697 :earth:2012/03/13(火) 18:55:13
並行世界(平成世界)から出現した日本帝国軍、ドイツ第三帝国軍によって第二次世界大戦を勝ち抜いた連合国は文字通り
灰燼と帰した。この世界の日本とドイツを蹂躙し、解体した国々はその報復を嫌と言うほど受けることになったのだ。
特にアメリカ合衆国は並行世界において「絶対に怒らせてはならない」と言われる日本帝国を文字通り激怒させたために
入念に叩き潰された。
戦勝国として栄華を誇ったこの国は、それまで築いた栄誉がまるで嘘だったように滅亡した。主要都市は軒並み核攻撃で
消滅しガラス状の大地と化していた。
そして辛うじて残ったワシントンDCでは、平成世界の列強国が主導する形で軍事裁判が開かれていた。
「私は日本を追い詰めることに反対したのだ。それなのに大統領が」
「私は無差別爆撃には反対したのだ。それを大統領が」
「我々は日本の占領政策について反対した。それをアカに唆された大統領が押し切ったのだ」
裁かれる立場に転落した旧合衆国政府の人間達の多くは全ての責任を大統領や元政府高官、あるいは共産主義者に転嫁した。
勿論、中には自分の非を認める者もいたが、多くの人間は自分の無罪を主張した。
そしてそれを憂鬱世界から派遣された人間達は嘲笑と侮蔑の表情で見守っていた。
「これが正義の国か。笑えるものだ。日本人やドイツ人を殺したことを誇っておいて、立場が逆転したらその責任を転嫁するとは」
この裁判の様子は平成世界にも中継されており、多くの都市では誰もが戦争犯罪人である合衆国軍人や政府高官の処刑を
熱望した。
「あんな畜生にも劣る下種をさっさと吊るせ!」
「合衆国など、さっさと消滅させろ!」
「ソ連や中華もだ。日本を滅亡させ、国土を陵辱した連中を生かしておく理由はない!」
端的に言えば「殺せ!」の大合唱だった。
その一方で各国政府は、核攻撃で耕した世界の統治について話し合っていた。
「あの世界は資源採掘場、それにゴミ捨て場が適当だ」
「同意します。向こうの日独の国民をこちらに移民させ、あとは搾り取るだけ搾り取る。遠慮は不要です」
「あとは人体実験だな。精々、我々の繁栄の礎になってもらおう。問題はないと思うが?」
「ええ。問題ないでしょう。何しろ並行世界とは言え、日独の解体に手を貸した、いや反対しなかった国など遠慮は不要です」
日本とドイツの意見に反対意見を唱える国は無い。
アメリカ合衆国の精神的後継者と言われるカリフォルニア共和国やイギリスなどは、向こうの旧合衆国やイギリスから
色々と助けを請われるが、どちらも助けることなどしなかった。
「「お前らは自業自得! 俺達を巻き込むな!!」」
フィンランドなどごく一部の国々は辛うじて首はつながったが、旧合衆国を含めた多数の国は悲惨な運命を辿る。
そしてこれらの国々の恨みは、この事態を引き起こしたルーズベルトや合衆国に向けられることになる。
ルーズベルトは世界を破滅させた魔王、そして合衆国は世界を黄昏に導いた悪魔の帝国として人類史に刻まれることになる。
724 :earth:2012/03/13(火) 20:49:52
ワシントン軍事裁判において大多数の旧合衆国要人は、己の所業の報復を受けた。
ルーズベルト本人は夢の国の住人となっていたが、減刑の余地は無かった。むしろ晒し者にされ「世界最強国家を率いた狂人」と
世界に喧伝された。平成世界のルーズベルト大統領の縁者の子孫さえ「あれは他人」というのだから、どれだけ彼が嫌われているか
が良くわかる。
「私はそのような発言はしていない」
「それは部下の勘違いだろう」
「私は国際条約に基づき、日本人を丁重に扱っていた!」
朝三暮四の発言を繰り返したプライドがやたらと高い某陸軍元帥は、あらゆる名誉を剥奪されて元大統領のように発狂したが
情状酌量の余地もなく処刑されていった。その最後は見苦しいものだったが、その姿に誰もが溜飲を下げることになった。
だが溜飲が下がったからと言って、この世界の扱いが変わることはなかった。
「ルーズベルトの野郎のせいで……」
死の大地と化した北米で、ついこの間までルーズベルトを賞賛していた旧米国民はルーズベルトに怨嗟の声を挙げつつ
必死に生き残ろうとしていた。
白人至上主義者はナチスドイツに接近を試みたが、ドイツを解体した彼らと仲良くするほど第三帝国もお人よしではなかった。
そして日本人は米国人を徹底的に敵視していた。日独は放射能で汚染されていない地域を現地住民を徹底的に追い出した上で
軒並み押さえてその支配を続けていた。
日本人に押さえられた健全な土地とそこに乱立する近代文明の象徴たるビル群、それを見て旧米国人は忌々しげに叫ぶ。
「ここは俺達の国のはずだ。それなのに、何で連中がいいように支配するんだ!?」
それは魂の叫びだった。だがすぐに冷静な答えが近くの男から返ってきた。
「……俺達が負けたからだろう」
「おい」
「負けたんだ。俺達はあのクソッタレの雲から現れたイエローモンキーとナチに負けたんだ! だからこうなった。
俺達が、俺達の世界で連中にやったことをやり返されたのさ!!」
「「「………」」」
彼らはこのとき、自分達が日独両国に何をしたのかを悟った。
「向こうの合衆国も滅んだ。だが合衆国の精神は受け継がれた。だが俺達は違う。合衆国は滅んだ。完全に。後継者も居ない。
この北米は連中によって滅茶苦茶にされていくだろう」
救いようが無い結論だった。
「……ルーズベルトが向こうと同じように任期の途中で退任していたら、歴史は変わっていたかもしれないな」
「かもな」
ルーズベルトが途中で倒れた世界。あの狂人が存在せず、雲の向こうの世界と決定的に対立しなくて済んだ世界。
そんな世界を夢想して男達は自分達を慰めた。
皮肉にも彼らが夢想した世界、ルーズベルトが任期の途中で倒れた世界の人間が、雲の向こうにある世界を作り上げたのだが
そのことを彼らは知る由も無かった。
最終更新:2012年03月17日 14:57