310 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/15(金) 23:00:07 ID:softbank126036058190.bbtec.net [52/145]


憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ラッキー・ホワイト」6


  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地



 ひかりの固有魔法でその性質が暴き立てられたネウロイは、あっけないほどに簡単に倒されてしまった。
 元が200メートルはありそうな直系のそれとはいえど、分裂してしまえばサイズも小さくなり、コアをしとめやすくなってしまうのだ。
スウォームユニットをばらまいてセッティングしたテリトリーで戦うという点においては厄介でも、対処法が分かればどうとでもなるのである。
自身の体積を削ってでもスウォームユニットを増やして抱えていたこと、さらに分裂をして攻撃をしたということで、弱点であるコアを守り切れなかったのだ。
 こうして問題のネウロイの排除が完了し、本来の任務である輸送艦隊のルートの掃除を済ませ、502の部隊はペテルブルクへと帰投した。
人類の支配圏であるペテルブルク管内であれば、輸送艦も安全に航行が可能であり、追加で荷物を積むな度も可能である。
今頃はペテルブルクからカウハバ方面へと一路向かっている事であろう。
 そして、送り出した側の502JFWにおいては、デブリーフィングが行われていた。

「今回雁淵軍曹が使用したのは、固有魔法だ」

 参加していた各員が、特に当事者であるひかりが最も知りたがった内容は、ラルの口から明かされることになった。
固有魔法「解析」。直接接触することによって相手に魔力を流し、内部構造などを暴き立てるという魔法。
現在はネウロイのコアやその構造を暴くという方面に現れてはいるが、今後より使い方を学べばより活用が効くと推測されることを話した。

「私に、固有魔法が……」
「これはリーゼロッテ・ヴェルクマイスター大佐から内密に明かされていたことだ。
 ただ、過信や慢心を招く恐れがあるとのことから、敢えて秘匿していたとのことだ。
 軍機とまで言われてな、今日まで私も話すことはできなかった」

 ふぅ、と息を吐き、ラルはひかりを見つめる。

「だが、本日をもって開示する。
 グレゴーリ攻略に必要となるかもしれないという固有魔法だと聞かされているからな、期待している。
 今後現れるネウロイの排除にも役立ててもらうことになる」
「了解いたしました」
「発動の条件は、直接ネウロイと接触することだ。
 軍曹の戦い方と合わせれば、使い様はあるだろう。期待している」

 さて、と話を変える。
 ひかりの固有魔法についての詳細は書類でも共有できることなので、それぞれに用意しておいた書類を送ればそれで済む。

「先ほどの話にも少し絡むが……いよいよ大規模作戦が開始される」

311 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/15(金) 23:01:14 ID:softbank126036058190.bbtec.net [53/145]

 その言葉で、ピリリと空気が尖ったものとなる。
 当然だろう。兆候自体はあったし、物資の集積や戦力の集合など、多くのことがペテルブルクでいくつも起きていたのだから。
 さらに言えば、この502JFWがこなしていた任務には、ペトロザボーツク基地への戦力移動や物資輸送の護衛やその露払いという仕事があったのだ。
それの頻度が明らかに増えていけば、少々頭が回るならばわかろうというものだ。
 このペテルブルク基地の近傍にパヴロフスク基地が新たに設営され、そちらにも大戦力が集結しているのも伝え聞こえる。
そこにあのルーデル大佐がおり、さらには大型航空艦までも駐留しているとなれば、その信ぴょう性は増す。

「作戦名をヴァナディース作戦。
 東欧およびオラーシャに展開するネウロイの巣『グレゴーリ』『アンナ』『ヴァシリー』の3つを攻略目標とする大規模なものとなる」
「マジか……」
「巣を3つ……?」
「……」
「これは、驚いたね……」

 その目標の大きさに、誰もが目をむいた。
 501JFWがネウロイの巣を排除してガリア解放を成し遂げたのは聞いてはいることだ。
 しかし、それはあくまでも1つの巣だけが標的となっていた。規模が違いすぎる。

「当然だが、我々だけですべてを攻略するわけではない。
 我々の目標は『グレゴーリ』のみ。ペトロザボーツク基地の戦力と合わせての合同作戦となる。
 サーシャ、例のものを」
「はい」

 ラルの指示でサーシャは開示された作戦の概要などの記された書類を配った。
 そこには、オーバーロード作戦並の、否、それ以上の規模の戦力が投入される大規模作戦のプランが記載されていた。
 同時に、ラルの操作でスクリーンに映し出されている画像が切り替わり、作戦の大まかな概略図となった。

「ここにもある通り、現在の人類の版図から戦力を展開、巣を中心としたネウロイの勢力圏に攻め込む。
 我々ウィッチやウォーザードだけでなく、通常兵科および決戦兵器の投入も行われる形だ。
 具体的な数字についてはまだ明かせないが、相当数を送り出す」

 さらに、と付け加える。

「作戦については、外からも予備戦力が陽動などを担当する。
 他のネウロイの巣からの増援や背後を突かれる動きを阻害するため、そこへの陽動攻撃などが予定されている。
 また、カウンターのようにネウロイから進行を受けることも想定し、ガリア・スオムス・ブリタニア方面では防衛戦力の蓄積が始まっている」

 これだけの数を包囲を敷いてまで、作戦を展開するのはなぜか。
 その目的は至極単純だ。数で以てしか実現できないことがあるためである。

「タイミングを合わせ、一斉にネウロイの巣に対して飽和攻撃を仕掛ける。これが目的だ。
 巣を一つ一つ潰していては増援などが押し寄せる可能性がある上に、長期戦になれば不利になる。
 よって、このようなタイミングを合わせての大規模攻勢が選ばれることとなった」
「戦力の分散のリスクを相手にも押し付ける……」
「相手を分散させて決戦戦力を送り込むというわけですか」
「博打だが、面白れぇじゃねぇか」

 感じ方はウィッチやウォーザードによって違うな、とラルは一人頷く。
 指揮官級の人材を集めたブリーフィングにおいても、同じような意見が出たのを覚えている。
 そして、これがでかすぎる博打であるという意見にも、だ。

312 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/15(金) 23:02:04 ID:softbank126036058190.bbtec.net [54/145]

 そう、博打だ。
 相手がうまく戦力を吐き出して対処せざるを得ない状況に持ち込めれば、精鋭部隊の突破の可能性が増える。
 だが、その間、そしてネウロイの巣の排除が完了するまでは消耗戦を強いられることになるのである。
ウィッチやウォーザードだけでなく、一般兵科の兵士たちも容赦なく激戦の中で潰されていくことになる。
うまくいけば逐次投入などよりも消耗は小さくできるが、手間取った場合にはその限りではない。
ネウロイがどのような戦力を隠しているかも不明な段階で勝負に出るのは危険が大きいという意見もあった。
 しかし、その危険を差し引きしたとしても、他のプランよりはまし、と判断された。
 最低でも二つの巣を攻略するにふさわしい戦力が揃っている事や、地球連合も惜しみなく支援してくれたことが決め手となったのだ。
いつまでも逼塞していたところで状況は変化しないという、ストパン世界側が腹を括ったという面もある。

「---と、今回はこんなところだろう。作戦については見直しが入ることもある、あくまでも現段階の作戦と思ってくれ。
 それと、言うまでもないことだが、これはまだ機密事項だ。
 迂闊におしゃべりするような真似は、避けてもらおう。なあ、クルピンスキー?」
「はーい……」

 名指しで釘を刺されたクルピンスキーはうなだれるしかない。
 情報を得る伝手が多いのは結構だが、おしゃべりが過ぎるのが玉に瑕だ。

「では解散だ。明日以降も任務が控えている、今日はしっかり休むようにな。
 私はこの後も仕事だ……」
「出撃していなくてもつらいもんだな……」

 思わずラルがこぼした言葉に管野は同情するが、さっさとその場を離れる。
うかうかしていると、自分もまた書類仕事に引きずり込まれることになるからだ。
 ともあれ、ラルの指示通り、明日以降もまだ仕事は控えているので、誰もが急ぎでブリーフィングルームから出ていく。






 そして、その人物は不意に手を握られた。

「え?」
「エマちゃん、ちょっとお話しましょ?」
「お菓子もお茶もあるよー」

 誘うにしては、やけにがっちりと掴まれたその手を困惑して見つめるのはエマだ。
 1番機を務めるカーチャと、2番機のバルバラ。先達二人が、ちょっと笑うにしては怖い顔をしているのだ。

「わかり、ました」

 一瞬、恐怖がエマを苛んだ。
 けれども、それを何とか押し殺す。
 一つ呼吸、一つ吐き出す。自己を落ち着かせ、いつも通りに戻る。それだけ。
 エマは、自分に言い聞かせた。

313 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/15(金) 23:04:45 ID:softbank126036058190.bbtec.net [55/145]

以上、wiki転載はご自由に。
あと2話ですかねぇ…

ちょっと解説を。
正式なのはまたあとで出します。



固有魔法「接触魔眼」改め「解析魔法」

 雁淵ひかりの有する固有の魔法。
 物理的に接触した対象の情報を解析し、暴き立てる性質を持つ。
 現在はネウロイのコアおよびネウロイの性質を見抜く魔眼として発現している。
 しかし、そのポテンシャルからすれば、やがてはあらゆる分野に応用が利く魔法として成長することが見込まれている。

 透視や千里眼の類いではなく、魔力を直接流し込むというタイプであるため、欺瞞や偽装も通用しない特性を有する。
接触の必要こそあれども、一瞬でも接触してしまえばそれで解析が完了する。

 リーゼロッテは固有魔法が発動した際、過度に情報が流れ込むことが無いように、ペンダントにセーフティー機能を持たせていた。
実際、エーテル濃度の濃い世界で過ごしたこと、固有魔法に絡む魔力回路を刺激したことなどもあり、502JFWでの最初の発動は想定通りであったという。
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最終更新:2024年02月04日 13:47