830 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/09(土) 20:05:06 ID:softbank126036058190.bbtec.net [176/215]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ラッキー・ホワイト」4



  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 周辺空域



 戦闘の開幕を告げたのは、ネウロイの方であった。
 球形のそれが半分に割れたと思えば、その断面から次々とスウォームユニットが飛び出してきたのだ。

『散開(ブレイク)!散開(ブレイク)!』

 AWACSの鏡子に指示されるまでもなく、ウィッチ3人とウォーザードは即座に対応として回避運動をとった。
固まって動かずにいるといい的になるので、飛び出してきたスウォームユニットに射撃を加えつつ、各自回避運動に集中したのだ。
とにかく動かないことにはスウォームユニットを捌ききれない。

「なめんなよ!」

 そして、対処法の一つが反撃を加えることにある。
 管野がしているように、飛び出してくるスウォームユニットに攻撃をすれば、相手は回避をするなどして攻撃を中断せざるを得ない。
 だが、M2から飛び出した12.7x99mm NATO弾は予想外の対処をされた。
 くるりと、スウォームユニットが背面をこちらに向けた。直後に弾丸が着弾したのだが、完全に弾かれてしまったのだ。

「なんだと……!?」

 驚きつつも、管野は動きを止めない。
 連続して射撃を浴びせていくが、悉くが裏面を見せるスウォームユニットに弾かれていく。
 この手のスウォームユニットは耐久力がないのがこれまでの特徴だったのだ。それこそ、手持ちの火器で撃ち落とすことも不可能ではないほどに。
まあ、その分だけ小さくすばしっこいという特徴があったのであるが、そこは弾丸の数という暴力で解決できていた筈なのだ。
 その対処を行ったのだが、それが通用しなかった。

(対策済みか……!)

 射撃を行う面と装甲が分厚い面、両方が存在し、それぞれが攻撃と防御を担当する。
 スウォームユニットへの対処法が確立した中にあって、それは厄介そのものだ。

「クルピンスキー!」
「わかっているよ!」

 そして、管野の呼びかけにクルピンスキーも返事する。
 相手がこれまでとは違うスウォームユニットを使っているだけでなく、その動きもだいぶ違うものがある。
即ち、こちらを追従して上方を陣取り、低空へ追いやろうとする動きがみられるのだ。
 だが、迂闊に低空に入るわけにはいかない。地面には地雷型のネウロイがおり、下手に高度を下げればそれによって致命傷を負いかねないのだ。
 それがわかっているから、クルピンスキーは自己に迫るスウォームユニットではなく管野を狙ったそれを射撃して牽制をして、動きをカバーする。

「やっぱり、装甲が厚いのは一部だけだね」

 クルピンスキーが看破したように、その射撃は一部のスウォームユニットを打ち落とした。
 十字砲火に晒されれば、どちらかに装甲化されていない面を向けざるを得ず、撃墜が可能だったのだ。

「本体からも来ます!」

 そして、ネウロイの攻撃は何もスウォームユニットだけではない。
 球体のボディの表面、生えてきた棘の先端から、レーザーが多方向へと照射されていくのだ。
飛び回るスウォームユニットの攻撃と合わせれば、立体的な包囲網を形成してしまえる。

「野郎……!」
『こちらでスウォームユニットを打ち落とします』

 だが、回避運動を強いられて一見押されているウィッチ側もされるがままではない。
 回避運動を重ねながらも、エマの操るブライト・リッターのホーミングレーザーキャノンはロックオンを完了させていたのだ。

『発射!』

 ウィッチたちの回避運動のパターンが分かれば、巻き込むことなく射撃ができる。
 まして、航空戦において圧倒的優位を担保する誘導兵器だ、逃す間もなくいくつものスウォームユニットを叩き落した。
 続けざまにマギリング・ガトリングガンによる弾幕が展開され、レーザーを回避したスウォームユニットを絡めとって撃墜する。

『もらいました!』

 そして、AWACSの鏡子のマギリング・マグナムの射撃が連続で親玉のネウロイを襲う。
 高高度からのそれを、ネウロイはすいすいと回避しつつも、反撃のレーザーをさらにばらまいていく。
 だが、狙いが多数になっていればウィッチ達を襲う砲火の数は必然的に減少し、自由な行動を実現することになる。

831 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/09(土) 20:06:05 ID:softbank126036058190.bbtec.net [177/215]

 その状況を変えるべく、ネウロイはさらにスウォームユニットを追加で吐き出すことで応じた。
 さらに、その半分になった球形の状態から回転しながらも加速し、突撃を開始したのだ。
 おまけにレーザーをばらまきながらというのだから、ウィッチたちは回避を重ねるしかない。

「くそ、相手は固いぞ!」
『外皮で全部止められているわね……!』
『こちらの攻撃で、突き破りましょう!』

 だが、そんなウォーザード達の狙いはネウロイとて理解している。
 だからこそ、いくつものスウォームユニットを差し向け、さらには突撃をすることで行動を妨害してくるのだ。
 そのくせ、攻撃に入ろうとすると機敏に反応して尋常じゃない速度で回避するのだから、たまったものではない。
相変わらず低高度に追い込もうとする動きも健在であり、総じて自由に飛べるかと言えば、そうとも言えなかった。
 さらに厄介なのは、ウォーザード達の攻撃を脅威と取ったネウロイが、さらなる分裂を行ったことだ。

「さらに4つに分裂だと……!?」
「攻撃の手数が増えてるよ!」

 分裂してくるタイプは珍しくはない。分裂要撃型という存在もあったので、今更な話だ。
 だが、スウォームユニットよりも大きく動きが大雑把とはいえ、それだけの巨体が攻撃しながら接近してくるのは恐怖だ。
まして射撃をしながらも、ぶつかってこちらを傷つけようとする意図が見えていれば、なおのこと。
手数を増やし、さらにスウォームユニットを増やし、飽和攻撃を仕掛け、包囲を仕掛けてくる。
トラップだらけのテリトリーだけに依存しない、厄介な戦闘能力と言えた。

『どれが……!くっ……FOX2!』

 歯噛みしつつも鏡子は攻撃を続行する。
 だが、放たれた空対空ミサイルの嵐はスウォームユニットに即応され、空中で爆散させられた。
 そうなると射撃兵器となるのだが、非誘導兵器での上空からの援護は狙いを定める分だけ密度を落としたものとなる。
 コアがどれにあるのか、はたまた全部にあるのか、全く不明。
 だからこそ、それぞれに攻撃を加えて確かめなければならないのだが、相手もやすやすと攻撃を喰らってはくれない。

『どうします、援軍を?』
『今からでは時間が……』

 そう話していた時、一発の鋭い銃声が轟いた。
 その場にいた誰もが、その音源を思わず見る。

「ふう……」

 そこには、ひかりの姿があった。
 あれだけ飛び回り、攻撃を続けていた4分割して行動していた本体の一部に取り付き、射撃をぶち込んでいたのだ。
手にしているのは右手にM2、そして左手には---

「ライトニング・コンテンダー……?」

 模擬戦をしたことのある管野はそれを知っている。
 ティル・ナ・ノーグで研修を受けた際に、選別として受け取り、以後装備としてひかりが使っているものだ。

(いや、待てよ……)

 至近距離から放たれ、四分割された一部とはいえ少なくはない打撃を与えたそれは、有効射程は短い。
 弾丸こそライフルと同じとはいえ、拳銃よりちょっと長い程度の射程しかなく、おまけに反動も大きいと知っている。
 だからこそ、それを高速で飛び回っていたネウロイに至近距離で叩きこめたことに、驚きを隠せなかった。
 しかし、戦場で発生した停滞は一瞬の事。ひかりの一撃を受けた本体はダメージを負いながらも逃げ出し、また他の本体も行動を続行。
それに合わせるようにしてスウォームユニットも行動を再開したため、誰もが驚く間もなかった。

「おい、どういうことだよ!」

 回線をつなぎ、ひかりに怒鳴るようにして問う。
 自分達でも回避運動をしながらネウロイに接近するのは一苦労と考えていたのに、あっさりとひかりは近づいて射撃を浴びせた。
その異常性に気が付けないほど管野は間抜けでもなかった。口に出してはいないが、クルピンスキーもエマも驚いている。

「近づいて撃っただけですよ」

832 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/09(土) 20:06:53 ID:softbank126036058190.bbtec.net [178/215]


 返ってきたのはそんな返答。
 そういうことじゃない、と言おうとして、管野らはその動きを見た。

(おいおい……)

 ひかりは飛ぶ。スウォームユニットの綿密な攻撃の隙間を縫い、本体からの射撃を回避し、ぎりぎり生じる隙間を突く。
確かにスウォームユニットの射線や本体の射撃の包囲網には隙間が存在するが、体一つ分あるかどうか、というところだ。
回避するというより、飛び込むようにして躱している。矛盾しているが、現にそれで回避して接近している。自分達とはまるで違う。

「直ちゃん、これって……」
「ああ、くそ……そういうことか」

 ひかりの飛び方は、ウィッチやウォーザードの飛び方ではない。機動兵器の飛び方だ。
 模擬戦でぶつかった際に教えられた、彼女がティル・ナ・ノーグで学んだという動き。
 その飛び方は自分達とはまるで違い、だからこそ、対応できたというのか?
 だが、それを考えている時間はない。

「クルピンスキー!雁淵を援護しろ!」
「なんだって?」
「アイツなら近づいて攻撃できる!至近距離からあの拳銃をぶち込めば倒せるかもしれねぇ!」
「……了解!」

 とはいえ、自衛が優先であるのには変わりはない。
 このまま攻めることなく防御に徹してもじり貧ではあるが、相手の攻撃が激しくて自分では難しいのもまた事実。

(ひかりちゃんがどうしてできるかはさておき、見せてもらおうかな)

 幸いにして、4分割されたネウロイの内半分はエマの方に集中している。あとは膨大な数のスウォームユニットだけだ。
 だとするならば、彼女の援護をして、残りの本体部分を一つでも落とせば、ぐっと負担は減るはずだ。

「というわけだ、AWACS!そっちはそっちで頼む!」
『え、ちょっと!もう……』
『AWACSオーカ・ニエーバ、これは……』
『しょうがないわ、そういうものと割り切るしかない。
 こちらでも状況の打破を試みましょう。少しでも敵のスウォームユニットを落として、分裂した本体を攻撃して!』
『りょ、了解……こんなことになるなんて……』

 ともあれ、あれだけの攻撃に対処できるのならば、彼女が突破口になるかもしれないのはわかることだ。
 エマもまた、自分のブライト・リッターの装備をフル活用して、この状況を打破すべく、行動を開始した。

833 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/09(土) 20:07:48 ID:softbank126036058190.bbtec.net [179/215]

以上、wiki転載はご自由に。
オールレンジ攻撃とか当然想定しているんだよなぁ…
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最終更新:2024年01月13日 16:30