241 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/14(木) 20:47:06 ID:softbank126036058190.bbtec.net [31/145]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ラッキー・ホワイト」5


  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 周辺空域



 ひかりは集中の中にあった。
 飛ぶ、というよりも舞うようにして攻撃をかわし、飛び込むようにして隙間を縫う。
 オールレンジ攻撃に対する一つの解答たる前方への脱出。彼我の距離を詰め、とにかくコントロールしている母機を狙う。
その母機が4つに分裂していることをさし置いたとしても、それは正しい対処であった。
とにかく移動し続け、回避を続けることで狙いを絞らせず、且つ、相手の本体に肉薄ができる。

「邪魔です!」

 撃ってくるスウォームユニットはいるが、その特性も把握していた。
 単純な射撃では、ウィッチが携行できる火器での撃破ができない攻防一体のユニットであるため、M2の集中砲火でも撃ち落とせない。
 だが、相手は敏感に攻撃に反応してくれる、ある意味素直な行動パターンをとっている。それが狙い目であった。
 つまり、ちょっとでも危険を感じれば防御に移って攻撃を止めてくれるので、任意の相手の動きを適当な射撃でも阻止できるということ。
そうすれば被弾必須のような網目の包囲網に小さいが、ねじ込むだけの隙間が生まれ、それだけ前に進める。

(とらえた……!)
「援護するよ!」

 後方にスウォームユニットが回り込むが、それをM2を背後に向けた射撃で牽制、追い払う。
 そして、装甲面をこちらに向けた分、弱点を晒したそれをクルピンスキーの射撃が見事に叩き落す。
 おまけとばかりに、AWACSの鏡子が放ったマギリング・マグナムの奔流がひかりを追従しようとしたユニットを消し飛ばす。
 その次の射撃は、ひかりに至近距離まで詰められていたネウロイ本体を狙って放たれる。
 包囲するような射撃の連続で、相手の動きを阻害したのだ。

「……っ!」

 だが、諦めの悪さはネウロイも同じだ。
 回避ができないと悟ったか、逃げる動きを急に中断、旋回してこちらへの攻撃に転じた。
 それはコンマ秒以下の時間での判断。伸びてくるネウロイの棘を、わずかに身をひねることで回避した。
 ギリギリであったため、その棘の伸張は寒冷地を想定した航空戦闘服の表面を掠めることになってしまった。

「ひかりちゃん!?」
「大丈夫だ、奴は死んじゃいねぇ!」

 事実、急な反撃にひかりは対応しきっていた。クルピンスキーの懸念は外れていたのだ。
 だが、それ以上にぶつかっていた。
 触れたのだ、彼女が。
 このF世界のエーテルに接触を続け、さらに教育機関の間に密かに刺激を与えられていた彼女の固有魔法が、目覚めた。

242 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/14(木) 20:47:50 ID:softbank126036058190.bbtec.net [32/145]

 ひかりが常に身に着けていたペンダントが、輝きを変えた。
 リーゼロッテは多くを備えていた。
 例えば、ひかりの固有魔法「解析魔法」が発動条件を満たしたとき、彼女が受け取る情報にオートでフィルターがかかるように仕込んだのもその一つ。

(っ……!)

 その結果、やたらめったらな解析が発動し、ひかりがその情報量でパニックに陥るのは回避された。
 そして、この場において必要な分だけの能力を発動させたのだ。

「コア、捕らえた!」
『なんですって!?』

 AWACSの鏡子が受け取ったのは、4つに分裂したネウロイに関する詳細データ---特にどこにコアがあり、どこに武器となるものがあるかのもの。
 それは一人称カメラの映像から演算宝珠を経由し、急にアップロードされる形で送られてきたのだ。

『どうやって……』

 その問いを置いてけぼりに、ひかりは飛んだ。
 いや、飛び掛かったのだ。
 見えている、コアの位置が、攻撃器官の位置が。
 ひかりの目は、否、彼女のみが有する解析魔法は必要な情報を暴き立てていたのだ。
 後はそこまで突っ込むだけの話。

(見えた……!)

 M2の射撃で切り開いたルートに飛び込み、ついに肉薄。
 最後の抵抗のように飛び出した棘を、ストール寸前の急制動からの強引なスライドで回避し、そこに狙いをつけた。
 コアの位置の、超至近距離。装填されているのはフルサイズのライフルの弾丸、尚且つ徹甲弾だ。
 そんなライトニング・コンテンダーに意識を集中させ、構える。

「魔力を一点集中して……!」

 穿つ。
 一点集中させた魔力の弾丸は、刹那の飛翔を経て、ネウロイのコアまで一気に貫通した。
 当然ながら複数層に及ぶ防御を有し、コア自体も耐久力を有していた。
 だが、全ては過去の話。
 トリガーと共に吐き出された弾丸は、それらを全て容易に貫通し、破壊せしめた。
 コアも装甲も打ち破られ、ネウロイのコアの一つが完全に機能停止をしたのだ。

「や、やった……」

 崩壊に巻き込まれないように距離をとりつつも、ひかりは安堵の息を吐く。
 4つのうちの一つを撃破。残りは3つにまで減ったのだ。

243 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/14(木) 20:48:58 ID:softbank126036058190.bbtec.net [33/145]

「こちらW009、目標ネウロイの4分の1を撃破」
『……こちらAWACSオーカ・ニエーバ。途中から完全に一人の世界で楽しかったみたいね?』
「うぐぅ……!?」

 しかし、浮かれていたのも一瞬だ。オーカ・ニエーバの鏡子が鋭く注意した。

「ご、ごめんなさい……なんというか、回避は容易かったですし、コアがわかっちゃったのでつい……」
『……どういうことかはデブリーフィングで聞くわ』

 それよりも、とAWACSとして鏡子はひかりに指示を出す。

『軍曹の活躍で数は減らせたわ。
 こちらでも対処中だけど、クルピンスキー中尉と管野少尉の方にいってあげて』
「りょ、了解です!」
『けど、その必要も薄いかもしれないわね……』
「え?」

 何しろ、とひかりの疑問に鏡子は応えながらも、マギリング・マグナムを構え、トリガーを引く。
 一瞬で飛翔したエーテルの弾丸は、エマが防御を削り、追い詰めていたネウロイのコアを見事に撃ちぬいていた。
 どこが弱点で、どこにコアが存在しているのかを理解したうえでの連携攻撃で、ついに止めを刺したのだ。
こうなるとフリーハンドを得た残りの戦力で叩きに行けるのだ。消耗があろうが数の暴力がモノを言う。

「でも、油断はできないでしょう?」
『そうね、無理のない範疇で援護をしてあげて』
「了解」

 飛んでいくひかりを見送り、しかし、鏡子は複雑な心境だ。

(彼女、どうやってコアの位置を……?
 土壇場で固有魔法でも発現したのかしら?)

 元ウィッチだからこそ、鏡子は疑問を覚えた。
 強力なネウロイはコアを有している傾向にあり、そこを破壊しない限りとどめを刺せないのは常識だ。
 しかし、そのコアが一体どこにあるのかを外から見破ることはできず、だからこそ手当たり次第破壊するか、そういった魔眼を有するウィッチが必須となる。
鏡子が知る範疇では扶桑海事変で活躍し、501でも戦果を挙げた坂本美緒少佐がそういった魔眼を有している。
 だが、そんな固有魔法を有しているという情報は、鏡子が覚えている限りでは存在していなかった。
 彼女の姉であり着任するはずだった雁淵孝美中尉ならば持っていたが、だからと言って妹が持っているとも限らない話である。

(これは後で確認しておかないと、ね)

 安易に情報を明かさないのもまた軍という組織の特性だ。
 今回の件については隊長に確認をしておいた方がいいだろう。
 そのように判断し、鏡子は戦闘を続行した。

244 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/14(木) 20:50:11 ID:softbank126036058190.bbtec.net [34/145]

以上、wiki転載はご自由に。
ついに固有魔法が発動です。
けど話はまだ続くのですよ。
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最終更新:2024年02月04日 13:46