906 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/26(火) 18:16:46 ID:softbank126036058190.bbtec.net [125/145]
憂鬱SRW 融合惑星編「The Hound Dog in Megapolis」SS「前日譚 ゴドーの葬送」5
- 惑星2113 現地時間西暦2113年 日本 東京都 公安局ビル 公安局一係オフィス
オフィスに流れているニュースは、閣議決定がなされ、国会を通過することがほぼ確定となった法案についてであった。
内容としては、情報開示の延長というものである。
地球連合との接触および外交によって得られた情報、さらに今後の事案について、国家統制に影響を与えすぎる情報の開示を控えるということである。
指定された項目は数千を超えており、その情報量は非常に多岐にわたっていた。
それらは拡散すればサイコハザードなどを引き起こしかねないとシュビラにより判断され、特定機密として封じられることになった。
いずれその情報を受け入れられる土壌が出来上がり、真実と向き合えるようになった時にこそ、開示される。
それまでは限定的な情報開示にとどめ、データベースへの登録さえも限定的にされるという有様であった。
公然の秘密にして機密。つまるところの、問題の先送り。それこそが絞り出せた答えなのだ。
「……」
そのニュースを見ながらも、執行官の宜野座の心中は複雑だ。
今は上司であり、元は後輩であった監視官の彼女が、そのサイコパスの濁らなさから外交に関わっていたのは知っている。
彼女をはじめとして、選ばれた人間だけがかかわり、密やかに決定がなされ、それだけが告げられる。
正直、なんとももどかしい結果だ。サイコパスを理由に、隠し事をして、それを国家もシュビラも認めたというのは。
とはいえ、多くの人はシュビラの決定を支持するだろうというのは想像がつく。
一般市井の人々は、どれほど折衝や外交で苦労があり、如何に政府が問題を持て余したかを知りもしないのだし。
一方で、当然情報に飢えた人々はいるだろう。
そこに撒き餌のように撒かれるのが、エクソダス---この惑星からの脱出計画であった。
この惑星が滅びかねない危機が迫っている、それ故に脱出することになると、情報を小出しにして釣り上げるのだ。
無論、エクソダスの情報の中にも劇物が混じっている。だからこそ情報は小出しにするし、政府広報以外の情報を許さない。
サイコパスの色相悪化防止やサイコハザード防止で何度となくとられた手の一つ。適切な情報のみを明かすというもの。
殉職した部下---そして自分の父であった征陸の言葉がよみがえる。
(ボールと犬か)
状況に流されるか、逆らってご主人様に怒られるかの二択。
槙島事件において、どれが正しいかに迷った自分に、正解などなく妥協しかないと諭したときの言葉だ。
今はまさにそれだ。どうしようもない状況において、自分たちは流されるままでしかないということ。
正直なところ、今更な話ではある。散々に状況に流されるのは今に始まったことではない。
だから、今はこれでいいと妥協するしかない。自分たちはどうしようもないほどに力がないのだから。
(常守はよく無事なものだな……)
以前なら忌避したであろう、こんなサイコパスが曇りそうな考えを遠慮なくできるのは潜在犯だからか。
それでも、色相を保ちながら第一線で対応している上司には頭がより上がらなくなりそうだ。
「……!」
そして、警報が鳴る。
どこかでエリアストレスが上昇したらしい。
未だに公安局でも人員補充が追い付いていない状況だ、休みは当面なさそうだ。
「宜野座執行官、行くわよ」
「ああ」
留守を預かっている霜月監視官に促され、宜野座は席を立つ。
世の中の過半は、何が起こっているかも知らず、自分の世界の中にいる。
それはとても幸福で、満ちているのだろう。
たとえそれが、一瞬後に崩壊するとしても。
エクソダスを控え、日本という国家は、つかの間の安寧を貪っていたのだった。
907 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/12/26(火) 18:17:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [126/145]
以上、wiki転載はご自由に。
とりあえずこれでPP日本の情勢が一区切り。
後は外の世界ですかねー…
2,3話くらいでケリをつけたいところです。
メインカメラになれる狡?さんはどの辺にいるんだろうか
PP第一期 → 中国 → シーアンと旅してまわりますからなぁ…
最終更新:2024年02月04日 14:18