317 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/01/14(日) 00:40:05 ID:softbank126036058190.bbtec.net [49/158]
憂鬱SRW 融合惑星編「The Hound Dog in Megapolis」SS「前日譚 彷徨える猟犬」5
- 惑星2113 現地時間西暦2113年8月 旧中華人民共和国 香港 獅子山検問所
香港に地球連合の紫雲艦隊が入ってから、地球連合では独自に検問所を各所に設置した。
理由は言うまでもなく、流民---特に武装を多く持つ武装集団が入り込むのを阻止するためであった。
当然であるが、多数ある軍閥や武装集団、あるいは住人の意志は無視され、地球連合の都合によって接地されたものである。
それが力のあるモノが定めた秩序・法だから。
王権を象徴する物品に処刑に使われる斧があることからもわかるように、支配者とは最大の暴力を握るものだ。
暴力を独占することが近代国家の始まりとウェーバーが述べたように、それを持つものこそが何かを定め、定義できる。
先人たちの行動や定義の結果は、今でもこうして正しさを証明していた。
話を戻そう。
ここを通りたければ過ぎたる武装は取り上げられるし、追跡用ナノマシンを撃ち込みトレースできるようにするなどの処置を行う。
それでも明らかに話が通用しなければ、その場での無力化及び拘束まで行って留置所に放り込むコースである。
殺しまではしないのだから有情というものである。たとえ犯罪者であろうが武装集団だろうが、エクソダスさせる対象なのは変わらないからだ。
大概の場合、武装集団が暴れようとする場合不殺を行うのは苦労するが、技術差というものがあれば何とでもなる。
そもそも地球連合のよく訓練された兵士たちはその手の手順もよく心得ているのだし。
時たまに検問所そのものを攻撃してくる集団もあるのだが、今なお健在なのがその結果を示している。
さて、そんな物騒な検問所から北に数キロの地点に、これまた物騒な集団がいた。
軍用ドローンなどを擁し、寄せ集めとは思えない装備を身に着けた武装集団であった。
構成しているのは様々な人種が混じっているが、いずれも荒事をしてのけ、戦場を潜り抜けた者達ばかり。
とはいえ、強い武器に浮かれ、虐殺まがいの事や略奪などをしてきた程度の連中であり、程度が知れるものであった。
彼らの目的は語るまでもない。香港だ。正確には香港での「収穫」。治安が良くなり、豊かになっているという噂と情報から乗り込もうと動いていたのだ。
しかして、彼らは自らの持つ暴力の強さに浮かれるあまりに、他の暴力の強さを想定できなかった。強さに酔い、盲目的になっていたのだ。
だから、宇宙からの監視の目、そしてそれに誘導された光学迷彩を用いる航空機による機械の目にはっきりと映ってしまったのだ。
その集団が確認され、その途中でどれほどの暴力をふるっていたかの形跡が補足されたくらいには。
よって、無人航空機からの警告を呼びかけ、それを無視された時点で実力行使が決定されたのだった。
『おっと、元気な対空攻撃だな』
『当たっても効かないんだがな』
無人航空機を遠方から管制するオペレーターたちは、そんな軽口をたたく。
呼びかけへの返答は、上空を行く無人航空機に対する対空射撃という形で成された。
対空ミサイルも飛んできたが生憎と簡単にあたるほど軟ではない。直ちに迎撃システムが起動して叩き落とす。
とはいえ、それが確認された時点で、航空機のオペレーターたちのやることは一つだ。
『既定の呼びかけに対し、目標集団からの反撃を確認。
これを以て目標集団を敵性武装集団と判断。
予定通り、鎮圧行動に移る』
『電磁ネットおよび対装甲電磁弾、投下用意』
『用意よーし、投下、投下!』
そして、十分な手加減をした鎮圧作戦が開始された。
318 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/01/14(日) 00:41:03 ID:softbank126036058190.bbtec.net [50/158]
最初に投入されたのは対人鎮圧用の電磁ネットだ。
広範囲に広がるそれは、並の人間ならば容易く動けなくする程度の電気を流すものだ。
投下されギリギリまで小さかったそれは、地表直前で一気に展張。対応しきれなかった歩兵や引き連れていた車両や戦車型ドローンにかぶさった。
「ぐあああああ!?」
「おい、クソ、誰か何とかしろ!」
「な、なんだこれ……!」
「あばばばば……」
「車両がいかれやがった……!」
第一撃で、武装集団の多くは動きを止めざるを得なくなった。
いかに鍛えていようとも、人間を鎮圧するために最適化された電磁兵器のそれを押し切るのは容易ではない。
また、ドローンに対して精密投下されたEMP弾が着弾、直接接触した状態で放つ強力な電磁パルスでドローンを動かすコンピューターを焼き尽くした。
そうなればいかに強力な装甲と火砲を備えている戦車型ドローンであろうと、ただの頑丈な置物にしかならない。
連合の技術レベルならばその程度は容易いし、事前にどの程度かがわかっていたこともあり、一方的となった。
そして、武装集団の受難は終わらない。
航空機による鎮圧兵器の投入はあくまでも前座だ。
本命となるのは、陸路において網を張った上で待機し、GOサインが出たことで動き出したパンテオンたちだ。
殺傷ではなく捕縛を主眼とすることから、彼らの装備は対装甲目標の高周波ブレード、鎮圧用のスタンロッド、さらに埋め込み式の電磁ビームなどだ。
並のスペックではないそれが、そういった武器を携え、しかも連携して押し寄せてきたというのは、戦力の過半が動かない武装集団には死神だった。
「撃て、撃てー!」
「くそったれが、なんて速さだ!」
「グレネード!」
彼らも抵抗する。
曲がりなりにも、武装集団としてこの軍閥のはびこる中国という大陸を生き延びてきたのだ、戦闘技術は備わっていた。
運良く回避できたか復帰した人員がドローンなどを遮蔽物として利用しつつ、銃火器で応戦を開始したのだ。
接近してくるパンテオンに即座に反応し、弾幕を張り、グレネードなどを投じるなどして対応したのだ。
だが、相手はパンテオンだ。人間を超えるロボットであり、その素体の能力及び戦闘能力は、並の人間の比ではない。
秒間数百発を超える重機関銃やアサルトライフルの弾幕をくぐり、あるいはブレードで弾き、彼らは前進する。
懐に飛び込めば、あとは一方的になる。邪魔なドローンを切り裂き、近接武器を構えて殴りかかる兵士を起用に武器だけ破壊し、スタンロッドで沈黙させる。
距離をとろうとする相手には電磁ビーム砲が非殺傷出力で浴びせられ、次々と奇妙な踊りを踊った挙句倒れる。
あくまでも生身であり、戦闘訓練もそれなりにしている武装集団であったが、それ以上ではない。故に勝てない。
いや、戦闘が開始する以前から監視網に引っかかり、その動向が把握され、脅威度測定までされていたことで、戦う前に負けていたのだ。
「おか、しい……」
最後の一人が、そんな言葉を漏らして倒れる。
死者0名、無力化の際に多少痛い目に遭い怪我を負った人間はいるが、それでも生きている。
さらに懸案であった戦車型ドローンも武装したテクニカル車両も鎮圧され、誘爆や爆発などもすることなく動かなくなった。
すべてが、力でねじ伏せられたのだ。
319 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/01/14(日) 00:42:12 ID:softbank126036058190.bbtec.net [51/158]
以上、wiki転載はご自由に。
あっけなく終わりました。
あと2話くらいで〆ます。
最終更新:2024年03月05日 20:44