備は多少は劣りますがウォーザードもいますので問題ないと判断されました』

 決定事項だ。鏡子の告げた内容は既に断言の形をとっていた。
 まあ、分からなくもない話だ、とひかりは納得した。
 輸送艦隊の方は地雷やネウロイの襲撃に備えなければならず、後方に下がる人員もいることを考えれば、守りを固めるのは必然。
輸送艦は、いや、輸送部隊は届ければおしまいという簡単な仕事ではない。帰りにも荷物を積むし、帰らなければならないのだから慎重に扱いもする。
まして、ネウロイのハラスメント攻撃が激化している昨今だ、なおのこと護衛は動かせない。
仕事ができたからとおいそれと戦力を分割していけば、その果てには対処能力を分断されて無防備な輸送艦隊が生まれるのだから。
 その点ならば、ルートの哨戒と地雷処理を任せられた部隊の方がフットワークも軽く、任務変更にも対応しやすいということだろう。

(ただ……)

 気になるのは、そのネウロイだ。
 最前線のペトロザボーツク基地周辺に点在する監視所や監視網を抜けてきたそれが、不意に捕捉された。
 エーテルレーダーに引っかかったにしては、どことなく都合が良すぎるような気がするのだ。
ひかりがティル・ナ・ノーグで学んだレーダーについての知識には、レーダーを感知するシステムというのも存在していた。
それを利用することでレーダーの探知範囲を認識し、うまく避けることができるというものであった。
人類同士で、レーダーを利用する者同士で争った際に誕生して、発達したとのこと。
 勿論、迎撃することができるならば、それに越したことはないのだが、ここで発見されたのは何となく作意を感じる。
 例えば、そう---

(ネウロイがあえて発見されることで私たちをつり出したかった、とか)

 戦術も戦略も理解しているような行動を重ねているのがネウロイだ。
 そうでなければ、地雷やこちらの勢力圏内に浸透する戦力を送り出すなどのハラスメント攻撃をすることはないだろう。
 特に跳躍地雷はウィッチやウォーザードといった特定の標的を狙っているかのような特性を持っていた。
人類側の戦力を効率的に相手にすることを前提としたネウロイが現れてもおかしくはない。

「ひかりちゃん、どうしたんだい?」
「いえ、少し考え事です」

 そういいつつも、降下してきた鏡子に対してエーテルニードルガンを預ける。
 これで装備重量は軽くなったので、空戦に向いている状態になった。尤も、MP5がないので火力などは劣っているのも事実だが。
 同じように装備を預け、予備のマガジンを受け取ったクルピンスキーは考えている内容を言い当てて見せた。

「ネウロイのことかな?」
「……そうですね。このタイミング、この状況下でとなると、作意を感じなくもないのです」
「考えすぎじゃないかな?」

 そういいつつもクルピンスキーはひかりの意見を否定はしなかった。
 彼女も理解していたのだ。そのまま哨戒網を回避し続けていれば、ペテルブルクまでかなり近づくことだって可能であろうに。
 勿論ペテルブルク周辺および基地には防衛システムが敷設されているのも事実だ。突破するのは早々にできることではない。
 疑い出せば、際限がなくなってしまうだろう。

「ともかく、そいつをぶっ倒せばいいだけのことだろ」
「……そうですね」

 管野の提案は短絡的だが、非常に効果的だ。
 そして、ひかりを含む502の飛行編隊は、標的のネウロイを追跡し、進路を変更した。

691 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/07(木) 23:05:32 ID:softbank126036058190.bbtec.net [164/215]


『目標、動きを止めたわ。散々振り回したけど、振り切れないとあきらめたのかしら?』

 それから30分以上追跡を行って、ようやくひかり達はネウロイが動きを止めたことを確認した。
 AWACSの光学視認およびレーダーでの捕捉は早かったのだが、そこからネウロイが幾度かの進路変更を行ったために、交戦距離に近づくのに苦労したのだ。

「これでも作意がないって言えますか、クルピンスキー中尉?」
「これはひかりちゃんの予想が当たっちゃったかなぁ……」
『どういうことですか?』

 会話に入ってきたのはエマだ。
 AWACSではなく、武装を多めに搭載したブライト・リッターの彼女は、ネウロイの襲撃に備えた戦力であった。
今回の場合ではウィッチたちと協力して対処することになっているのだが、今一彼女は理解しきれていなかった。

「簡単です……このネウロイは、私たちをわざとおびき寄せ、振り回して消耗させて、自分のテリトリーに誘い込んだのですよ。
 ここまでの作戦行動と、追跡に費やした分だけ、ストライカーユニットの燃料も私たちの魔力も消耗していますしね」
『ひかりちゃんの言うとおりね、対地レーダーに反応多数。ちょっと数えたくないくらいの地雷型の反応があるわ』
「察するに跳躍地雷型でしょうね。あの球体のようなネウロイがどのような相手かはともかくとして、低空での戦闘は危険でしょう」
『それだけのことをしてくる強敵、ということですね』

 エマもさすがに理解できた。
 このネウロイは戦いを理解した上で行動しているのだと。
 自身がウィッチやウォーザードと激突することを前提にしており、有利な状況と場所を整えてきた。

「恐らく……」

 ネウロイの間でも情報共有が行われている可能性というのも否定しきれない。
 それが当たっているならば、ここに引きずり込まれたのは相手の思惑の内ということ。
 そして、球体に近いボディのネウロイが、威嚇するかのように棘のようなものを展開した。

『各機警戒、来るわよ!』

 鏡子の警告の言葉とともに、先端が開かれた。

692 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/07(木) 23:06:43 ID:softbank126036058190.bbtec.net [165/215]
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いよいよドンパチ賑やかになりますぞ。
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最終更新:2024年01月13日 16:20