263:陣龍:2024/01/23(火) 21:03:13 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

『ゴーストウィニングの異世界旅行記 ~このウマ娘は如何なる星の下に生まれたのか~』


「ふわぁあ~……」
「セイちゃん夜更かしでもしたんデスかー?」
「いや~……ちょっと花の種の事調べて居たらね~……」
「花の種……お!エル、分かっちゃ」
「エル、この事は口外無用だよ。イイネ?」
「……ウィ」


「グラスちゃんおはよー」
「おはようございます、スぺちゃん。今日は早いですね」
「あはは……偶には早起き位はするから……」
「ふふっ……」


「おっ、キングじゃん。おはよ」
「おはようございます、ネイチャさん」
「今日はウララちゃんと一緒じゃ無いんだね」
「ウララさんは、昨日から遠征に行ってますので……」
「あー……そう言えば、アメリカダートG1に挑戦するって話有ったね……」
「……心配です、ウララさんがちゃんと起きられるかとか、ちゃんとレース場までたどり着けるかとか」
「いやお母さんかーい」



 とある平日の朝方、トレセン学園校舎に向かう学園内大通り。そこには幾多のウマ娘が、
見知った友人達と他愛も無い会話をしながら登校して行く、何処にでも有る学校の風景が見られていた。



「……ケ?そう言えば、ゴーストが見当たりマセン?」
「ん-?……そう言えばそうだね。寝坊でもしたのかもねー」
「寝坊って……確かに、動画編集で夜更かしとかしてしまっても居そうですガ」

「……スぺちゃんは何か聞いていますか?ゴーストちゃんの事」
「聞いていないけど……」
「遅刻しないと良いのですが。今日はスぺちゃんと一緒に登校できると思っていたのですが」


「……珍しいっちゃ珍しい事だねぇ、ゴーストがちょっと起きるのが遅れるって」
「そうですね……」
「もし髪の毛ボサボサで駆け込んで来たらキングの出番だねー」
「そうですね……えっ、わ、私ですか!?」




 そんな中、トレセン学園生徒の中でも色んな意味で『台風の目』となっている【ターフの亡霊】ゴーストウィニングが、
登校するウマ娘達の中にいない事に気付く友人ウマ娘。普段は、と言うよりトレセン学園に登校するようになってから
何時も同じ時間に登校をするゴーストウィニングが、居るはずの時間に居ないと言うのは珍しい以前に初めての事であった。



「じゃあちょっと呼び出してみますねーっと」


 何のかんのと言いつつも結局寝坊でもしたのだろうと、急いで教室に駆け込んでくる友人の姿を想像してニヤつきながら、
代表してその友人に勝利した青雲ウマ娘が電話を掛ける。ティ連技術で大改造と大強化された、
一世代前程度のスパコンも圧倒出来るウマホで。


「……あれ?」
「セイちゃん?」
「……おっかしーな……ネイチャさん」
「ん、こっちでも掛けて見る」


 暫く後、呼び出し音が続くも呼び出し相手と繋がらない旨の機会音声が流れ、訝し気にリコールしながらも傍にて
様子を聞いていた自称三番手のウマ娘が、二冠ウマ娘の声に即応し同じく自身のウマホにて電話とメールを掛ける。

264:陣龍:2024/01/23(火) 21:05:08 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……反応、無い」
「……こっちも、無い」
「……まさか……」
「……わ、私、今からゴーストちゃんの寮の部屋に行って見て来ます!!」
「ス、スペシャルウィークさん!?」


 縋る様な、吹き上がる暗い予想を肯定するが如く、その場に居た全員のウマホでの呼び出しが共通して
吐き出す『相手が繋がる場所に居ない』通知。テストの点は低空飛行でも真面目に頑張る日本総大将が
鬼気迫る表情で今歩いて来た道を逆走し、それを緑メンコの王が慌てて追いかけだした直後。




「まさか、また何か(pipipipipi)!?ご、ゴーストからのメール!?」
「ちょっと……メール?」


 横紙破りする様に唐突になり出した呼び出し音と、話題の渦中のウマ娘から届いたメール。
先程飛び出した総大将と王はその声に反応して引っ繰り返す様に反転して戻って来ていた。


『スカイへ。今現在、ワタクシゴーストウィニングは別世界のトレセン学園に居ります。
感覚的に件の【神様】は無関与の完全偶然災害っぽいです。元気なので心配しないで下さい。』


「別世界……って……」
「……セイちゃん達が以前、ゴーストウィニング号さんと行った様な所でしょうカ……?」
「エルちゃん、トレセン学園って書いてあるから多分違うと思うよ」


 怪鳥の疑問に意外と鋭い観点から指摘し訂正する総大将を他所に、添付されている写真に移る一同。



「……え?」
「……なに、これ」
「あら……」

 そして、ウマホに映し出された、【別世界】から送られて来たと言う写真には。



「ウマ娘……じゃ、ない……?」


 自撮り写真の恰好で、何とも全く危機感の無い【もへー】っとしたいつものゴーストウィニングと映るのは、
耳飾りや顔立ちは知り合いや友人に似ている男のウマ娘……【ウマ息子】のマヤノトップガンとカレンチャンであった。


「……なんか、この二人ちょっと顔赤らめていない?」





 遡る事一時間程前。

「ほわぁーー……」


 相方のウマ娘が居ない事で一人で寮の部屋に住んでいるゴーストウィニング。馬時代から寝る時は野生の本能の欠片も無い
熟睡も熟睡しつつ朝方には定時に起床する特異体質をそのまま受け継いで、現状余程夜更かしもしていない事から
一度も寝坊も定時より遅く起きる事無く健康的な生活を送っている彼女は、この日もいつものように起床していた。



「何か、朝方光ってたなぁー……今日の課題は……朝食は何に……」


 相方が居ない事に加えて馬時代の感性が未だ強く残っている事からも、寝ぼけまなこで少々寝巻を乱れさせたまま、
今からする事を呟いて考えたり、顔を洗ったり鞄の準備をする等無防備そのままな動き回りをする【ターフの亡霊】。
何時もの事である。



「全く……ポニー君?ここは空室のは……ず……」
「ぅい?」


 その何時もの行動の中、唐突に何処かで聞いたようで聞いた事の無い声と共に部屋の扉が勢いよく開かれ、
何とも間の抜けた声と顔で其方を振り向くゴースト。



「……し、しししし、しぃつ礼しましたぁ!?」
「……ぅい?」


 そこに居たのは、胸の無いフジキセキ……にそっくりさんな、如何にもモデル体型と言うべき姿見ながら鍛えられた
アスリートの【男子学生】が茫然と硬直し、そして慌てふためいてミステリアスな雰囲気を投げ捨てて部屋から退散していった。
因みに今のゴーストの恰好は、スカートも中途半端にしながら寝衣の上着を脱ぎかけた所である。
……まぁ、多分『見えていた』事だろう。

265:陣龍:2024/01/23(火) 21:07:39 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「驚愕!つまり、君は別世界の【ウマ息子】の女性と言う事であるのか!?」
「と言うよりも、此方の常識ではウマ息子なんて何処にもいなくて全員【ウマ娘】なんです、はい」
「信じがたいな……」
「序でに言うと、先程誘導してくれた【駿川手綱】さんも女性でしたし、理事長も女の子でした。証拠の写真は此方に」
「なん……だと……」



 謎の邂逅から暫くして。今度は『駿川たづな』と名乗る、何時も見慣れた女性と似た男性事務員と先程
事故的に覗き行為となったフジキセキの様な人が来て、理事長室に来るように求められた為素直に着いて行き、
事情説明するゴーストウィニング。既に過去、【幽世】やおウマさんの居る高天ヶ原、
更には色々と神話大戦が勃発したと言う複数の別の世界を知っていた事も有り、
自分が今いる場所が全く別世界と言う事は確定させられていた。



「女の子のウマ息子……じゃ無くて、ウマ娘さん……マヤ、ちょっと分かんないかな……」
「可愛いですね~!一緒にウマスタに写真上げません?」
「却下!先で有れば兎も角今は準備が不十分である!!」
「は~い、分かりました」


 道中偶々発見され、そして不幸中の幸いで追加で見つかったのはその二名だけに留まった、
ウマ息子のマヤノトップガンとカレンチャン。雰囲気は自分の知るウマ娘の二人と似ているが、
男性体と言う事も有って何ともむず痒い違和感の様なモノを感じてしまうゴーストであった。


「ん~?どうしたのかな、ゴーストちゃん?」
「いや、コッチの知ってるカレンチャンと似て【カワイイ】な、って」
「ふふっ、ありがと!」


 序でに、此方のカレンチャンも性癖だか何だかを破壊される人間続出しそうだなと、
追加で思うゴーストであった。




「しかし……そうなるとどうした事か。此方の世界には世界を越える技術等は存在していないが……」
「あっ!そう言えば今日の朝、ゴーストちゃんが居た空室に妙な光が見えてました!若しかすれば、
何か関係が有るのでは無いかな!?」
「あ、確か私も明け方辺りに光ってた様な記憶が。多分世界を越えたのもそれが原因じゃ無いですかね」
「ふむ……」



 証言の合致が有れど、それでもあやふやな確証の無い『世界転移に関わった光』。どうした者かと悩む
秋川弥生理事長を他所に、自身のウマホを操作して見るゴーストウィニング。




「……あ、ギリギリ電波来てる……そうだ、ちょっと二人共写真撮って良い?」
「「…え!?」」
「【向こう】にメール送るんだけど、別世界に居るって証拠に丁度良さそうだから。ほらちょっと寄って」




 強引では無いんだがマイペースが過ぎて自然と他者を巻き込む気質のゴースト、この世界でもその資質を発揮して
あれよあれよと言う間に、ウマ息子のマヤノトップガンとカレンチャンを隣に並べ、序でに肩を抱き寄せるようにして密着させる。


「ポーズは何でも良いからねー。じゃあ撮るよー」
「ぇう…はっ、ちょや!」
「ほぁ…へっ、うぇゃ!」


 謎の気合の発声を気にする事無く、それぞれポーズを決めたウマ息子達と写真を撮るゴースト。全く気負う事無く、
あくまでも自然体に何時も通りに、自分が居た世界でカレンチャン等から聞いていた自撮り術を行う。



(……スゴイ、良い匂いがした)
(……ゴーストさん、スッゴク柔らかかった)



 元の世界へ帰還するまでの僅か一週間にて、隣に居るウマ息子達以上に、全く無自覚に悪意無く、
数多の人間の性癖破壊をロードローラーする事になる事を、ゴーストは全く知らなかった。

266:陣龍:2024/01/23(火) 21:08:12 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp




「……で、今回は本当に『故意でも事故でも無い無関与の事態』なのは間違い無いのです?」
「はい……今度こそ離婚かと思いましたが、確かに今回は無関与です」
「……分かったのです。取り合えずあちらのトレセン学園にはそう伝えておくのです」
「よろしく頼みます。今不肖の愚夫が必死に居所の捜索をしていますが、手掛かり等は全く……」
「個人的な勘なのですが、その内何事も無く自然現象の如く帰って来そうな気がするのです」



 某所では、此度の事態の幾度目かの首謀者と目された自称神が、今回だけは本当に無実で有る為に椅子に縛り付けられつつも
自らの行使によって生誕した存在の必死の捜索に励んでいるのを、ウマ娘達から助けを求められた別世界の駆逐艦娘が呆れた顔で視察していた。
尚無情な事に、良く分からないし今後二度と発生しない【自然現象】にて当事者が帰還するまで全く糸口が掴めぬままに終わったので、
彼の努力は全て無駄に終わったのであった。哀れな話である。

267:陣龍:2024/01/23(火) 21:11:39 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上、続くかどうか分からぬゴーストの異世界探訪記でした。やるとしたら普通にウマ息子達との模擬レースに参加して
    ライブして色々【常識破壊】させる所から入りますかね。曲は「The Mom〇nt of Dreams」

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最終更新:2024年03月17日 18:40