516 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:22:52 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [2/10]
【旭夜交差 ~NIGHTS RISING SUN~】


「……本当によかった…目が覚めて……」

薄ぼんやりとした意識の覚醒、知らない天井と蛍光灯が視界を埋める。

「―――血圧、共に正常――」

「………――さん!――長から緊急連――す!――――武装集団を確認、既に、大規模な戦闘が――」

「――起きたばかりなのにごめんなさい――ここは危険です、すぐに着替えて外に出ましょう……」

仰向けに寝ているのか、上にいる……こちらを覗き込むのは、頭頂に長い…獣耳を持つ少女。

「――、また会えて、嬉しいです……」

彼女の感極まった声は、とても印象に残るものだった。





「防衛ラインに接近させるな!増援はどうなっている!?」

「現在、首都圏の部隊が緊急展開を初めていますが、まだ少し時間を要します!」

「くそっ……“ゲート”め!」




欧州然とした街の一角を寸断するように、巨大な光の幕が下ろされている。
その前方に展開しているのは、分厚い装甲と8輪のタイヤを持つ、所謂、装輪装甲車と呼ばれている代物だ。
そこに侍るよう、ガスマスクを着用した兵士、装甲付強化外骨格を装備した兵士、そして無人地上車輌が持てる武器を構えて周囲を威圧していた。


そして、その者らと対峙するように展開しているのは、黒い防具を身に付け、推定ポリカーボネート製の盾とマチェットを装備する一団だ。

「我々は軍警察だ!貴様ら何者だ!!感染者の仲間か!?武器を捨てろ!」

「こちらは日本陸軍第一師団!訳あってそれは出来ない!!だが此方に敵対の意志は無い!!代表者同士の会談を要請する!!」

「ふざけるな!!そんなものが認められるか!!大人しく投降しろ!!」


双方怒鳴り声の応酬が続くが、解決の糸口は見えない。
しかしその均衡は、第三者の集団の乱入によって掻き乱された。


「隊長!敵の数が多すぎます!このままでは……」

「くっ、感染者が……舐めるn――」


白い外套に、一様に無表情な仮面を被った一団。
それら集団が、武器を振りかざして黒い軍警察を名乗る一団に襲い掛かり……そして、軍警察は壊走を始めた。

「なんなんだ……?」

そして、その白装束の集団は、残された装甲車の集団にも襲い掛かり始めたのだった。

「―――各員自由発砲!敵を近寄らせるな!!」



517 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:24:00 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [3/10]


「――自分のこともしっかり気遣ってくれ、代表」

「はい…気をつけます」

獣耳の少女が中心となっていた集団は、街中の逃避行の末にとある診療所跡へと逃げ込んでいた。

彼ら彼女らは、白装束の集団と戦い各々が大なり小なり傷付き、疲れはてていた。

「――これは私見だが、一番大切なのは過去や消えてしまった記憶ではない。貴方にとっての今、そしてこれからだ」

「……ありがとう。」

街の悲惨な現状に思うところがある面々だが、脚を止める訳にはいかない。
そこでの小休止を経て、一行は脱出ポイントへの脚を進める。


「しかし、一体何なんですかね……あの光の幕は……」



街の中心部では、虚空から巨大な氷塊や火球が顕れる神話めいた戦いが繰り広げられた。

「後退!後退!!敵は重火力を投入してきた!!此方を圧殺するつもりだ!!」

「まるで火の玉だ!!ブロックごと吹き飛ばされるぞ!!」

「機関砲の掃射で援護する!!歩兵は速やかにゲートまで撤退しろ!!」

激しい銃声が響く街角。
それを掻き消すような炎が大通りを舐め、静閑だったはずの街の様相を焼き付くしていく。

「“チョルノボグ”……スラブ神話の死神か…?」





「――――感染者が、何をした。無辜の人々が、何をした………お前たちに、何ができる。口先だけの理想論者に、何ができる」

広場は、火の海に包まれていた。
獣耳の少女達の集団は、飛来してきた巨大な火の玉の炸裂に巻き込まれ、全員が倒れ伏していた。

「私が好む結末を教えてやろう………」

白装束の集団を背に、虚空から火の玉を生み出し、その火を成した“白髪の女”が、ゆっくりと倒れた獣耳の少女へと歩み寄ってくる。

「滅びよ。」

放たれる業火、しかし、それは立ち上がった獣耳の少女によって防がれる。

「させません!!私が、皆さんを守ります!!」

しかし、その火の勢いは凄まじく……遂には押し切られるかという、その時。



518 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:25:45 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [4/10]



『弾種、榴弾!撃てーーーっ!!』

凄まじい轟音と共に、異質な爆轟音が半壊した街を貫く。

『総員前進!!敵集団を押し返す!!』

甲高いエンジン音に、金属の擦れる音。
それは光の幕の中より現れた、最高級の装甲と長大な主砲を併せ持つ陸戦兵器……彼らが戦車と呼ぶものであった。

『伏兵に注意!白装束の仮面は全員敵だと思え!!』

路面の舗装を捲り上げ、土煙をたてながら戦車は進み……その鼻先から盛大な砲火の唸りを上げる。
上部の無人銃塔に搭載されている回転式機関銃、通称ミニガンがチェーンソーのごとき発射音を立てて、射線上の全てを薙ぎ倒す。

「な、なんだよありゃあ!!」

「こんなの聞いてないぞ!!」

白装束の集団がボウガンで矢を射るが、その程度の攻撃が走る鉄塊に容易く弾き返される。
逃げ出す分隊規模程度の白装束に、先頭の戦車小隊4両が一斉に多目的榴弾を叩き込む。結果は…………言うまでもない。



「白い幕の方から、謎の敵が……!」

「一体何が……」

浮き足立ち始めた白装束の集団を見て、獣耳の少女が呆然と呟く。

「わからん、だが、奴らも動揺している。今のうちに逃げるぞ!」

しかし、悪いことは続く。
皆がゆっくりと空を見上げるとそこには……

「…………天災」

地を穿たんと空から降り注ぐ火の災い……隕石が、空を埋め尽くしてした。
それらは無差別に、街の至る所に落下すると、その爆発と衝撃波によって全てを薙ぎ倒す。

『畜生!敵のロケット砲だ!!砲迫レーダー!位置は割り出せたか!!』

『ダメです!予想発射点は完全にランダム!!絞り込めません!』

『構わん!!全部ぶっ飛ばせ!!』

『航空隊がゲートに突入する、攻撃目標を指示せよ』

くの字型ののっぺりとした無人機が、高速で光の幕を突破してくると、鋭い翼端の軌跡を残しながら即座に散開。
その腹が開け放たれ、中に抱いた物騒な荷物が露となった。

519 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:26:39 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [5/10]


「誰だ!!」

「すんなり脱出できるとは思っていなかったが……」

様々な犠牲を払いながらも、なんとか脱出ポイントに到着した一行。しかし、それを見透かしたかのように次々と現れる、銃を持った兵士の一団。
獣耳の少女を庇うように、鞭を持った犬耳の女が前に出る。
しかし、それを見た兵士達は、僅かに警戒を解いた様子で声を出した。

「我々は日本陸軍だ!そっちは民間人か?!」

「……そうだ!我々に敵対の意志は無い!ただ街から脱出したいだけだ!」

その言葉が効いたのか、兵士達は構えていた銃を下ろして周囲の警戒に移る。

「脱出手段はあるのか?」

「ああ、もうすぐ我々の航空機が到着する」

「航空機……ふむ。司令部、ポイント0から方位060、約5kmの地点に民間人の脱出機が着陸するらしい」




「しかし、日本陸軍とは……聞いたことが……」

「無理もない。何せ、俺達が住んでるのはあれの向こう側だからな」

そう言うと、兵士の一人は“突如として現れた光の幕”を指差した。
そうしている内に、一機のティルトウィング機が到着し、獣耳の少女達が一斉に乗り込む。

「これから、空軍が周辺の敵勢力を爆撃で掃討する!!巻き込まれるんじゃないぞ!!」

「えっ?……っはい!分かりました!」


ティルトウィング機が離陸すると同時に、正体不明の高速航空機が複数飛来し、都市の周囲で多数の爆発が発生する。
よく見れば、その謎の航空機が爆弾らしきものを大量投下している様子が伺える。何にせよ、この“世界”には異質な存在だった。
しかし、今はそれに構っている暇はない。
そう言うように、ティルトウィング機は翼を水平に戻して加速を始めた。

「………っ、帰りましょう……“ドクター”」

「……あぁ」




520 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:27:55 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [6/10]




「……で、ゲートで繋がった先は、どうみてもファンタジー的な世界だが……誰も原作を知らない、と」

「ケモミミ美少女!ケモミミ美少女!!」

「要素を繋ぎ合わせると、そうなる。今のところ、近しいメンバーでプレイヤー、もしくは詳しい記憶を持っている者は見つかっていない」

「そもそも『原作』など無い、普通(?)のファンタジー世界ではないのか?」

「いや、それがSNSなんかで似た単語や要素の又聞き……つまりジャンルの受動喫煙でその存在を知っている者は多いんだ。だが、実際に遊んでいたという人が見つからない」

「となると、我々にはあの世界が“いつ頃”なのか、それに“この先どうなるか”も分からず……そもそも介入するメリットもデメリットも分からない、と」

「現地で収集した情報では、危険な感染症の存在が伺える。派遣部隊の検疫はもちろん、ゲート自体暫くは厳重な封鎖に留めておくべきだ」

521 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:29:23 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [7/10]
以上となります。
ある意味、ここでは結構マイナーじゃないかなというメタも含んでます。

522 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/18(月) 12:29:54 ID:sp1-73-138-93.smd01.spmode.ne.jp [8/10]
あぁ、転載大丈夫です。
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最終更新:2024年02月04日 14:04